逮捕しちゃうぞ2026   作:マブラマ

16 / 17
FILE.16 デンジャラスリィズ

2026年、夏の夜。

群馬・妙義山のワインディングロード。

 

スコーティアホワイトのエボⅣが、夜の峠道を軽やかに駆け上がっていた。

ケイト・フルニエは紫色の髪を風に揺らし、いつもの明るい表情でハンドルを握っていた。

しかし——後方から水色のEG6シビックが猛烈な勢いで迫ってきた。

リィズ・ホーエンシュタインだった。

EG6はエボⅣのインを鋭く突き、強引に並走。

リィズの冷たい声が無線越しに響いた。

「その程度の走りで妙義を走ってるなんて、笑えるわね。ちょっと遊んであげる」

ケイトは慌ててアクセルを踏み込んだが、EG6のシャープなラインとパワーに徐々に引き離されていく。

最終コーナーでリィズのEG6が完璧なオーバーテイクを決め、先に山頂を通過した。

バトルの結果は……ケイトの完敗。

山頂の駐車スペースで、エボⅣが静かに停車した。

リィズはEG6から降り、金髪を軽く払いながら、冷笑を浮かべて近づいてきた。

「フン……あなたね。そんなウデでよくもまぁ妙義山で走ろうなんて思ったもんね。それとも何? 他の峠じゃ遅すぎて誰にも相手して貰えないの?エボⅣが泣くわよ」

ケイトは運転席から降り、紫色の髪を垂らしたまま、うつむいて黙っていた。

「……」

リィズはさらに言葉を続けた。

「あなたが走り屋名乗るなんて10年早いのよ!」

ケイトは唇を噛み、ようやく小さな声で返した。

「……次は勝って見せます!」

リィズは鼻で笑い、冷たく言い放った。

「そう? 漸く自分の遅さに気付いたみたいね……分かったら教習所に行って免許取り直してから出直しなさい!!」

ケイトは拳をぎゅっと握りしめ、震える声で、しかしはっきりと言った。

「……絶対に勝ってみせますから」

リィズは肩をすくめ、EG6に戻りながら最後に一言。

「期待してるわよ、泣き虫メイドさん」

水色のEG6は夜の闇に溶けるように去っていった。

ケイトはエボⅣのボンネットに寄りかかり、紫色の髪で顔を隠すようにうつむいた。

肩が小さく震えていた。

「……うぅ……」

そのとき、遠くから低く野太いターボ音が近づいてきた。

ピレネーブラックのエボⅢが滑り込み、ハリエットが降り立った。

続いてトゥデイ(JW1型)も到着し、美幸と夏実が顔を出した。

ハリエットは黄金色の瞳を細め、ケイトの様子を見てすぐに察した。

「ケイ……どうしたんですか?」

夏実はトゥデイから降りて駆け寄り、ケイトの肩を抱いた。

「ケイトちゃん! 泣いてるのか? 誰かに絡まれたのか?」

美幸は眼鏡を押し上げ、静かに状況を読み取った。

「エボⅣのタイヤの擦れ……誰かとバトルしたのね」

ケイトは涙を拭いながら、震える声で言った。

「水色のEG6……リィズ・ホーエンシュタインっていう人に……完敗して……すごく悔しくて……」

夏実は拳を握りしめ、即座に反応した。

「EG6? あのシビックか!ケイトちゃん、悔しいなら次は絶対に勝とう!あたしたちも一緒に練習してやる!」

美幸はケイトの頭を優しく撫でながら、穏やかに言った。

「大丈夫よ、ケイトちゃん。負けたのは今日だけ。次に会ったら、ピクシス・マスールと墨東署の力を見せてあげましょう」

ハリエットはエボⅢに寄りかかり、黄金色の瞳で夜の峠を見つめた。

「ふふ……面白い相手が出てきましたね。ケイ、次は私がしっかりサポートするから……絶対に勝ちましょう」

ケイトは涙を拭い、ようやく小さく頷いた。

「……うん。絶対に……次は勝ってみせます!」

妙義山の夜風が、四人の髪を優しく揺らした。

ケイトのエボⅣは、まだ熱を帯びたまま静かに佇んでいたが、そのボンネットに寄りかかるケイトの瞳には、再び小さな闘志の炎が灯り始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5日後

群馬・妙義山のワインディングロード。

 

夜の峠は静かに湿り気を帯び、ヘッドライトの光だけが道を切り裂いていた。

水色のEG6シビックが、いつものように軽快にコーナーを攻めていた。

リィズはハンドルを握り、冷たい視線を前方に固定している。

すると、後方から白い光が急速に近づいてきた。

スコーティアホワイトのエボⅣ——ケイトだった。

リィズはミラー越しにエボⅣを確認し、唇の端を歪めた。

「ん……? 誰、あなた」

ケイトはエボⅣをリィズの横に並べ、緊張した声で言った。

「あ、あの……」

リィズはすぐに思い出したようで、嘲るように笑った。

「ああ……この前シッポ巻いて逃げたメイドさんね。まだウロウロしていたの?」

ケイトはハンドルを強く握りしめ、紫色の髪を少し震わせながら、はっきりと言った。

「5日間走り込んで練習しました……その、リベンジさせてください!」

リィズは鼻で笑い、冷たく言い放った。

「あなたみたいな遅いドライバーにイキって走られると邪魔過ぎて迷惑なのよ!!」

ケイトは一瞬うつむいたが、すぐに顔を上げ、青い瞳に決意を宿して繰り返した。

「……お願いします」

リィズはため息をつき、EG6のエンジンを高らかに吹かした。

「フン、納得いかないのね。全く……しょうがないわね。きっちり思い知らせてあげるよ―――レベルの違いを。ね」

——スタート!

EG6が鋭い加速で先行し、妙義山のテクニカルなコーナーを攻め始めた。

リィズのFF最速を自負するラインは、相変わらずシャープだった。

しかし、たった5日間で徹底的に練習を積んだケイトのエボⅣは、前回とは明らかに違っていた。

ピクシス・マスールの仲間たちと墨東署の面々が付きっきりでアドバイスをし、ケイト自身も「怖がり」を少しずつ克服しながら、ラインを磨き上げていた。

中盤の連続ヘアピンで、ケイトはエボⅣの4WDを活かした安定したトラクションでリィズに食らいつき、最終セクションの高速左コーナーで、見事なオーバーテイクを決めた。

エボⅣが山頂を先頭で通過した。

勝負の結果は……ケイトの勝利!

駐車スペースでエボⅣが停まると、ケイトはシートベルトを外し、震える手でドアを開けた。

「か……勝った。勝ちました……よ」

リィズはEG6から降り、金髪を乱暴に払いながら、信じられないといった顔でケイトを睨んだ。

「こんな馬鹿な……私のシビックはFF最速の筈よ!?」

ケイトは息を荒げながらも、紫色の髪を指で直し、はっきりと言った。

「リィズさん……」

リィズは唇を噛み、悔しさを隠せないまま続けた。

「……けどね。こっちから仕掛けたバトルよ。このまま引き下がると走り屋界隈の笑いモノになって再起不能よ。待ってなさい……必ずリターンマッチを挑んでやるから覚悟しておきなさい!!」

ケイトは小さく、しかし力強く頷いた。

「……はい。次も、絶対に負けません」

リィズはEG6に戻り、ドアを強く閉めながら最後に一言。

「ふん……覚えてなさいよ、泣き虫メイド」

水色のEG6は夜の闇に消えていった。

ケイトはエボⅣのボンネットに寄りかかり、ようやく大きな息を吐いた。

紫色の髪が汗で少し張り付き、青い瞳には達成感と新たな決意が宿っていた。

「……勝った……本当に勝った……」

そのとき、後方から低く野太いターボ音が近づいてきた。

ピレネーブラックのエボⅢ(ハリエット)と、トゥデイ(美幸・夏実)が到着した。

ハリエットがエボⅢから降り、黄金色の瞳でケイトを見て微笑んだ。

「ケイ……勝ったんですね。おめでとう」

夏実はトゥデイから飛び降り、ケイトの肩をバシンと叩いた(優しい力加減で)。

「やったじゃん、ケイトちゃん!たった5日間でここまで成長するなんて、すごいわ!」美幸は眼鏡を押し上げ、静かに微笑んだ。

「よく頑張ったわ、ケイトちゃん。あなたの努力が実ったのよ」

ケイトは涙を浮かべながら、みんなに頭を下げた。

「……みんな、ありがとうございます。次は……もっと強くなって、リィズさんにリターンマッチで勝てるように頑張ります!」

妙義山の夜風が、四人の髪を優しく揺らした。

ケイトのエボⅣは、まだ熱を帯びたまま静かに佇んでいたが、

そのボンネットに寄りかかるケイトの横顔には、初めての勝利の余韻と、次の戦いへの静かな覚悟が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

墨東署交通課の駐車場。

 

いつものように白黒のトゥデイ(JW1型)が停まっている横に、昨日妙義山で戦ったばかりのスコーティアホワイトのエボⅣが並んでいた。

ケイトはエボⅣのボンネットに寄りかかり、紫色の髪を少し乱したまま、ぼんやりと遠くを見つめていた。

まだ昨夜の勝利の余韻が残っているのか、頰がわずかに赤い。

そこへ、いつものメンバーが集まってきた。

夏実はトゥデイのボンネットに腰をかけ、豪快に笑いながら声をかけた。

「よお、ケイトちゃん! 昨日の勝利、おめでとう!5日間でここまで成長するなんて、マジですごいわよ!」

美幸は眼鏡を軽く押し上げ、穏やかな笑顔で近づいた。

「ええ、本当に頑張ったわね、ケイトちゃん。リィズさんのEG6を相手に、最後のコーナーで綺麗に抜いた瞬間……見事だったわ」

ハリエットはピレネーブラックのエボⅢに寄りかかり、黄金色の瞳を細めてくすくす笑った。

「ふふ……ケイが勝つなんて、ちょっと意外でしたね。でも、あの粘り強い走り……ピクシス・マスールの一員として誇らしいです」

リュシーはラビットS601を押しながら、赤い瞳でケイトを見て小さく頷いた。

「まあ、よくやったよ。あのEG6、相当速かったのに、最後で逆転するなんて……お前、5日間で何したんだ?」

ケイトは紫色の髪を指でいじりながら、照れくさそうに微笑んだ。

「うう……みんなにいっぱい教えてもらったおかげです。怖がらずにラインを取ること、ブレーキングのタイミング、4WDの使い方……あと、美幸さんと夏実さんの講習会の話も参考になりました」

夏実はケイトの肩をバシンと叩き(優しい力加減で)、大笑いした。

「はははっ! うちの講習会が役に立ったなんて嬉しいよ!ウィリー50メートルは基本、ってちゃんと伝わったかな?」

ケイトは慌てて両手を振った。

「え、えっと……ウィリーはまだちょっと怖くて……でも、アクセルターンは少しできるようになりました!」

美幸はトゥデイのボンネットを優しく撫でながら、静かに言った。

「リィズさん、かなり悔しそうだったわね。『必ずリターンマッチを挑んでやる』って言ってたけど……次はもっと厳しい戦いになると思うわ。ケイトちゃん、準備はできてる?」

ケイトは少し緊張した顔になりながらも、青い瞳に強い光を宿して頷いた。

「はい……絶対に負けません。もう一度勝って、リィズさんに『レベルの違い』をちゃんと見せたいんです」

リュシーが腕を組み、赤い瞳でケイトを見た。

「まあ、気合いは十分みたいだな。お嬢も『ケイトが勝ったって聞いたら喜ぶだろう』って言ってたよ。次はみんなでサポートしてやるから、安心しろ」

ハリエットがくすくす笑いながら、三つ編みを弄んだ。

「ふふ……ケイトが成長する姿、なんだか可愛いですね。次は私がしっかりエスコートしてあげますから、安心して走ってくださいね」

中嶋剣が白バイを停めて近づいてきて、苦笑いを浮かべた。

「……お前ら、また妙義で派手にやってたらしいな。学校の講習会の話もまだ尾を引いてるっていうのに、今度はケイトちゃんまで峠バトルかよ……」

夏実は中嶋の肩をバシンと叩き、笑った。

「中嶋、心配しすぎだって!ケイトちゃんはちゃんと成長してるんだから!次はリィズとのリターンマッチ、絶対に勝たせてやるよ!」

ケイトはみんなの顔を見回し、涙を浮かべそうな笑顔で言った。

「……みんな、ありがとうございます。私、もっと強くなって……ピクシス・マスールのみんなと、墨東署の皆さんに恥ずかしくない走りができるように頑張ります!」

駐車場に、朝の陽射しが差し込む中、温かい笑い声とエンジンの低い唸りが混じり合った。

2026年の墨東署は、今日も平和ではなかった。

でも、それでいい。

ケイトの小さな勝利と新たなリターンマッチへの決意が墨東署交通課にまた一つ、熱い風を吹き込んでいた。

フルスロットルで、走り続けよう——次は、絶対に勝つ!

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。