逮捕しちゃうぞ2026   作:マブラマ

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FILE.19 暴走婦警、再び銀行を襲う!?~防犯訓練で両津化する夏実~

2026年、夏の午後。

三菱UFJ銀行 墨東店。

 

店内は穏やかな午後の光が差し込み、静かな空気が流れていた。

カウンターの若い女性店員が、笑顔で次の客を迎えようと声をかけようとしたその瞬間——自動ドアが勢いよく開き、二人の人物が黒い影のように滑り込んだ。

帽子を深く被り、サングラスで目を隠し、黒いジャケットを羽織った辻本夏実と小早川美幸だった。

 

ダァーン!!

 

夏実が天井に向かって空砲を一発撃ち、店内に響き渡る大声を上げた。

「動くな!」

美幸も素早く拳銃を構え、冷たく低く響く声で続けた。

「動くと撃つわよ!」

店内が一瞬で凍りついた。

客たちが悲鳴を飲み込み、店員たちが青ざめて固まる。

空気が張りつめ、わずかな物音すら響くような緊張が広がった。

 

―――——一方、銀行から少し離れた路地に停めた捜査車両(スズキ・ランディ後期型 SGNC27型)内。

 

二階堂頼子はモニターを食い入るように見つめ、顔を青ざめさせていた。

「中嶋君……やっぱり無茶だよ。美幸はともかく、夏実に防犯訓練の犯人役をやらせるなんて……」

中嶋剣はハンドルを軽く握り、苦い表情で答えた。

「仕方ないだろ。本庁の上層部がそう決めたんだ。小早川は猛反対していたが、辻本はその犯人役を抜擢されてウキウキしたらしいぞ」

葵双葉は後部座席で静かに腕を組み、穏やかだが少し心配げに言った。

「何事もなければいいのですが……」

頼子は画面に映る夏実の姿を見て、声を震わせた。

「夏実、張り切ってるみたい……」

中嶋はため息をつきながら言った。

「ハリエット曰く『やる気だけ満々のベテラン婦警』だな」

頼子が不安げに聞いた。

「ハリエットちゃん……銀行にいるみたいだけど大丈夫かな?」

中嶋は無線を握りしめ、静かに言い聞かせた。

「いいか? みんな。これはあくまでも訓練なんだ。あの二人は分かってると思うが、マニュアル通りにやれば問題ない」

頼子はまだ不安を拭いきれず、モニターを見つめ続けた。

「えぇ……不安だ」

その瞬間、無線から乾いた銃声が響いた。

 

ダァーン!

 

夏実の声が飛び込んできた。

「動くと撃つって言ってるでしょ!」

美幸の冷静な声が続いた。

「夏実、これは訓練よ」

夏実は棒読み気味に、しかし全力で叫んだ。

「これぐらいやらないと訓練にならないわよ!」

銀行内では、女性銀行員が震える手で警報ベルに手を伸ばそうとした。

夏実は素早く動き、笑顔で制した。

「はい! そこぉっ! その動きじゃ警報ベルがそこにあるとわかってしまうわよ?」

女性銀行員Aが小さく悲鳴を上げた。

「ひゃぁっ!」

別の女性銀行員も警報ベルに手を伸ばそうとしたが、夏実が即座に阻止した。

「そこも! バレバレだよ~」

女性銀行員Bが青ざめて縮こまった。

「ひぃっ!」

美幸は小さくため息をつきながら、夏実に小声で言った。

「夏実! それじゃ誰も通報出来ないでしょ!」

夏実は堂々と胸を張った。

「何言ってんの! 訓練だからって手は抜かないわよ!」

美幸は頭を抱えそうになりながらも、諦めたように呟いた。

「それはそうだけど……」

捜査車両内では、中嶋が画面を凝視し、顔をしかめた。

「警報ベルが鳴らない……? どうなってるんだ」

頼子が指差して叫んだ。

「中嶋君! アレ!」

葵が冷静に言った。

「モニターが……」

中嶋は絶句した。

「嘘だろ……」

 

銀行内では、夏実がスプレー缶を取り出し、監視カメラのレンズを次々と黒く塗りつぶしていた。

「これで見えなくなったわ」

美幸はため息をつきながら言った。

「はぁ……全く」

夏実は堂々と胸を張った。

「今の強盗はここまでやって当然よ」

美幸は小さく頭を抱えた。

「むぅ……」

中嶋は画面を見つめ、歯を食いしばった。

「辻本……お前……」

頼子が青ざめて聞いた。

「どうするの?」

中嶋はハンドルを強く握りしめ、低く唸った。

「どうするって……見守るしかないだろ」

夏実は金庫室の前に立ち、店長を睨みつけた。

「金庫を開けなさい」

店長は青ざめながら、震える声で言った。

「え? これは訓練じゃないんですか?」

夏実は声を荒げ、棒読み気味に言い放った。

「うっさいわね! 訓練だからこそあらゆる事態に備えなきゃダメなのよ!つべこべ言わず早く開けなさいよ!」

店長は慌てて金庫のダイヤルを回し始めた。

「は、はぃいい!!」

夏実はさらに追い打ちをかけた。

「札束全部よ」

中嶋は画面を見て、ぐぬぬと唸った。

「ぐぬぬぬ……」

頼子が慌てて無線で指示を出した。

「店長さん、そこでダミーの札束を渡して下さい!」

葵が静かに確認した。

「ダミーの札束ですか?」

中嶋は頷いた。

「強く握った途端、中のペンキが破裂する仕組みになっているんだ」

銀行内では、美幸が店長から受け取ったダミー札束を手に持った瞬間——――

 

グチュゥッ!

 

赤いペンキが勢いよく飛び散り、美幸の手とジャケットを真っ赤に染めた。

夏実は棒読みで大げさに叫んだ。

「やられた!」

中嶋は思わず声を上げた。

「引っかかった!」

夏実はさらに棒読みで続けた。

「もうダメよー。これじゃ捕まってしまうわー」

美幸はペンキまみれの手を見て、ため息をついた。

「ぐぬぬぬ……」

夏実は店長に向かってさらに声を荒げた。

「おい、早く本物を渡しなさい」

店長は完全に混乱し、目を白黒させた。

「え!?」

夏実は堂々と胸を張った。

「そういう訓練なのよ!!」

美幸は慌てて止めに入った。

「ダメよ! 夏実!!」

夏実は美幸を振り払い、笑いながら言った。

「美幸! 本当に金を盗らないとリアリティに欠けてしまうよ!」

中嶋はランディのエンジンをかけながら、決意を固めた。

「もうこうしちゃおられない。出動するぞ」

頼子が慌てて叫んだ。

「え!? 通報もないのに出ちゃうの?」

中嶋はアクセルを踏み込みながら答えた。

「このまま放っておいたら警察の面子が丸潰れになるぞ!」

葵がモニターを指差した。

「あ、パトカーが……」

中嶋は画面を見て顔をしかめた。

「あの車両は足立警察署の……」

頼子が目を丸くした。

「あのエリオセダン……カリナちゃんだよね?」

中嶋はアクセルを全開にしながら言った。

「管轄外だろ……一体何が」

頼子が画面を指差して叫んだ。

「あ! 夏実が逃げていくよ!」

中嶋は大声を上げた。

「コラァ! 辻本ーーー!!」

夏実は銀行の裏口から逃走用の小型オートバイ――ホンダ・モンキーに跨がり、振り返って舌を出した。

「げ!」

そのままモンキーを急発進させ、逃走を開始した。

中嶋はランディを急発進させながら叫んだ。

「おい、小早川! 何やってるんだ!!」

美幸は銀行の入り口前で、申し訳なさそうに無線に応じた。

「ごめん、中嶋君」

葵は冷静に無線を切り替え、淡々と報告した。

「――分かりました。中嶋さん、この先の三井住友銀行で強盗事件が」

頼子が驚きの声を上げた。

「え!!?」

中嶋はアクセルを踏み込みながら叫んだ。

「何だと!?」

墨東署の面々が総動員で追いかける中、夏実のモンキーは街中を疾走し、訓練とは思えない本気の逃走劇が始まっていた。

美幸はトゥデイを猛追させながら、静かに微笑んだ。

「夏実……本気すぎるわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三井住友銀行 墨東店。

 

店の外は一瞬で凍りついた。

数時間前、二人の強盗が乱入し、一人が女性銀行員の首に腕を回して銃口を突きつけ、もう一人が小型の爆弾を高く掲げて機動隊員たちを威嚇していた。

強盗Aが凶悪な笑みを浮かべ、声を張り上げた。

「来るんじゃねえぞ!」

強盗Bは爆弾のスイッチに指をかけ、嘲るように叫んだ。

「動いたらこの爆弾で爆破するぞ!」

機動隊員の一人が歯を食いしばり、低く唸った。

「クソ……」

強盗二人は互いに顔を見合わせ、勝ち誇ったように笑った。

「へっへっへっ……」

その時——銀行の裏口から小型オートバイのエンジン音が響き、黒いジャケットにサングラス姿の夏実が飛び出してきた。

夏実は状況を一瞬で把握し、軽い調子で言った。

「あれ? ここでも訓練やってたの? 爆弾だなんて本格的だね~」

中嶋の慌てふためいた声が無線から飛び込んできた。

「おい! 辻本!! 其奴らは本物の強盗だぞ!!」

夏実はモンキーを急停止させ、目を丸くした。

「何ですって!?」

強盗Aが夏実に向かって銃を向け、凶悪に笑った。

「ハッ! 何だか知らねえが、拳銃捨てないとこの女を殺すぞ!」

夏実は一瞬迷ったが、ゆっくりと拳銃を地面に置いた。

「く……!」

強盗Aは満足げに笑い、仲間に向かって言った。

「そうそう、ほなさいなら~」

夏実はその瞬間、唇の端を吊り上げた。

「そうはいかないわよ!!」

隠し持っていたトミーガンを素早く取り出し、強盗二人に向かって容赦なく連射した。

 

ダダダダダダダッ!!

 

強盗二人は驚愕の表情を浮かべたまま、体を震わせてその場に崩れ落ち、失神した。

人質になっていた女性銀行員は呆然と床に座り込み、言葉を失っていた。夏実はトミーガンを肩に担ぎ、にこやかに言った。

「ふふ、引っかかったわね? これも訓練用の空砲よ」

機動隊員たちが一斉に動き出し、強盗二人を確保した。

「犯人確保ー!!」

中嶋の声が無線から響いた。

「辻本!!」

夏実はモンキーに跨がったまま、気軽に手を振った。

「あ、中嶋くーん、やっつけちゃった」

中嶋はランディから降りてきて、怒鳴りつけた。

「お前、そんなモノどこから取ってきたんだ!?」

夏実はヘルメットを外しながら、平然と答えた。

「ドロテアさんから借りただけだよ」

中嶋は絶句した。

「ドロテアが!?」

頼子が無線越しに呆れた声を出した。

「ランエボだけじゃなくて武器まで……」

葵が冷静に付け加えた。

「『死の商人』ですね」

夏実は肩をすくめて笑った。

「中嶋君、昨日言ったじゃない? 犯人役はリアリティが必要不可欠だって」

中嶋は頭を抱えた。

「だからと言ってトミーガンを出す必要はないだろ!!」

夏実は無邪気に首を傾げた。

「えー? 折角色々用意したのに……手榴弾にスペツナズナイフに。閃光弾やAK-47とか……」

頼子が遠慮がちに呟いた。

「本格的だね……」

美幸はペンキまみれのジャケットを眺めながら、静かに言った。

「……あとで始末書ね。これは」

その時、葵の冷静な声が無線に入った。

「大変です! 時限爆弾が作動して爆破まであと5分です!」

ハリエットがピレネーブラックのエボⅢから降り立ち、優雅に歩み寄ってきた。

「困ってるようですね? 私に任せて下さい」

中嶋は慌てて止めた。

「ハリエット!? お前、危険だぞ!」

ハリエットは黄金色の瞳を細め、涼しい顔で答えた。

「ドロテア様やリュシー様に爆弾の解除の仕方を教えて貰いましたから出来ます」

中嶋は声を荒げた。

「無理だ! やめろ!」

ハリエットは軽く肩をすくめ、優雅に言った。

「私はメイドですよ? 不可能を可能にするのが……ドロテア様に仕えるメイドです」

中嶋は必死に止めた。

「あ、だからこういうのは警察官に任せば……」

ハリエットはため息をつき、冷たく言い返した。

「お前が口挟むからあと3分になったじゃないですか!」

中嶋は言葉を失った。

「やめろって!」

ハリエットは爆弾の前にしゃがみ込み、静かに作業を始めた。

「……唐変木警官」

中嶋は頭を抱えた。

「お前な……」

ハリエットは器用にネジを外し、複数のケーブルを慎重に切断しながら言った。

「ネジを外し……複数のケーブルを三カ所だけ切断。これで——」

 

ピッ。

 

時限装置の表示が止まり、爆弾は静かに沈黙した。

ハリエットは立ち上がり、優雅に髪を払った。

「解除完了です」

中嶋は呆然と立ち尽くし、ようやく声を絞り出した。

「……お前、本当にメイドか?」

ハリエットはくすくすと笑いながら答えた。

「メイドですから」

夏実はトミーガンを肩に担いだまま、満足げに言った。

「よし! 一件落着!今日の訓練も大成功だね!」

美幸はペンキまみれのジャケットを眺めながら、静かにため息をついた。

「夏実……あとで始末書、たっぷり書いてもらうわよ」

夏実は笑いながら手を振った。

「えー? リアリティ重視でしょ?」

頼子が無線越しに叫んだ。

「みんな無事でよかった……でも、もう心臓に悪いからやめてよね!」

中嶋はランディのドアを閉めながら、深いため息をついた。

「……墨東署は今日も平和ではなかったな」

夏実はモンキーに跨がり直し、ヘルメットを被りながら明るく言った。

「それでいいんだよ!あたしたちがいるところが平和だった試しがないんだから!」

美幸はトゥデイの運転席に乗り込み、静かに微笑んだ。

「ええ……これからも、フルスロットルでね」

銀行の前で、墨東署と足立署の面々が集まり、今日もドタバタとした、しかし確かな絆を感じさせる一日が終わろうとしていた。

夏実はヘルメットの中で小さく呟いた。

「次はもっと本格的にやろうかな……」

中嶋の遠いため息が、夕陽に染まる墨田区の街に溶けていった。

フルスロットルで、逮捕しちゃうぞ——!

(銀行も一緒に守って)

 

 

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