2026年、夏の夜。
墨田区松代橋交差点。
夜の交差点は、激しい衝突音とブレーキの悲鳴で一瞬にして騒然となった。
黒いセダンと白い軽自動車が激しくぶつかり合い、破片が路面に散らばった。
幸い、死者は出なかったものの、負傷者が出て救急車のサイレンが遠くから近づいてくる。
近隣住民たちが窓から顔を出し、ため息や怒りの声が漏れた。
「またかよ……毎晩のようにエンジン音がうるさくて眠れないんだよ」
「子供がいる家庭は本当に迷惑だわ。危ないし、怖いし……」
「独り暮らしの老人は夜中に飛び起きて、心臓に悪いって……」
墨東署交通課では、翌朝すぐに緊急の作戦会議が開かれた。
会議室には美幸、夏実、中嶋、頼子、葵、そしてハリエットやケイトも顔を揃えていた。美幸は眼鏡を押し上げ、資料を広げながら落ち着いた声で切り出した。
「昨夜の松代橋交差点の事故は、幸い死者は出ませんでしたが、負傷者は二人。近隣住民からの苦情はここ数ヶ月で急増しています。特に子持ちの家族や独居老人の方々から『夜中にエンジン音とタイヤの悲鳴が絶えず、眠れない』という声が多数寄せられています」夏実は腕を組み、悔しそうに拳を握った。
「走り屋どもが集まって、公道レースをやってるってことでしょ?深夜帯に妙義や榛名じゃなくて、住宅街の近くでやるなんて、ふざけすぎよ!」
中嶋剣は白髪交じりの頭を掻きながら、苦い顔で言った。
「情報によると、松代橋交差点周辺でここ1ヶ月、週に3〜4回は走り屋の集まりが見られるらしい。改造車が10台以上集まって、信号無視や違法なスタートを繰り返している。住民の安全を脅かすだけでなく、事故のリスクも非常に高い」
頼子は眼鏡を光らせ、メモを取りながら興奮気味に言った。
「苦情の内容も深刻よ。『子供が夜中に飛び起きて泣く』『独り暮らしのお年寄りが怖くて眠れない』……これ以上放置したら、地域の信頼が完全に失われちゃうよ!」
葵は長身を少し屈めて、静かに提案した。
「まずは情報収集を徹底しましょう。目撃情報、車両の特徴、集まる時間帯……それから、墨東署交通課として、抜き打ちの取り締まり作戦を立てるべきです」
ハリエットは黄金色の瞳を細め、くすくすと笑った。
「ふふ……走り屋さんたち、なかなか大胆ですわね。ピクシス・マスールも協力しますよ。エボ軍団で包囲網を張るのも面白いかもしれません」
ケイトは紫色の髪を指で巻きながら、少し不安げに言った。
「でも……相手は本気の改造車ばかりだと思うと、少し怖いです……」
美幸は資料をまとめ、凜々しい表情で全員を見回した。
「作戦会議を本格的に始めましょう。住民の安全が第一です。走り屋たちの公道レースを阻止するため、墨東署交通課は全力で動きます」
夏実は拳を握りしめ、闘志を燃やした。
「よし! 決まりよ!あの連中をフルスロットルで捕まえてやる!墨東署の誇りにかけて!」
会議室に、いつもの熱い気概が満ちた。
中嶋は苦笑いを浮かべながらも、力強く頷いた。
「……お前ら、頼むぞ。俺も白バイでサポートする」頼子は眼鏡を輝かせてメモをまとめ、葵は静かに作戦のポイントを整理した。ハリエットとケイトも、それぞれのエボで協力する意思を示した。
墨東署交通課は近隣住民の平穏を守るため、走り屋たちの公道レースを阻止する大規模作戦に乗り出そうとしていた。
墨東署交通課の会議室は、緊張した空気に包まれていた。
地図と防犯カメラの映像がテーブルに広げられ、美幸、夏実、中嶋、頼子、葵、そしてピクシス・マスールの面々が顔を揃えていた。
美幸は眼鏡を軽く押し上げ、静かに切り出した。
「ハリエットちゃん、最近、頻繁に見かけるクルマの情報はないかしら?」
ハリエットは黄金色の瞳を細め、黒い手袋をはめた指で三つ編みを軽く弄びながら答えた。
「住宅街付近の公道で見かけるのはチェイサーですね。X70系~X100系まで幅広く。特に多いのはX100系ですね。まあ、一部は違法改造したクルマやバンパーをわざと外した状態で暴走するクルマも見かけます」
ケイトが紫色の髪を指で巻きながら、明るく続けた。
「他にもセドリックやグロリアも見かけるよ。勿論違法改造してるクルマはあるけど、殆ど純正でチューニングしたクルマだよ」
ケイトはさらに付け加えた。「あと、シルビアも見かけるよ。S12はないけど、S13~S15型は多いです」
中嶋は腕を組み、防犯カメラの映像を睨みながら低く唸った。
「防犯カメラの映像見た限りどれも違法改造車だな。対策はあるのか?」
リュシーは白い手袋をはめた手をテーブルに置き、赤い瞳を鋭く光らせた。
「大井ふ頭周辺道路でよく公道レースが行われている。ギャラリーも沢山いるぞ」
夏実は拳を握りしめ、闘志を燃やした。
「となると、連中はそこを向かってる訳ね」
美幸は地図を指でなぞりながら、静かに、しかし強い意志を込めて言った。
「このまま放っておいたら大事故起きるわ。何とかならない?」
リュシーは少し考えた後、決意を込めて頷いた。
「……愚策だが、奴等をここへおびき出すしかない。あたし達も全面協力するよ」
頼子は眼鏡を光らせながら、少し不安げに聞いた。
「チェイサーだよ? 止められるの?」
リュシーは赤い瞳で頼子を見据え、力強く答えた。
「そこら辺でよく見かけるドリフト小僧の溜まり場だ。奴等を驚かしてやる!」
中嶋は白髪交じりの頭を軽く掻きながら、作戦をまとめた。
「よし、小早川と辻本はトゥデイに乗り込んで警戒だ。リュシー達はその『チェイサー』に乗ってるドライバーをおびき出してトゥデイの支援してくれ」
リュシーは小さく笑い、拳を軽く握った。
「おう、やってやるよ!」
ハリエットは黄金色の瞳を細め、くすくすと笑った。
「楽しみですね。ぷぷぷ」
ケイトは紫色の髪を指で巻きながら、少し心配そうに言った。
「ハリィちゃん、楽しんでるよね……」
ハリエットは三つ編みを軽く弄びながら、自信たっぷりに答えた。
「絶好のチャンスです。蹴散らしてやりますよ」
美幸は眼鏡の奥で静かに微笑み、みんなを見回した。
「チェイサーは全日本ツーリングカー選手権 (JTCC) に参戦したセダンタイプのクルマよ。私のトゥデイとハリエットちゃんのエボⅢならやれるわ!」
ハリエットは優雅に髪を払い、黄金色の瞳を輝かせた。
「当たり前です。ランエボはただのラリーカーではありません。それを奴等に見せつけてやります」
会議室に、熱い決意と静かな緊張が満ち、夏実は拳を握りしめ、力強く宣言した。
「よし! 決まりね!連中を墨東署の管内で待ち伏せして、一網打尽にする!住民の平穏を守るため、フルスロットルでいくわよ!」
美幸は地図を畳みながら、凜々しく頷いた。
「ええ……この街の夜を、静かに取り戻しましょう」
中嶋は白バイのヘルメットを手に取り、静かに言った。
「俺も白バイでサポートする。みんな、無理はするなよ」
リュシーはエボⅡのキーを握り、赤い瞳でみんなを見回した。
「任せろ。あたし達も全力でやる」
ハリエットとケイトも、それぞれのエボに乗り込む準備を始めた。
墨東署交通課の面々とピクシス・マスールのメイド走り屋たちは住民の苦情と安全を守るため、違法走り屋集団に対する大規模な取り締まり作戦に乗り出そうとしていた。
大井埠頭周辺道路。
夜の海風がコンクリートの路面を冷たく撫で、遠くの倉庫街の灯りがぼんやりと浮かんでいた。
大井埠頭は、首都圏の走り屋たちにとって“聖地”の一つ。
深夜になると、改造車が集まり、ギャラリーが路肩やガードレールに腰を下ろしてエンジン音とタイヤの悲鳴を愉しむ——そんな危険な文化が根付いていた。
ギャラリーAが煙草をくわえ、興奮気味に言った。
「今日はどんなドリフト見せてくれるんだろ?」
ギャラリーBがビール缶を片手に笑った。
「チェイサーとマークⅡの大群がいい走りを見せてくれるよ」
その言葉が終わらないうちに、低く野太いエンジン音が夜の闇を切り裂いた。
グアアアアアアッ……ッ!
ギャラリーAが身を乗り出した。
「お、早速来たな」
ギャラリーBが目を細めて叫んだ。
「おお! すげー! チェイサーが2台並列しながらドリフトしやがる!」
ギャラリーCがスマホを構えながら興奮した。
「やば! 危険なレースになりそうだ!」
ギャァアアン!
チェイサーのリアタイヤが路面を削り、白い煙を上げながらコーナーを抜けていく。
ギャラリーたちは歓声を上げ、拍手さえ起こした。
ギャラリーAが興奮冷めやらぬ様子で言った。
「おい、見たかよ。あの鮮やかなドリフト」
ギャラリーBが頷いた。
「ああ、みたみた」
ギャラリーCがスマホを振りながら叫んだ。
「また来たぞ! 今度はマークⅡだ!」
ギャワワワン!
さらに派手なエンジン音が響き、Y32型セドリックとグロリアが並んでドリフトを決めた。
続いてS14とS15シルビアが美しい連動ドリフトを披露し、ギャラリーたちは熱狂した。ギャラリーCが興奮で声を上ずらせた。
「うほー! 痺れるぜ。これだから公道レース観戦はやめられないんだ!」
ギャラリーBがビール缶を空にしながら言った。
「さて、今日はいいもん見れたし帰るか」
ギャラリーAが突然手を上げて止めた。
「待て。何か来るぞ」
ギャラリーBが怪訝な顔をした。
「え?」
ギャラリーAの目が大きく見開かれた。
「え!!!? 嘘だろ……」
ギャラリーBが慌てて振り向いた。
「は?」
グァアアアアアッ……!!
低く、重く、野性的なターボ音が夜の闇を震わせた。
ギャラリーAが声を震わせて叫んだ。
「ランエボだ!!」
ギャラリーBが立ち上がった。
「おいおい、マジかよ……ⅠからⅤまで走ってやがる!」
ギャラリーCがスマホを落としそうになりながら興奮した。
「こんなの滅多に見られねえよ……いい一日になったぁ」
ピレネーブラックのエボⅢ、ハリエット。
スコーティアホワイトのエボⅣ、ケイト。
モナコレッドのエボⅤ、ミリアム。
スコーティアホワイトのエボⅡ、リュシー。
クイーンズシルバーのエボⅠ、ドロテア。
ピクシス・マスールの五台のランサーエボリューションが、夜の埠頭道路に美しい光の帯を描きながら現れた。
リュシーはエボⅡの運転席から顔を出し、赤い瞳でギャラリーを睨みつけた。
「フン、ギャラリー共がすげー喜んでるぜ」
ハリエットはエボⅢの窓から優雅に手を振り、黄金色の瞳で笑った。
「ふふ、ランエボは日本国内で台数少なくなってますからギャラリーの人達が喜ぶのも理解出来ます」
リュシーはアクセルを軽く吹かし、低く唸るエンジン音を響かせた。
「エボⅡに乗って正解だったな……さて、あの『チェイサー』共を止めに行くぞ!ハリエット、ケイト、ミリアム。準備はいいか!?」
ハリエットが涼しい声で答えた。
「いつでも行けます!」
ケイトが明るく頷いた。
「はい!」
ミリアムが元気よく叫んだ。
「みんなに見せつけてやろうよ!」
ドロテアはクイーンズシルバーのエボⅠから優雅に声をかけた。
「リュシー、無茶はしないでね」
リュシーは赤い瞳を細め、力強く応じた。
「お嬢……ああ、分かってる」
ギャラリーたちは興奮と驚きでざわついて、ギャラリーAが声を上ずらせた。
「エボに乗ってたドライバー見たか?」
ギャラリーBが呆然と呟いた。
「ああ、全員メイドだよ」
ギャラリーCが興奮で息を荒げた。
「いるかよ……でも現実だよな…すげー」
ギャラリーAが突然指を差した。
「また来たぞ。今度は軽自動車だ!」
ギャラリーBが目を細めた。
「軽自動車? AZ-1か? ビートか? カプチーノか?」
ギャラリーAの声が裏返った。
「どれも違う……これは……」
グアアアアアアッ!!
白黒のボディに大きな散光式警光灯を載せたホンダ・トゥデイ(JW1型前期型ミニパト)が、夜の闇を切り裂いて登場した。ギャラリー全員が一斉に叫んだ。
「トゥデイだと!!!!!!?」
白黒のミニパトは、RAYS TE37の白い13インチを輝かせながら、堂々とギャラリーの前を通過した。
夏実は助手席から身を乗り出し、豪快に笑った。
「みんな、夜更かしして元気ね!でも公道レースはここまでよ! 逮捕しちゃうぞ、フルスロットルで!」
美幸は運転席で眼鏡を押し上げ、静かに、しかし力強く言った。
「この街の夜は、私たちが守るわ。皆さん、今日はお開きにしましょう」
ピクシス・マスールの五台のエボリューションと、伝説のトゥデイが、大井埠頭の夜の闇に美しい光の帯を描きながら、走り屋たちの集まりを包囲するように展開した。
ギャラリーたちは興奮と驚愕でざわつきながらも、徐々に静かになっていった。
リュシーはエボⅡのハンドルを握り、赤い瞳で周囲を睨みつけた。
「さあ、始めるぞ……今日の公道レースは、ここで終わりだ」
ハリエットはエボⅢの窓から優雅に手を振り、黄金色の瞳で笑った。
「ふふ……ランエボの夜、楽しんでいただけますか?」
ケイトとミリアムも、それぞれのエボから笑顔で手を振った。
ドロテアはクイーンズシルバーのエボⅠから、優しく、しかし力強い声で言った。
「皆さん、今日はお疲れ様です。安全に帰りなさいませ」
トゥデイの大きな警光灯が赤と青に回転を始め、
夜の大井埠頭は、墨東署とピクシス・マスールの合同取り締まりにより、静かに、しかし確実に平穏を取り戻しつつあった。
夏実はトゥデイの窓から身を乗り出し、豪快に叫んだ。
「公道レースは禁止よ!次にやったら、本気で逮捕しちゃうからな!」
美幸は静かに微笑みながら、トゥデイのアクセルを軽く吹かした。
「ええ……この街の夜は、私たちが守るわ」
大井埠頭周辺の公道。
夜の闇を切り裂くように、改造車のエンジン音が響き渡っていた。
チェイサー、マークⅡ、セドリック、グロリア、シルビア……走り屋たちの大群が、危険なドリフトを繰り返しながら公道レースを繰り広げていた。
ギャラリーたちが路肩に集まり、興奮した声で叫んでいた。
セドリックのドライバーがミラー越しに後方を確認し、怪訝な顔をした。
「ん? 何だ……」
隣を走るグロリアのドライバーが慌てて叫んだ。
「おい、後ろ!」
セドリックのドライバーが振り返り、目を疑った。
「え?……マジかよ……」
低く、重く、野性的なターボの唸りが迫ってきた。
リュシーがエボⅡの運転席から、赤い瞳を鋭く光らせて叫んだ。
「セド・グロか……悪いけど抜かせて貰う!」
グオオオオオッ!!
エボⅡが猛烈な加速で並走し、インを強引に突いた。
セドリックのドライバーが慌てて声を上げた。
「こ、此奴はエボⅡだ! スコーティアホワイト!」
グロリアのドライバーが叫んだ。
「エボⅠまで走ってるぞ!」
S13シルビアのドライバーが青ざめた。
「こ、こんなの勝てるかよ!」
セドリックのドライバーがハンドルを握りしめ、歯を食いしばった。
「あ!……クソ! こんなのアリかよ!」
S14シルビアのドライバーが悲鳴を上げた。
「ヤバいヤバい! エボⅢにイン取られた! もう無理だ!」
S15シルビアのドライバーが必死にアクセルを踏んだ。
「こっちもだ! エボⅣにやられた。アウトに入れねえ!」
マークⅡ、クレスタ、FC3SサバンナRX-7の大群も、次々とエボ軍団に抜かれ始めた。
リュシーのエボⅡ、ミリアムのエボⅤ、ハリエットのエボⅢ、ケイトのエボⅣ、ドロテアのエボⅠ——――ピクシス・マスールの五台のランサーエボリューションが、夜の埠頭道路を美しく、しかし容赦なく駆け抜けていく。
セドリックのドライバーが絶叫した。
「!」
リュシーはエボⅡの窓から顔を出し、冷たく言い放った。
「お前、下手クソだな。もう一度出直してこい!」
ハリエットがエボⅢから優雅に笑った。
「セドリックが泣きますよ。ぷぷぷ」
ケイトがエボⅣで並走しながら、明るく言った。
「…ごめんなさい。抜きます!」
ミリアムがモナコレッドのエボⅤで軽やかに追い抜きながら、元気よく手を振った。
「みんな、ごめんね~」
グロリアのドライバーが必死にハンドルを切りながら叫んだ。
「クソ! エボⅠにイン取られた! アウトに入れねえ! マジでヤバいって!!」
セドリックのドライバーが悔しそうに歯を食いしばった。
「旧式なのに何でそんなに速いんだよ! 戦闘力は健在ってかよ!!」
ドロテアはクイーンズシルバーのエボⅠから、優雅に声をかけた。
「ご機嫌よう。あなた、もう少し右に寄れば上手くイン突けますわよ」
セドリックのドライバーが悔しげに唸った。
「ぐぬぬ……!」
その頃、アリスト(JZS14型)の大群もエボ軍団に苦戦し、美幸のトゥデイに抜かれそうになっていた。
アリストのドライバーAが悲鳴を上げた。
「わあああああ!! 抜かれた!!!」
アリストのドライバーBが目を疑った。
「トゥデイだ! あれは……ミニパト!」
ガシャーン!
アリストのドライバーCが壁スレスレでスピンしそうになりながら叫んだ。
「うわああ!! やられた!!」
アリストのドライバーDが絶叫した。
「あのミニパト、40年前のクルマだろ!? 何がどうなってやがる!?」
アリストのドライバーEがアクセルを全開にしながら悔しげに言った。
「く……ダメだ! 追いつけない!! クソ!!」
セドリックのドライバーがトゥデイを見て、信じられないといった顔をした。
「ミニパト? あんな旧式で……ミニパトだぞ!! 何で、食いついてくるんだ!!?」グロリアのドライバーが諦めムードで叫んだ。
「俺、帰るよ! 捕まりたくねえ!!」
リュシーはエボⅡを加速させ、アンチラグを駆使して派手なバックファイアを吹き上げた。
「させるか!」
グロリアのドライバーが悲鳴を上げた。
「ダメだ! うわ、抜かれた!!」
セドリックのドライバーが絶望的に叫んだ。
「何が何でどうなってる? クソ! WRCの怪物に旧式のミニパト!? こんな筈じゃ……」
その時、夏実の声が響いた。
「そこのセドリック! 止まりなさい!」
セドリックのドライバーが悪態をつきながら、ハンドルを切った。
「邪道だが、あの目障りなミニパトをクラッシュ……」
突然、水色のEG6シビックが横から飛び込んできた。
リィズ・ホーエンシュタインの声が鋭く響いた。
「させないよ……!」
セドリックのドライバーが慌ててハンドルを切った。
「EG6!? ……ぶ、ぶつかる…!! うわあああああああ!!!」
EG6が完璧なブロックを入れ、セドリックの進路を封じた。
大井埠頭の夜の公道は、ピクシス・マスールのランエボ軍団と、トゥデイ、そしてリィズのEG6によって、走り屋たちの大群が次々と抜かれ、制圧されていく光景で埋め尽くされた。
リュシーはエボⅡの窓から顔を出し、赤い瞳で叫んだ。
「公道レースはここまでだ!みんな、素直に大人しくなれ!」
ハリエットがエボⅢから優雅に手を振り、黄金色の瞳で笑った。
「ふふ……ドライバーの皆さんもランエボの夜、楽しんでいただけましたか?」
ケイトとミリアムも、それぞれのエボから笑顔で手を振った。
ドロテアはクイーンズシルバーのエボⅠから、優しく、しかし力強い声で言った。
「ドライバーの皆さん、今日はお開きにしましょう。安全に帰りなさいませ」
美幸はトゥデイの運転席で眼鏡を押し上げ、静かに微笑んだ。
「この街の夜は、私たちが守るわ」
夏実はトゥデイの助手席から身を乗り出し、豪快に叫んだ。
「公道レースは禁止よ!次にやったら、本気で逮捕しちゃうからな!」
大井埠頭の夜風がランエボ軍団とトゥデイのエンジン音を優しく包み込んだ。
走り屋たちの大群は次々と減速し、今日の公道レースは、墨東署とピクシス・マスールの合同取り締まりによって、静かに、しかし確実に終わろうとしていた。
夏実はトゥデイの窓から顔を出し、満足げに笑った。
「よし! 一件落着!みんな、お疲れ様!」
美幸はトゥデイのボンネットを優しく撫でながら、静かに呟いた。
「ええ……今日も、無事でよかったわ」
2026年の夏の夜、大井埠頭の公道レース文化は伝説のミニパトとランエボ軍団によって、
今日も強く、静かに抑え込まれた。
フルスロットルで、逮捕しちゃうぞ——!
(走り屋の夢も一緒に)