2026年、夏の快晴の日。
備北ハイランドサーキット。
第二回おつまーる走当日。
サーキットは朝から大勢の走り屋とギャラリーで埋め尽くされ、エンジン音と興奮したざわめきが空気を震わせていた。
アナウンスが場内に響き渡った。
《今からフリー走行の前に、ピクシス・マスールによるデモラン走行です。是非ご覧下さい!》
ピットレーンに並ぶ五台のランサーエボリューション。
クイーンズシルバーのエボⅠを先頭に、鮮やかなカラーリングが朝陽を浴びて輝いていた。ドロテアは無線をオンにし、紫色の瞳を鋭く輝かせて言った。
「この日を待っていましたわ。――リュシー、ハリエット、ケイト、ミリアム。準備はよろしいでしょうか?」
リュシーが力強く応じた。
「いつでも行けるぞ」
ハリエットが優雅に続けた。
「同じく」
ケイトが少し緊張しながらも明るく。
「はい!」
ミリアムが元気いっぱいに叫んだ。
「OKだよ!」
ドロテアは紫の瞳を細め、凛とした声で号令をかけた。
「観客席にいる人達が見ていますわ。恥をかくわけにはいきません――各車、フォーメーション準備!ハンマーヘッドワンで一気に駆け走ります!わたくしに……続けぇええええええええ!!」
五台のエボリューションが一斉にエンジンを咆哮させ、美しいフォーメーションを組んでピットレーンから飛び出した。
一方、セーフティーカーとしてコースに上がったトゥデイでは——夏実は助手席で興奮気味に叫んだ。
「美幸、セーフティーカーの準備OK?」
美幸はハンドルを握り、眼鏡の奥で静かに微笑んだ。
「勿論! しっかり捕まってて!」
白黒のトゥデイが先導し、その後ろをピクシス・マスールのエボ軍団が鮮やかに追走する。
観客席からは大歓声が上がった。
頼子が双眼鏡を構えながら興奮した。
「おお! ドロテアさん達のランエボ集団だ!」
葵が隣で静かに微笑んだ。
「気合い入ってますね」
中嶋は腕を組み、感心したように呟いた。
「ホント、いつ見ても凄いよな……」
花蝶課長は観客席の最前列に座り、新聞を畳みながら静かに言った。
「おつまーる走……面白い見世物だな。結構人数いるなぁ、参加者。――――これが墨東署交通課課長としての俺が最後に担う仕事だな……」
課長の横顔には、どこか感慨深い表情が浮かんでいた。
コース上では、ドロテアを先頭とした五台のエボリューションが完璧なフォーメーションを保ちながら高速で駆け抜けていく。
その後ろを、セーフティーカー仕様に改造されたトゥデイが白と黒のボディを輝かせながら堂々と先導していた。
観客席は熱狂に包まれ、第二回おつまーる走の幕が華々しく切って落とされようとしていた。