うわっ、前からタケノコが!!   作:七夕ナタ

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 感想、評価、ここ好き、誤字報告ありがとうございます。目を通しては1人でニマニマしてる今日この頃…!

 大変悲しいお知らせがございます。
 私は「超かぐや姫!」のBlu-ray 特装限定版を予約することができませんでした…!!!

 そして嬉しいお知らせもございます。
 公式が対応してくれた事により「超かぐや姫!」Blu-ray 特装限定版を増産を検討してくれているようですね、やったー!!







えっ! 今からでも入れる保険があるとですか!?

 

 

 

22:名無しの転生者さん

 そういや、おまいらの転生先の世界ってどこなん? イッチの話は色々と聞いてたが、本人不在の間に暇つぶしでもしようや。因みに俺は原作とかはないファンタジー異世界で冒険者の受付やってる、チートはない

 

23:名無しの転生者さん

 ええやん、ワイは原作なしのファンタジー要素ありな近未来な日本でニートやってるで。それなりのチートはあるから本気出せばそこそこ強いと信じてる。魔王が復活したみたいだけど、勇者がなんとかしてくれるでしょ

 

24:名無しの転生者さん

 何やってんだ働けニート

 

25:名無しの転生者さん

 なんだ、穀潰しか…。お前が勇者になるんだよっ!

 

26:名無しの転生者さん

 ワイ、転生先は原作ありで多分ホラゲー? 元ネタはわからんが謎の怪異にしょっちゅう追いかけられてる、チートでもらったスタンド能力で無双できるかと思ったけど全然そんなことなかったぞい。

 

27:名無しの転生者さん

 俺は普通に現代日本って感じかな、偶に変な怪人が出現したと思ったら颯爽とヒーローが現れて助けてもらったりしてる。つい最近、誘拐され改造手術でお菓子な仮面ライダーにされるところだったから怪人ボコって逃げてきた…やめてくれ、俺はチートもない一般人のままがいいんだ…!

 

28:名無しの転生者さん

 うへー、なんか色々と苦労してそうな人が多いんだな

 

29:名無しの転生者さん

 >>27 チートなしの素の状態で怪人ボコして逃げてきたってことか、何者だよアンタ…こわっ

 

30:名無しの転生者さん

 転生先はゼンゼロで知能構造体やってます。気がついたら『ビッグ・シード』サイズくらいのクスィー似のロボットになってました。一緒に世直しテロしてくれそうな将来有望なパイロット枠を探して今日もホロウで暴れてます

 

31:名無しの転生者さん

 アクナイ世界で鉱石病にビクビクして絶望してたけどどうやら『ンィー"』のほうでちょっと安心してる。今日も今日とても管理人ちゃんやペリペリの黒スパッツを眺めて癒されてます

 

32:名無しの転生者さん

 ワイ、ブルアカにTS美少女転生した一般生徒です。推し生徒を口説き落としてイチャイチャ百合プレイをしようと思っとたのですが、絶体絶命のピンチに助けてくれた先生♂にトゥンクして猛アタックを仕掛けてます。

 でもどれだけ必死にアプローチしてデートしたり仲良くなっても進展は見られなくて、もう先生をブチ◯して既成事実を作った方が早いんじゃないかと本気でマヨッテマス……ッ

 

33:名無しの転生者さん

 ひょえ〜、たまげたなぁ。このスレ意外とヤバいやつばっかじゃん…

 

34:名無しの転生者さん

 先生の貞操狙われてて草。

 プロシュートの兄貴だって言ってただろ?『ブチ◯すと心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!』って偉大な名言を残してくれてたじゃないか、迷ったならやっちゃえばいいのさ

 

35:名無しの転生者さん

 ワイもブルアカ転生者一般ロボット♂。先生の貞操を狙うTS美少女生徒に心当たりがあって震えてる。え、もしかしてワイとお前同じ世界線のブルアカ世界におるんか?(戦慄)

 

36:一般ナナシビト

 俺がちょっと席を外してる間になんの話してんだお前ら…? というか可哀想だから先生を襲うのは勘弁してやれ、生徒に手を出すにはどう考えても犯罪だろうが。そういうのはもっとこう、段階を踏んだ健全なお付き合いをだな…

 >>34 ふざけんな、プロシュートの兄貴がそんなこと言うわけないだろうが。外野から唆してるんじゃないよ

 

37:名無しの転生者さん

 お、イッチおかえりー

 

38:名無しの転生者さん

 喜べイッチ、ここは魔物の巣窟だゾ

 

39:名無しの転生者さん

 >>36 キヴォトスでは合法ですっ!!

 うっさい、ヤると決めたらヤるんですよ! こちとら恋愛弱者だからもうどうすればいいのかわからんのですよ! どうせクソボケ体質の先生やイッチさんも一回ブチ◯して分からせないと理解しないタイプでしょうが、釣った魚に餌を与えずに泳がせて悶々とさせておく方が悪いんですよ! よっしゃ、今から先生を舐り尽くしに行ってくりゅっっ!!!

 

40:名無しの転生者さん

 逃げろ先生っ、頼むから逃げてくれ先生…ッ!!

 

41:名無しの転生者さん

 ブチ◯すとか美少女生徒が連呼するんじゃないよ

 

42:名無しの転生者さん

 すまねえ顔も名前も知らない先生、俺たちはとんでもねえ怪物をキヴォトスに解き放ってしまったかもしれない

 

43:名無しの転生者さん

 >>35 お前あの化け物美少女と同じ世界線のブルアカ世界なんだろ? どうにかしてこいって…! 暴走したTS美少女に性的な意味で食い散らかされる先生の姿なんて見たくねえよっ!

 

44:名無しの転生者さん

 >>43 あ、たった今シャーレが爆発した。なんかヤバそうなんで先生の貞操が先に奪われる前に止めてきますわ……なんだこの雌猫、先生に手を出そうなんざ100年早いわ。僕のだぞッッッ!!

 

45:名無しの転生者さん

 おっとマズイな、コイツもコイツで先生のケツ狙ってたゾ

 

46:名無しの転生者さん

 だ、大丈夫だきっと、他の学園の生徒ちゃんたちがなんとかしてくれるだろうし……うん、多分

 

47:一般ナナシビト

 よくわからんが、名も知らぬ先生の貞操の無事を祈りつつ近況報告していくで。それと俺は別にクソボケじゃないから、何度も言わせるなよ?

 えー、月から来たわがままかぐや姫とそれに振り回される限界苦学生のコンビである『かぐやいろPチャンネル』ですが、順調にというか順調過ぎるくらいにファンと数字をぐんぐんと伸ばして行ってますね、はい。

 

48:名無しの転生者さん

 こ、このまま始めるんかイッチ

 

49:名無しの転生者さん

 正直、シャーレの先生の貞操というかケツというか、そっちが色んな意味で無事なのか心配過ぎて話が入ってこないよイッチィ!

 

50:名無しの転生者さん

 ゲテモノしかいなかったんだなこの掲示板

 

51:名無しの転生者さん

 >>50 なに言ってんだ、俺やお前、イッチも含めてみんな仲間だぞ?

 

52:名無しの転生者さん

 はい、やめやめ。汚い話はここまでだ、これ以上続けるなら別のスレ行ってきなさい。俺はイッチから、かぐやちゃんや彩葉ちゃんにヤチヨちゃんの話を聞いて癒されにここに来てるの、シャーレの先生の純ケツはどうでもいいの!

 

53:名無しの転生者さん

 ……せやな、かぐやちゃんたちの話しよっか

 

54:名無しの転生者さん

 前回は、なんだっけ? イッチがかぐやちゃんの配信に映り込んで顔バレしちゃってそれを嘆いててんだっけか? あれからどうなったん、近況プリィィズ!

 

55:名無しの転生者さん

 配信は嫌だ、ライバーにはならないって言ってたのに、とうとうそちらの道へ引き摺り込まれてしまったな。まぁ、元々ブラックオニキスの方には正体隠しながら出演してたっぽいし、遅かれ早かれだったんだろ

 

56:名無しの転生者さん

 よかったなイッチ、これで気兼ねなくヤッチョちゃんとコラボ配信できるぞ

 

57:一般ナナシビト

 ぐ、ぐぬぬ…配信はしません! コラボ配信もしません! というか個人チャンネルの開設だってやらないから! 俺はライバーには絶対にならないからっ!!

 

58:名無しの転生者さん

 でもかぐやちゃんの配信で顔バレして以降、かぐやちゃんに引きずられてちょくちょく配信に出てるんでしょ?

 

59:名無しの転生者さん

 かぐやちゃんと一緒にクソデカペットボトルロケット自作して遊んでたやんイッチ。財力にモノを言わせた無駄にクオリティとコスト高そうなM202風ペットボトルロケット使ってはしゃいでたじゃんイッチ

 

60:名無しの転生者さん

 お、『かぐやいろPチャンネル』に準レギュラーな感じで現れる謎の金髪イケメンお兄さんじゃん! 河川敷でペットボトルロケット使って遊んでるかぐやちゃんの横で、夢中になって水切りして遊んでたら投げた石がパワーに耐えきれず爆発してたお兄さんじゃん!

 

61:名無しの転生者さん

 そして帰宅後、画面外の彩葉ちゃんからお叱りを受けてかぐやちゃんと一緒に仲良く正座させられてたお兄さんじゃないか!

 

62:名無しの転生者さん

 もう諦めて素直にライバーデビューした方が早いだろこれ

 

63:名無しの転生者さん

 イッチくんはさ、もっと手心というか、肉体的にもちゃんと力加減をしてくれないとだな、英雄パワーに耐えきれず周りの物がどんどん壊れていっちゃうんだよね…

 

64:名無しの転生者さん

 哀しきモンスターで草

 

65:名無しの転生者さん

 かぐやちゃんのファンからもフィジカルつよつよお兄さんとして認識されてて草なんよ。自分がチートボディだってことをちゃんと自覚してもろて

 

66:一般ナナシビト

 ちゃうねん、こんな筈じゃなかったんや…! 俺はただ、駄々を捏ねるかぐやに1日か2日付き合ってやれば満足してもう誘ってこないだろって思ってたんだ。どうせそのうち俺じゃなくて酒寄の方に面倒ごとを押し付けられるだろうって思ってたのに…っ!!

 

67:名無しの転生者さん

 面倒ごとだってわかってるなら年下の彩葉ちゃんに押し付けようとすんな

 

68:名無しの転生者さん

 その程度でかぐや姫ちゃんが満足するわけないでしょうがっ! 今のかぐやちゃんはね、目に映る全ての物が新鮮なのよ! 初めてだから配信のことなんてわからないし、思いついた面白そうなことは片っ端からやっていくのよ! だから自撮りだってするしメイクだってダンスだってしちゃうのよ! その新鮮で面白い事を、彩葉ちゃんやイッチたちと一緒にやりたいと思うのは当然のことじゃないのよッ!

 それとタカシ! いつまでもネットの友達と遊んでないでご飯食べちゃいなさい!!

 

69:名無しの転生者さん

 お、オカン……!

 

70:名無しの転生者さん

 ツクヨミでゲリラでライブしてるかぐやちゃんも可愛いよね。その横に居るスキン姿のいろPちゃんも可愛い……その後ろで看板持って佇んでるキモいスキン着てるやつは見なかった事にしよっか

 

71:名無しの転生者さん

 ライブ鑑賞してる忠犬オタ公ちゃんと目があった瞬間、イッチが無言でパントマイムとダンスやり始めた時は腹捩れて死ぬかと思った。お前それ『NO MORE映画泥棒』の動きだろ

 

72:名無しの転生者さん

 なんで一生懸命ライブしてる可愛いかぐやちゃんよりも、その後ろでキレッキレのダンスしてるキモいスキンのゲテモノの方がバズってるんだよ…!

 

73:名無しの転生者さん

 キレッキレッのダンスしてる所為で稼働する首と目ん玉のパーツの動きがすごい事になってたもんな、かぐやのライブを邪魔しないように全力で笑いを堪えていた忠犬オタ公が可哀想だった

 

74:名無しの転生者さん

 まあ、隣でそれを直視した彩葉ちゃんはイッチの所為で笑いを堪えきれず途中伴奏ミスってたけど…、プルプル震えながら過呼吸気味になってる彩葉ちゃんが可愛かったからヨシとするかっ!

 

75:名無しの転生者さん

 なんだかんだ言いつつ、実は結構ノリノリだろイッチ

 

76:一般ナナシビト

 ナイナイ、ソンナコトナイデスネ。

 ライバーデビューは嫌だけど、単純に請け負った仕事は全力でこなしてるだけだから

 

77:名無しの転生者さん

 まあでも、彩葉ちゃんや、かぐやちゃんにばっかり構ってちゃダメだぞ? そんなことしてたら後で痛い目見るにはイッチなんだから

 

78:名無しの転生者さん

 ……あー(察し)

 

79:名無しの転生者さん

 うーん、南無三ッ!

 

80:名無しの転生者さん

 >>44 どうも、シャーレの先生は純ケツは無事守り通しました。そして僕とTS美少女は取り押さえられ仲良くヴァルキューレの生徒に連行されています……ふふふ、またお会いしましょう! Adiós!

 

81:名無しの転生者さん

 まだやってたんかお前ら…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 

 

 「ただいま〜」

 

 

 一つの星に留まり続けることのないナナシビトだというのに、ここ数年で当たり前のように慣れ親しんでしまった、自分が住むタワーマンションの扉を開けて玄関を潜り中に入る。星間を跨ぐ列車に乗車して旅を続けていた自分としては、どうにも不思議な感覚に陥ってしまう。

 

 ───地球での、ヤチヨたちとの平穏な暮らしに不満があるわけではない。ただそれでも少しだけ、共に冒険の旅をしていた列車にいるみんなのことが恋しくなってしまう。

 

 ……これがホームシックというやつなのだろうか?

 

 そんなことを頭の片隅で考えながらため息を吐く。

 

 いつも通り、バイト終わりの酒寄と少しだけ寄り道をしながら家まで送り届けた帰り道。酒寄の住むアパートにはかぐやという、新たな住人が増えたことによってどこか寂れた印象のあった部屋は賑やかなものとなっていた。

 

 かぐやの破天荒な性格に振り回されながらも、それは酒寄にとっても良い変化を与える兆しとなっている気もする。

 

 かぐやという好奇心旺盛な大型犬に引き摺り回される姿に少し同情しながらも、ヤチヨと共に旅をして味わって来た俺としては同じ苦労人が増えてくれたようで内心ではガッツポーズをしてたりするが。

 

 

 「ん。戻ったのかリン、おかえり」

 

 「おぉ! もしかして待っててくれたのかFUSHI わざわざありがとうな。おー、よしよし!」

 

 「フン、犬扱いするな。もっと撫でていいぞ!」

 

 

 靴を脱いで家に上がれば、すぐ近くにはクッションの上へ丸まっていたFUSHIの姿があった。いつもならリビングのソファの上で丸まっていることが多いのだが、今回はわざわざクッションを玄関に運んできてお出迎えしてくれたようだ。

 

 あ、ちなみにこの受肉したFUSHIなんだが普通に喋れる。流石に人前だとお利口な犬のフリをしてるが、家の中であれば人目を気にする必要もないので普通に喋ってる。

 

 足元に寄って来た白い犬の姿をしたFUSHIをクシャクシャとかき回すように撫でてやれば、嫌がる素振りも見せずに気持ち良さそうに小さく鳴き声をもらしてる。

 

 そういやFUSHIってなんの犬種なんだろうか? 知識もなく犬種にはそこまで詳しくないが、小さい姿を見るに多分コーギーとか豆柴あたりなんだろうか。今度ヤチヨに聞いてみるとしよう。

 

 しばらく玄関でFUSHIの毛並みを堪能していると、されるがままにウットリしていたFUSHIがハッと何かを思い出したように意識を覚醒させた。

 

 何やら、まるで救助を待ち侘びていたような表情でこっちを見て来ている。

 

 

 「そ、そうだったリン…!」

 

 「どうした、もしかして腹減ったか? それだったら今から何か作るとするが」

 

 「それは後でありがたく頂くとしてだな、その…いや、今すぐにリビングへ行ってこい。それから色々と済んだのなら、呼んでくれ。それまで待ってる」

 

 「ん? 待ってるってここでか? よくわからんが、ここよりもリビングの方が涼しいだろ」

 

 「いいから早く行けこの朴念仁!!」

 

 「朴念仁……っ!?

 

 

 なんてこと言うんだこのキュートなワンコは…!?

 

 なぜか足元で頭突きをかまして来るFUSHIに背を押されるようにして玄関からリビングへと向かう。いったい何事だと言うのだ、説明を求めようにも既にFUSHIは玄関に置いてあるクッションの上へ戻ると丸くなってしまう。

 

 その視線が物語っている、「さっさと逝け」と…!

 

 あらやだ、そんな姿も大変可愛いらしい。

 因みにあのクッションはいつぞやにウミウシ状態だったヤチヨへ俺が渡したものだ。結局使われることはなかったのだが、“保存”して残しておいた為今はFUSHIが使っている。わりと気にってくれているようで何よりだ。

 

 とりあえず、状況はよくわからないままリビングへと向かい……そして何となく状況を把握した。

 

 

 「んん〜?……あ〜、リンだー! おかえり〜っ!!

 

 「あ、ああ。ただいま……!?」

 

 「えへへ、おかえりのギュ〜…!

 

 

 リビングのソファでウトウトと、船を漕いでヤチヨが俺の姿を見るなりパァっと表情を花開かせると、ふらふらしたどこか覚束ない足取りでこちらへと駆け寄り遠慮なく抱きついて来る。

 

 ごめん、やっぱ状況がよくわかんないんだけど。

 

 頭をグリグリと押し付けて来るヤチヨを受け止めながら、意味がわからないこの状況を整理しようと部屋を見渡してみる……というか力強っ、めちゃくちゃ抱きついて来るじゃん。このまま鯖折りされそうで怖いんですけど……!?

 

 離れる様子を見せないヤチヨの背を、トントンとあやすように押しながら先ほどまで彼女が座っていたソファと近くにあるテーブルの上の見覚えがある物が視界に入り、今度こそ状況を理解した。

 

 ソファの近くに転がる空き缶と、テーブルの上で鎮座する中途半端に量が減った鮮やかな色ガラスの一升瓶。そしてどこか様子のおかしなヤチヨと、白い頬を上気させる彼女から僅かに香る()()()()()()()()

 

 

 「お前、もしかしなくても酔ってる……?」

 

 「───わたしは、ヒッ…別によっれらいもーん! なにさー、ヤッチョのことぉ〜、酔っ払いのおばあちゃんらと思ってるんでしょー?」

 

 「……いや酔ってるじゃん!

 

 「ええ〜? そんなことないってばぁ、私は全然元気だよぉ? んー、ヤオヨロ〜!ぷっ、あははは!……はれ、リンが2人いる……? んふー、まあいいや、両方ともわらしのらもーん!」

 

 「……マジか」

 

 

 マジか。

 え、マジかお前。何だそのヘニョヘニョな様子は、もう完全に出来上がってるというか呂律が回らないくらいゴリゴリに酔ってますやん。どうしてこんな事になってるんだ? 恐らく玄関に居たFUSHIも、リビングから逃げるようにして、あそこで俺のことを待っていたのか。

 

 てか酒くさ、どれだけ飲んだこいつ。

 

 半分ほど量の減っている一升瓶を手に取り、ラベルを確認する。やっぱりというか、ヤチヨが飲んだであろうお酒は以前俺が“お土産用”として購入して置いていた物だった。

 

 この地球を出て、群星の銀河の世界へと帰った時にでもと世話になっていた人々や友人、例を上げるとすれば『仙舟の将軍たち』や『巡海レンジャー』、『星核ハンター』や姫子にヴェルトという列車の大人たちにでも渡そうと思い用意していたお土産の数々。

 

 あとは、時が来れば一緒に飲めるだろうとオンパロス組のみんなにもいくつか用意していた。

 

 ヤチヨは、どうやらそれを飲んでしまったようだ。

 

 いや、勝手に飲まれてしまった事については、何も言わずに置きっぱにしていた俺が悪いのでなんとも思わないのだが……どうして普段お酒を飲まないようなヤチヨが、こんなベロベロになるまで飲んでしまっているのか、のほうが問題だろう。

 

 俺もヤチヨも普段お酒を飲むことも少ない、というのも俺はチートボディの所為で毒耐性と言うか、アルコールで酔うということがあまりないのだ。まあ、度数がヤバいくらい高いなら流石に酔うが……。

 

 なので酔いもしない酒よりも、普通にジュースのほうが美味しいし好きだったりする。

 

 

 「……ん!」

 

 「ど、どうした……???」

 

 「おかわり!!

 

 「いや、もうそれくらいにしといたほうがいいんじゃないか」

 

 「やらぁ〜! まだ飲むのー! リンも一緒に……ん〜? あれ、リンなんか太った〜? ふとましくなったねっ!

 

 「どこ見て喋ってんだこら。それは俺じゃなくてお前が買った謎の置物だぞ」

 

 

 とりあえず、お酒を取り上げようとするがヤチヨが一升瓶を抱えて逃げるように距離をとってしまう。それどころか、部屋の隅に置いてあったモアイ像というか謎の部族が持ってそうな、意味不明な置物をペタペタと触って喋り出す始末だ。

 

 というかこいつ、結構飲んでるな? 足元を見てみれば転がってた空き缶もジュースじゃなくてお酒だし、あの一升瓶以外にもワインボトルも転がってるぞこれ。

 

 その中には俺がお土産用として用意していたものだけではなく、恐らく自分で買って来たであろう物が混じり転がっていた。

 

 こいつ、結構弱いくせに割とグビグビ飲めるタイプなのか? いや、ヘルタ製の『もと光る竹』の擬態で得た肉体が結構優秀だったりするのか? よくわからんが、いまとりあえずヤチヨを落ち着かせるほうが先決か。

 

 

 「はぁ〜……わかった、一緒に飲もうな。だからそんなフラフラの状態で歩き回らずに、大人しくそこに座ってくれ。転んだりしたら危ないだろ、ほらこっち来て座れ」

 

 「だからぁ、ヤッチョは…ひゅっ、酔ってないんらってばー! うーん、ヤッチョはねぇ? 怒ってるんだあらぁ! そこにぃ、おろなしく座りなさいこの朴念仁……!

 

 「いやだから、座るべきなのはお前なんだって」

 

 「ぁ……こぉのお酒ね〜、桃みたいな味がして美味しいんらよぉ? リンも飲むぅ? グラス持ってきてあげるっ!」

 

 「はいはい、俺の分は自分で用意するから待ってろ。ついでに水も持って来るから大人しくしててくれ……!」

 

 

 駄目だこいつ…早く何とかしないと…!

 どうしてこんなになるまで放っておいたんだFUSHI…! いや、どうにかしようとしてたが手遅れだったのか? だから俺が帰って来た時に助けを求めるような顔をしてたのか。

 

 酔ってる所為か、会話も噛み合わず、テンションのおかしいヤチヨをなんとかソファへ座らせる。そしてキッチンのほうへ行き水の入ったグラスを取りに行こうと腰を上げるが。

 

 

 「「………」」

 

 

 ……なんでついて来てんだよ。

 軽く振り返ってみれば、そこには服の裾を掴みながらニコニコと楽しそうに後ろを歩いて来てるヤチヨの姿がある。大人しくしとけっての、転んだりしたらマジで危ないぞ……いや、転んだとしても床にぶつかる前に助けるけどさぁ。

 

 

 「ほら水、とりあえずこれ飲んどけ」

 

 「やー! やだもん、ヤチヨは今飲みたい気分らのぉ〜!」

 

 「駄々っ子か貴様は…! ほら、その酒瓶放しなさい。抵抗するんじゃありません!」

 

 「ヤダー! リンと一緒にのむのー!」

 

 「酒は飲んでも飲まれるなって言うでしょうがっ!」

 

 「ヤダ!やだやだやだ!ヤラ〜!!」

 

 

 こ、こいつ…!

 8000歳の癖に、お菓子コーナーで駄々を捏ねるガキみたいな拗ね方するんじゃないよ! どうにか酒瓶を取り上げようとするが、瓶を抱きしめて離さない全力拒否の姿勢を示すヤチヨに呆れてため息も出ない。

 

 

 「うぅ…お願い、リン。今日だけでも一緒に飲んだくれよう? ヤッチョ……一緒にお酒が飲みたい……な?」

 

 「可愛い顔してとんでもないおねだりしてんなお前…っ…はぁ、わかったよ。ちょっとだけだぞ……」

 

 「やったー! ヤッチョのおすすめはねぇ、んー? これ美味しかったよ!」

 

 

 もうだめだこりゃ、酒を奪い取るよりも酔い潰して眠らせたほうが早いんじゃないかこれ? 今度から絶対に酒は飲ませないようにしよう、家の中でひっそりと晩酌してるだけならまだしも、外でこんな状態になったりしたらたまったもんじゃない。

 

 酒を飲む前から頭が痛くなって来た。

 仕方なくグラスを受け取ると、そこになみなみとアルコール成分たっぷりの液体が注がれる。何が楽しいのか、ヤチヨはニコニコとしながら酒を注ぎ終わったグラスを渡して来る。

 

 とりあえず、グラスを受け取りソファへ腰を下ろそうとするが

 

 

 「誰がソファに座っていいなんて言ったのかにゃ〜。言ったよね、ヤチヨはいますごく怒ってるんだよ? とりあえずリンは床に座ってね? でも一緒にお酒は飲もうね?

 

 「ア、ハイ……???」

 

 「いいですかぁ? …ひっ…よく聞いてね、ヤッチョはですねー、いますっごく怒ってます! なんでかわかりますか?…あ、これおいしー」

 

 

 え、俺が今からお説教される流れなんですか? なんで? というかこいつの情緒マジでどうなってんだ? もう何が何だか、わけがわかんない事になってるんですけど。

 

 ソファに座ったまま、ジトォ〜っと視線を向けて来るヤチヨ。もうよくわかんないが、ひとまず彼女の指示に従って床に腰を下ろす。

 

 

 「よいしょ……えへへー、リンあったかいねぇ」

 

 

 いや、お前も床に座るんかい。

 もうナナシビトわかんない。これどういう状況なの? 何がしたいのこいつ? もうどうすればいいのかナナシビトわかんないよ!?

 

 隣に視線を向けてみれば、ぽわぽわとした雰囲気のまま酒の入ったグラスを片手に、のしっとヤチヨがこちらに寄りかかるように床へ腰を下ろしている。

 

 ……いや、マジでどういう状況なんだこれは???

 

 

 「ヒック……さっきもいっらようにですねー! やっちょはですねぇ、とっても怒ってるんれすよぉ! どうしてでしょー!」

 

 「そ、そうか…?」

 

 「リンはさぁ、配信は絶対にしないー、なんて言ってたのにさぁ! かぐやと彩葉と一緒に楽しそうに配信なんてしちゃってさー! ヤッチョをほったらかしにして他の女の子と遊ぶのはどうなのかにゃって思っちゃうわけなんですよ〜?」

 

 「……あー、すまん?」

 

 「みんなして“かぐや”を甘やかして、8000歳のおばあちゃんに興味なんてないもんねぇ、キラキラぴちぴちのかぐや姫のほうが好きなんでしょ?……私だって彩葉やリンと一緒に配信したいのにっ」

 

 

 ───私だけが見つけたナナシビトなのに

 

 そんな小さな呟きが聞こえた。

 

 ……ああ、なるほど。

 なんとなく、なぜヤチヨがここまで酔い潰れるほどにお酒を飲んでいたのか、その理由がわかった気がした。以前、ヤチヨがかぐやに対して苦手意識があるのか、なんて思っていたがそれも違うのだろう。

 

 過去の自分を羨む気持ちもあったのだろうが、それとは別の感情も含め、かつての自分があまりにも()()()()逃げるように距離をとっていたんだろう…そんな気がする。

 

 以前、ヤチヨがかぐやにパパやら何やらと、ふざけたことを吹き込んでいたが、あの会話のやり取りには()()()()があった。今にも泣きそうな顔で震える声で言葉を紡いでいたヤチヨの横顔を覚えている。

 

 

 『───ねえ、“かぐや”、よく聞いてね?……この先、良い事も悪い事も沢山あって泣いちゃいそうになるかもしれないけど。どんな孤独な道のりでも、楽しかったなって美しい思い出の数々がきっとあなたの足元を照らしてくれるから、大丈夫っ、大丈夫だから……っ!』

 

 

 その言葉を贈られたかぐやは、意味を理解できずに首を傾げて、泣いてしまいそうなヤチヨを心配していたが……その言葉を隣で聞いていた俺にはなんとなく理由がわかっていた。

 

 きっとこれから、あの小さなかぐや姫が辿る事になる輪廻には俺はいないのだろう。なにせヤチヨが酒寄彩葉と再会する為に過去へ戻ることを決意した前の輪廻では、俺という()()()は存在していなかったと聞いている。

 

 元々、俺はこの世界の人間ではない完全な部外者だ。かぐやが辿る次の輪廻で、この世界が“正しい形”に戻ろうとするならば、そこに俺の姿はないはずだ。つまり、あの小さなかぐや姫はあの孤独な8000年という歳月を部外者からの助けもなく自力で乗り越えなければならない。

 

 ……ヤチヨの様子から察するに、その事に対しての負い目でも感じているのだろう。かぐやにとっても酷な話ではあるが、それが本来のあるべき物語なのだ。

 

 そりゃあ、この先の不安や罪悪感やら、色々なモノに押しつぶされそうになって、やけ酒したくもなるか。一緒にいたというのに、それに気がつけなかった事に申し訳なく思う。

 

 

 「なあ、かぐや

 

 「っ……なにー? かぐやだよ〜!」

 

 「……いや、なんでもない」

 

 「んー?……ねえ、リン」

 

 「どうした〜? かぐや」

 

 「えへへ、呼んだだけ〜!」

 

 

 

 その名を呼んでやれば、少し驚いたような顔をした後、嬉しそうに笑いながらグリグリと頭を擦り付けて来る。戯れるように甘えてくる姿に「犬かこいつ」なんて思いながらも、その絹のような綺麗な白い髪に優しく指を通して撫でてやる。

 

 もしもこの子が、彼女たちが……定められた輪廻の、この先の運命(ものがたり)に違う結末を望むなら、その時はちょっと自分が()()をしてやろうと密かに決意する。

 

 それを成し遂げられるだけの力は、既にもらっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふわぁ、ンン……リンってかっこいいよね」

 「ありがとう。そっちこそべっぴんさんだよ」

 「ヒック……う゛ー、リンってクソボケだよね。ちゅーする?

 「会話に脈略が無さすぎるだろお前、ビックリだよ。それとチュウはしません、酒寄として来なさい…!」

 「もちろん彩葉ともするっ!……んー、じゃあエッチなことは?

 「酒寄としてきなさいっ……酔った勢いで女の子が変なこと言うんじゃありません!」

 「もちろん彩葉ともするっ! でもリンってばずっと一緒にいるのに全然手を出してくれないし、ヤッチョはいつでもうぇるかむなんだよ〜?」

 「酔ってる間は無敵かお前…普段のヘタレっぷりはどこいった…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 






 ※この後寝落ちしますが、酔ってる間のタガが外れた記憶はしっかり残っているので、翌朝には顔を真っ赤にして逃げ出します。





執筆中その作品の用語とか設定を使う際に、なんとなく気になりました。

  • 『超かぐ』も『スタレ』も知ってる!
  • 超かぐや姫!しか知らんで!
  • 崩壊:スターレイルしか知らんで!
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