うわっ、前からタケノコが!!   作:七夕ナタ

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 感想、評価、お気に入り、ここ好き、誤字報告いつもありがとうございます。

 すり抜けからの本天井枠で新姫子狙おうか、緋英を凸るか悩んだ結果、緋英が1凸しました。いえーい

 あと最後のシーンでちょっと時間飛びます。そこは次回、主人公視点で補完しながら進めていきます。
 
 後でこっそり修正するかも




じゅげむじゅげむ5秒でブチギレ…!?

 

 

 

 かぐやの快進撃は止まることを知らなかった。

 美容系インフルエンサー『ROKA』と、グルメインフルエンサーの『まみまみ』、としても活動する芦花と真実、2人ともファン数を十万人以上は獲得している人気インフルエンサーだ。

 

 海へ遊びに行ったあの日以降、そんな人気インフルエンサー2人から後押しを受け、『かぐやいろPチャンネル』の注目度はうなぎのぼりに高まっていた。気がつけば、どんどん増えていく数字に目眩がしたくらいだ…。

 

 まあ、そんなかぐやの活動を他所に、私は勉強とアルバイトの日々へ戻っているのだが。

 

 かぐやはというと、配信のモチベーションが青天井とでもいうべきか、ブチ上がったテンションのまま今まで以上のハイペースで動画やら配信やらと、活動頻度を高めていっている。

 

 その内容としては、よくある激辛食品実食動画、恵方巻の一口食べ切りチャレンジ、さらには以前自作したペットボトルバズーカの強化計画といった……いや、変な動画ばっかり上げてるなあ、もう。 

 

 ライバーってゲーム配信とかがメインじゃないのか? 謎に活動を広げていくかぐやへ、「普通に歌枠配信とかやらないの?」なんて聞いてしまった私は敗北者だ。

 

 なにせその後、かぐやから「じゃあ、彩葉演奏してぇ〜?」なんて簡単に予想できたであろう返事を予期することができなかったのだから。

 

 や、やらないから。

 なんて黙りを決め込んで拒絶する意思をポーズとして露わにしても、ニヤニヤと笑みを浮かべた小悪魔が恐ろしい武器を片手に這い寄ってくるのだ。

 

 

 「彩葉、今日の夕飯はビーフシチューだよー。ち・な・み・にぃ、ななな、なんと! 明日の歌枠配信いろPが三十分伴奏してくれたら、百五十時間コトコト煮込んだタンシチューにアップグレードされるけどぉ……どうする?」

 

 

 などと、その日の夕食を賄いで済ませてしまう苦学生なら…いや、腹ペコ人類なら到底拒否することができないような、げに恐ろしい取引を持ちかけてくるのだ。うぐぐ、キッチンからいい香りが漂ってくる……!

 

 お、美味しそう……って違う!

 というか、百五十時間もかかってたら今日の夕食にはならないじゃんそれ。そもそも、私じゃなくてほぼレギュラーと化してる先輩の方に声を掛けて一緒に配信すればいいじゃん……ジュルリ。

 

 

 「うめえ…!」

 

 「でしょでしょ! おかわりもあるからね! ふふーん! かぐやの料理が一番なんだから、まかしとき!」

 

 「チヨともいい勝負…いや、好みの味付けで言えばあっちの方が好きかも…?」

 

 「え゛え゛ぇ゛ぇぇ!? ヤダー! かぐやの作ったシチューの方が一番美味しいってばぁぁ!!!」

 

 「うごご、今飯食ってるから横からゆするのやめろ…! 出る、いま腹の中に入ったばっかのもんが出てくる……!!」

 

 

 既に買収されてやがったこいつ…!

 

 胸ぐらを掴まれ、ぐわんぐわんと揺さぶられている先輩と、納得がいかないと言わんばかりに不満を露わにしているかぐや、そんな2人のやり取りは、先輩とチヨちゃんが互いに振り回し、振り回されているいつもの光景にどこか似ていて。

 

 2人の髪色も相まってか、親しげにするその姿は付き合いの長い仲の良い兄妹のようにも見えた。

 

 そんな、親しげにしている2人の姿を微笑ましく思うと同時に……言葉にできないような、黒くてモヤモヤとした、自分でもよくわからないモノに胸が締め付けられるように小さな痛みに襲われるような、そんな感覚が満ちていた。

 

 これってもしかして、不整脈……っ!?

 

 バイト中に一緒に仕事をしていた店長や、バイト先に遊びに来ていたチヨちゃんへ、何気なく会話のネタとして、そんなことがあったと話していると。

 

 なぜか店長は「きゃー! これが女子高生の甘酸っぱい独白なのネェ〜〜!」なんてハイテンションで身を捩っており、カウンター席に居たチヨちゃんは

 

 「(<●> <●>)」イロハ?

 

 と怖いくらいの真顔で穴が開きそうなくらいこっちを見ていた。

 

 ど、どうしたの? 怖いよチヨちゃん……?

 口元に手を当てて何やらブツブツと呟いており、

 

 

 「…おいたはダメだって言ったのに、これはそろそろ、本気でワカラセなきゃいけないかにゃ〜。うんうん、そうだよね〜。その為なら、恥じらいなんてモノで手段は選んでちゃダメだよねぇ……ふ、ふふふ」

 

 

 据わった光のない瞳で深く考え込んでいる様子は中々にホラーだった。

 

 そして店長はそんなチヨちゃんの姿に更に興奮した様子で「あらヤダァ! まさか禁断の三角関係だったなんて!? オネエさんいったい誰を応援すればいいいのォ〜〜!?」などと、仕事中だというのに職務放棄して恋愛相談を始める始末だった。

 

 

 ───いいかしら2人とも、リンちゃんみたいな男はやっぱりモテるのよ! それに加えてイケメン! でもアタシの見立てだとあれはとぼけながらも過去の恋愛経験でウジウジするタイプね! いざとなったら……もう押し倒すしかないワァ!!!

 

 

 なんて爆弾発言を落としていきやがったこの店長。

 

 な、何言ってんだあの人……!? 妙にノリノリでチヨちゃんによくないこと吹き込むのもやめてくださ……チヨちゃん? どうして覚悟を決めたような顔をしてるのチヨちゃん? い、一応確認というか先輩とチヨちゃんって兄妹なんだよね……?

 

 ……どうして無言で私の手を握ってくるのチヨちゃん?

 

 ほ、本当になにやってるんだこの人たち……というか2人ともって。い、いやいや、私は別にそんなんじゃないので大丈夫ですからっ!?

 

 え、もし先輩に“特別な人”できたらって…そりゃもちろん祝福しますよ……で、でもだからと言ってそんな物好きな人がいるかなんて、私は想像つかないですけど! ……なんでそんな微笑ましいものを見るような目でこっちを見るんですか。ち、違いますから、そんなんじゃないですから、絶対に勘違いしてますから!?

 

 

 ───閑話休題(それはともかく)

 

 話は逸れてしまったが、かぐやの奔走は止まらなかった。目の前のやりたいことに全力というか、すぐに夢中になって調子に乗ってしまう。

 

 かぐやは、キラキラだった。ツクヨミの中でも、あの子の煌びやかさは一際輝いて、見た人みんなを楽しませて虜にしてしまう。絶対に本人には言わないけれど、アイドルになるために生まれてきたんだと思う…そう思わされてしまいくらいに、かぐやは輝いていた。

 

 まったく、宇宙人のくせにこっちの文化や生活にちょっと馴染みすぎじゃないだろうか。こんな陽キャなかぐや姫がいてたまるかという話だ、かぐや姫って、もっとこう、お淑やかな感じじゃないの?

 

 買収されている先輩の他にも、芦花や真実もかぐやにすっかり取り込まれてしまったようで、3人で集まってはせっせとゲーム配信なんかもやっているようだ。

 

 もちろん、ゲームのことなどかぐやは知りもしないので。芦花や真実に『おねだり』して、ゲームのあれこれなんかの、手解きを受けている。

 

 先輩にも一度、ツクヨミでプレイできる『KASSEN』についてプレイしながら教えてもらっていたようだが、だいぶコテンパンにされたようで腹を立てて床を転がっていたこともあった。

 

 私に聞いてこなかったのは、恐らくかぐやなりに配慮してくれていたからだろうか。

 

 その厚意に甘えて、ありがたく勉強に励まさせていただいたが、自宅のアパートという狭いワンルームで同居しているので、どうしてもかぐやが配信している声なんかは聞こえて来てしまうのだが……。

 

 ゲームに熱中するかぐやの声をシャットアウトして、眠気をエナジードリンクで叩き殺しながら追い込みをかけ、勉強に没頭していると。

 

 

 「うーん…よし! いろPに勝ったら結婚な! 名付けて“かぐや争奪KASSEN選手権!”」

 

 「は?」

 

 

 配信中、かぐやに向けて求婚コメントが殺到したと思えば、このわがまま宇宙人、いきなりとんでもないことを言い出すもんだから思考が停止させられてしまった。

 

 いやいや急展開すぎるでしょ? 何よ、いったい。ちょっと目を離してる間に何があった?

 

 

 「は? ヤバッ、何言っての急に! 今すぐ取り消して!!」

 

 「ごめん、ついノリでぇ。そういわけで、いろP 守って〜〜?」

 

 

 反省の色なしかこやつ…!

 爆発的な速度で加速していくコメント欄、目の前に用意されたコントローラ、テヘペロと反省するどころか火に油を注いでいく我儘なお姫様、嘘だろマジかこいつ。

 

 ……や、やってやろうじゃないの!!!(ヤケクソ)

 

 そうして始まった『SETSUNA』という『KASSEN』のツクヨミでプレイできる対戦格闘ゲームモード。一対一で戦い、相手の体力ゲージを二本先取した方が勝ち、というシンプルなルールで行われるゲーム。

 

 そこから、かぐやとの結婚というコメントに火をつけられ現れた挑戦者との仁義なき戦いが繰り広げられることとなった。あんたたちとかぐやを結婚なんてさせる訳ないだろう。誰の許可を得てうちのお姫様に求婚なんぞしてるんだ、文句のある奴はかかってこい……!

 

 対戦は終わってみればあっという間で、結果は怒涛の28連勝という私の勝利で事なきを得た。

 

 ……い、いや、違うから、これはかぐやとどこの馬の骨ともわからない輩との結婚を阻止する為に全力を尽くしたとかではなく、私のゲーマー魂にちょっと火がついただけというか。

 

 なんてドタバタしていくうちに、『かぐやいろPチャンネル』はグイグイとヤチヨカップの暫定順位を上げていく。

 

 それに付随して集まってくるのが、ファンの方々からのありがたいお布施である。その総額に思わず目を見開いて固まってしまうくらいだ。こ、これ私が何年何ヶ月バイトしたらこの額に届くんだ。

 

 ふじゅ~はユーザーの脈拍や脳波をスマコンで検知し、感情がポジティブに動いたと判定されれば運営から支払われる仕組みになっている。それだけたくさんの人の心をかぐやが動かしたということになるのだが……。

 

 

 「うひひひ、ふじゅ〜がこんなに! 大判小判がザックザックじゃー!」

 

 

 露骨に調子に乗っとるな、この宇宙人。

 なんだのその変なサングラスは、いつの間にそんなの買ったんだ。

 

 

 「あのね、かぐや。こんなのは所詮あぶく銭、水物なんだよ!」

 

 「でもでも~~、合法でございましょ~~?」 

 

 

 一応釘は刺しておくものの、大した効果はなさそうだ。そうだけど、そうなんだけどさっ、なんかムカつく〜〜! おかげでかぐやの作る晩御飯が更に豪勢になり、美味しいものもたくさん食べられるけどさ! ほんとありがとうございますっっ!!!

 

 ……色々とお世話になってる先輩やチヨちゃんにも、2人を誘って今度みんなで晩御飯でも食べようかな。うん、そうしよう。その時はかぐややチヨちゃんに任せきりにしないで、私も手伝わせてもらおう。

 

 この2人ほど腕に自信があるわけではないが、きっとこういうのは気持ちの問題だろう。

 

 ───それにしても、数週間前まで何もなかったあの部屋が、随分と狭くなってしまったように感じる……いや、気のせいなどではなく実際に狭くなっているんだが。

  

 かぐやの配信用のガラクタが加速度的に増えていき、足の踏み場がないような状況にもなって来ている。私たちが暮らす4畳半のアパートは、今やかぐやが集めた謎のガラクタによって恐ろしいことになっていた。

 

 

 「はぁ〜、もう……せめて部屋片付けてよね」

 

 「えー、無理だよー。この部屋狭すぎるもん。引っ越そうよ、いい物件見つけたんだ! なんと()()()()()()()()()()()()()()()! 隣の部屋が空き部屋になってるっぽいし、これでいつでも遊びに行けるっしょ!!」

 

 「ま、マジで言ってるの、それ……」

 

 「毎日2人と会えたら絶対に楽しいよっ! 彩葉だってリンとチヨがお隣さんなら、一緒に暮らしてるみたいでワクワクするでしょ〜〜?」

 

 

 そ、それはそうかもしれないが、あの2人が住んでるマンションは中々にご立派というか、赤ん坊だった頃のかぐやを連れて泊まりに行った時やそれ以前にも何度かお邪魔させてもらっているが、あんな大きな部屋に暮らすと考えると頭がおかしくなりそうだ。

 

 というか家賃とか諸々はいくらかかってるんだあそこ…!?

 

 

 「あ! それともリンにお願いして、本当にかぐやたちも一緒に住まわせてもらっちゃう?」

 

 「む、ムリムリムリ! それは絶対ダメでしょ!? な、何考えてるの!?」

 

 「えー、全然それもアリだと思うんだけどなぁ……あ、()()()()、彩葉」

 

 「あ……うん」

 

 

 ()()とは、今日はかぐやが初めて行うソロライブのことだ。いつもの歌配信などではなく、ツクヨミ内にて存在するライブハウスを予約して、宣伝を打って、スタッフまで雇い、お客さんを入れて行う正真正銘のコンサートである……き、規模がすげえ。

 

 ブルドーザーのように部屋中のガラクタを隅へ追いやると、なんとか部屋のスペースを確保したかぐやがピースサインを決めてくる。いや、それで掃除した気になるんじゃないよ、それは掃除とは言わないからね。

 

 

 「よしゃ、じゃあ行こっか彩葉!」

 

 「……本当に私も行くの?」

 

 

 2人でツクヨミに潜り、いつも一緒の犬DOGEを連れて目的地のライブハウスへ向かう最中に、ふと足が止まってしまう。

 

 伴奏はかぐやたっての希望で、『いろP』のご指名。

 着ぐるみを着て姿は隠してもいいし、しっかりとギャラは支払われるということで、アルバイトも休んでOKをしたが、本当に私でいいのだろうか。

 

 だってこれはかぐやの記念すべき初のステージで、伴奏も中途半端な私なんかよりもすごい人はもっといるはずで、それなのに夢に向かってひたすらに突き進むこの子の横に、そんな私がいていいのだろうか?

 

 そんな私の小さな疑問や不安を溶かすかのように、笑顔の輝度をあげた彼女がじゃんけんのチョキを突き出してくる。

 

 

 「にひひ、来て! い・ろ・は!」

 

 「…ふふっ、なにそれ」

 

 「ピースからの~、チョッキンからの~、こんっ!……ふふっ、かぐやと彩葉の合図。仲良しのやつ♡」

 

 

 おずおずと、私も同じようにチョキを出して互いの指をくっつけてから挟み合う。それから最後にキツネのハンドサインを作って指先を重ねる。かぐや考案の仲良しのハンドサインらしい。

 

 なんだか変な照れくささはあったものの、少しだけ緊張が楽になった気がした。

 

 ─── ああ、かぐや(この子)は、いったいどこまで行ってしまうんだろう。そんな彼女の隣に、どうして私はいるのだろうか。

 

  

 「……あ! リンからメッセージ来てる! 2人ともライブ見に来てくれてるって! くぅ〜、がんばろ彩葉!」

 

 「ほんとだ」

 

 

 いつの間にか、メッセージが届いていた。通知機能はONにしている筈なのに、緊張のあまり気づくことすらできなかったみたいだ。システムウィンドウをタッチして、届いたメッセージを開いてみれば

 

 

 『2人が頑張って準備してたことは知ってる。だからライブ楽しみにしてるよ。ps. 会場のどこかにいるから探してみてくれ!!』

 

 

 短く伝えられた応援のメッセージに頬が緩む、かぐやを見てみればあの子も同じ気持ちなのだろう、大きく手を広げてわかりやすく感情を露わにしていた。

 

 そして幕が上がり、熱狂が押し寄せる。

 

 ───私の人生を変えた、推しが見た景色のほんの一部が垣間見えた気がした。

 

 

 因みに先輩の姿はすぐに見つけることができた。

 ……なんで最前列にいるんですか先輩。なんですかその七色に発光してるキモいスキン、ペンライト握りしめてヲタ芸披露するのやめてださい。人のイベントで主役よりも目立ちそうなことするのやめてくだいよ。

 

 周りから「あれかぐやいろPチャンネルの人じゃない?」ってヒソヒソ聞こえてくるんですけどっ!

 

 ちょっと見直したと思ったら、すぐこれなんだから!……ふふっ。

 

 

 ───そして、かぐやの初のソロライブは大盛況のうちに幕を閉じた。

 

 SNSを覗けば、数日経ったいまでも、肯定的な反響が乱れ飛んでいる。そんな濁流のようなエネルギーの波に押し流されるように、『かぐやいろPチャンネル』のランキングは跳ね上がり、その余韻に浸る暇もないままに、私はかぐやに連れられて外を歩いていた。

 

 買い物に付き合って、なんて言って私の腕に自分の腕を絡めて、散々寄り道した挙句にスキップ混じりにたどり着いた先は、不動産屋だった……え、マジ?

 

 物件探しを『買い物』として一括りしてるのか?

 

 

 「じゃじゃーん! これこれ、これだよ彩葉!」

 

 「……ほ、本気だったんか」

 

 

 興奮鳴り止まぬといったテンションで、かぐやが細くしなやかな指先で示したのは、不動産屋が大威張りで表通りに張り出した自信満々の看板物件。

 

 〈極上空間を味わうデザイナーズタワーマンション 3LDK 家賃三十五万円〉

 

 眩暈がした。というか階層とか部屋番とか見る感じマジでお隣さんじゃん、先輩たちと同じタワマンに住む気満々なのかこやつ……! だ、だめだ、こんなとこに私みたいなのが住んでたらマジで頭おかしくなるって。

 

 そもそも、こういう物件借りるには保証人とかが必要なのであって…

 

 

 「いいじゃ〜ん! お金ならかぐやが出すからさ〜、ほら見てチヨたちと同じで、2階があるんだよ! ここはかぐやの配信部屋兼寝室にしたい! 一階は彩葉が自由に使っていいからね。しかも最上階で吹き抜け! システムキッチンでパントリーにバルコニーだよ、ねえいいでしょ〜?」

 

 「はぁ〜、もう酔いそう。保証人だっていないし、こんな小娘どもに、貸して、くれる……わけ……ッッっ!」

 

  

 ───突然、膝から力が抜ける。

 

 耳鳴りと眩暈に襲われる、かぐやが隣で何か言っているが、なにを喋っているのか、それを聞き取れるほどの余裕はなかった。なんだこれ、頭が割れそうなくらい痛い……視界が歪む、上下左右に揺さぶられているかのように視点が定まらない。

 

 嘘でしょ、立ってられない。

 

 気がついたら、膝から力の抜けた体を押さえ込むように、無意識のうちにその場でしゃがみ込んでいた。

 

 

 「ほぇ? 彩葉、どったの〜?……ええ!? 大丈夫? 体あつあつだよ!」

 

 

 冷や汗が止まらない。段々と呼吸のリズムが不規則になっていき、そのまま崩れ落ちてしまいそうになる。

 

 

 「と、ととと、とりあえず休もっ!? え、えっと、えっと、こういう時はどうすればいんだっけ……そうだリン! 早く早く、お願い電話に出て……もしもしかぐや! い、いろはがっ! 体アチアチでぇ、動けなくなっちゃって! うん、うん!」

 

 「うっ、うぅ……いろはが死んじゃうよぉ! いろはのことたすけてぇ…! うん、はやくきてー!」

 

 

 なぜだか、かぐやが隣で泣きじゃくっている気がする。

 歪んだ視界の先で、くしゃくしゃに顔を歪めたかぐやが、どこかへ連絡しながら私の背をさすっていた。ああ、もうだめだ、そろそろ意識が落ちる気がする。

 

 そんな風に、どこか他人事のように考えていると

 

 

 「悪い、待たせたか!」

 

 「リンちょーはえー! なに今の!? 意味わかんねえ!? でもありがどー! どうしよう、どうしよう彩葉が死んじゃいそう!!」

 

 「……大丈夫だ、死にはしない。ひとまず、家に連れ帰るぞ。酒寄は俺がこのまま抱えるから、かぐやは俺の背中にくっついてくれ」

 

 「わ、わかった! んしょ……え、こっからどうするの?」

 

 「もちろん全力で帰宅する! しっかり捕まっておけよ……あ、それとかぐや、今から俺がすることはみんなに内緒だぞ? あと舌噛まないように気をつけてくれ」

 

 「え? それってどういう……え、ええええ!? ちょ! うぇ!? どうなってるのこれぇぇぇぇぇぇ!!!??」

 

 

 意識が落ちる寸前、朧げな視界の中で見慣れた男性の姿が映り込んだ気がした。

 

 

 ───ぼやけた視界のまま、僅かに意識が浮上する。

 気がつくと、自分の家のいつもの部屋の天井を見上げていた。なんだこれ、体が妙にだるい……起き上がれそうにない。

 

 

 「ねえ、いっぱいふかふか置いたから彩葉もう大丈夫? 」

 

 「そんな顔しなくたって大丈夫だ、酒寄もきっとすぐに元気になってくれるはずだ。それともっとふかふかさせてあげなさい」

 

 「もっとふかふかさせてくる!」

 

 

 近くにいるはずなのに、とても遠くの方から聞こえてくるような、そんな話し声が聞こえてくるが、何を言っているのかうまく聞き取れない。

 

 ふと、枕元でスマホが点滅して震えているのが視界に映った。

 

 そこには『母』と表示されていた。マズい、こんな時だっていうのに、母親からの言葉がフラッシュバックして、どうにかなってしまいそうだ。

 

 無意識のうちに、震えた手をスマホに伸ばそうとして───

 

 ───横から伸びて来た手が私のスマホを掻っ攫っていった。

 

 

 「大丈夫だ、いまはゆっくり休め酒寄……かぐや! 俺は表で店長に酒寄の休みの連絡を入れてくるから、近くでこの子を見てあげててくれ!」

 

 「わかった! もっとふかふかさせとく! あ、あとポカリほしい! 」

 

 「わかった、近くで買ってくるよ。俺はこれから大人同士で少し話してくるから、酒寄のことは任せるぞ」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 

 

 ───どうしてこんなことになっちゃってるんだっけ?

 

 どれだけ思考を巡らせようとも、その問いに対してのベストアンサーが出てきそうにない。もし、「いまあなたがやりたいことはなんですか?」なんてインタビュアーに聞かれたら、真っ先にこう答えるだろう。

 

 

 「今すぐ過去に戻れるなら、数時間前の自分をぶん殴ってやりたい……!」

 

 「え〜、まだ言ってんのリンさん」

 

 「うるせえ! 何度だって俺は言い続けるぞ!? というか楽しそうにニヤニヤしてんなよこの野郎! そもそもの元凶はお前だろうが!?」

 

 「いやいや、でもこんな状況になる羽目になったのはそっちの責任でもあるでしょ〜? どっかの誰かさんに影響されてうちの雷は()()()()()調()()()()()()()()

 

 「ぐ、ぐぬぬ……!」

 

 「あーあー、リンちゃんが雪国の話なんかして盛り上がっちゃうから、うちの兄貴は熱で寝込んでるんだけどな〜?」

 

 「ち、ちくしょう! やってやらぁ!」

 

 「へへ、そうこなくちゃ」

 

 

 肩を並べて隣に立つのは、人気プロゲーマーグループ『ブラックオニキス』のリーダー、帝アキラ。そしてそのグループの1人である乃依きゅん、こうやって2人とKASSENで遊ぶのもなんだか慣れて来てしまったこの頃。

 

 そしてそんな俺たちの前に立つ、対戦相手は……ヒェ

 

 

 『まもなく、注目のイベントが始まります! 王者ブラックオニキスが異例の速度でのし上がった超新星『かぐやいろP』に宣戦! そしてまさかの求婚!? 運命を懸けたKASSENが今まさに、ここツクヨミ特設スタジアムで始まろうとしています!』

 

 

 「ふーん、へー、そっかそっか……かぐやたちのお願いは聞いてくれなかったのに…リンってばそっちの味方するんだぁ……?

 

 「へぇ、先輩ってば……()()()()だったんですね。 私もかぐやも、先輩に頼んで力になってもらおうって思ってたのに……へぇ〜?

 

 「ふ、ふふふ……安心して、大丈夫だよリン。ヤッチョが優しくブチのめしてあげるから

 

 

 

 ほんとどうしてこうなった……!

 

 こ、殺される……お願いだから帰らせてください!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 掲示板+彩葉視点+主人公視点って感じでやろうとしたら、思ったより文字数が多くなった為、区切ったのですが所々変な感じになってるかも…?

 次回は主人公視点でそこを補完しつつ、KASSENの話を書いていきたい…! リンとヤチヨが暮らしてるマンション、実はかぐやたちが引っ越したあのタワマンです。伏線みたいなのは入れたつもりだったんですけど、多分わかり辛いし意味をなさなかったと思われます。

執筆中その作品の用語とか設定を使う際に、なんとなく気になりました。

  • 『超かぐ』も『スタレ』も知ってる!
  • 超かぐや姫!しか知らんで!
  • 崩壊:スターレイルしか知らんで!
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