うわっ、前からタケノコが!!   作:七夕ナタ

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 感想、評価、ここ好き、誤字報告、ありがとうございます。励みになるし大変助かっております。

 戦闘描写手こずってるというか、ちょっとガッツリ書きたいなと思ってKASSENは次回にお預けです、すみません。

 それと今更ながら、チラホラと感想で見かけたんですけど、うちの主人公がクソボケ(養殖)呼ばわりされてて笑いました。クソボケに天然か養殖なんて概念が存在してたんか、一瞬アマゾンズかと思いましたわ。





可愛いが正義なら汝は(アウト)じゃ!

 

 

 

1:一般ナナシビト

 みなさまー! 本格的な夏がやってまいりましたよー! 仕事や用事で快適な家を出た瞬間、天然のソーラービームで炙られる時期がやって来ましたね!

 夏といえば、海、肝試し、花火、浴衣、様々なイベントごとが盛りだくさんですわよ〜! 懐かしいですね、自分も子供の頃に両親と一緒に流れるプールへ遊びに行ったもんですよ! あの頃はまだ小さくて泳げなかったから、浮き輪に捕まり恐怖で泣き叫んだもんですね〜。

 愛しむべき、とても楽しい思い出だったと記憶しています……まあそんな前世の両親の顔はもう思い出せないくらい長生きしちゃってるんですけどね! そして今世の俺は孤児だっての! ガハハハ!

 

2:名無しの転生者さん

 重っ……え、急に後ろから刺してくるじゃん

 

3:名無しの転生者さん

 開幕からテンション高めな長文挨拶に見せかけた鬱ビームブッパしてくるのやめてくんない? そんなんほぼ必中攻撃じゃん、避けられんて…!

 

4:名無しの転生者さん

 イッチ…おいたわしや

 

5:名無しの転生者さん

 ……俺、前世の両親の分も含めて、今世の両親にはいっぱい親孝行することにするよ

 

6:名無しの転生者さん

 俺も…ワイの世界だと後少しで母の日だからいっぱいプレゼントとか用意するズラ

 

7:名無しの転生者さん

 俺も転生した世界が割と終末世界だからこんなん人生ハードモードでお先真っ暗やん、なんて思ってたけど、身近な幸福に気がついてなかっただけなんだな……親父と一緒にドライブしてくるわ!

 

8:名無しの転生者さん

 俺も、上京して離ればなれになった母上と無性に電話したくなってきた

 

9:名無しの転生者さん

 俺は拾ってくれた腹黒シスターに挨拶しに行ってくるよ……オラ、喰らえ魔除けの塩!

 

10:名無しの転生者さん

 みんなそれぞれ辛いことがあるんやな、俺も親の脛齧って生きるのやめるよ……明日から本気出すわっ!

 

11:一般ナナシビト

 どうしたお前ら、なんかしんみりしてないか。やめろよ、俺がスベッたみたいじゃん。いきなりお通夜ムードになるのやめてくれない? 元気出せよ、ぶっ飛ばすぞ?

 

12:名無しの転生者さん

 いきなり爆弾落として来たお前のせいだよ、ぶっ56すぞ???

 

13:名無しの転生者さん

 そうだそうだー! お前のせいだぞこのクソボケノンデリ! それに前世も今世も両親に親孝行できないなら、その分かぐやちゃんたちやスタレ世界の女の子たちもみんなをお前が幸せにすればいいんだよ!

 

14:名無しの転生者さん

 そうだそうだ! 俺たちは彩葉ちゃんたちの笑顔が見たいんだー!

 

15:名無しの転生者さん

 いつまでヤチヨちゃんを待たせるつもりなんだこのクソボケ〜!

 

16:一般ナナシビト

 いやほら、かぐヤッチョは責任を持って酒寄彩葉氏が幸せにしてくれるから大丈夫でしょ。あの子、俺みたいなミジンコ野郎なんかよりもずっとスパダリの適正あるすごい子だよ?

 

17:名無しの転生者さん

 お前が幸せにするんだよ! そしてお前も幸せになるんだよ! 辛い記憶全部ハッピーで埋め尽くしてこい! そんでレスト・イン・ピースまで行ってこいや!

 

18:名無しの転生者さん

 お前みたいなミジンコ虫がいるかよ、俺に謝って

 

19:名無しの転生者さん

 釣った魚に餌をあげずに放置するのはどうかと思います!

 

20:名無しの転生者さん

 ラドンも、そうだそうだと言っています

 

21:名無しの転生者さん

 それはそうと、かぐやちゃんのソロライブえがったな〜! アイドルのライブとかそういうので、ワイ感動して泣いたの初めてやわ。残念な点があるとすれば、別の世界だから現地で応援できないことやな

 

22:名無しの転生者さん

 わかる、俺も感動して泣いた。つい最近までバブちゃんだったのに、あんな生意気だった童がこんなにも立派なライブ会場で歌うようになっちゃって……!

 

23:名無しの転生者さん

 グッズとかほしいけど、無理なんよなぁ……自作しよ

 

24:名無しの転生者さん

 まあ、最前列にいた七色に発光してるキモいスキンがいたせいで感動の涙も引っ込んだが

 

25:名無しの転生者さん

 かぐやちゃんの歌に、いろPの伴奏、確かに感動したライブだったが俺は怒っている……なぜだイッチ、どうしてみんなで海に遊びに行った時に、掲示板の俺たちの為に配信してくれなかったんだよイッチ!

 

26:一般ナナシビト

 いや、するわけないだろ。なんで俺がお前たちの為に、水着で遊びに来てる女子高生の集団を盗撮せなあかんねん! 言っとくけど普通に犯罪だからな!

 

27:名無しの転生者さん

 うごご、かわい子ちゃんたちの水着姿という夏のメインイベントが…!

 

28:名無しの転生者さん

 イッチからみんなで海に遊びに行ってくるという報告を受け、写真や動画を楽しみに待機していたというのに、送られてくる写真は真夏の海で黒スーツ姿のイッチの自撮り……ウホッ、これはこれでありやな!

 

29:名無しの転生者さん

 ちなみに俺はあのイッチの自撮りをスマホの壁紙に設定してるで、職場の先輩に誰これって聞かれたら「ワイの推し」って答えるようにしてる

 

30:名無しの転生者さん

 奇遇だな、俺もイッチが今まで送ってきた写真を保存して写真フォルダ作ってる。イッチの冒険の旅が終わったら、このアルバムを開いて冒険の旅を振り返るんだ…!

 

31:名無しの転生者さん

 黒スーツも姿も似合ってるしZeroセイバーさんみたいでかっこいいんだが、海に来たのならせめて水着に着替えろよ。戦いの中で鍛え上げた肉体美を彩葉ちゃんたちに見せつけてこい!

 

32:一般ナナシビト

 >>30え、きも。割とマジで鳥肌が凄いんだが?

 いやまあ、水着に関しては着ても良かったんだが、その鍛え上げた肉体美の所為でちょっと水着に着替え辛かったというか、あっちがどういう反応するかもわからんし、あまり見せびらかせるもんでもないというかですね……!

 

33:名無しの転生者さん

 ???……鍛え上げられたイッチの肉体美を女子高生に見せつけるのは、女の子の癖を歪ませちゃいそうで危ないとかそういう話?

 

34:名無しの転生者さん

 いや、絶対違うだろ…?

 

35:名無しの転生者さん

 あー、なるほどね、なんとなく理解。

 あれか、要はイッチの肉体には歴戦の傷跡的なのがあるから、ただの女子高生というか、何も知らない一般人の前で見せつけたら、あらぬ誤解が…みたいな感じか

 

36:名無しの転生者さん

 あ、そういやそうじゃん。イッチってゴリゴリに規模のやばい戦闘とかある世界から来てるじゃん、そっちの現代チックな世界に馴染みすぎてて忘れとったわ

 

37:名無しの転生者さん

 なるぺそ、そりゃ確かに彩葉ちゃんたちに見せられんわな。ハードな戦闘とか多いと、それに付随して怪我とか傷痕とかは増えてくよな。直近だとオンパロス編だし、何度か死にかけるっぽいもんな

 

38:名無しの転生者さん

 因みに結構派手にやってるというか、割と傷だらけだったりするんか?

 

39:一般ナナシビト

 まあ、そんな感じです。

 傷だらけって程じゃないが、結構傷痕は残ってるかも。ある程度のダメージとか怪我は再生させられるけど、ザックリいかれると治しても痕は残ったりする。特に左胸辺りとかはガッツリデカい口みたいな痕が残ってるしな

 

40:名無しの転生者さん

 ひぇ…何があったんや?

 

41:名無しの転生者さん

 え、それ俺たちが聞いてもいいやつ…?

 

42:一般ナナシビト

 別に構わんぞ? ちょっと過去に素手で自分の『心臓』を抉り出したことがありまして…その時の傷痕と言いますか

 

43:名無しの転生者さん

 待て待て待て、おかしいおかしい

 

44:名無しの転生者さん

 ………え???

 

45:名無しの転生者さん

 い、意味がわからん。なぜにそんなアグレッシブなことする状況になってんの? サイボーグになる為の改造手術というか、人体改造でも施してたんかイッチは

 

46:一般ナナシビト

 うーん、割と似たようなモンかも。

 まあ凄い簡単に言うと、加護という名の傍迷惑な呪いが詰まった『特大の厄ネタ爆弾』が身体の中に仕込まれてたっぽくて、普通にムカついたからそれを解呪してやろうと行動した結果、呪いを仕込まれてた心臓を引き摺り出すことになりました! あとは自分の知的好奇心を満たす為の検証ですね!

 

47:名無しの転生者さん

 うぇ〜、グロォ……ワイこの後、オフ会で焼肉行くんだけど

 

48:名無しの転生者さん

 文字通り、素手で胸ぶち抜いてハートキャッチ(物理)したってことか……いや痛い痛い痛い!

 

49:名無しの転生者さん

 うへ〜、もしかしてまた神様の嫌がらせ案件ですか? 随分なハズレ引いたんだなイッチ…お気の毒

 

50:名無しの転生者さん

 というか半不老不死とはいえ心臓抉り出してよく生きてたな、正気を疑うというか思い切りの良さにびっくりだよ。そこまでして解除したかった呪いはどうにかできたんか?

 

51:一般ナナシビト

 もちろんできたぞい、おかげで元気ピンピンだよ! いや〜、あの瞬間はテンション上がって「最高にハイ!ってやつだァ!」状態になってましたね。今まで自分を縛り付けてたストレスの元や妙な異物感がなくなって、ちょっかい出して来たアンティキシラ人を『試し切り』ついでにボコボコにしてやったぞい! やっぱ戦いはノリがええほうが勝つんやな!

 

52:名無しの転生者さん

 そ、そっか……(ドン引き

 

53:名無しの転生者さん

 というか、心臓抉り出してまで満たしたかった知的好奇心とはなんぞや…?

 

54:一般ナナシビト

 あー、そっちはあれやな、俺の中で心臓抉り出して呪いを解除するのは決定事項だったから、じゃあその抉り出した心臓と血肉の使い道はどうしようと思って、いっそ素材にして武器を生み出そうと思い至ったのよ

 流石は『神に作られた高性能チートボディ』武器の素材としても儀式的にもかなり価値と効果があったみたいで、オンパロス内にあったいくつかの運命データとコネコネした結果、新たなチートが付与されたなんちゃって『神造兵装』みたいなのがが爆誕しました。これが文字通りのシンゾウ兵装ってわけやな!がははは!

 

55:名無しの転生者さん

 お前やっぱ頭おかしいよ…っ!

 

56:名無しの転生者さん

 それ絶対に一回装備したら外せない呪いの装備じゃん

 

57:名無しの転生者さん

 笑い話にしてるけど、それって笑い事じゃないだろ

 

58:名無しの転生者さん

 イッチ…もう休んで…!

 

59:名無しの転生者さん

 え、てことはイッチの身体ってアランカルみたいに心臓の部分空っぽなの…?

 

60:一般ナナシビト

 いや、心臓自体はちゃんとあるで、作った武器が待機状態?の時は普通に心臓として機能してるし。ただこのチート武器を使おうとすると、『おっぱいソード』ならぬ『心臓ソード』モーションで胸から引き抜かなきゃいけんからめちゃくちゃ痛い…!

 

61:名無しの転生者さん

 いやだよ、引き抜いた瞬間に血飛沫撒き散らすおっぺえソードなんて見たくねえよ!

 

62:名無しの転生者さん

 うげえ…想像したら胸の部分チクチクして来た

 

63:名無しの転生者さん

 大丈夫なんかのその呪いの装備、明らかにヤバそうな気配がプンプンするというか…

 

64:一般ナナシビト

 さあ? そこら辺は俺もよくわかっとらんな、でも使ってる時はなんかこう、凄い疲れるというか、めちゃくちゃお腹が減る気がするぞい!……あ、かぐやから電話来てるからここまでにしておく〜

 

65:名無しの転生者さん

 乙〜

 

66:名無しの転生者さん

 りょ、おつかれー!

 

67:名無しの転生者さん

 ……いや、絶対それも厄ネタじゃん。

 

68:名無しの転生者さん

 …た、多分だけど、イッチが気が付いてないだけで実は別の星神から一瞥されてたりするだろあいつ

 

69:名無しの転生者さん

 しー! 静かにしとけって! 触らぬ神に祟りなしっていうだろう!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 

 

 「どうした、かぐ───」

 

 「もしもしかぐや! い、いろはがっ! 体アチアチでぇ、動けなくなっちゃって!」

 

 「───うぉ、びっくりした……って、いきなりどうした?」

 

 「うっ、うぅ……いろはが死んじゃうよぉ! いろはのことたすけてぇ…!」

 

 

 リビングで寛ぎながら、ボーッと脳内掲示板で世界の壁を超えた同志たちと駄弁っていると、鳴り響いていたスマホに気がついて手に取ってみれば、画面には『かぐや』の3文字が表示されていた。

 

 どうせまた配信とか、思いついた動画のネタ、に対する出演のおねだりかなんかだろう。そんな風に考えながら、耳元にスマホを当てて通話に出てみれば、開口一番かぐやからの爆音救援メッセージに襲われた。

 

 み、耳が痛え…!

 

 というか、どういう状況なんだってばよ。酒寄が死ぬって…え、マジで何事? 切羽詰まった様子でいきなりそういうこと言われると、俺の中で癒えそうにないトラウマがががが、は、発症しそうです普通にやめてほしいんだが……やべ、うごご。

 

 

 「お、おおおお、落ち着けかぐや。状況がよく飲み込めない、まずはおちおち、落ち着いて説明をだな……!」

 

 「ひっぐ、うぇ……どうしよう、彩葉が、いろはがぁ……! お願いだから助けに来てぇ……!」

 

 「───わかった。すぐにそっちに行くから待ってろ、もう大丈夫だから泣くな」

 

 

 少女の泣き叫ぶ声に意識を切り替える。

 依然としていまいち状況把握ができないが、テンパっている様子のかぐやにこれ以上質問を重ねて状況を事細かに確認させるには酷だろう。なので、スマホに位置情報だけ送ってもらい早急に迎えに行くこととした。

 

 動けなくなった、とかぐやはそう言っていたが……そうなると、考え得るケースとして真夏のこの炎天下にやられて倒れてしまったのか。それとも、何か予期せぬ事故にでも巻き込まれてしまったのか、そんな最悪なケースばかりを想像して拳を握る力が強くなってしまう。

 

 自分でも気が付かぬうちに舌を打つ音が溢れる。

 あー、クソ、いつまで経っても、こういう瀬戸際に陥った時に冷静になれない自分の悪い癖に、なんとも嫌気が差す。さっきもそうだ、かぐやから助けを求めれた時にもう少し気の利いた言葉を投げかけてやればよかった。

 

 ふと、足元に擦り寄って来た白い影が鼻先でこちらを突きながら、どこか怯えた様子で俺のことを見上げていた。あー、ごめんなFUSHI、びっくりさせるつもりはなかったんだ。

 

 

 「り、リン? どうしたんだ、怖い顔してるぞ」

 

 「ぇ……悪い、怖がらせるつもりはなかったんだ。急ぎの用事ができたから少し外に出てくる、配信中のヤチヨにもそう伝えといてくれ。夕飯までには戻るって言っといてくれ頼んだぞFUSHI!」

 

 「あ、ああ。よくわからないが、ヤチヨにもそう伝えとく……っておい! 何やってる! そこは()()()()だぞ───!?」

 

 「悪い、こっちの方が速い!!」

 

 

 かぐやから送られて来た位置情報を確認する、この程度の距離ならちょっと本気でトばせば数分も掛からないで到着できるだろう。

 

 ジャケットに袖を通して、ベランダに出て靴を履く。背後にいたFUSHIが不思議そうに俺を見ていたが、何をやろうとしているのか察したのだろう。悲鳴にも近い叫び声をあげていた。

 

 はは、大丈夫大丈夫。このくらいの高さなら着地をミスったとしてもミンチになるか両足の骨が折れるくらいだろう、その程度の怪我ならこのチートボディは数分で完治させてくれるさ(経験済み)。

 

 永劫回帰中、警戒心MAXな初対面のフレスティさんにも腹ブチ抜かれた時だってちょっとしたら治ってたし大丈夫でしょ(適当) いや〜、あれは痛かったぞい。

 

 

 「よっと……!」

 

 

 そんな軽い掛け声と共に、ベランダの手すりから身を乗り出して空中へと躍り出る。こんな飛び降り自殺と間違えられてしまいそうなワンシーンを一般人に見られたら大問題なので、『認識阻害』などの能力で勿論対策済みだ……うん、意外と高いなここ。

 

 ミスったかもしれん、まあいいや!

 風を切り増していく落下速度に身を任せながら、クルリと身を捻って体勢を整えた後、()()()()()()()()()()()()()、虚空を蹴り上げることで方向を変えて前方へ飛び出して加速する。

 

 かぐやの位置情報を確認しながら、手近な建物の壁や屋上を足場にして飛び跳ねるようにしながら移動して行く。気分はさながらアメコミのヒーローといったところだ。

 

 そんなことを繰り返しながら移動すること数十秒、救援を求めて来たかぐや姫の元へと到着する。上空から軽く辺りを見渡せば、道端で蹲る酒寄と隣で慌てふためいているかぐやの姿を発見した。

 

 そのままもう一度、虚空を蹴って落下する。ついでに『認識阻害』も解除してかぐやたちに姿が視認できるようにしておく。

 

 あ、やべ、着地ミスったかも。

 しばらく本気で身体動かしてなかったせいで鈍ったかもしれん。思いっきりコンクリートの地面踏み砕いた所為で小さく穴が空いてる気がするが……まあいいや。

 

 

 「悪い、待たせたか!」

 

 「ええええぇぇ!? リンちょーはえー! え、なに今の!? 意味わかんねえ!? でもありがどー! どうしよう、どうしよう彩葉が死んじゃいそう!!」

 

 

 蹲り動けなくなってしまっている酒寄へと駆け寄り容態を軽く確認する。大きな外傷などはなく、蓄積した疲労によるものだと判断する。自分が想像していた最悪なケースは免れているようで良かったと息を吐く。

 

 まあ、自分は医師などではないのでその判断が正しいのかはわからんが、こういう時に頼りになるヒアンシーが居てくれたなら凄い心強いのだが、それは無いもの強請りだ。

 

 しかし、マズったな、俺ってば殆ど攻撃能力特化の所為でこういう時、他人を癒すような回復能力はそこまでないんだよな。自分の回復は単純な再生能力だし、ヒーラーとしての力は使えなくはないが、本職と比べたら微々たるものだ。

 

 うえーん! ヒアえもんマジで助けて!!!

 

 『ダメですよリンたん! 諦めたらそこで試合終了ですよ!』

 

 なんて助けを求めたところで脳内で「昏光の庭」に所属している凄腕の看護師がガッツポーズで激励を飛ばしてくる。ちくしょう、気合いでどうにかできたら医師なんていらんのじゃい!

 

 というかなんだ今のイマジナリーヒアンシーは、あいつはそんな脳筋っぽいこと言わな……いや、割と通常運転というか言いそうだなあいつ。

 

 そんなくだらない思考に更けていると、

 

 

 「ねえ! 彩葉大丈夫!? し、死んじゃったりしないよね!」

 

 「……大丈夫だ、そんな泣きそうな顔しなくていい。それにかぐやがそんな不安そうな顔してちゃダメだ。もしもの時に酒寄のことを誰が助けるんだ?」

 

 「うぅ……わ、わかった!」

 

 

 隣で不安そうに酒寄の様子を見ていた少女の頭を、安心させるように優しく撫でてやる。俺の言葉に、ハッとした様子で拳を握って気合を入れ直したようだ。よし、強い子だ! おいちゃんも頑張るから一緒に頑張ろうな!!!

 

 

 「それじゃあ、ひとまず酒寄を安静にさせられる場所へ移動するぞ。酒寄のことは俺がこのまま抱えて行くから、かぐやは俺の背中にくっついてくれ」

 

 「わかった!……んしょ、えっと、それでこっからどうすんの?」

 

 

 蹲っていた酒寄を刺激しないよう気遣いながら、脇と膝へ腕を差し込んで小さな身体を優しく抱えあげる。うお、軽っ……ちゃんと飯食ってんのかこいつ? もっと美味いモン食って肉つけろ!

 

 なんて、最近の女子高生の体重の軽さに驚いていると、かぐやが小さな身体を懸命に使って背中へとよじ登ってくる。お前もお前で軽いな……いま思ったけど、これって側から見たら結構ヤバい絵面なのでは???

 

 イケメンの脚長お兄さんとはいえ、男性の両手に抱えられる意識不明の女子高生、そして背中には両手両足を使ってコアラのようにがっしりと張り付いている宇宙人……マズイな、わりと1発アウトかもしれん。

 

 ……急ぐか!

 最近何かと厳しい世間の目に晒される前にこの場を離れるとしよう。

 

 軽く膝の力を抜いて、身体を沈み込ませた後───一息で建物を飛び越えるほどの跳躍を繰り出す。

 

 

 「もちろん、全速力で帰宅する! しっかり捕まっておけよ……あ、それとかぐや、今から俺がすることはみんなに内緒だぞ? 謎のイケメンお兄さんとの約束だ!……あ、舌噛まないようにだけ気をつけてくれ」

 

 「え? それってどういう……え、ええええ!? ちょ! うぇ!? どうなってるのこれぇぇぇぇぇぇ!!!??」

 

 

 かぐやたちの前に姿を現す為に解除していた、『認識阻害』のチート技能をもう一度だけ掛け直す。これで周りの人間からは視認されないし、監視カメラなんかにもノイズとして映り込みようになるだろう……毎度思うが、便利だなこの能力。

 

 まあ、こういった能力諸々を授けて来た相手はクソみたいな神様なので感謝なんて絶対にしないんですけどね!

 

 かぐやの前で、常人ならありえないような能力や身体機能を披露する羽目になってしまうが、まあ緊急事態なので良しとしよう。何か聞かれても「俺もお前と同じ宇宙人だったのさ!」でどうにかなるだろう。

 

 

 「うおおおおおっっ!?? はええええ!! なにこれどうなってるのォォおおおォォ!!?」

 

 「おいマジでしっかり捕まっておけよ! 途中で手離したらR-18Gみたいなことになるぞ!?」

 

 「うごごご、やばい…これジェットコースターじゃん……うぷっ、三半規管がイカれてゲロ吐きそう……!」

 

 「月のお姫様がゲロ吐きそうとか言うな!? ちょ、マジでもう少しだけ我慢しろ!」

 

 

 ───なんやかんやありつつ、酒寄家へと無事到着。

 カッコよく屋根の上に着地しようとも考えたが、そのまま勢いよく屋根をぶち抜いてしまいそうだったので正面の道路へと着地することにした。

 

 

 「───彩葉よりも先にかぐやが先に死んじゃうかと思った……!」

 

 「でも楽しかったろ?」

 

 「確かに面白かったけど、もうやらない! やるとしても色々と準備してからやる!!!」

 

 

 なんやこいつ、途中から「うひょー! すげぇぇぇ!!」とかめちゃくちゃテンション高かったくせに何言ってやがるんだか。「彩葉は知らないかもだけど、地面に足がつくって素晴らしいことなんだね…!」なんて感動してるとこ悪いが、酒寄の心配をしてあげなさいな。

 

 

 「……ねえ、いっぱいふかふか置いたから彩葉もう大丈夫? 」

 

 「ははっ、そんな顔しなくたって大丈夫だ。酒寄もきっとすぐに元気になってくれるはずだ、それともっとふかふかさせてあげなさい」

 

 「もっとふかふかさせてくる!」

 

 

 とりあえず、かぐやに用意してもらった布団一式に酒寄を寝かせたのだが。心配そうにしてるかぐやが酒寄の周りにこれでもかと、ぬいぐるみやクッションを並べて敷き詰めている所為で中々に面白いことになってる……写真撮っとこ。

 

 酒寄の体調に関しては、俺に医療に関する深い知識があるわけではないので正確な判断は下せないが、とりあえず俺ができる範囲でヒーラー的な能力を使ってある程度は回復させてある……筈! うん、多分できてる!!!

 

 なので、後は酒寄が目を覚ましてくれれば問題はない…のだが、この苦学生中々にスヤァっと気持ちよさそうに寝てやがるゾ。

 

 とはいえ、体調を崩して倒れたのは事実なので今日1日は家で休んで安静にしてもらおう。

 

 アルバイト先には俺から店長に連絡すれば問題ない。寧ろ、この状況に居合わせながら、俺が報告や連絡を何もせずに帰ったら店長からお叱りを受けクビにされるかもしれん…!

 

 ───スマホを手に取り連絡しようとした矢先、スマホから着信音が鳴り響いた。それは俺やかぐやではなく、酒寄のスマホから鳴り響いていた。

 

 何気なく視線を向けて見れば、画面には『母』と表示されている……わーぉ、掲示板の民からもお噂は予々聞かせていただいている酒寄家のお母様でしたか。

 

 

 「お、母さん……」

 

 

 それに気づき、意識を取り戻したのか。酒寄は混濁した意識にまま譫言のように言葉を発してゆっくりとスマホへ手を伸ばそうとしていた。その姿はまるで、叱られることを恐れた怯える小さな子供のようにも見えてしまった。

 

 ……なんとなく、そんな彼女の姿を見ていられず、横から手を伸ばしてスマホを拾い上げる。

 

 

 「大丈夫だ、いまはゆっくり休め酒寄……かぐや! 俺は表で店長に酒寄の休みの連絡を入れてくるから、近くでこの子を見てあげててくれ!」

 

 「わかった! もっとふかふかさせとく! あ、あとポカリほしい! 」

 

 「わかった、近くで買ってくるよ。俺はこれから大人同士で少し話してくるから、酒寄のことは任せるぞ」

 

 

 思わず手を出してしまったが、すぐにそれを後悔してしまう。後先考えずに何をやってんだか……うげ、こういうのは柄じゃないから嫌なんだけどなぁ……。

 

 家の外へ出て、未だに鳴り響くスマホを操作して耳へ当てる。

 

 

 「ああ、やっとではったね。この根性なし───」

 

 「───ああ、もしもし酒寄彩葉さんのお母さんでしょうか?」

 

 「……誰や、アンタ。なんでうちの娘の電話に出とるん?」

 

 「驚かせてしまったのならすみません、いきなり失礼しました。誤解されないよう先に自分の身分から紹介させてください、自分は酒寄彩葉さんが勤めているアルバイト先の者でして───」

 

 

 本当に何やってんだか、これはそう…自分の娘にあんな顔をさせる母親のことがきっと気になっただけだ。掲示板経由で色々と噂は聞いているが、俺はあくまで噂を耳にした第三者でしかない。

 

 俺は自分の子供なんていないから、親の気持ちなんてわからないが……それを知ろうとすることはできるだろう。

 

 なので先入観にとらわれず、あの子の母という人間が知りたくなっただけだ……まあ、出会ったばかりの頃の無茶な生活を続けて精神状態が不安定だったアンタの娘のことについても、言ってやりたいことがないわけではないが。

 

 ま、だからと言って他所の家庭に口を出すつもりもないし、そんなことをしたところで酒寄のためになるわけではないので……少しだけ認識のすり合わせというか、お話をしようか酒寄 紅葉さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 

 

 そんなこんなで、思わぬトラブルに見舞われたあの出来事から数日……。

 

 

 「───弁護士って怖いな、なんかこう、覇気というかオーラが違う気がするわ。まあ、こっちも負けてやるつもりもなかったし言い返してやったんだけさ」

 

 「は? いきなり何言ってんのリンちゃん」

 

 「わかる。俺もかあさ……知り合いにそれ系の人がいるんだけど、あの全力のオーラを直で叩きつけられると流石にビビる」

 

 「え、帝も急に何言ってんの?」

 

 

 わかってくれるのかアキラくん。やっぱあれか? 有名なプロゲーマーグループとなると、誹謗中傷というか、そういう心ないコメントとかの対策とかで弁護士が出てくる感じなのか?

 

 つまり、ネットに詳しい弁護士が『ブラックオニキス』の背後にはいるってことなのか……な、なんて恐ろしいグループなんだ…!?

 

 現在、ツクヨミ内で俺はまたまた『黒鬼』のプライベートルームへと遊びに来ていた。

 

 というのも、アキラくんのほうから何やら相談があるとのことで呼び出しを受けたのだ……来る度に毎回思うが此処の内装というか、雰囲気というか、なんかこう、男の子の右腕とか古傷とか疼きそうな感じの趣味全開な部屋なんだよな。

 

 うお、あの用途がわからない謎の置物かっこいい…! いつの間にかビリヤード台だけじゃなくてダーツも増えてんじゃん。

 

 と、いかんいかん。男の子心をくすぐられてないで要件を聞かなければ。この後、何やらかぐやと酒寄からも()()()()()とのことで招集を受けているのだ。

 

 何やら本当に困っていそうだったので、そっちの話も聞きに行きたい。

 

 

 「それで、アキラくんの相談とやらの内容は? お金の貸し借り以外ならなんでもいいぞ?」

 

 「いや、それはありがたいことにファンのおかげで困ってないから大丈夫かな。あー、それでだな、リンさんへの相談についてなんだが……」

 

 

 何やら歯切れの悪いアキラくん。どうしたん? 話聞こか? とは言っても人気プロゲーマーグループならお布施やら何やらで、金銭面は困ってなさそうだからな……となるとアレか?

 

 好きな子が出来たからこの恋愛マスターに恋愛について助言を求めに来た感じか? まあ、仕方ないか。アキラくんも俺と同じイケメンっぽいし、きっとさぞかしモテることだろう。

 

 この溢れ出るオーラを見抜き、俺を相談役に抜擢するとは見る目があるな!

 

 

 「実はリンちゃんに『黒鬼(うち)』が企画した配信に出てほしいんだよね〜」

 

 「───すまん、急用思い出したわ。来世でまた会いましょう」

 

 「あー! 待て待て待て! 頼むから待ってくれ!」

 

 「やだ! 待たない! 離せアキラくん! 俺には配信に出ると視聴者も含めて死ぬ呪いが埋め込まれてるんだ…! このままじゃ俺の体は呪詛を撒き散らす爆弾と化してしまう!」

 

 「なんだそのよくわからん呪術!!? 呪いの効果がピンポイント過ぎるし特級クラスだろそれ!……頼むリンさん、まずは話だけでも聞いてくれ!」

 

 

 誰が特級呪霊じゃい!

 いいから離さんかい! 男に組みつかれても何も嬉しくないんだよこっちは! 腰にしがみついてきたアキラくんを引きずったまま、そのまま出口まで向おうとするも、必死の形相で懇願してくるものだからつい足を止めてしまう。

 

 それを肯定と受け取ったのか、ホッと息を吐いたアキラくんが話を始めた。

 

 

 「………は? 体調崩して雷くんが寝込んでる?」

 

 「そ、うちのバカ兄貴ってば、いま体調不良でベッドの上なんだよねぇ」

 

 「数日前から雷が体調拗らせたみたいでさ。そういうわけで、今は配信も休んで安静にしてるってわけ」

 

 「あ〜、だから雷くんの姿が見えないわけだ」

 

 

 通りで姿が見えないわけだ、納得。

 

 アキラくん、乃依きゅん、雷くん、何をするにしても、この『黒鬼』のメンバーは基本セットだったし。寧ろ3人で行動せずに、ソロだったりデュオだったりで行動してる方が珍しいくらい、いつも一緒に行動してる仲良し3人組って感じだったからな。

 

 3人組といえば、うちの開拓3人組は元気だろうか……っといかんいかん。今は感傷に浸ってる場合じゃないって。

 

 

 「そっちの事情はわかったが、それがどうして俺がそっちの配信に出るって話に繋がるわけ?」

  

 「ん〜、その原因の半分くらいがリンちゃんだからかな?」

 

 「……はい?」

 

 「まあ、そういう理由もあるけど、単純にこういうお願いができるのもリンさんくらいしか居ないしさ」

 

 

 意味がわからんぞい?

 首を傾げる俺を他所に、彼らの説明は続く。そんな彼らの口から告げられた話を要約すると、つまりはこういうことだ。

 

 どうやら、件の雷くんなのだが……元々旅行などが趣味だったらしい。なるほど、それで俺の話に食いつきが良かったわけだ。それで以前、俺が彼に話した他の星での出来事や冒険の旅の話に影響を受けて、2泊3日くらいのスケジュールを詰め込んだ軽い1人旅に出たらしい。

 

 その結果、羽目を外し過ぎたようで帰宅した後に疲労によって体調を崩したようだ……えぇ〜。もうどっから突っ込めばいいのかわからんて、雷くんフットワーク軽すぎんか?

 

 ……い、いったいどこまで行ったんだ雷くん。

 

 い、いや、それとほら、別に、俺のせいじゃない、でしょ? だってほら、体調の自己管理は社会人の基本だって言うしさ……雷くんが社会人なのかは知らんけど。

 

 

 「もちろん。リンさんに迷惑が掛からないように配信中はスキンとかでアバターを隠すなりミュートでもいいし、ちゃんとギャラなんかは払わさせてもらおうと考えてるんだけど、頼まれてくれない?」

 

 「う、うぐぐ……」

 

 「あーあー、このままじゃせっかく『黒鬼』が企画したイベントが丸潰れなんだけどな〜。こんなことお願いできるのはうちに入り浸ってるリンちゃんくらいなんだけどな〜」

 

 

 ……や、やってやらァ! その代わりギャラは倍にしてもらうからなこのヤロー!!!

 

 

 ───この時はまだ知りもしなかったのだ。その『黒鬼』の企画とやらのイベントが、対戦相手がまさか()()()()だったなんて……! 知ってたら絶対に面倒くさいことになるってわかってたから、逃げて断ってたもん。

 

 おのれ帝アキラァ……! 冗談はアゴだけにしろ!!!!

 

 

 

 






 明記してるつもりだったんですけど、ちょっとわかりづらかったのか、補足させていただくと、主人公の呪い云々に関してはオンパロス編の時点で解除できてます。

 超かぐやサイドに被害が及ぶかもと不安にさせてしまっていたならソーリー。信じて未来は明るいですよ!

執筆中その作品の用語とか設定を使う際に、なんとなく気になりました。

  • 『超かぐ』も『スタレ』も知ってる!
  • 超かぐや姫!しか知らんで!
  • 崩壊:スターレイルしか知らんで!
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