うわっ、前からタケノコが!!   作:七夕ナタ

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 感想、評価、ここ好き、誤字報告ありがとうございやす!!!

 今更? なんですけど、超かぐや姫!とWEGOのコラボのオリジナル描き下ろし可愛いですね! それと新たに書き下ろされてた浴衣姿も可愛い! ゲヘヘ、公式からの供給がありがたいぜ…!

 そしてスタレガチャなんですけど、自分復刻キュレネを完凸するか悩んでるせいでSP刃ちゃんを引けてないんですけど、評価見る感じめちゃくちゃ強そうで悩んでます。ウゴゴ、石も金もないってば…!


 ※7/30 内容変更とちょっと加筆してます!




争いは同じレベルの者同士でしか発生しない

 

 

 

 ───相手チームに裏切り者を混じえた、帝アキラ率いる『ブラックオニキス+α』との『KASSEN』は()()()()を迎えようとしていた。

 

 波乱万丈というか、手がつけられないような混沌を極めていた第一試合は『ブラックオニキス』による両櫓占拠によるコールドで一回戦は呆気なく終わってしまった。というか、裏切り者への天誅に夢中になっていたせいで試合の状況に全く気がつけてなかった……やべ。

 

 だけどなんとも()()()()()()があったというか……トライデント戦法で攻めてきた黒鬼に対して、私やかぐや、それにヤチヨまで先輩を狙い撃ちしてミドルレーンへカチコミを仕掛けた。その所為でガラ空きとなった両櫓を相手が占拠するのは容易く、試合が終わったのは一瞬だったのだろう。

 

 だがどういうわけか、試合終了の合図が出るまで()()()()()()()()()()気がする。それに途中、実況席からの声も()()()()()()()()ような。

 

 第一試合が終わってから、少しだけその場で待機を言い渡されたのだ。どういうことだろう、なんて不思議に思いながら待っている間にヤチヨから話をそれとなく聞いたのだが。

 

 何やら()()()()()()()()のようなものが起きたらしい。どうにもこっちでの試合の様子や、試合の進行状況にもズレがあったようで、観客席にもノイズ混じりで試合の映像が届けられていたらしい。

 

 

 『うーん、なんでだろうねぇ? ヤッチョも()()()()()()()()()()もしかして、はしゃぎ過ぎた所為でツクヨミのサーバー負荷が凄かったのかも……なんて♪』

 

 『うぎぎ、絶対嘘だ……裏でお前が何かしてるに決まってるだろっ! この極悪管理人がっ、可愛い顔して息を吸うように嘘つくんじゃねえ。一般ユーザーにこんなことしてタダで済むと……ぶえ!?』

 

 『ねえ〜? 狭いからもう少しそっち詰めてくんないヤチヨ〜』

 

 『やだ。これ私のだもん……うふふっ、ダメだよリンってば静かにしてなきゃ。今のリンはヤッチョの椅子なんだから、椅子は喋らないもんね? あ、彩葉も座る?』

 

 『え!?……………それはまた今度にしておきます

 

 『おい待て後輩。また今度にしておきますってなんだ…!? というかいつまで人の上に乗っとんじゃお前らは! 退けよ重いだろうが!!』

 

 『こらこら、女の子に重いとか言っちゃダメでしょ。それにツクヨミに体重なんて機能は存在してませーん! ヤチヨたちは羽毛のように軽いんだからっ! ねー? かぐや〜?』

 

 『うお、ヤチヨの重力場が…!』

 

 『かぐや???』

 

 

 視界の先では、ワイヤーで再びぐるぐる巻きにされて捕えられた先輩の姿があった。この人、試合再開までしばらくその場で待機を言い渡されたタイミングで私と目を合わせるなり背を向けて逃げ出そうとしたのだ。

 

 そこへヤチヨが足を引っ掛けて転ばせた隙に、私が再びワイヤーで捕らえてお話をすることにしたのだ。どこ行くんですか、逃がさないって言いましたよね先輩。

 

 そして地面に倒れたまま動けずにいる先輩の上で、かぐやとヤチヨが腰を下ろして時間を潰しながらお喋りしていたのだ……べ、別にちょっと羨ましいとかは思ってないから。推しの椅子になってたり、先輩の上で楽しそうにしてる姿に、羨ましいなんて思ってない。

 

 ただ椅子にされている先輩が、何やら助けを求めるような様子で必死に私の方を見ているが……その姿になにかこう、背筋にゾクゾクとした甘い痺れというか、よくないものが私の中で芽生えてきてしまっているような気がする……かわいい。ボソッ

 

 しかしなぜか、ヤチヨと先輩のやりとりを見ていると()()()()()を覚えてしまう。微笑ましくも感じるそれは、まるで私がよく知る……とても仲の良い兄妹のような────

 

 

 ────銃声が聞こえてくる。

 

 

 思考に更けていた意識が引き戻される。マズイマズイ、今が戦闘中だということを完全に忘れていた。戦場のど真ん中で、いくらなんでも長考し過ぎてしまった。

 

 こちらを狙う銃声が近づいている。飛び込むようにして最速で付近の岩の後ろへと隠れる。それは恐怖から姿を隠す為の行動ではなく、相手を背後から襲い自分に有利な展開を作る為に行う布石。

 

 私は静かに己の武器である双剣の両端を繫げてブーメランに変形させ、岩の背後から投げつけた。まあ、それが直撃するだなんて甘い考えは持っていない……まあ、油断したまま攻撃がヒットしてくれたのなら万々歳だが。

 

 そして予想通りに相手が攻撃を躱す隙を見て素早く飛び出す、避けられたブーメランは仕込まれたワイヤーで即座に手元へと回収して片手剣に変形させ、斬りかかった。相手も瞬時に反応して鍔迫り合いになり、火花が飛び散る。

 

 もちろん、その相手は帝アキラだ。くそう、余裕そうな顔で受け止めやがって……!

 

 

 「おっ、いいね。悪くないんじゃない?」

 

 「何それ、むかつく……っ!」

 

 

 帝アキラ。ツクヨミにいればその活躍ぶりは嫌でも耳に入って来ていたが、こうして顔を合わせて言葉を交わすのは()()()()になるのだろうか。

 

 私が向こうに気づいてるように、相手だって私が誰かとっくに気づいているのだろう。だからこうして、周りくどいやり方で接触して来たんじゃないか、なんて考えたりもした……いや、それは考え過ぎか。きっと気になったかぐやというライバーの側に偶々私が居ただけだろう。

 

 振り下ろされた棍棒を受け流して、相手の視界の外へと回り込むように位置を調整しながら斬りかかるも、帝はその場から動くことなく涼しい顔で攻撃を受け止めてくる。

 

 その姿に、無意識に苛立ちと焦りが募っていく。続け様に双剣を振り回すが、こちらの動きを完全に見切った帝に襟首を掴まれて投げ飛ばされてしまう。

 

 悠々と距離を詰めてくる帝。すると私の背後からうなぎ型の弾丸が発射され帝を狙い撃つ、それは私と一緒に行動していたかぐやのハンマーが形状を変化させた『うなぎ砲』による攻撃だった。

 

 だが、帝は自分に向かって放たれたうなぎ型の弾丸を焦る事なく、正面から棍棒で的確に弾き落とすことで完全に防御していた。何それ、そんなんありか……!

 

 

 「はは……なんだ、思ったよりも元気そうじゃん。しょげてるんじゃないかと思ってたけど、もしかしなくてもかぐやちゃんとリンさんのおかげだったりする?」

 

 「知らない。私のことで口出さないでっ」

 

 「おっと、そんなに怖い顔して睨まれたらお兄ちゃん悲しくて泣いちゃうぞ?」

 

 「……うえっ!? お兄ちゃんっ!!? うっそ! これが!!?

 

 「お、さらっと酷い事言うねかぐやちゃん」

 

 

 私に合わせて、横からちょこちょこと攻撃を加えていたかぐやが手を止めて、驚愕に染まった表情で私の方を見て来ている。だから嫌だったんだ……何やら大袈裟な実況の声や、会場のざわめきが嫌でも聞こえてくる気がする。

 

 もう後戻りはできないだろう。帝アキラ────否、酒寄(さかより)朝日(あさひ)は正真正銘、私の、酒寄彩葉の兄なのだから。この状況を予想していたのか、兄はしたり顔で楽しそうに笑っている。クソ、この成金兄貴が…!

 

 

 「あれ? なんだ、彩葉から聞いてなかったの? でもまあ、うちの妹と仲良くしてくれてありがと。色々と不器用な子だからさー、かぐやちゃんがフォローしてやってくれると俺も嬉しいかな」

 

 「うるさい! かぐやに変なこと吹き込まないで! それに今更、兄貴ヅラしないでよっ。そもそも普段俺様キャラで配信してる人が兄ですなんて言えるわけないからっ!!!」

 

 「うおっ、マズイな。妹にそれを言われると思ってたよりも破壊力が高いかも……!?」

 

 

 (あに)と交戦しながら櫓まで近づいていく。チラッと、マップの上空に浮かんでいるモニターに目を向けて見れば、先輩とヤチヨがボトムレーンへ向かいながら交戦している様子が映されていた。

 

 ずっと思ってたけどすごいなあれ、いや、まじでどうなってんだ? 目で追えないくらいのスピードで動いてるヤチヨもそうだが、なんで先輩もそれに対応して戦えてるんだ。『お助けヤチヨ』つえー、なんて思ってたが、あそこまでバフが乗ってるとなると相当の戦力差があったということなのか……?

 

 あ、先輩がヤチヨに足掴まれたまま振り回されて投げ飛ばされそうになってる……わ、すご、あの状態から掴まれた軸足を捻ってカウンターの蹴りが入れられるんだ……なんか凄すぎて某戦闘民族同士の戦いを見せられている気分になってくる。

 

 あんなのカ◯ロットとベ◯ータの戦いじゃん……あ、遠くで先輩の援護してた乃依がヤチヨの投げた傘で貫かれて落とされた。ヤチヨパワーしゅごい。

 

 

 「余所見なんて、随分と余裕じゃん?」

 

 「────うぐっ!」

 

 

 先輩とヤチヨの戦いに気を取られていた隙に、帝の棍棒でポコポコと叩かれる。

 

 

 「いやー、そのスキン当てやすくて助かるわー。いつまでもそのままで、なんて無理なのはわかってるだろ? 後悔することになる前に、本気でやろうぜ」

 

 「っ……そっちだって、変な着ぐるみ着て戦ってる人がいるみたいだけどッ!」

 

 「いやいや、あれはもう呪いの装備みたいなもんだから……まあ、あの人黒鬼(うち)のマスコットポジとしても変な人気あるっぽいから脱がせられないんだよな」

 

 「───は? なにそれ、人のもん勝手に持っていかんといてや」

 

 「……へえ、なるほど。ん〜、ちょっと複雑だなぁ。兄として妹の成長を喜ぶべきなのか……ま、リンさんにもやっぱ色々と聞かなきゃならんことができたっぽいけど」

 

 「───ハッ、殺気!? ば、バカな! 後輩やお転婆娘どもだけじゃなくて、うちのリーダー(仮)からも何やら殺気を感じるぞい……ぐえっ!!? テメ、このやろー! 横からド突いてくんのは卑怯だろっ!」

 「えー、ヤッチョを相手にしてふざけてる余裕があると思ってるのかにゃー? ほらほら、どんどん行くよー!」

 

 

 避けられる筈の攻撃を回避できずにヒットしてしまう。姿を隠す為に着ているこの着ぐるみはヒットボックスも大きく、腐ってもプロゲーマーな兄を相手にするにはとんでもない足枷になってしまっている。

 

 腹立たしいことに兄の言葉は正しいものだと理解できてしまう。私は覚悟を決めて、姿を覆い隠していた着ぐるみを脱いだ。

 

 着ぐるみは光の粒子となって解除され、着ぐるみの下に隠されていた本来のアバターが露わとなる。青を基調とした着物にパーカーとコルセットのようなベルトとブーツを合わせた、ちょっとカッコよく仕上げたストリート風のファッション。狐モチーフの尻尾と耳が、引き絞られるようピクピクと揺れる。

 

 

 「なんで私のアバター知ってんの」

 

 「そりゃ、お兄ちゃんはなんでもお見通し…ってね」

 

 「……キモいっ」

 

 「おいおい、そんな顔してマジトーンで言われるとお兄ちゃん泣いちゃうぞ?」

 

 

 胸の中で燻る衝動のままに帝へ切り掛かる。だが、こちらの攻撃は掠るどころか軽く受け流されてしまい、カウンターの要領でこちらがダメージを貰う羽目になってしまう。なんだこの人、強いのは知っていたがここまで強かったのか。

 

 

 「そいや、母さんってば彩葉のこと気にしてたぞ? 連絡くらいとりゃいいのに」

 

 「っ……こんの、こっちだって順序ってもんがあるの!」

 

 「よ、よくわからんけど、うりゃあ〜!……ぶえ! うわああああ!!?

 

 「お、かぐやちゃんやっぱ筋いいね。話を戻すが、それって母さんの教えをいちいち間に受けちゃうからギスギスすんの。母さんは彩葉の反抗待ちなんだからさ」

 

 「っ、知らん! わかった風なこと言って口出さないで!」

 

 「これでも兄貴なんだからわかってるに決まってるじゃん」

 

 

 

 ボイスチャットを配信用から個別の内部通信用に切り替えて、帝がお説教をかましながら攻撃してくる。

 

 途中、かぐやがハンマーの背部からジェットエンジンを点火して奇襲を仕掛けていたが、帝は棍棒で攻撃を逸らすとかぐやは軌道を変えられたジェットエンジンに引きずられるように飛んでいってしまう。なにやってんのかぐや…!

 

 兄のありがた迷惑なお説教への反論をじっくり考えたいところだが、そうもいかない。他のことに思考を割けるほどの余裕は今の私にはなかった。

 

 

 「それはそうと、母さんにリンさんのこと紹介したってマジ? 母さんに連絡した時、電話越しになんか気に入ってたっぽい反応でビックリしたんだけど……お兄ちゃん的には彩葉にはまだそういうのは早いと思うんだけどな〜」

 

 「え……?…!? は!? なにそれ知らん……!!?」

 

 「あれ、そうなん? なんか電話した時に、彩葉のスマホから職場の人間……たぶんリンさんが電話に出て軽く口論になったって話聞いたけど」

 

 

 し、知らない知らない知らない!!? なにそれ初耳なんですけどっ!? え、どうゆこと? なんでうちの母親と先輩に繋がりがあるのさ? というか気に入られてたとか、紹介してたってなに!? なんのことだそれ!!?

 

 いや、でも……私が体調を崩した日から、頻繁に掛かって来ていたお母さんからの電話も鳴りを潜めたというか、10件以上はあった着信履歴は不気味なくらい落ち着いていた気がする。

 

 ……え、マジ? 私の知らない間に母上と先輩がお知り合いになってた…ってコトォ!?

 

 ───そんなことをしているうちに、牛鬼の元へと帝が辿りついてしまう。こちらが先に倒したいところだが、帝がマップを破壊してできた瓦礫に邪魔をされて思うように動けない。

 

 その隙に、帝が棍棒から刀を抜いてウルトによる超加速を発動させる。あっという間に牛鬼を切り伏せて撃破してしまった。

 

 

 「───ま、もっとうまくやれよな。俺みたいに」

 

 「く!」

 

 

 瞬殺。

 ボイスチャットを配信用に切り替え直して、決め台詞と共にウインクを放つ。意味ありげな言葉や余裕綽々な態度にむかっ腹が立つが、その手捌きには文句のつけようがなかった。

 

 くそ、櫓と牛鬼の間にはまだ少しだけ距離がある。櫓を占拠される前に帝に追いつければ、まだ勝機はある…!

 

 

 『ボトムレーンのヤチヨも牛鬼を撃破したぞー! 黒鬼の自称マスコットを武器として振り回し牛鬼に叩きつけて撃破! なんだそりゃ!? とんでもないパワープレイを見せつけていくっ! 今日の歌姫は一味違うぞっ!?』

 

 「グエー!牛鬼が死んだンゴ!!……あ、あのヤチヨさん? どうして俺は胸ぐら掴まれたまま引きずられているんでしょうか…???」

 「ふふーん!そりゃもちろん、このままリンを叩きつけて櫓を占拠する為だよ?

 「ヒェ……お、おま、なんて恐ろしいことを考えるんだ! ふざけんな! もう手加減してやらねえからなぁ! ぐぬぬ、うおこの歌姫力つよい!!?」

 「ほらほら! さっさとこの戦いを終わらせなきゃ! リンにはこの後、ヤッチョとの楽しいロマンチックなパーティーが待ってるんだからさ……!」

 「イヤッイヤイヤ!!! ヤーッ!!! ヤダッーー!!! 助けてミュリオンこのままじゃ俺食べられちゃうぅぅぅ!!……いや、あいつも同じようなこと言ってたからやっぱダメだ!!! 助けて丹恒! 俺にはもうお前しかいない!!!」

 「は? 誰それ??? いまヤッチョとお話ししてるのに別の女の人の名前呼んだの???」

 

 

 ヤチヨ…!

 ……え? ヤチヨ? なんかとんでもない脳筋パワープレイで先輩のこと追い詰めてない???……あ、駆けつけた乃依の鈍足連射を先輩を盾にしてガードしてる……えぇ〜??? なんかとんでもなく非人道的な戦法を見せられてるような気がする。

 

 あ、先輩が櫓にダンクシュートされた………ひぇ。

 

 でも今日も推しが笑顔で可愛いからヨシ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 え〜、『KASSEN』はただいま三回戦目を迎えようとしています。え、二回戦目はどうしたのかって? はっはは、普通に負けたが??? スーパーヤッチョが天下無双状態で普通に轢き殺されましたけど何か???

 

 ……いや、ふざけんな。おかしいだろ!あいつ強すぎるって!!? なんかもう、アメコミに出てくる暴力で全てを解決するような全身緑色の巨人にやられるヴィランになった気分でボコボコにされてるんですけどっ!!!

 

 おかしくね? こういのってさ、ほら、転生者お得意のチートパワーで『俺TUEEE!!!』な展開で無双するもんじゃないんスか? いまんとこスーパーヤッチョのチートパワーで蹂躙されてるせいで『俺YOEEE!!?』な展開にしかなってないんですけど???

 

 とまあ、胸中で嘆いている俺はというと───

 

 

 『激戦っす! 再び各々が櫓を取得し、かぐやいろPはジャンプ台から櫓へ!』

 

 『彼女たちを待ち受けるのは帝との一騎討ち! そしてこちらにも目を離せない! 天守閣へ向かうヤチヨを止めるべく、再びこのマスコットが立ち塞がったー!!!』

 

 

 解説の通り、天守閣へ向かうヤチヨの足止めの為に櫓付近で睨み合うこととなっていた。ふっふふ、早く終わらせて帰りたい……!

 

 

 「ふふ、流石にリンでもそろそろキツくなって来たんじゃない? いま降参すれば後でヤチヨが優しく慰めてあげるんだけどな〜」

 

 「なに言ってんだ、こちとら漸く身体が温まって来たところだっての。そんなつれないこと言わずに、もう少しだけ付き合ってくれよマイハニー」

 

 「っ〜〜!………い、今のちょっと破壊力やばいかも。そのふざけた着ぐるみ脱いでもう一回だけ言ってみてくれないダーリン、できればこう、耳元で愛を囁く感じでっ!」

 

 「うえ……やだぁ」

 

 

 なんでそんな食いつきがいいんだよっ。ふざけてマイハニー呼びしただけじゃん、そんな目を輝かせてお願いしてくるようなことじゃないでしょうが……そんな顔したところで、絶対にやってやんないからな。

 

 因みに、俺と一緒にヤチヨを足止めしていた乃依きゅんは先に残機を使い果たして消えちまったよ。あやつなら俺を守る為に己の身を挺して庇い散っていったさ。

 

 くっ……乃依きゅん、なんて良いやつなんだ……! でもさっき、鈍足連射で俺が肉壁にされてるのに遠慮なしでバカスカ撃って来たのは許さないかんな???

 

 

 『うおおおお!!? やばいやばいやばい! ヤチヨのウルト飛んで来る! 乃依きゅんヘルプ!!?』

 

 『はあ? ちょ、ちょちょ、その暴走機関車こっちに連れてくるのやめてくんないリンちゃん!!?』

 

 『むり! すまん、俺の代わりに潔く逝ってくれ!! 我が盾となって散れ!!!』

 

 『おま、絶対にゆるさ───…ぁ』

 

 『ふぅ、あぶねえあぶねえ……の、乃依きゅぅぅぅぅんん!!? ちくしょう!!! いったい誰がこんな酷いことを! 絶対許さねえ!!!』

 

 『え、ええぇ〜……私が言うのもアレだけど、とてつもなく酷い光景を見せられた気がする』

 

 『なに言ってんだ。戦場なんて常に蹴落とし合いだろ?』

 

 『うわっ、英雄の口から出る言葉じゃないよそれ』

 

 

 ちくしょう乃依きゅん! どうして俺を庇うような真似をしたんだよ! でも安心してくれ、君の尊い犠牲は絶対に無駄になんてしねえからな! 俺が絶対に仇を取ってやるからなっ!!! だから安心してここの戦いを観戦しててくれ!……いや待て、俺が死んで観戦してれば、それはそれで色々と楽だったんじゃないか?………ヤッベ、ミスったかな。

 

 まあ、いっか!

 アキラくんの方も、戦い始めたっぽいし、こっちもぼちぼちやっていくとしますか。それに、男の子としてはやっぱり負けっぱなしというのは悔しいので、ちょっと本気で勝ちに行きたい所存でございます。

 

 ───準備運動のように小さく、軽く跳ねて肩や首をほぐすように回しながらステップを踏み続ける。先程までは一方的と言えるほどに、ヤチヨにやられっぱなしにされてしまっていたが……この不自由なアバターボディとヤチヨの動きにも『慣れて来た』ところだ

 

 小さく息を整えて、番傘の武器を構える。

 

 

 「さて、そんじゃちょっと本気で行くけど……後で泣くなよ?」

 

 「………っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 

 

 「───っ!」

 

 

 がらりと、空気が変わる。

 

 肌を突き刺すような鋭い闘気。だけど、そこに存在するはずなのにまるで存在しないような、どこかチグハグで不気味な圧迫感(プレッシャー)。目の前でゆらりと、実体のない幽鬼が武器を片手に佇みような感覚。

 

 いつも隣に居たはずの人物が、まるで別人なのでは錯覚させられてしまうような変化した存在感。

 

 普段のどこかおちゃらけた様子も鳴りを潜めて、星海を航行し数多の星を訪れ、武器を握り仲間たちを守る為にも全線で立ち続けたナナシビトとしての一面が垣間見えた。

 

 ふざけた着ぐるみ姿の奥で、赤い瞳を鋭く細めてこちらを睨みつける獣の姿をノイズ混じりに幻視する。

 

 その様変わりした雰囲気に、普段は仮面を付けて生活していたのではないかと思ってしまうくらいだった……いや、あくまで彼はそんな姿を見せないでいてくれただけなのだと理解している。

 

 目の前に立つ彼が、本気で私を打ち負かしに来ている……その事実に少しだけ口角が上がってしまう。なにせそれは彼が手を抜けない、真剣(マジ)にならなければならないほどに、今の私はそれだけ強いという事なのだろう。

 

 自分はもうあの頃のような、FUSHIの姿を借りて8000年という歳月を共に過ごして、彼の隣で庇護される続けるだけの存在ではないのだと証明を、思い知らせるつもりでもあった私としては望み通りの展開とも言えた。

 

 このKASSENに割り込んだのはそれだけが理由ではないのだが、このままリンの協力により黒鬼が優勝してしまえば私の知る運命とは()()()()()()()()()……まあ、私としては彼の私を『見る眼』を変える為というのも大事な理由の一つだ。

 

 リンが腰から剣を抜くような所作で、静かに武器を構える。

 

 

  (っ………すごい)

 

 

 どこか既視感を覚えるその立ち姿に圧巻される。

 今となっては遠い昔の記憶だが、それでも私の脳裏に色濃く焼き付いている大切な記憶として色褪せない光景の1ページ。その姿が重なる。

 

 それは一見すれば、鞘から抜いた剣を胸の前で掲げた後、だらりと武器の鋒を下ろして佇むだけのような構え。

 

 だが無駄な隙はなく彼が長い年月と戦いで研鑽を重ねて積み上げていった、見るものを引き込むような静かで綺麗な、洗練された構えなのだと私は知っている。

 

 リンから贈られた私の持つ改良された『もと光る竹』を制作した『知恵の魔女』と呼ばれる天才の手によって、異世界の騎士王が所有していたという『星の聖剣』を模倣して作り上げた偽りの聖剣。

 

 聖剣の模造品を構えて、溢れんばかりの黄金の輝きをその手に束ねて構えていたリンの姿。その輝きと圧倒的な存在感に目を奪われて、幻想的な光景に見惚れてしまったことを覚えている。

 

 知らず知らずのうちに、武器を構えるリンの姿に過去の光景が脳裏を過って息を呑んでしまう。そしてそんな私の様子に何かを見透かしたのか、着ぐるみに顔を隠した青年は静かに微笑んだ気がした。

 

 

 「───ヤチヨ」

 

 「っ!」

 

 

 こちらに呼ぶかける彼の声に、意識を引き戻される。

 

 そして私も彼に倣うように、傘型の武器を構えて意識を張り巡らせる。いくらこのツクヨミ内で、このKASSENNの戦場において私のステータスが彼を凌駕していたとしても、一瞬足りとも気が抜けない状況なのだと自らを叱責する。

 

 なにせ気を抜けばその瞬間、自分の首が切り離され地面に転がっていてもおかしくはない。私と彼の間には、埋めようとしても埋められない『差』というものが存在しているのだと私は知っている。

 

 だがそれは()()()にとっての覆すべき『差』なのかは、この戦いで証明される事だろう。

 

 様子を見てから攻撃を仕掛けるべきか、それとも先程までのように相手を凌駕するステータスによって翻弄して押し切るべきか、そんな一瞬の逡巡の最中。

 

 ───視界に捉えていた筈のリンの姿が消えた。

 

 否、彼の体が僅かに沈み込んだ瞬間……消えたと錯覚させらる程の速さで間合いを詰めて接近して来たのだ。単純な素早さだけではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角、幾多の現象を絡み合わせた技術それが彼が絶え間ぬ研鑽で磨き上げた歩法の極みなのだと理解する。

 

 まるでいきなりワープして来たかのような急接近、僅かに反応が遅れるが上段から振り下ろされた武器を寸前で受け止める。

 

 

 「………っ!」

 

 「───ははっ!」

 

 

 受け止めた瞬間、両腕に伝わる衝撃。

 予想以上のパワーに、僅かに顔を顰めながら押し返そうとこちらも力を込めた瞬間。それよりも武器を後ろに引いたリンが、クルリと手首ごと武器を翻してステップを刻むように身を捻りながら切り返す、そして別方向からの攻撃を素早く繰り出してくる。

 

 まるで舞を披露するかのように、巧みな体捌きと独特な構えに乗せて武器を操りながら様々な方向から攻撃してくる。

 

 

 「ちょ、なにその攻撃! 今までそんな戦い方してなかったよね!?」

 

 「最近、ちょっとした映画を見直してな。それを混ぜたオリジナルだ! 今の俺はまさにジェダイ! いや、どちらかというとシスになりきりたい気分なんだ!」

 

 「面白そうな映画見るなら、私も誘ってよっ!」

 

 「それはメンゴ! 暗黒面パワーを受けてみろ! ガハハ!」

 

 

 なんだそりゃ。

 映画で見たチャンバラ剣術を実践向きに織り交ぜて来るなんて、わりととんでもないことしてる自覚はあるのだろうか。それはそうと、映画を見るなら誘ってくれてもよかっただろうに。

 

 拳闘を織り交ぜた不可思議で変則的な剣術の対応に苦闘する。

 

 攻撃のタイミングがわかりやすいようで掴みどころがない。繰り出して来た攻撃にフェイントを重ねたこちらを翻弄するような動きに、思うように身動きが取れず焦燥が募る。

 

 

 (あーもう、やりずらい…!)

 

 

 隙を見て大振りで繰り出される力強い一撃は、まるで戦車がぶつかって来ているみたいだと錯覚してしまう。

 

 リンの今までのKASSENによる戦闘データには目を通している。そしてその集取したデータのパターンを私自身の戦闘システムとしてこっそり取り入れてた、だが今のリンの戦い方は今までの戦闘データにはないような戦闘スタイルだった。

 

 なんでそんな戦闘データを取ってるのかと言われたら返答に少し困る……いや違うよ? 別にやましいことがあったわけじゃないよ?

 

 別に四六時中ツクヨミ内で行動しているリンを監視していたとかではなく、凄腕英雄の戦闘データをもとに『お助けヤチヨ』をアップデートしようかなとか、ちゃんと彼がツクヨミを楽しんでくれてるかなとか、そんな感じでリンを監視……じゃなかった、こっそり観察してただけであって。

 

 そう、これはあくまでツクヨミライフを満喫してくれているかどうかを確かめる為に、管理者権限で彼のプライベートをちょくちょく覗いていた時についでにデータをもらっただけなのだ、うん。

 

 スケコマシがどっかで知らない女の子にちょっかい出してないか監視してたとかじゃないから。

 

 

 「ちょっ、掠った!? 今掠った! 女の子相手に遠慮なしの顔面グーパンチはちょっとどうかと思うんだけど!?」

 

 「はあ!? なに言ってんだ! そっちこそさっきまで好き勝手にボコスカ殴って来てただろうが!『1発は1発だ』って名言を知らんのか貴様は!」

 

 「ヤッチョのは愛情表現だから問題ナッシング! もしくは据え膳を食べる度胸もない意気地なしへの愛ゆえの制裁だからね!!!」

 

 「DV彼女か己は!!?」

 

 「違うよ。近所でも噂されるおしどり夫婦だよ」

 

 「え、なにその存在しない記憶…?」

 

 「あ、一途な女の子に重いとかしつこいとか言ったら許さないから!」

 

 

 マズイな、思考の片隅でそんな感想が浮かぶ。

 いつだったかリンが言っていた気がする。『戦いってのはな、ノリのいい方が勝つんだよ!!』なんて私に豪語していたが、今この瞬間まさにその通りだと実感させられている。

 

 完全にこちらのペースを崩され、完全に相手のペースで踊らされてしまっている。

 

 単純な身体能力といったステータスならば、こちらがリンを凌駕している筈なのに……それに加えて今のリンは全力を出せないようなデバフがあるような状態だというのに、そんなものを感じさせない勢いで正面から押し切らん勢いで攻防を繰り広げて来ている。

 

 このままではマズイ。

 攻撃を捌き切るだけではなく、こちらも反撃に打って出なければ。

 

 その為にも一度間合いを整えたい。

 ステータスにモノを言わせた力任せな一撃。リンを吹き飛ばすつもりで振り下ろした傘型の武器は水平に構えたリンの武器と接触した瞬間、滑らせるように受け流された後そのまま絡め取られるような動きであらぬ方向へとズレてしまう。

 

 そして次の瞬間には、リンの持つ番傘型の武器の()()が受け流す動きに合わせて、滑りながらこちらに向けられていた。

 

 

 (───ヤバッ…!!!)

 

 

 目と鼻の先の距離で向けられた()()に冷や汗が出る。

 

 瞬時に回避行動へと全神経を注ぎ、寸前のところで首を傾けて回避に成功する。瞬間、響いた銃声とマズルフラッシュと共に放たれたビー玉型の弾丸が結いていた私の長い髪を突き抜けるように伸びで背後にあった岩壁に弾痕を作り出す。

 

 

 「マジか。今の避けんのか」

 

 「近距離ヘッドショットは殺意高くない!?」

 

 「櫓に人を振り回して叩きつけるイカれた真似してるお前が言うな。いやーしかし、ほんといい武器だな、これ! 男のロマンを擽る要素たっぷりじゃん」

 

 「ふふ〜ん。そう言ってもらえるなら、製作者としても嬉しいかな……あ、その武器を使う時はちゃんと心の中でヤッチョのことを考えて大事に使ってくれなきゃダメだから、ねっ!」

 

 「へいへい、そうさせてもらうよ!」

 

 

 完全な不意打ちとも言える一撃を回避されると思っていたなかったのか、驚いたように目を見開いているリンの姿が視界に映る。追い討ちが来ないその隙に、こちらも距離をとって自分の間合いを確保する。

 

 あちゃー……失念していた。

 彼に送ったあの武器の製作者はヤッチョだというのに、近距離戦闘に気を取られすぎて自分が設計した武器に仕込んだギミックの存在を完全に忘れていた。

 

 ───それはリンが故郷である星海の世界から、この世界へと戻りツクヨミに初めてログインしてから数日経ったある日。

 

 私が彼へ日頃のお礼と再会の記念としてプレゼントした番傘型の武器。それは武器としての設計やデザインなんかを私自らが彼の為だけに手掛けて贈った、このツクヨミ内で一つしか存在しない彼だけが持つオリジナルの武器。

 

 彼が持つあの偽りの聖剣や、普段から刀剣の類を好んで愛用していたことは知っている。だからこそ、彼の好みに合わせたクセのないシンプルな刀剣を贈ろうとも考えたが……それじゃあつまらないよね、ということでちょっとした思いつきで私自らがデザインした武器を製作した。

 

 なぜ彼が実戦で使っているような刀剣の類ではなく、番傘型の武器としてデザインしたのかと言えば……まあ、その、単純にお揃いの武器にしたかったというか、夫婦剣的なノリで作ったというか、そんな感じだ。

 

 武器を贈られたリン本人はそんなこと気づいてないし気にしてないんだろうけど……まあそれはそれとして、そんな私が丹精込めて作った大事な武器を売られてた中古品とか抜かしたクソボケにはお仕置きが必要だよね?

 

 

 「───なんだ、来ないのか?」

 

 「むっ! いまからどうやってリンを負かすか考えてる途中だから」

 

 「長過ぎる様子見は返って自分の隙を晒すことになるぞ〜?」

 

 

 相手の動きを警戒する私に、リンはクルクルと手元で遊ばせるように番傘型の武器を回転させながらゆったりとした足取りで歩を刻んでいる。

 

 だが、そんな動作の中にも油断や隙もないことは言葉にせずとも理解できている。彼は必要以上に間合いを詰めずに、一定の距離を保ちながら円を描くように歩いていた。

 

 ……これで()()()()()()()()()()()というのだから恐ろしい。私と共に過ごした8000年という長い旅路の中で、争い事がなかったというわけではないが彼が本気にならざるをえない非常事態や危機的状況というものはなかった。

 

 ましてや、この世界には彼の世界に存在するような人類を脅かすような怖い怪物だっていないし、彼が身体を張って救わなければならないような世界の危機もない。

 

 ちょっとしたトラブルに巻き込まれたりすることはあっても……いや、今にして思えば争い事や紛争地帯などから私を遠ざけて避けるような……そんな緩やかな旅でもあった。私はそれだけ彼に迷惑をかけながら護られて過ごしていたのだろうと実感してしまう。

 

 ───思考を切り替えろ。

 自分の積み重ねた失態を咎めるのも、改めて彼に感謝と謝罪を伝えるのは今じゃない。今は、私との戦いに応じてくれた彼の為にも全力を尽くすことを考えなければ。

 

 息を吐いて、低く構える。

 イメージするのは、先程リンがやってみせた歩法の極み。だけどそれを再現できるまでの技術力は私には無い。故に、真似ただけの爆発的なスピードを乗せた突進。

 

 

 「じゃあ、行くよリン」

 

 「いつでもどうぞ、お姫様」

 

 

 足場を踏み砕かんばかりの勢いで突撃する。

 

 リンの持つ番傘型の武器、『月華』に備えられた主なギミック2つ。

 

 1つめは、現在の番傘としての形状を基本とした形態で使える射撃機能。番傘の先端に仕込まれた銃口から、連射性に優れたビー玉状の弾丸を発射する射撃戦に対応した機構。

 

 2つめは、番傘の柄を引き抜くことによって使える仕込み刀。傘の部分を取り外す事によって、射撃能力は失われてしまうがそれをカバーするように通常の傘形態よりも攻撃力は高く、防御性に優れた傘部分は開いて盾や投擲としても使用することもできる。

 

 単純なギミックだが、先程のように流れるような不意打ち気味の一撃として繰り出されてしまえば、私も対応できるかわからない。なにせ相手は私の想定以上に戦闘経験は豊富であり、武器の使い方も上手い。

 

 戦いの選択肢を絞る為に、まずは遠距離攻撃を潰す。

 

 疾走しながら自分の持つ畳まれた傘型武器を開く。

 傘の骨組みだけであったそれは、開かれると同時に傘の先端からミズクラゲ模様が施されたほんのりと厚みのある膜が展開される。そしてチェンソーのように唸りを上げて高速で回転する武器を勢い良く投げ放つ。

 

 骨組の先端に装備された刃が、火花を放ち岩壁を削る。

 

 

 「っ、なんじゃそりゃ! かっけぇ!!!」

 

 「いいでしょー? リンの傘には無い機能だけど、ネっ!」

 

 「はあ!? それはズルだろ! 俺の武器にもそのベイブレード機能つけとけよ!」

 

 

 距離を詰めて来た私にリンは番傘の銃口を向けて迎え撃とうとしていたが、光を放ち高速で回転しながら接近してくる傘型武器の存在に番傘を構え直すと弾くようにして迎撃する。

 

 そしてその隙に距離を詰めて踏み込み、無手となったまま拳を掌底の形で突き出すが当然のように対応される。

 

 そこから更に回し蹴り、拳打、連続で繰り出した攻撃はいなされる。

 

 隙を見つけて突き出した拳に合わせるように柄頭を叩きつけて相殺されてしまう。それどころか、体捌きを合わせて踏み込んだこちらの足を上から踏みつけて動きを封じてくる…ヤバ。

 

 横薙ぎに振るわれた番傘が直撃する寸前。投げ放った傘型武器が空を切り裂き弧を描きながら舞い戻り、リンの攻撃を弾く。

 

 戻って来た自らの武器をすぐさま拾い上げて、丸鋸のように回転する刃を叩きつけんと地面を掬い上げるように振るう。それに対してリンも、上段から叩きつけるように番傘を振り下ろす。

 

 

 (〜〜〜っ! 重っ……なんて馬鹿力してるのさ!?)

 

 

 互いが膂力にモノを言わせた強引な一撃。

 武器がぶつかりあった瞬間、僅かな衝撃と共に火花が飛び散る。

 

 ギャリギャリと耳障りな音が響き、武器が擦れ合う。拮抗状態を作り出した瞬間を狙い僅かに力を抜いてリンの体勢を崩しに掛かる。

 

 それは数分前の戦闘で、リンが仕掛けた膠着状態を崩す為の一手。先程のお返しだと言わんばかりに、半身を捻って背中を見せたまま前のめりに体勢を崩したリンへ横凪の一撃をお見舞いしようとする。

 

 ───しかし、それよりも速く。

 前のめりとなり体勢を崩したリンが地面に手を着くと、僅かに身体を捻って繰り出した後ろ回し蹴りがヒットする。

 

 正面から武器を持つ私の手を穿つかのように、踏み砕く勢いで叩き込まれたことによって武器を弾き落とされた。

 

 

 「うぇええ!? その状態から反撃できるの!!?」

 

 「そりゃ、鍛えてますか! お前も一緒に筋トレするか? 目指せムキムキボディ!!!」

 

 「筋トレでどうにかなる話じゃないでしょ…!? というか筋肉ムキムキのヤッチョとかなんかやだ! そんな需要なんてないから!」

 

 「安心しろ。世界は広いんだ、攻撃力がゴリラ並みの歌姫には知り合いがいるし、多分需要あるぞ…?」

 

 「ひぇ…!」

 

 

 筋トレってしゅごい…!

 身軽とか体感がいいとかってレベルの話じゃない気がするんだけど。なんだこれ、側から見たら『いら◯とや』の桃太郎がとんでもないアクロバティックな動きで戦闘してるシーンなんてシュール過ぎるにも程があるでしょ……!?

 

 あらぬ方向へと飛んでいった武器を回収しながら、飛び退くのように距離を取る。そして桜が舞い散るようなダメージエフェクトに覆われた片腕に目をやり、思わず顔を顰めてしまう。

 

 

 (───ああ、やっぱり強いな…!)

 

 

 なんとなく、こうなる事はわかっていた。

 いくら自分の能力やステータスを底上げして本気となった彼に挑んでも、自分ではきっと叶わないのであろうという事は。彼の戦闘データや、異世界の技術で造られた贈り物、今の私はチート状態とも言えるくらいには強いだろう。

 

 パラメーターやステータスならこちらが有利だというのに、それでもまだ届かない。

 

 どれだけ強さを盛ったところで、戦闘の技術や経験値に差があり過ぎることが正面からの戦闘で痛感させられる。なにせ相手は文字通りに命を賭けて、身を挺して世界の危機を幾多の星々を救ったという英雄の1人だ。

 

 ───そしてそれは、過酷で困難な旅路と戦いの中で培っていたものなのだと私は知っている。これだけの戦闘能力が一朝一夕で身につくものではない。

 

 ……リンはあまり私に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。彼のことが知りたくて、それとなく聞いてみた時はどこかはぐらかすような態度で会話をしていた。

 

 それでも、いつだったか。

 彼と共に過ごした長い時間の中で私がお願いして、彼の仲間のことや星を拓く列車、その開拓の旅で困難な冒険譚なんかを笑い話混じりに話してくれたことがあった。

 

 人が住めない永久凍土の星。惑星に定着せず宇宙を放浪している方舟型スペースコロニー。夢の世界が存在する「夢の地」「宴の星」といった別名を持つ銀河随一の歓楽街。

 

 そして彼が列車の仲間たちと最後に訪れたという未知の惑星であり、そこに存在していた「永遠の地」。

 

 そこで仲間たちと共に乗り越えた冒険の数々を抜粋するような話をいくつか聞いた。そんなすごい人が私の隣に居たんだと、ウミウシの身体で飛び跳ねて興奮するように沢山質問をしたのを覚えている。

 

 そんな私の言葉を聞きながら、彼は困ったように笑いながらも言葉を返してくれた……一瞬、暗闇に包まれた空を見上げて、どこか辛そうに、そして寂しそうな表情を浮かべた彼の姿を見てしまった。

 

 いま思えば、無神経な質問だったことだろう。

 

 リンが私に語ってくれた冒険譚はどれも心惹かれるような楽しそうな物ばかりだった……でも、本当はそれだけではないのだろう。彼が私に語ってくれたのはあくまでもその一部で、明るい側面だけだ。

 

 それだけじゃないはずだ。

 きっと本当は、もっと残酷で悲しい旅もあったはずだ。彼は私にそれを見せないようにしてくれていただけだ、だって8000年という旅の中でもそうだった。

 

 彼が培った力も、磨き上げた強さも、その戦いの中で築き上げたものだろう。彼は自分の強さを貰い物で与えられた、他人より恵まれただけの力と才能だと自嘲するように言っていたが……そんなはずないだろうに。

 

 

 (……可哀想だね。それだけ強くならなくちゃいけなかったんだもんね)

 

 

 確かに才能はあったのかもしれない、それでもそれを磨き続けて来たのは紛れもなく彼自身の努力によるものだ。

 

 自分のわがままで彼に剣を抜かせ目を逸らしたくなる惨状作り上げさせたあの日、武器を握って戦う彼の痛ましさすら感じるような姿を知ってしまった。

 

 彼は誰かの為に戦える人間だった。様々な冒険や戦いの中で強くなった。強くなるしかなかった、強くなってしまった。

 

 開拓の旅で、守りたいモノの為に、いつだって誰かの為に、誰かの代わりに前に立って戦って来たのだと……そしてそれだけ傷つけられて来たのだろう

 

 本当に、まるでお伽話や英雄譚から飛び出して来たような人だった。でも英雄が“誰かを”守る為に戦うのなら、誰が“英雄を”守ってあげるのだろうが。

 

 ───私がこの人を守れるくらい強かったらよかったのに。隣に立つに相応しいくらいに、すごい存在だったらどれだけ良かったか。一方的に守られるのではなく、彼を支えられる存在になりたいと。

 

 とっくにボロボロなのに、辛いはずなのになんてことのないと誤魔化すかのように笑う、傷だらけの英雄()の姿を見てそう思わずにはいられなかった。

 

 

 「───ねえ、リン……もう休憩してもいいんじゃない?」

 

 「ん? なんだ、もう降参かッ…!」

 

 「……ふふっ、冗談! 降参するべきなのはリンじゃないかな。いま投降してくれれば、ヤッチョが膝枕で寝かしつけてあげちゃうよ! なんと子守唄つき!」

 

 

 だからこそ自分の好きな人に、そんな思いや辛そうな顔をさせる世界に帰ってほしくないと……口に出せない小さなわがままを胸に秘めている。

 

 

 (ねえ、リン……強い人って可哀想だね)

 

 

 ───感傷に浸るのはいまじゃない。今はこの戦いに集中しなければ。彼が本気で応じてくれているこの戦いで、自分はもう一方的に守られるのではない、これほどまでに強く慣れたのだと証明して見せろ。

 

 真正面からの戦いでは勝てない。

 このままやりあったところで、自分が押し負けるのは時間の問題だ。

 

 故に逆転の一手として温存しておいたとっておき、『必殺技のウルト』という手札を切る。

 

 本当ならもっと自分に有利な戦況で、確実な勝利を狙えるタイミングで発動したかったのだがそんな贅沢はもう言ってなんていられない。ウルトの超広範囲攻撃は強力だが、その分デカい溜めが必要なのだ。

 

 鍔迫り合いとなっていたリンを振り解き、宙へ飛び上がる。

 

 私が何をしようとしているのかリンは察しているのだろう。だが、こちらを妨害するような動きは見せずに番傘をクルリと回転させて構え直す。それは抜刀術のような構えで、正面から私の攻撃を迎え撃つ気でいるのが見て取れた。

 

 着ぐるみに隠されたマスクの奥でニヤリと笑い、こちらに視線を向ける彼の表情(かお)は「やってみろ」と言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべているに違いない。

 

 ───上等じゃないか。それなら遠慮なくやらせてもらおう。

 

 ウルト発動に為に必要な特殊なビー玉を口に含んで、傘型武器の形状を変化させて柄に吹き入れる。すると次の瞬間、吹き入れたビー玉は吹きガラスや飴細工のように形状が変化してみるみるうちに大きく膨れ上がる。そん大きさは聳え立つ岩壁を優に超えている。

 

 際限なく大きく膨れ上がった透明な砲弾を地上に居るリン目掛けて解き放つ。そして発射された砲弾は真っ直ぐに伸びて、速着とも言える速度で着弾すると大爆発を起こした。

 

 響く轟音と突風。

 

 大きく膨れ上がったキノコ雲、キラキラと舞い上がった砂塵やガラス片、視界を覆い隠すような土煙によって、一瞬で視界が塞がってしまう。観客席からは歓声に近い声が聞こえるが、今はそれが私の集中を掻き乱すようなノイズにも聞こえてしまう。

 

 

 「───()()……!?」

 

 

 そんな、小さな疑問の種が胸中に植え付けられる。

 たった今、自分はウルトによる広範囲攻撃を放ったはずだ。それは紛れもない事実、だがどういうわけか、ウルトの爆発による攻撃範囲が想定よりも()()()()()に違和感を覚える。

 

 

 「───危ねえっ、人に向けて撃っていい攻撃じゃないだろアレ!?」

 

 「な、後ろ……ぐぅ!?」

 

 

 背後から聞こえる聞き慣れた声、驚愕から思わず反応が遅れる。

 すると次の瞬間、土煙から飛び出してきた小さな影によって、私の体は地面に叩きつけられる勢いで思い切り蹴り飛ばされた。空中で体勢を整える暇もなく、地上に引き摺り下ろされて転がっていく。

 

 なぜ、という疑問は答え合わせのように解消された。

 

 背後から聞こえた声に振り向いたあの一瞬、彼の手に握られていた一本の刀によってあの状況を打破した答えが導き出されてしまった。

 

  

 (───()()()()()。私のウルトを、攻撃を…爆発を斬って相殺したんだ……!)

 

 

 土煙に覆われた視界の中、瓦礫の中から這い上がりながらリンが何をしたのかを理解する。私のウルトに合わせて、自分もウルトを発動して爆発ごと斬って相殺したのだ。

 

 ……いや、リンがウルトを発動するような様子は見られなかった。まさかとは思うが、ウルトという強力なシステムアシストの乗った攻撃もなしにただの斬撃で防いだというのか。

 

 様々な疑問が浮かぶが、それを咀嚼している暇はない。

 

 ザリッと、暗闇に包まれた土煙の中で物音を捉える。

 

 それはまるで疾走して距離を詰めてくるような足音。こちらに接近してくる大きな足音に武器を構える。

 

 先程の爆発のせいで視界は悪いが、だいたいの位置は把握できた。先手を取られる前にこちらから仕掛ける───!

 

 土煙の中に飛び込んできた大きな影を視界に捉えて、力強い踏み込みと共に武器を突き出す。手に伝わる貫くような感触、そのまま傘型武器を付振り上げて地面に叩きつける。

 

 

 「ビックリしたけど、でもこれで私の……っ───!?」

 

 

 地面が陥没する勢いで叩きつけた攻撃によって、舞いがっていた土煙が吹き飛ぶ。

 

 晴れた視界の中、私の目に飛び込んできたのは傘型武器によって貫かれたヘンテコな着ぐるみ姿。それはまるで()()()()()着ぐるみのように潰れていて、風に靡くようにゆらゆらと揺れていた。

 

 刺し貫かれた着ぐるみが頭部のみを残してダメージエフェクトと共に消える。

 

 「───」

 

 

 思考が停止する。

 

 嘘でしょ。まさか(デコイ)…!

 驚愕に染まり思考を鈍る一瞬、背後から飛び出して来た刺客。

 

 それは最近では懐かしさすら覚えてしまうような男性アバターの姿。

 

 姿を覆い隠していた着ぐるみは消えて露わとなった、風に靡くメッシュ混じりの金色の髪。紺の袴に赤いパーカーを着込んで合わせたストリート風な衣装。赤い瞳が鋭い視線を向けて、手には抜刀した仕込み刀を握られている。

 

 

 (ああ、悔しいなぁ……やっぱり、強いや…)

 

 

 地を這うように低くした姿勢。

 振り向いて防御するよりも早く、光を反射させる刀身が振り抜かれた。

 

 一瞬の浮遊感。

 こちらが反応する間もなく斬り捨てられたのだと理解する。

 

 

 「あー、しんど……」

 

 

 私が最後に見たのは、鮮烈な一閃によって亡き分たれ崩れ落ちる自らの身体と、その傍で地面に転がっていた着ぐるみの頭部を拾い上げて装着し直すナナシビトの姿だった。

 

 ……ゲームとはいえ、長年付き添った女の子を遠慮なく首チョンパする普通?

 

 

 

 

 

 






 ヤチヨ
「強い人って可哀想だよね……」(痛ましい英雄の姿を見ながら)

 リン
「うひょー! 開拓の旅楽しいぃ〜!!! 待ってろよ鉄墓!いまぶちのめしに行くからな〜!」(ヤケクソ)


執筆中その作品の用語とか設定を使う際に、なんとなく気になりました。

  • 『超かぐ』も『スタレ』も知ってる!
  • 超かぐや姫!しか知らんで!
  • 崩壊:スターレイルしか知らんで!
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