うわっ、前からタケノコが!! 作:七夕ナタ
感想、評価、ここ好き、誤字報告ありがとうございやす!!!
今更? なんですけど、超かぐや姫!とWEGOのコラボのオリジナル描き下ろし可愛いですね! それと新たに書き下ろされてた浴衣姿も可愛い! ゲヘヘ、公式からの供給がありがたいぜ…!
そしてスタレガチャなんですけど、自分復刻キュレネを完凸するか悩んでるせいでSP刃ちゃんを引けてないんですけど、評価見る感じめちゃくちゃ強そうで悩んでます。ウゴゴ、石も金もないってば…!
───相手チームに裏切り者を混じえた、帝アキラ率いる『ブラックオニキス+α』との『KASSEN』は
波乱万丈というか、手がつけられないような混沌を極めていた第一試合は『ブラックオニキス』による両櫓占拠によるコールドで一回戦は呆気なく終わってしまった。というか、裏切り者への天誅に夢中になっていたせいで試合の状況に全く気がつけてなかった……やべ。
だけどなんとも
だがどういうわけか、から試合終了の合図が出るまで
第一試合が終わってから、少しだけその場で待機を言い渡されたのだ。どういうことだろう、なんて不思議に思いながら待っている間にヤチヨから話をそれとなく聞いたのだが。
何やら
『うーん、なんでだろうねぇ? ヤッチョも
『うぎぎ、絶対嘘だ……裏でお前が何かしてるに決まってるだろっ! この極悪管理人がっ、可愛い顔して息を吸うように嘘つくんじゃねえ。一般ユーザーにこんなことしてタダで済むと……ぶえ!?』
『ねえ〜? 狭いからもう少しそっち詰めてくんないヤチヨ〜』
『やだ。これ私のだもん……うふふっ、ダメだよリンってば静かにしてなきゃ。今のリンはヤッチョの椅子なんだから、椅子は喋らないもんね? あ、彩葉も座る?』
『え!?……………それはまた今度にしておきます』
『おい待て後輩。また今度にしておきますってなんだ…!? というかいつまで人の上に乗っとんじゃお前らは! 退けよ重いだろうが!!』
『こらこら、女の子に重いとか言っちゃダメでしょ。それにツクヨミに体重なんて機能は存在してませーん! ヤチヨたちは羽毛のように軽いんだからっ! ねー? かぐや〜?』
『うお、ヤチヨの重力場が…!』
『かぐや???』
視界の先では、ワイヤーで再びぐるぐる巻きにされて捕えられた先輩の姿があった。この人、試合再開までしばらくその場で待機を言い渡されたタイミングで私と目を合わせるなり背を向けて逃げ出そうとしたのだ。
そこへヤチヨが足を引っ掛けて転ばせた隙に、私が再びワイヤーで捕らえてお話をすることにしたのだ。どこ行くんですか、逃がさないって言いましたよね先輩。
そして地面に倒れたまま動けずにいる先輩の上で、かぐやとヤチヨが腰を下ろして時間を潰しながらお喋りしていたのだ……べ、別にちょっと羨ましいとかは思ってないから。推しの椅子になってたり、先輩の上で楽しそうにしてる姿に、羨ましいなんて思ってない。
ただ椅子にされている先輩が、何やら助けを求めるような様子で必死に私の方を見ているが……その姿になにかこう、背筋にゾクゾクとした甘い痺れというか、よくないものが私の中で芽生えてきてしまっているような気がする……かわいい。ボソッ
しかしなぜか、ヤチヨと先輩のやりとりを見ていると
────銃声が聞こえてくる。
思考に更けていた意識が引き戻される。マズイマズイ、今が戦闘中だということを完全に忘れていた。戦場のど真ん中で、なんていくらなんでも長考し過ぎてしまった。
こちらを狙う銃声が近づいている。飛び込むようにして最速で付近の岩の後ろへと隠れる。それは恐怖から姿を隠す為の行動ではなく、相手を背後から襲い自分に有利な展開を作る為に行う布石。
私は静かに己の武器である双剣の両端を繫げてブーメランに変形させ、岩の背後から投げつけた。まあ、それが直撃するだなんて甘い考えは持っていない……まあ、油断したまま攻撃がヒットしてくれたのなら万々歳だが。
そして予想通りに相手が攻撃を躱す隙を見て素早く飛び出す、避けられたブーメランは仕込まれたワイヤーで即座に手元へと回収して片手剣に変形させ、斬りかかった。相手も瞬時に反応して鍔迫り合いになり、火花が飛び散る。
もちろん、その相手は帝アキラだ。くそう、余裕そうな顔で受け止めやがって……!
「おっ、いいね。悪くないんじゃない?」
「何それ、むかつく……っ!」
帝アキラ。ツクヨミにいればその活躍ぶりは嫌でも耳に入って来ていたが、こうして顔を合わせて言葉を交わすのは
私が向こうに気づいてるように、相手だって私が誰かとっくに気づいているのだろう。だからこうして、周りくどいやり方で接触して来たんじゃないか、なんて考えたりもした……いや、それは考え過ぎか。きっと気になったかぐやというライバーの側に偶々私が居ただけだろう。
振り下ろされた棍棒を受け流して、相手の視界の外へと回り込むように位置を調整しながら斬りかかるも、帝はその場から動くことなく涼しい顔で攻撃を受け止めてくる。
その姿に、無意識に苛立ちと焦りが募っていく。続け様に双剣を振り回すが、こちらの動きを完全に見切った帝に襟首を掴まれて投げ飛ばされてしまう。
悠々と距離を詰めてくる帝。すると私の背後からうなぎ型の弾丸が発射され帝を狙い撃つ、それは私と一緒に行動していたかぐやのハンマーが形状を変化させた『うなぎ砲』による攻撃だった。
だが、帝は自分に向かって放たれたうなぎ型の弾丸を焦る事なく、正面から棍棒で的確に弾きを落とすことで完全に防御していた。何それ、そんなんありか……!
「はは……なんだ、思ったよりも元気そうじゃん。しょげてるんじゃないかと思ってたけど、もしかしなくてもかぐやちゃんとリンさんのおかげだったりする?」
「知らない。私のことで口出さないでっ」
「おっと、そんなに怖い顔して睨まれたらお兄ちゃん悲しくて泣いちゃうぞ?」
「……うえっ!? お兄ちゃんっ!!? うっそ! これが!!?」
「お、さらっと酷い事言うねかぐやちゃん」
私に合わせて、横からちょこちょこと攻撃を加えていたかぐやが手を止めて、驚愕に染まった表情で私の方を見て来ている。だから嫌だったんだ……何やら大袈裟な実況の声や、会場のざわめきが嫌でも聞こえてくる気がする。
もう後戻りはできないだろう。帝アキラ────否、
「あれ? なんだ、彩葉から聞いてなかったの? でもまあ、うちの妹と仲良くしてくれてありがと。色々と不器用な子だからさー、かぐやちゃんがフォローしてやってくれると俺も嬉しいかな」
「うるさい! かぐやに変なこと吹き込まないで! それに今更、兄貴ヅラしないでよっ。そもそも普段俺様キャラで配信してる人が兄ですなんて言えるわけないからっ!!!」
「うおっ、マズイな。妹にそれを言われると思ってたよりも破壊力が高いかも……!?」
ずっと思ってたけどすごいなあれ、いや、まじでどうなってんだ? 目で追えないくらいのスピードで動いてるヤチヨもそうだが、なんで先輩もそれに対応して戦えてるんだ。『お助けヤチヨ』つえー、なんて思ってたが、あそこまでバフが乗ってるとなると相当の戦力差があったということなのか……?
あ、先輩がヤチヨに足掴まれたまま振り回されて投げ飛ばされそうになってる……わ、すご、あの状態から掴まれた軸足を捻ってカウンターの蹴りが入れられるんだ……なんか凄すぎて某戦闘民族同士の戦いを見せられている気分になってくる。
あんなのカ◯ロットとベ◯ータの戦いじゃん……あ、遠くで先輩の援護してた乃依がヤチヨの投げた傘で貫かれて落とされた。ヤチヨパワーしゅごい。
「余所見なんて、随分と余裕じゃん?」
「────うぐっ!」
先輩とヤチヨの戦いに気を取られていた隙に、帝の棍棒でポコポコと叩かれる。
「いやー、そのスキン当てやすくて助かるわー。いつまでもそのままで、なんて無理なのはわかってるだろ? 後悔することになる前に、本気でやろうぜ」
「っ……そっちだって、変な着ぐるみ来て戦ってる人がいるみたいだけどッ!」
「いやいや、あれはもう呪いの装備みたいなもんだから……まあ、あの人
「───は? なにそれ、人のもん勝手に持っていかんといてや」
「……へえ、なるほど。ん〜、ちょっと複雑だなぁ。兄として妹の成長を喜ぶべきなのか……ま、リンさんにもやっぱ色々と聞かなきゃならんことができたっぽいけど」
「───ハッ、殺気!? ば、バカな! 後輩やお転婆娘どもだけじゃなくて、うちのリーダー(仮)からも何やら殺気を感じるぞい……ぐえっ!!? テメ、このやろー! 横からド突いてくんのは卑怯だろっ!」
「えー、ヤッチョを相手にしてふざけてる余裕があると思ってるのかにゃー? ほらほら、どんどん行くよー!」
避けられる筈の攻撃を回避できずにヒットしてしまう。姿を隠す為に着ているこの着ぐるみはヒットボックスも大きく、腐ってもプロゲーマーな兄を相手にするにはとんでもない足枷になってしまっている。
腹立たしいことに兄の言葉は正しいものだと理解できてしまう。私は覚悟を決めて、姿を覆い隠していた着ぐるみを脱いだ。
着ぐるみは光の粒子となって解除され、着ぐるみの下に隠されていた本来のアバターが露わとなる。青を基調とした着物にパーカーとコルセットのようなベルトとブーツを合わせた、ちょっとカッコよく仕上げたストリート風のファッション。狐モチーフの尻尾と耳が、引き絞られるようピクピクと揺れる。
「なんで私のアバター知ってんの」
「そりゃ、お兄ちゃんはなんでもお見通し…ってね」
「……キモいっ」
「おいおい、そんな顔してマジトーンで言われるとお兄ちゃん泣いちゃうぞ?」
胸の中で燻る衝動のままに帝へ切り掛かる。だが、こちらの攻撃は掠るどころか軽く受け流されてしまい、カウンターの要領でこちらがダメージを貰う羽目になってしまう。なんだこの人、強いのは知っていたがここまで強かったのか。
「そいや、母さんってば彩葉のこと気にしてたぞ? 連絡くらいとりゃいいのに」
「っ……こんの、こっちだって順序ってもんがあるの!」
「よ、よくわからんけど、うりゃあ〜!……ぶえ! うわああああ!!?」
「お、かぐやちゃんやっぱ筋いいね。話を戻すが、それって母さんの教えをいちいち間に受けちゃうからギスギスすんの。母さんは彩葉の反抗待ちなんだからさ」
「っ、知らん! わかった風なこと言って口出さないで!」
「これでも兄貴なんだからわかってるに決まってるじゃん」
ボイスチャットを配信用から個別の内部通信用に切り替えて、帝がお説教をかましながら攻撃してくる。
途中、かぐやがハンマーの背部からジェットエンジンを点火して奇襲を仕掛けていたが、帝は棍棒で攻撃を逸らすとかぐやは軌道を変えられたジェットエンジンに引きずられるように飛んでいってしまう。なにやってんのかぐや…!
兄のありがた迷惑なお説教への反論をじっくり考えたいところだが、そうもいかない。他のことに思考を割けるほどの余裕は今の私にはなかった。
「それはそうと、母さんにリンさんのこと紹介したってマジ? 母さんに連絡した時、電話越しになんか気に入ってたっぽい反応でビックリしたんだけど……お兄ちゃん的には彩葉にはまだそういうのは早いと思うんだけどな〜」
「え……?…!? は!? なにそれ知らん……!!?」
「あれ、そうなん? なんか電話した時に、彩葉のスマホから職場の人間……たぶんリンさんが電話に出て軽く口論になったって話聞いたけど」
し、知らない知らない知らない!!? なにそれ初耳なんですけどっ!? え、どうゆこと? なんでうちの母親と先輩に繋がりがあるのさ? というか気に入られてたとか、紹介してたってなに!? なんのことだそれ!!?
いや、でも……私が体調を崩した日から、頻繁に掛かって来ていたお母さんからの電話も鳴りを潜めたというか、10件以上はあった着信履歴は不気味なくらい落ち着いていた気がする。
……え、マジ? 私の知らない間に母上と先輩がお知り合いになってた…ってコトォ!?
───そんなことをしているうちに、牛鬼の元へと帝が辿りついてしまう。こちらが先に倒したいところだが、帝がマップを破壊してできた瓦礫に邪魔をされて思うように動けない。
その隙に、帝が棍棒から刀を抜いてウルトによる超加速を発動させる。あっという間に牛鬼を切り伏せて撃破してしまった。
「───ま、もっとうまくやれよな。俺にみたいに」
「く!」
瞬殺。
ボイスチャットを配信用に切り替え直して、決め台詞と共にウインクを放つ。意味ありげな言葉や余裕綽々な態度にむかっ腹が立つが、その手捌きには文句のつけようがなかった。
くそ、櫓と牛鬼の間にはまだ少しだけ距離がある。櫓を占拠される前に帝に追いつければ、まだ勝機はある…!
『ボトムレーンのヤチヨも牛鬼を撃破したぞー! 黒鬼の自称マスコットを武器として振り回し牛鬼に叩きつけて撃破! なんだそりゃ!? とんでもないパワープレイを見せつけていくっ! 今日の歌姫は一味違うぞっ!?』
「グエー!牛鬼が死んだンゴ!!……あ、あのヤチヨさん? どうして俺は胸ぐら掴まれたまま引きずられているんでしょうか…???」
「ふふーん!そりゃもちろん、このままリンを叩きつけて櫓を占拠する為だよ?」
「ヒェ……お、おま、なんて恐ろしいことを考えるんだ! ふざけんな! もう手加減してやらねえからなぁ! ぐぬぬ、うおこの歌姫力つよい!!?」
「ほらほら! さっさとこの戦いを終わらせなきゃ! リンにはこの後、ヤッチョとの楽しいロマンチックなパーティーが待ってるんだからさ……!」
「イヤッイヤイヤ!!! ヤーッ!!! ヤダッーー!!! 助けてミュリオンこのままじゃ俺食べられちゃうぅぅぅ!!……いや、あいつも同じようなこと言ってたからやっぱダメだ!!! 助けて丹恒! 俺にはもうお前しかいない!!!」
「は? 誰それ??? いまヤッチョとお話ししてるのに別の女の人の名前呼んだの???」
ヤチヨ…!
……え? ヤチヨ? なんかとんでもない脳筋パワープレイで先輩のこと追い詰めてない???……あ、駆けつけた乃依の鈍足連射を先輩を盾にしてガードしてる……えぇ〜??? なんかとんでもなく非人道的な戦法を見せられてるような気がする。
あ、先輩が櫓にダンクシュートされた………ひぇ。
でも今日も推しが笑顔で可愛いからヨシ!!!
え〜、『KASSEN』はただいま三回戦目を迎えようとしています。え、二回戦目はどうしたのかって? はっはは、普通に負けたが??? スーパーヤッチョが天下無双状態で普通に轢き殺されましたけど何か???
……いや、ふざけんな。おかしいだろ!あいつ強すぎるって!!? なんかもう、アメコミに出てくる暴力で全てを解決するような全身緑色の巨人にやられるヴィランになった気分でボコボコにされてるんですけどっ!!!
おかしくね? こういのってさ、ほら、転生者お得意のチートパワーで『俺TUEEE!!!』な展開で無双するもんじゃないんスか? いまんとこスーパーヤッチョのチートパワーで蹂躙されてるせいで『俺YOEEE!!?』な展開にしかなってないんですけど???
とまあ、胸中で嘆いている俺はというと───
『激戦っす! 再び各々が櫓を取得し、かぐやいろPはジャンプ台から櫓へ!』
『彼女たちを待ち受けるのは帝との一騎討ち! そしてこちらにも目を離せない! 天守閣へ向かうヤチヨを止めるべく、再びこのマスコットが立ち塞がったー!!!』
解説の通り、天守閣へ向かうヤチヨの足止めの為に櫓付近で睨み合うこととなっていた。ふっふふ、早く終わらせて帰りたい……!
「ふふ、流石にリンでもそろそろキツくなって来たんじゃない? いま降参すれば後でヤチヨが優しく慰めてあげるんだけどな〜」
「なに言ってんだ、こちとら漸く身体が温まって来たところだっての。そんなつれないこと言わずに、もう少しだけ付き合ってくれよマイハニー」
「っ〜〜!………い、今のちょっと破壊力やばいかも。そのふざけた着ぐるみ脱いでもう一回だけ言ってみてくれないダーリン、できればこう、耳元で愛を囁く感じでっ!」
「うえ……やだぁ」
なんでそんな食いつきがいいんだよっ。ふざけてマイハニー呼びしただけじゃん、そんな目を輝かせてお願いしてくるようなことじゃないでしょうが……そんな顔したところで、絶対にやってやんないからな。
因みに、俺と一緒にヤチヨを足止めしていた乃依きゅんは先に残機を使い果たして消えちまったよ。あやつなら俺を守る為に己の身を挺して庇い散っていったさ。
くっ……乃依きゅん、なんて良いやつなんだ……! でもさっき、鈍足連射で俺が肉壁にされてるのに遠慮なしでバカスカ撃って来たのは許さないかんな???
『うおおおお!!? やばいやばいやばい! ヤチヨのウルト飛んで来る! 乃依きゅんヘルプ!!?』
『はあ? ちょ、ちょちょ、その暴走機関車こっちに連れてくるのやめてくんないリンちゃん!!?』
『むり! すまん、俺の代わりに潔く逝ってくれ!! 我が盾となって散れ!!!』
『おま、絶対にゆるさ───…ぁ』
『ふぅ、あぶねえあぶねえ……の、乃依きゅぅぅぅぅんん!!? ちくしょう!!! いったい誰がこんな酷いことを! 絶対許さねえ!!!』
『え、ええぇ〜……私が言うのもアレだけど、とてつもなく酷い光景を見せられた気がする』
『なに言ってんだ。戦場なんて常に蹴落とし合いだろ?』
『うわっ、英雄の口から出る言葉じゃないよそれ』
ちくしょう乃依きゅん! どうして俺を庇うような真似をしたんだよ! でも安心してくれ、君の尊い犠牲は絶対に無駄になんてしねえからな! 俺が絶対に仇を取ってやるからなっ!!! だから安心してここの戦いを観戦しててくれ!……いや待て、俺が死んで観戦してれば、それはそれで色々と楽だったんじゃないか?………ヤッベ、ミスったかな。
まあ、いっか!
アキラくんの方も、戦い始めたっぽいし、こっちもぼちぼちやっていくとしますか。それに、男の子としてはやっぱり負けっぱなしというのは悔しいので、ちょっと本気で勝ちに行きたい所存でございます。
───準備運動のように小さく、軽く跳ねて肩や首をほぐすように回しながらステップを踏み続ける。先程までは一方的と言えるほどに、ヤチヨにやられっぱなしにされてしまっていたが……この不自由なアバターボディとヤチヨの動きにも『慣れて来た』ところだ
小さく息を整えて、番傘の武器を構える。
「さて、そんじゃちょっと本気で行くけど……後で泣くなよ?」
「………っ!」
───いつか群星に辿り着かんとする星海の世界から、この世界へと戻りツクヨミに初めてログインしてから数日経ったある日。
ツクヨミの管理人であり、長い時間を過ごしてきたヤチヨから日頃のお礼と再会を記念としてプレゼントされた番傘の武器。それは武器としての設計やデザインなどをヤチヨ本人が手掛けた、このツクヨミに一つしか存在しないリンにのみ贈られた武器。
外の世界で様々な敵と戦ってきたリンとしても、武器としての性能やクセのない仕込まれたギミック、リンのKASSENの戦闘データから計算して作られた手に馴染むような使いやすさなども申し分ない物だった。
そんな良質な武器だが、設計者が相手となれば話は少しだけ変わってくる。なにせ相手はこっちの武器の攻撃手段や、絡め手に使えるようなギミックなどを知り尽くしており、武器を主体としたこちらの手札を潰されたようなものだ。
だからこそリンは、自分が培った戦闘技術など剣術や体術といったスキルを主体とした戦闘方法へと意識を切り替えていた……とは言っても、ツクヨミのゲームモードの『KASSEN』などで腕を慣らしていたとはいえ、まともな戦闘経験などだいぶ昔のことなので
それは自分がこの世界に来て、それだけ平穏を享受出来ていたのだろうとリンは心の中で苦笑する。
リズムを整え、手元で軽く振るようにして握り直した番傘型の武器───『月華』を構えてフィールドを疾走する。この武器に備えられたギミックとしては、単純なものとして二つある。
一つめは、現在の番傘としての形状を基本とした形態で使える射撃機能。番傘の先端に仕込まれた銃口から、連射性に優れたビー玉状の弾丸を発射する射撃戦に対応した機構。
二つめは、番傘の柄を引き抜くことによって使える仕込み刀。傘の部分を取り外してしまう事によって、射撃能力は失われてしまうがそれをカバーするように通常の傘形態よりも攻撃力は高く、防御性に優れた傘部分は開いて盾や投擲としても使用することができる。
「ほんといい武器だな、これ!」
「ふふ〜ん。そう言ってもらえるなら、製作者としても嬉しいかな……あ、その武器を使う時はちゃんと心の中でヤッチョのことを考えて大事に使ってくれなきゃダメだから、ねっ!」
「へいへい、そうさせてもらうよ!」
───加速する。
ヤチヨを中心に、周囲を円形に走りながら弾丸を放つ。銃口から放たれているのがビー玉とは思えないようなマズルフラッシュ、けたたましい銃声と共に射線上に立つヤチヨへと向かっていく弾丸の雨。
それに対してヤチヨは僅かに微笑んだ後、同じく傘型の武器を開いて受け止めるのではなく、弾き落とす様に振り回して防御する。あくまでも射撃は牽制用、接近戦で決めるつもりのリンはそのまま距離を詰めていく。
そしてヤチヨもそれに気づいていたのか、回避と防御を併用しながら接近してくるリンを視界に収めながら接近戦に応じるように構えをとる。
「───ッ!」
互いが膂力にモノを言わせた強引な一撃。武器がぶつかりあった瞬間、僅かな衝撃と共に火花が飛び散る。ギチギチと武器が擦れ合い、拮抗状態を作り出した瞬間を狙いヤチヨが僅かに力を抜いてリンの体勢を崩しに掛かる。
それは数分前の戦闘で、リンがヤチヨへと仕掛けた膠着状態を崩す為の一手。先程のお返しだと言わんばかりに、半身を捻って背中を見せたまま前のめりに体勢を崩したリンへ横凪の一撃をお見舞いしようとする。
───しかし、それよりも速く、前のめりとなった勢いを利用したリンが僅かに身体を捻って繰り出した後ろ回し蹴りが、武器を持つヤチヨの手を砕く勢いで叩き込まれたことによって武器を弾き落とす。
「うぇええ!? その状態から反撃できるの!!?」
「そりゃ、鍛えてますか!」
体幹がいいってレベルじゃないでしょ、そんなぼやきと共に大きく弾かれた武器を回収しようと後方へと下がるヤチヨへ更なる追い打ちとして、仕込み刀を抜いたリンが余った傘部分を槍投げの要領で投げ放つ。
目を見開く。
武器の回収を諦めて、即座に無手による対応で飛来する物体を受け止めようとしたヤチヨだったが、数秒後にそれが悪手だったことを思い知らされる。
飛来する武器の影となった視覚から人影が飛び出す。
それはたった今、投げ放った武器へと一息で追いついたリンの姿。飛んで来る武器を受け止めたヤチヨの前で、追いついた武器へ押し出すように蹴りを入れて威力と速度を増加させて穿つ。
桜の花弁が舞い散るようなダメージエフェクトと共に、ヤチヨの片腕が消し飛んだ。そして回復する隙を与えないと言わんばかりに、抜いた刀で刃を走らせる。
逃げる為の足も、いつの間にか崩れている。
(───ああ、やっぱり強いな)
ほんの一瞬とも言える攻防。
迫り来る刃に、ヤチヨは自分の敗北を察していた。彼女の胸中にあるのは自分の力不足とも言える無念や口惜しさによる感情だった。元から、本気で剣を振るうリンに敵わないとヤチヨは理解していた。
それでも、証明したかった。
この戦いが始まって、自分の思い人にぶつけどころのなかった鬱憤を吐き出すと同時に、自分はもう8000年前のように守られるだけの小さな存在ではないと彼に証明したかった。それだけの力は与えてもらっているはずなのに、それでも彼には届かなかった。
ヤチヨはリンという青年がどれだけ強い人なのか知っている。その正体も圧倒的なまでの力も、それを理解しているのはこの世界では自分だけだろうと。
今でも8000年前に、自分のわがままで剣を抜いて彼が作り上げた惨状を、悲しそうな顔と寂しさを感じさせる後ろ姿が脳裏に焼き付いている。だからこそ、そんな彼に守られるだけではなく、隣に立って守ってあげたいと思っていた。
(……可哀想だね。それだけ強くならなくちゃいけなかったんだもんね)
いつだったか。ヤチヨはリンに彼が様々な星や世界でどんな冒険をして、どれだけの困難を乗り越えて戦って来たのか、長い歳月を共に過ごす内に笑い話混じりに聞いたことがあった。
そして彼は自分の強さを貰い物の与えられた、恵まれた力と才能だと自嘲するように言っていた。
本当にそうだろうか。
本当に、それだけだろうか。
彼が磨き上げてきた力や技術が、与えられただけの物や才能に頼った物だなんてヤチヨにはとても思えなかった。確かに才能はあったにかもしれない、それでもそれを磨き続けて来たのは紛れもなく彼自身の努力によるものだろう。
だからこそ武器を握って戦う彼の後ろ姿が、どこか痛ましく思えて仕方なかった。彼のいた世界では、彼よりの強い人はたくさんいるのだろう。そして生き残る為に戦い、それだけ傷つけられて来たのだろう。
それでも守れないモノもあったのだろう。
開拓の旅で、守りたいモノの為に、いつだって誰かの為に、誰かの代わりに前に立って戦って来たのだと……なんとなく理解していた。リンは口にしなかったが、彼が最後に訪れた星で想像もできないような辛く困難な旅を乗り越えて来たのだと、ヤチヨは気づいている。
だからこそ自分の好きな人に、そんな思いや辛そうな顔をさせる世界に帰ってほしくないと……口に出せない小さなわがままを胸に秘めている。
(ねえ、リン……強い人って可哀想だね)
───そんな独白と共にヤチヨは瞼を閉じて、微笑みながら迫り来る刃を受け入れた。
ヤチヨ
「強い人って可哀想だよね……」(痛ましい英雄の姿を見ながら)
リン
「うひょー! 開拓の旅楽しいぃ〜!!! 待ってろよ鉄墓!いまぶちのめしに行くからな〜!」(ヤケクソ)
執筆中その作品の用語とか設定を使う際に、なんとなく気になりました。
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『超かぐ』も『スタレ』も知ってる!
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超かぐや姫!しか知らんで!
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崩壊:スターレイルしか知らんで!