うわっ、前からタケノコが!!   作:七夕ナタ

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 お気に、感想、評価、ここすき、ありがとうございます。

 この作品、4話くらいで終わりの自己満短編のつもり執筆してました。なのでストックはもうないんですけど、楽しくなってきたのでまだ続けますね。








今時は何もかものスピードが早いんですって

 

 

 

 

 

1:一般ナナシビト

 お久しぶりぶり座右衛門

 

2:名無しの転生者さん

 お、イッチじゃんおひさ〜

 

3:名無しの転生者さん

 イッチやんけ、生きとったんかワレ!

 

4:名無しの転生者さん

 ホンマやん!

 しばらく何もないからマジで死んだのかと思ってたけど生存確認できてよかったわ、無事そうでなによりや

 

5:名無しの転生者さん

 お、イッチじゃん

 前回掲示板に来た時は平安か戦国時代だっけか? いま何してんの?

 

6:名無しの転生者さん

 そういやそれくらいの時だったっけか。

 イッチが『拙者は多分るろうに、そしてこれは殺さずの誓い逆刃刀だ』とか言いながら抜刀斎ごっこでピコハン片手に侍を相手に暴れ散らかしての見た時は正気を疑って爆笑したわ。なんでピコハンで人間が吹っ飛ぶんだよ

 

7:名無しの転生者さん

 草、そんなことしてたのかイッチ

 

8:名無しの転生者さん

 おつかれさんやで。

 こっちとそっちで時間の流れが違うけど、いまどうなっとるん? かぐやちゃんはげんきそ?

 

9:一般ナナシビト

 今はもうみんなが知ってるような現代日本って感じ…多分

 

10:名無しの転生者さん

 おおー!!

 ついにこの時がやってきたのか!

 

11:名無しの転生者さん

 ではとうとう始まるんですね!

 ひまじ…ゲフンゲフン、じゃなかった我々転生者たちが知恵を振り絞った超ハッピーエンド作戦が!

 

12:名無しの転生者さん

 現代日本ってことはもう原作始まってるんか?

 

13:一般ナナシビト

 いや、知らん

 というか今俺『宇宙ステーション・ヘルタ』にいるし、原作が始まってるかどうかとかは確認する術がない。というか宇宙船と諸々に修理費が意外と高くてそれどころじゃない、別の問題で頭抱えてる

 

14:名無しの転生者さん

 

 

15:名無しの転生者さん

 

 

16:名無しの転生者さん

 

 

17:名無しの転生者さん

 

 

18:名無しの転生者さん

 

 

19:名無しの転生者さん

 ……は???

 

20:名無しの転生者さん

 ちょっとまていまなんていった?

 

21:名無しの転生者さん

 ぱーどぅん…?

 

22:一般ナナシビト

 え、だから宇宙船の修理費用が高くて頭抱えてる。もうちょい値下げしてもらえないかアスターちゃんとヘルタに交渉中やな。なんなら靴どころ生足舐める覚悟で縋りついてる

 

23:名無しの転生者さん

 違う、そうじゃない!

 

24:名無しの転生者さん

 お前いまスタレ世界におるんか!?

 というか帰れたのか!? てかなんで帰ってんねん!!

 

25:名無しの転生者さん

 おー、ようやく帰れたのか。よかったやん

 

26:名無しの転生者さん

 おま、おま…おまええええ!!?

 

27:名無しの転生者さん

 おいいい!かぐやちゃんはどうしたんだよイッチィィィ!

 

28:一般ナナシビト

 え…な、なんで怒ってんの?

 ヤチ、じゃなかったかぐやならあっちの世界にいるけど。というかその世界の主要人物を勝手に連れて来れるわけないだろ? そもそもなんでも怒ってんだよ、俺はちゃんとアイツのこと現代に送り届けたぞ!?

 

29:名無しの転生者さん

 ちっがーう!

 それはすごくありがたいしイッチに感謝はしてるが違うんだよイッチィィィィ! 8000年ほんとありがとね!!?

 

30:名無しの転生者さん

 そこまでは序章というかチュートリアルみたいなもんなんだよっ! ここからが本番なのォ!! いや帰るのはイッチの自由だけどさ、せめて一言いれろください!!

 

31:名無しの転生者さん

 草

 8000年のチュートリアルは長すぎるやろ

 

32:一般ナナシビト

 えぇ…。

 でもお前らが百合に挟まったら56しに行くとかいうから、好感度調整だって低くなるよう命令されたし、後腐れなくというか、助言通り変なことにならないように割と早めに退却したんだけど…?

 

33:名無しの転生者さん

 あー、そういえば前にそんなこと言ってたな

 

34:名無しの転生者さん

 公式は百合じゃないって言ってる定期

 

35:名無しの転生者さん

 それは公式が勝手に言ってる定期

 

36:名無しの転生者さん

 以下イッチに百合の良さを語るスレ民の前回のやり取り

 スレ民「分かってもらえたかなイッチくん」

 イッチ「ふむ。百合に理解はないが、どうして挟まるのは大罪なんだ?」

 スレ民「おk、ならわかりやすく例えを変えてみよう。イッチの推しカプの『ファイキュレ』もしくは『アグサフェ』に挟まるNTR物の竿役間男がいたらどうする?」

 イッチ「は?そんなの俺の持てる力の全てを使ってそのクソ野郎をぶち殺すしかないじゃないですか。2度とそんなふざけた真似できないくらいにそいつができるだけ苦しんで死ねるように努力しますけど???で、尊い空間に挟まろうとするカスはどこにいるんですか???

 おっと殺気がしゅごい、過激派だったぞい「スレ民」

 

37:名無しの転生者さん

 いや言ったけど、言ったけどさあ!?

 

38:名無しの転生者さん

 でもさ、急に帰れとは言ってないじゃん!!

 

39:名無しの転生者さん

 草……いや草じゃないが???

 

40:名無しの転生者さん

 まあスタレ世界に無事帰れたのは分かったが、あっちだと8000年くらい経過してたがそっちは大丈夫だったのか?

 

41:一般ナナシビト

 なんか問題なかった

 一応かぐや姫の乗って来たタイムマシンの解析&コピーも8000年の間に終わってて、必要があればタイムトラベルで元々いた時間軸に帰れるようにしてたんだけど、そもそもスタレ世界だと数週間くらいしか経ってなかったっぽい。よくわからんが好都合主義チートパワーが働いてくれたみたいで感謝感謝

 まあその間、音信不通扱いになってたみたいで知り合いみんなからのメッセージがすごい事になってた

 

42:名無しの転生者さん

 そっか

 イッチ、羨ましいよ…俺たちの超ハッピーエンド作戦終わっちゃった…

 

43:名無しの転生者さん

 まだ始まってすらいない企画段階で潰えただけだけどな

 

44:名無しの転生者さん

 落ち着けおまいら……いや、ど、どどどどどーすんの!?

 

45:名無しの転生者さん

 ふぅー…おれちゃんちょっと横になりますね

 

46:名無しの転生者さん

 終わったッ! 超かぐや姫完!……うぅ泣

 

47:名無しの転生者さん

 帰るにしてもちゃんと別れの挨拶は済ませて来たんか?

 

48:一般ナナシビト

 え、普通に『バイナラ!』って感じでメモ書き残して来たで

 野暮用済ませたら様子見に戻るつもりではあったけど、一応あっちの世界にも戻れるっぽいし早めに戻ったほうがいい?

 

49:名無しの転生者さん

 ……え、それだけ?

 もっとこう、なんか感動的な別れはなかったの?

 

50:名無しの転生者さん

 おま、8000年ちょい一緒にいた相手の別れにしてはあっさりし過ぎやろ…(困惑)

 

51:一般ナナシビト

 まぁ、深夜テンションも相まってほぼ夜逃げみたいな感じだったかもしれん

 

52:名無しの転生者さん

 は?

 

53:名無しの転生者さん

 うそだろ?

 

54:名無しの転生者さん

 戻れ、今すぐ戻れ。

 超ハッピーエンド作戦とかどうでもいいから、帰るにしてもちゃんと別れの挨拶はして来なさい!!

 

55:名無しの転生者さん

 ハピエン作戦はどうでもよくないやろ!!

 

56:名無しの転生者さん

 そうだそうだ!それにかぐやちゃんの配信だって、イッチの脳内掲示板配信を通して俺たちは彼女の活躍が見たいッ!コラボライブだって応援したい!!

 

57:名無しの転生者さん

 >>55 >>56しっー!静かにしてなさい!お母さんたちはいま大事な話してるの!あっちで遊んでなさい!!

 

58:名無しの転生者さん

 はーい

 

59:一般ナナシビト

 お、おう

 とりあえずなる早で戻ってみるわ。

 

60:名無しの転生者さん

 なる早じゃねえ、いますぐ戻れ。

 8000年がこっちで数週間なら、こっちでの数日は向こうでどれくらいの経ってるかわからんやろがい!タイムマシンがあるとはいえ、行動で示して誠意を見せんかい!

 

61:名無しの転生者さん

 そっか、確かにそうじゃん

 

62:一般ナナシビト

 おk、昼飯食ってから戻るわ

 アスターちゃんとアーランくんが奢ってくれるらしいからご厚意に預からせてもらう。それと野暮用でヘルタともう少し話したいし

 

63:名無しの転生者さん

 食っとる場合かーッ!

 

64:一般ナナシビト

 はあ!?うるせいやい!

 こちとら数千年ぶりに戻って来た世界のジャンクフードが食えるんやぞ!堪能させろ!いままで味気ない食事で済ませて来た俺の気持ちがわかるってのかよ!?

 

65:名無しの転生者さん

 それはわかんないマジでごめん!

 でもな!だとしてもテイクアウトしろテイクアウト!店内席でくつろぐんじゃねええええ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 

 「うぅ…うっぷ、やば吐きそう。調子に乗って胃袋に詰め込みすぎた……!」

 

 

 込み上げて来る吐き気をどうにか堪える。

 一応故郷とも言える銀河に帰って来て調子に乗って暴飲暴食をしたせいで胃がもたれている。普段少食の癖して感動からついつい食べすぎてしまったようだ。

 

 俺にとってはおおよそ8000年というわりと長い年月、だがこちらの世界の住人とってはほんの数週間という異なる時間の流れの中での再会。記憶の中の姿と変わらず、壮健な彼らの姿に舞い上がってしまい羽目を外しすぎてしまった。

 

 事情を知らない友人たちからは「どうしたんだコイツ?」と変なものを見るような目で見られ、思わずおんおんと汚い泣き声をあげ号泣しながら飛びついたヘルタからは化け物に出会したかのような驚いた顔をされ蹴りを入れられてしまった。

 

 普通に痛かった、でもあちき嬉しいっ!

 

 何があったのか、事の経緯を説明しようかとも思ったが色々と複雑だったのと面倒くさかったので今回はパスした。次回にでもまた顔を合わせたタイミングでしっかりと事情を説明しようと思う。

 

 それからちょっとした頼み事を済ませてもらっている間に、『星穹列車♡ファミリー』のみんなにも会いに行こうか思ったのだが……どうやらみんなは「ニ相楽園」というアハトピアという姫子の故郷でもある星へ出発したようだ。

 

 ブラックスワンお姉さまが連絡をくれ教えてくれた、うーんエッチですね!!

 

 『界域(かいいき)アンカー』を使えば会いに行くことも造作もないが、俺は俺で自分の問題を片付けてから会いに行こうと決めて『星穹列車♡ファミリー』のトークルームにてメッセージで軽いやりとりをした。

 

 送られて来たメッセージやスタンプ、絵文字の数々がなんとも心を温めてくれた。

 

 ……オンパロスでの長い旅を終え個人的な柵からも解放されて暫くは「開拓」はこりごりだなんて思っていたが、割とカルチャーショックというか長かった休暇で「開拓」を求めてる節もある。

 

 いや、どっちかというと職業病とかかこれ?

 多分どれもこれも俺を転生させたあの邪神のせいだ、「開拓」に身を置いてないと変に落ち着かない体になってしまっているのかもしれない。

 

 そしてそんな俺はというと、

 

 

 「あぶな、銀行の口座凍結されてなくてよかった〜……確か10年以上取引がなかったら使えなくなるんだったけか? あぶねあぶね、色んな時代で集めたお宝を売り払って得た金が消えるとこだった」

 

 

 現在、宇宙船で故郷の銀河を目指して数日前に旅立った『地球』の現代日本へと再び戻って来ていた。

 

 もう少し向こうでゆっくりしてからこっちに来るつもりだったが、掲示板で急かされたことにより足早で戻って来たのだ。しかしその甲斐あってというか、急かされ戻って来たことが功を奏したようだ。

 

 どうやら()()()()()()()()()()()5()()6()()()()()()()()()()ようだ。

 

 ……おっと、マジか。

 ワイがこの星を飛び出して1週間も経ってないんだが? だいぶ時空が歪んでんなこれ。

 

 確か掲示板のスレ民によるとこの世界の原作開始が2030年で俺が地球にいた時は2020年くらいだったはずだ。そして恐らく現在は2026、もしくは27年といったところか……結構ギリギリだったな。

 

 しかしマジで日本だなここ。

 今世では銀河生まれの宇宙人だが、前世は日本生まれの日本育ちな日本人である為、違う世界の日本とはいえもう一つの故郷へと帰ってきたような感覚でなんだか変な感じがする。

 

 うん、妙な感動すら覚えるな。

 

 

 「……なんか、すごい見られてる気がするな」

 

 

 先ほどから妙に周りの視線を集めている気がする。

 気づかれないように横目で視線が送られて来る方向へ気配を向けて観察してみれば、どうにも黄色い歓声や好奇の眼差しを向けられているようだった。

 

 

 「ふむ……やっぱりというか、流石にこの格好で日本をうろつけば嫌でも目立つか」

 

 

 なんとなく心当たりがついて今の自分の姿を見下ろす。

 

 恐らくは今の自分の格好が問題だろうと予想する。なにせ自分の服装は奇抜な衣装の多いスタレ世界ならともかく、現代日本じゃコスプレにしか見えないような服装だ。

 

 仲間たちと共に開拓の旅に出て数年、列車の3人組から共同プレゼントとして渡された服装。ゲーム内では開拓者のコーデとして実装された『飛竜乗雲』のコスチューム、に近いものか。

 

 ……カラバリ違いのせいで星ちゃんとほぼペアルックにしか見えない服装であった為、袖を通すことに難色を示していたのだが……渡された服を着なかったら酷く拗ねられたので、深く考えないようにしながら普段着として着ていた。

 

 人の目を気にすることなかったスタレ世界や縄文時代、カメラなどが存在しなかった時代ならともかくとして、今はインターネットなどが普及した現代の日本だ。

 

 変に目立つのは少し怖いので適当な店で衣服を購入することにする。

 

 それと自慢じゃないが俺の容姿はバリクソにイケメンだ。それも邪神の趣味でどこぞの獅子心王にクリソツな金髪イケメンくんだ。この世界にFateシリーズはなかったが、多分コスプレしてるイケメン外国人だと思われてるだろう。

 

 因みに戻って来る為に使った宇宙船は俺の“アイテム”扱いな為、スマホの中の“バッグ”機能で収納済みだ。認識阻害も掛けているので一般人に目撃されていたりもしない。

 

 実は8000年の旅の間も宇宙船はこうやって持ち運びしたりしていた。

 

 どういうこっちゃねんと思うかもしれんが、要はスタートボタン押すとゲーム画面に表示されるアレだ。チーム編成やらキャラクター詳細やら、そういった機能の一部が能力扱いで使える。

 

 めっちゃ便利、しゅごい…!

 

 いや、そんなことよりもだ。

 ひとまず、服を買いに行こう。今の服装じゃ何かと悪目立ちするだけだ。

 

 こっちの世界の金なら腐るほど、とはいかないがそれなりに蓄えがある。なにせ8000年という旅の中で色々と仕入れた、埋蔵金やら歴史的なお宝の数々が、スマホの『収納機能』によって当時の状態を綺麗に保ったまま保存されているのだ。

 

 その価値を知る人間なら喉から手が出るほど欲しい物ばかりだ。

 ん? 寄贈なんてするわけないだろ、欲しけりゃそれなりに金よこせ。

 

 既にお宝の一部は法律というか規制というか、その他諸々が厳しくなる前の時代にこっそりコツコツと売り払い換金したおかげで金はたんまりとある。これが現代知識チートってやつなのか、けけけ、気分がいいぜ…!

 

 この世界の口座や戸籍の偽造なんてのも俺の頭脳ならちょちょいのちょいだ……いや、まあ、1人じゃ流石に無理だったからこの世界で知り合った凄い奴に手を借りたが。

 

 

 「……ここに来るのも久しぶり、ってわけでもないんだけどな〜。こっちの世界だと5、6年ぶりに居住者が戻ってきたことになるわけだが」

 

 

 金色の三つ編みを揺らしながら歩くこと数分。

 近くにあった店で当世風の衣服を適当に見繕った後、懐かしいようなそうでもないような、そんな風景に目をやりながら。

 

 この現代において自分がしばらく共同で生活していたマンションの前へとたどり着き、ただぼーっと見上げていた。

 

 ……正直言って部屋に中に入るのが怖い。

 というかめちゃくちゃ嫌な予感がする、どこぞのフ◯ブルみたいに扉開けた瞬間に爆発するんじゃなんて恐怖にすら襲われている。

 

 だって絶対かぐ…じゃなかったヤチヨさん怒ってるでしょ。

 

 お、俺としては数週間程度で帰るつもりだったんですよ?

 6年と数ヶ月も放置するつもりなんてなく、そのあとは酒寄彩葉なる少女との再会を見届けたら「クールに去るぜ」ってヤチヨを引き渡してこっそりフェードアウトしようとは思ってましたけども……。

 

 

 「ふぅ……よし、とりあえず土下座するか!」

 

 

 秘伝のジャパニーズ土下座ならなんとかなるだろ!!

 扉の前で気合いを入れ直して、いざ出陣と言わんばかりに握り拳を作り扉の鍵を差し込もうとした瞬間。

 

 ───ガチャ、なんて重たい音と共に勝手に扉のロックが解除された。

 

 あ、あれ?

 おっかしいな、俺まだ鍵差し込んでないんですけど?

 

 この家って顔認証のオートロック解除の機能とかついてましたっけ? そんな記憶全然ないんですけど、いつの間にか防犯レベル上がった感じなんですかこの物件。

 

 恐怖に震える手で扉を押し開けて部屋の中に入る……いや暗っ。

 

 電気くらい付けときなさいよ。

 なんて思いながら一歩部屋の中に入り靴を脱いだ瞬間。

 

 ───ガチャ、と再び扉のロックが作動する音が聞こえた……ん???

 

 なんということでしょう。

 内側から鍵を弄っている筈なのに全く扉が開く気配がありませんじゃありませんか。え、俺自分の家で閉じ込められてるんですけど?

 

 ……もう既に逃げ出したい。

 なんだここ、『超かぐや姫!』って実はホラーゲームの世界なんか?

 

 そんな恐怖に襲われながらゆっくりと部屋の中に入る。

 

 部屋の中は俺が最後に見た光景とあまり変わらず、様々な機器が並んだひと部屋を丸々使ったサーバールームのような部屋。中心には巨大な水槽の中に光るタケノコこと『もと光る竹』が鎮座している。

 

 ……変化があるとすれば、この部屋を掃除していた俺がいなくなった事で少し埃っぽくなったくらいか。

 

 

 「お、おーい。ヤチヨさーん? リンくんですよ〜、同居人が今戻りましたよ〜? い、一応お土産持って来たというか、その〜……オーイ、ヤチヨーオーイ!」

 

 

 返事はない。

 いつもならこちらが声を掛けずとも、向こうからタブレットの画面越しに語りかけて来ていたのだが……薄暗い室内に光を放つ機器、大量のファンとボコボコと水槽からエアーが湧いている音だけが静かに響いている。

 

 え、ガン無視ですか?

 なんて思いながら部屋を見渡せば、いつぞやの俺が書き残していったメモ用紙が机の上に置かれておりその横には、この世界で普及しているコンタクトレンズ型のPC、通称『スマコン』なるものが置かれていた。

 

 取れ、と言わんばかりに淡い光を放ち始めている。

 

 つ、使えってことのなのか?

 示し合わされたような状況的にそう判断して、メモ用紙の上で文鎮代わりにされているスマコンを手に取り持ち上げた瞬間、思わず身体が固まった。

 

 メモ用紙にはかつて俺が書き残した、メッセージがある。

 

 『ようやく宇宙船も直ったし自分の世界に一旦帰るわ! そろそろアイツらにも顔見せなきゃいかんしな、ほな!! 風邪引かないように気をつけろよ!元気でな!!』

 

 だがスマコンを退けた瞬間、その下に隠されていたメッセージが露わとなったのだ。

 

 

 『 ゆ る さ な い 』

 

 

 正直チビりそうだった。

 きっとウミウシの身体を器用に使って書いたのだろう、うん。どこか拙い字でそう書かれていた……ふむ、非常にまずいな。

 

 ……ヒェ、ホラゲーやらされてる?

 え、もしかしなくても俺このまま殺されるの?

 

 普通にちびりそうだった。

 とりあえず震える指先でスマコンとイヤホンを装着する、俺なら()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()が……今は素直に用意された手順に従おう、そう目を閉じた瞬間。

 

 

 「─── お か え り 

 

 

 装着したイヤホンから彼女の声がした。

 恐怖で気絶しなかったことをほめてほしいでち……!

 

 た、ただいまぁ……!

 

 

 

 

 

 

 ───()()()()()()()()

 

 ここが仮想空間『ツクヨミ』…で、いいのか。

 気がつけば視界に映っていた景色は様変わりし、無数の灯籠が鈍く光るどこか寂しい印象を受ける部屋に立っていた。

 

 この部屋があるのはかなりの高層階なのか大きく開かれた部屋の壁から、煌びやかな街灯と夜に包まれた平安京のような街並みを一望できた。

 

 以前、何度かヤチヨの作業を手伝う為に仮想空間へと入ったことはあったが、あれはプロトというか制作途中でありその頃は一面真っ白なハリボテのような世界だった。

 

 そんな記憶の中にある世界と比べると、眼界に広がる光景はそれと比べ物にならないほどに高いクオリティで完成されたひとつの世界だった。

 

 なんというか『和』をモチーフとしたファンタジックな平安京だ。なんだかよくわからないが空中にまるで泳ぐように変な生き物が夜空に浮かんでいたアレなに? というかこの世界広くね?

 

 ふと、自分の姿を見下ろしてみれば先程まで来ていた当世風の衣服と変わらずリアルと同じままの姿でツクヨミの世界にいることに気がついた。

 

 こういうのってアバターのキャラクリとかあるんじゃないの?

 

 そんないくつかの疑問を浮かべながら部屋を見渡してみれば、少し離れた位置の窓辺に立ち俺以外にもこの街並みを見下ろしていた人影があることに気づく。

 

 

 「えっと、ヤチヨさん?おーい……」

 

 

 それが誰か、なんて疑問は浮かばず心当たりは1人しかない。

 暗闇に溶けて消えてしまいそうな紺色の和装、白く長い髪を結いた少女の後ろ姿を視界に収めながら控えめに声を掛けてみるが反応はない。

 

 や、やっぱ怒ってるのか?

 何度か声を繰り返しかけてみるもそれにも反応してくれない。

 

 

 「あー、そのだな…わ、わざとじゃないんだ。こっちも予定外なことが起きたというかなんというか、別に忘れてたとかじゃないんだ、いやマジで」

 

 

 ちょっと待て。

 なんで俺はデートの約束をすっぽかしたカス野郎みたいな言い訳してんだ。というかよくよく考えてみたら、これって本当に俺が悪いのか……いや、俺が悪いな、うん。

 

 

 「聞いてくれ、なんとお土産もあるんだ! きっと驚くぞ!……オーイヤッチョサーンキイテルー?」

 

 

 うん、当然反応なし。

 おっと、マズイないよいよ詰んだかこれ?

 

 というかもしかして寝てる?

 んなわけないよな、なんて思いながらこちらに背を向けたままの少女へと近づいていき、横から彼女を覗き込んでみると。

 

 

 「───……ヒュ」

 

 

 心臓が止まるかと思った。

 目の前にいる少女は、本来あるべき筈の()()()()()()()()()()()()()()だった。まるでグルグルとペンで黒く塗りつぶしたかのような顔で少女の姿をしたナニかが、覗き込むこちらを覗いていた。

 

 なんでさっきからホラー要素強めなんだよ…!

 あいつ俺がホラー苦手なの知ってるだろ、これ絶対に今までの腹いせか何かで俺のことビビらせてやり返して来てるだろ絶対!! 普通に怖いからやめてくださいマジで!!!

 

 ビクッ、と思わず肩を揺らしながら距離を取ろうとした瞬間、突然そののっぺらぼうの少女が俺の手をガッシリと掴んできた。うおっ、力つおい! やめろ離せ、それ以上はいけない…!

 

 恐怖のあまりこのツクヨミでチートパワーを暴発させることになるぞ……これ以上はキャパオーバって、くくくく、くび、首取れたァァぁァッァ!!??

 

 ボトッ、と床にコチラを見つめたままの状態で、お化けの生首が足元に転がる光景に言葉を失い固まってしまう───……わ、わ…わァ……ァ。

 

 

 「……ふふっ、ひどいなぁ。ヤッチョと分身(ニセモノ)の見分けもつかなくなっちゃったんだ」

 

 

 耳元でふわり、と聞き慣れた少女の声が聞こえた。

 その声に振り返るよりも早く身体が押し込まれ、気がつけばもつれ込むように床の上へと押し倒された。床に頭を打つ感覚こそあるが仮想空間故に痛みはない。

 

 胸の上で撫でるよう手が置かれ、至近距離で覗き込まれる。

 

 解かれた長く艶やかな白い髪、綺麗な青い瞳、頭上から床に広がる長い髪はまるでカーテンのように広がって、外の世界とは遮断された2人だけの世界を作り出していた。

 

 ……こ、ころされるっ。

 

 

 「───元気だったリン?」

 

 「ど、ども……いま、元気じゃなくなったかもぉ」

 

 「おー、奇遇だねぇ〜。ヤッチョもしばらく元気じゃいられなかったよ?

 

 「……ソ、ソデスカ」

 

 「ふふ、これでお揃いだね

 

 

 ひぇ、助けてスレ民……!

 どうすればこの大魔王ヤチヨから逃れられるのか教えてくれ。

 

 

 ───こうして物語は冒頭へと戻ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 

 

 (うーん、面白いからもうちょっとこのままでもいいかな?)

 

 

 実は言うと、私はもうそこまで怒ってない。

 ───なんてことはなく、あんなにも雑で酷い別れかたで……というかあれはお別れですらないし、そんなの認めるわけない。

 

 カメラで外の様子を見た時、いるはずの無い人物の姿に視界がグラつき息が止まるかと思った。

 

 というかあんな夜逃げのようなマネをしておいて、よくもまあ能天気に私の前に姿を現せられたなとは思う。

 

 前々から思っていたがこの男、デリカシーがあるように見えて結構クソボケというか、一般的な感性が欠如してる……とまでは言わないがそういった所は希薄になってる気がする。

 

 けどそれはきっと、別々の星で培った倫理観などの差によるものだろう。

 

 なにせ彼のいた世界では常識なんてこっちのものと比べればハチャメチャで、それでいて彼自身も戦いに身を置き慣れてしまったことで一般人とは少しズレているだろうし。

 

 ……それに彼は自分がいた世界に帰っただけだから、別に悪くは無い。

 

 ───とまぁ長い付き合いである彼の事情や性格は理解しつつも、それとこれはまったく別の問題だよね。お帰りなさいリン、よく帰って来れたね?

 

 

 (意外とまつ毛長いんだよね〜)

 

 

 このナルシスト、自分でイケメンというだけあって顔立ちは整っている。

 

 長い髪を三つ編みで纏めた赤毛混じりの金髪、赤い宝石のような力強い瞳、どれも記憶の中と変わらない青年の特徴と全てが一致している。

 

 あの頃は小さな身体でいつも見上げていたが、今はこうして押し倒す形で見下ろしている事に、なんだか高揚するような不思議な気分になってしまう……うん、これはこれで悪くないかもしれない。

 

 ───おっとマズイマズイ、もう少しで悪い闇のヤッチョが顔を出して暴れてしまうところだった。

 

 

 「その〜、ヤチヨさん? やっぱり一旦冷静になって話し合うというのはどうだろうか? いやどうでしょうか、お互いの進捗を語りあうというか」

 

 「お、なんだいなんだい? もしかしてヤッチョがこの約7年間どんな想いで過ごしてたのか気になっちゃうかにゃ? イヤー酷いよね〜、優しくして心の傷に付け込んでおきながら急に消えてさ、ヤッチョのことキズモノにしていなくなるんだから」

 

 「おっふ……その言い方は流石に変な誤解を招くだろ。悪意というか語弊がありすぎる、それだとまるで俺が純情を弄んだクソ野郎みたいにしか聞こえないんだが?」

 

 「おっと、自覚がなかったのかな〜?」

 

 

 嘘でしょ、まさか無自覚かコイツ?

 

 よく思い返してみてほしい。

 彩葉との再会の為に時を越え地球に戻って来たがそれは失敗に終わり、誰とも関わりを持てないまま長い年月を孤独に過ごしていた時に、ふと現れ気づけば孤独を埋めてくれた青年。

 

 あの永遠とも思えた長い歳月。かぐや()という個人の存在を構成している大きなピース、その根幹として彩葉や親しかった友人たちが今も大事な記憶として刻み込まれている。

 

 そんな私の人生の席(ピース)に、自分から椅子を用意して座り込んで来た青年。

 

 自分に無頓着なリンのことだ。

 あれだけ共に長い時間を過ごして、私の胸の内に入り込んでおきながら。きっと彼の中でリンという人間はかぐや()の人生にとってなんてことない、消えても替えが効くただの知り合いとでも思っているのだろう。

 

 そんなわけないだろうに。

 私の中で燻っているこの感情の種が親愛なのか、はたまた恋愛なのか、そんなことは私自身にもわからないしどうでもいい。それでも確かなのは、この青年には勝手に消えるような真似はしてほしくない家族のような存在なのだ。

 

 そして何よりも彼は前の世界ではいなかったはずだ。

 別のかぐやとヤチヨ(輪廻)には存在しない。私だけが出会った、私だけのナナシビト。

 

 私にとって彼は彩葉と同じくらい……いや、次くらいには大好きで大切な人だ。一番はもちろん彩葉だ。うん、それは譲れない。

 

 だが、あの突然の別れはある意味で良い転換点だったかもしれない。

 

 ある日突然、今まで隣にいるのが当たり前だった人間が急にいなくなってしまった。その温もりを思い出さないようにどれだけ蓋をしても、気がつけば沢山の思い出と感情が壊れたように溢れ出てしまっていた。

 

 傷口をほじくり返されたかのように、どうしようもない孤独な現実を直視させられた。彼のいない6年と数ヶ月、約7年間はとても辛く寂しかった、それと同時に自分を見つめ直す時間でもあったかもしれない。

 

 思い返してみればあの頃の私は、彼に()()()()()()と思う。

 

 だがそれも仕方ないだろう。

 だって長い間私をずっと支えてくれた大きな存在で、ただ1人ありのままの自分を曝け出せる、唯一かぐや()が頼れる人間ともなっていたのだ。

 

 自分が言うのもなんだが結構依存してた気がする、まぁそれの何がダメなんだとも思うけど。

 

 

 (あぁ〜、ダメだな。再燃しちゃいそ〜)

 

 

 ───なんて、塾考していると彼の赤い瞳と視線が交差する。

 やらかした時に言葉を詰まらせながら表情をコロコロと変えて必死に言い訳をしようとしてる姿も、なんだかひどく懐かしくて、それでいてその姿にこっちの溜飲が下がるというものだ。

 

 もう少し彼を困らせたい気持ちもあるが、今はここまでにしておこう。まあこの6年と数ヶ月の間に、誰と、どこで、何をしていたのかをしっかりと聞き出すつもりだが。

 

 

 「すまない、悪かった言い訳はしない。だけど、ちゃんと話をさせてほしい」

 

 「……いいよ、リンの謝罪は聞き入れてあげる。私もこの6年間を、リンに伝えたいことがいっぱいあるからさ。でもその代わりに誠意をしっかり見せてもらおうかな〜、なんて」

 

 「それってつまり、切腹しろ……ってコト!?

 

 「一体いつの時代の話をしてるのかな? 頭バグっちゃった?」

 

 

 そんなわけないでしょうに。

 なんで「え、違うの?」みたいな顔してこっち見てるのさ。

 

 

 「じゃあ誠意の形として、まずは一つめのお願いを聞いてもらうかな?」

 

 「……な、何なりとどうぞ」

 

 

 いや、そんな覚悟を決めた顔で怯える必要はないでしょうに。

 

 え、私なんだと思われてるわけ?

 もしかしてとんでもない爆弾級のおねだりでもされると思われてるの?

 

 

 「───あなたの名前を教えて」

 

 「……え、なまえ?」

 

 「うん。だってリンは偽名というか愛称みたいなモノなんでしょ? 聞いてもずっと教えてくれなかったし、大事な家族の名前くらいちゃんと知っておきたいよ。もちろんフルネームでね」

 

 

 あなたが居なくなってしまったあの日から、これがずっと心残りというか一番大きな後悔となってしまった。長い間ずっと一緒に居たのに、本当の名前すら知らずに過ごして来たのだ。

 

 今まで何度もはぐらかされてしまった。

 だけど恩人の、大切な家族の名前くらいはちゃんと知りたい。

 

 

 「……イイヨ、ワカッタ」

 

 「うわっ、すっごい嫌そうな顔してる。ええ〜、そんなに自分の名前を名乗るの嫌だったの? もしかして変な名前とか? 別に笑ったりしないよ」

 

 「いや、別に変ってわけじゃないんだが、俺が名乗るのも違和感がすごいというか……ちょっとした気持ちの問題で、うん。解釈違いみたいな感じだな」

 

 「よくわかんないけど、じゃー別にいいじゃん! ほら早く! 3、2、1、どうぞ!」

 

 「はぁ、変に期待すんなよ? 俺の本当の名前は───」

 

 

 名前が告げられる。

 彼が口にしたその名を頭の中で反復させしっかりと刻みつける。

 

 ようやく知れた彼の本当の名に、どうしようもなく口元が緩んでしまう。きっといま私はダラシない顔をしているだろうと自分でも気がついてしまうくらいに。

 

 だが、どうして彼が普段からそこまで口にするのを躊躇うのか不思議に思ってしまうくらいに、ちゃんとした普通の名前だった。てっきり別の世界の宇宙人センス全開な面白い感じの変な名前なのかと思っていたりもしたがそんなことなかった。

 

 

 「はい、以上ッ! 今更呼び名は変えずに今まで通りリンでお願いしますっ!」

 

 「うんうん……ふふ、そっか。そういう名前だったんだ、でもなんでそんな嫌がるの? カッコいい名前だと思うけど」

 

 「いや苗字に関しては違和感がすごいし、それに名前は場所によっては女性名らしいから。というか一番の理由は俺には重過ぎて似合わない!」

 

 「えー、そんなことないと思うんだけどな〜。うん、教えてくれてありがとねリン……ところでなんで、起きあがろうとしてるの? まだ話は終わってないしこのままだよ?

 

 「えっ?……いや、それはちょっと」

 

 

 おっと、今の私に口答えできると思ってるのかな?

 

 

 「───約7年間も置き去りにされたんだけどな〜? ヤッチョすっごい傷ついたなー?」

 

 「ソッスネ! 俺もこのままヤチヨさんとガチ恋距離でお喋りしたいなって実は思ってましたわっ!!……ってそうじゃない! ここじゃなくてリアルのほうで話がしたいんだ」

 

 「……どうして?」

 

 「言っただろ、とっておきのお土産があるんだ。絶対に驚くやつだ」

 

 「逃げない?」

 

 「え、今の俺ってそこまで信用ない???」

 

 「ふふっ、冗談だって」

 

 

 心外だと言わんばかりに顔を顰めるリンの姿に思わず笑ってしまう。

 

 まあ信用云々というより、過去の自分の行動を振り返ってもらおう。だって前例はあるんだから、まあ今度はもう絶対にニガサナイケドネ

 

 もうあんな思いはしたくないから、居なくなるにしてもちゃんとした形でお別れしたい、うん。

 

 ───そして『ツクヨミ』からのログアウトの方法がわかっていない彼に軽くレクチャーしながら、仮想空間から退席したのを見送った後で私の意識を『ツクヨミ』から意識を切り離して、あのマンションに置かれたタブレットへと繋ぎ直す。

 

 どうせなら距離を間近に感じられるこのツクヨミでもっと話をしたかったけど、リンの言っていた私が驚くお土産がなんなのかが気になり彼の提案を了承した。

 

 流石に食べ物とかではないと思うけど、もしかしてリンのいた世界の高性能PCかなにかだろうか? もしくはすごい部品? だとするとそれはそれでちょっと気になるのは確かだ。

 

 ───この時までは貼り付けた普段の調子を崩さず、そんな疑問を能天気に思い浮かべていた。

 

 

 「さて、どうだヤチヨ? 流石にこれには驚いたんじゃないか?」

 

 「───……」

 

 「俺が一度向こうに帰った理由としては、仲間のことだったりと色々あるが。大きな理由の一つとしては()()が関係してたんだ、早めに戻ろうとは思ってたが、向こうとは時間のズレがあるみたいでな」

 

 「……うそ」

 

 「前に『もと光る竹』データを取らせてもらったのを覚えてるか? その時のデータと複製品を持ち帰って友人の『知恵』の魔法使いにお願いしたんだ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って事で基本的な機能を残してそっくりそのまま……あ、でも性能面はだいぶ向上してるって言ってたぞ!」

 

 「…………っ」

 

 「あ、それとヤチヨが組んだプログラムに関しては珍しくヘルタが褒めてたな! だいぶ興味深そうにしてたし、『へえ、腕の良いエンジニアだね』だとさ……ほいこれ、()()()()()()()?」

 

 

 彼が何を言っているのかよくわからず、内容が頭に入って来なかった。

 

 それだけの大きな衝撃に今私は襲われていた。

 正面に立つリンから、アンティーク調の意匠が施され艶消しの黒に光沢のある紫でカラーリングで統一された小型デスクトップサイズPCのような何かを手渡された。

 

 これがリンの言っていたお土産らしい。

 それを私は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 しっかりと彼の顔を見ようと思っていたのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 「リン……ねえ、私…わたし…わたっ……ッ!」

 

 「おっと、感動の涙とハグは彩葉って子の為に取っとけ。とりあえずそうだな、まずは部屋の掃除してからそんで2人で買い物行ってなんか食うか? 列車での暮らしは当番制だったからな、こう見えても料理はできるぞ」

 

 「うん、うん!……ありがとう、リン…ありが、とう……っ!」

 

 

 私は今リンの持って来たお土産、『もと光る竹』と同じ機能持つソレに意識を移した事によってとうの昔に失われていた筈の月人の『擬態』する機能を()()()()()()()

 

 0と1の数字の羅列で構成された電子の世界の身体ではなく、私は今自分の生身の身体で、しっかりと存在する足でこの世界に立っていた。

 

 嗚咽と共に吐き出した言葉をちゃんと伝えたくて、泣き出してしまうくらいにクシャクシャな心に従って、今度はちゃんと溢れ出る涙を流すことができた。

 

 崩れ落ちる私を優しく抱き留めてくれた彼の体温はすごく温かかった。

 

 今日という日を、この温かさをきっと私は忘れることはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ・『リンのスマホ』
 スタレのゲーム内でメニュー画面を押すと表示されるカテゴリの一部の機能が使える高性能スマホ、バッグ機能を使えばポンポン異空間に物がしまえる優れ物。

 ・『すごいお土産』
 スタレ世界の技術で作ったスタレ産の『もと光る竹』。

 知恵の魔法使いによって機能は大幅にアップグレードされており、しゅごいことになってる。当初はヤチヨ用の人形を作ってもらうつもりだったが、壊れてる竹を直したほうが早くねと修理を依頼した結果、新品の2号機が爆誕した。

 この2号機によってヤチヨは「擬態」能力による肉体を得た。

 完全な善意で生み出したヤチヨへの贈り物。
 ちなみにスレ民がネタバレしてくれなかった為、物語の先の展開を知らずに自分が原作崩壊させていることに一般ナナシビトは気がついてない。



執筆中その作品の用語とか設定を使う際に、なんとなく気になりました。

  • 『超かぐ』も『スタレ』も知ってる!
  • 超かぐや姫!しか知らんで!
  • 崩壊:スターレイルしか知らんで!
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