ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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ホグワーツ時代が折り返しに入ったので初投稿です


Part 13

 1941年の夏にドイツがソ連への侵攻を開始し、冬には真珠湾攻撃による第二次世界大戦の国際化が起こります。魔法界における戦争も、概ね歩調を同じくしているとしていいでしょう。既にイギリス魔法省は認可のないポートキーの利用をかなり強く制限していたため、トムの送り迎えはなんとわざわざ上級大魔法使い(シュープリーム・マグワンプ)のヴィセンシア・サントスが行ってくれます。

 

 この頃には欧州大陸一帯の主要勢力はグリンデルワルドの支配下にあります。ただ面倒なのって魔法使いは人数が少ないので面で押すとか防衛線を引くということができないことなんですよね。各地でレジスタンスとかが暴れているので永遠に安定はしません。

 

 チャート的には一介の学生だとこのあたりに絡めないのが難しいところなんですよね。トムは基本ホグワーツが好きなのでプレイヤーキャラクターを留学生として派遣する事もできなくはないですし、そうすると反攻作戦の時に色々と繋がりができるのですが今回は諦めましょう。

 

 では諦めてどうするか。史実を捻じ曲げます。トム・リドルは秘密の部屋を開け、マートルを殺し、リトル・ハングルトンへ行き、分霊箱について学ぶ、という順番でイベント起こします。これらのイベントの発生の修正はかなりの手間がかかりますが、順番の入れ替えはそれに比べれば少ない手間で可能です。

 

 というわけで四年生末の時点で彼をリトル・ハングルトンに行かせます。彼が帰ってくるまでにマールヴォロの名前の由来を見つけておけばいいだけですね。そして、お世話になった先輩にちょっと友情の力を借りてこれをやってみましょう。カステロブルーシュー行きでトムの系譜について情報が開示されるイベントもあるのですが、そちらが起こる可能性に賭けるのはちょっと安定に欠けますからね。

 


 

 マグルのイギリス文化において、社交期(Social Season)は春から夏にかけてとされる。今起こっている戦争と区別するために遡及的に第一次世界大戦と呼ばれつつある戦争の時代にその文化は失われたが、それまでは涼しい季節に貴族は都市に集まり、情報を交わし、そして華々しく成人と社交界への披露を行うデビュタントを行っていた。

 

 魔法界の「貴族」も、似たようなことを行っていた。もちろん完全に一致しているわけではない。マグルと魔法族が袂を分かった17世紀末以降、彼らは爵位も領地も持たない。しかしながら人民の平等を唱えたソビエト連邦においてさえ「赤い貴族(ノーメンクラトゥーラ)」と呼ばれる階層が生まれたように、歴史と伝統と貢献は自然と名家と特権を作るのである。

 

 それでも、マグルの文化に比べれば魔法界の「貴族」たちの社交は浅いものであった。労働力は屋敷妖精(ハウスエルフ)が提供し、空間や装飾を魔法に頼るとしても、そもそもの人数の少なさは覆しようがない。だからこそ、適切な条件を満たせば本来ならば部外者と呼ばれるような人物であってもそこに入ることが可能であった。

 

 ただ、魔法族の場合には季節と場所はあまり問われなかった。魔法さえあれば移動の手間は非常に少なく、(ふくろう)は素早く手紙を届けてくれる。また、ホグワーツの休暇の時期の兼ね合いもあった。

 

 ブラック家が主催する冬のハウスパーティーも、そういった社交の一環であった。公的なものではなく、親族や関係者を集め、拡大呪文で広げたブラック邸にてゆるりと冬の数日を過ごす。ホグワーツから戻った若者に親族と触れ合う機会を与え、あわよくば縁談をもという場所であった。

 

「ようこそ、マダム・ロジエール、ミス・ロジエール、そしてミス・ルストランジュ」

 

 老いを感じさせる声で、ブラック家当主のシリウス・ブラックは言った。ブラック家としての仕事の多くは息子であるアークタルスに譲っていたが、それでもなお彼は家長のつもりでいた。

 

 ヴェルダンディがここに来たのは、冬のホグワーツが嫌になったからではない。マダム・ロジエールは娘の友人のお願いを拒むほど狭量ではなかったが、それでもこれはヴェルダンディへの貸しに相当するものだった。

 

 挨拶を済ませ、ホグワーツで馴染みの顔と世間話を交わし、そして各々が趣味や時間つぶしに移った。婚約者とゲームをする人もいれば、マルフォイ家の持ち込んだ魔法道具の見物をしている人たちもいた。

 

「こんにちは、アブラクサス先輩」

 

「来ていたのか。……フランスと比べるとどうかね?」

 

 卒業して今は魔法省で働いているアブラクサスは、カード勝負が終わった後に後輩に声をかけられて足を止めた。

 

「私はあまりそちらのほうの社交には出たことがないのです。もう少し実務的な集まりが多かったですね」

 

「まあ、これも経験というやつだ。あまり無作法をしないようにだけは気をつけてくれ」

 

 そう言いながら、アブラクサスは招待客の名前を思い浮かべていた。レストレンジ家は今回は来ているはずだが、子連れではなかった。さすがに低学年の交友までを押さえているわけではなかったために断言はできなかったが、それでも誰かに紹介を依頼したのだろうということは分かった。

 

 そして、それが持つだろう意味についても彼は考えを巡らせることができた。確かにこの場所であれば知り合いを作るのには便利だ。ホグワーツからであっても手紙で様々な知識を得ることは可能だし、実際にアブラクサスもそうやって政治とは何であるかを叩き込まれていた。

 

「そうだ、できれば紹介してほしい方がいまして」

 

「……あまり知人が多い方ではないんだ」

 

「私が話したい人もそうらしいのですよ。なにせ気難し屋(Cantankerous)ですので」

 

 そのような名前を持つ人は、確かに今日ここに招待されていた。ただ、それは実質的な招待者への義理という側面も大きかった。

 

「何をしたい?」

 

 アブラクサスは小さく言う。

 

「私の同級生の家について、少し尋ねたいことがありまして」

 

「……トム、か?」

 

「トム・マールヴォロ・リドル。孤児院育ちとはいえ、だからこそ何か事情があったと考えるのは妥当でしょう?」

 

「そこまでする義理が、君にはあるのかね?」

 

「愛、と言えば不満ですか?」

 

 そう言ってヴェルダンディは微笑んだ。

 

「……仕方がないな、そう言われれば拒むわけには行かない」

 

 マルフォイ家は、それなりに家族愛を重視していた。もとより他の家との結婚も多いのである。そこで不義理をして名家を敵に回すよりはよい、という実利的判断もあった。ただ、それでも当主とその妻の関係は昔から独特のものであった。

 

「ありがとうございます」

 

「ただ、紹介以上のことはできないぞ。彼の興味を引けるだけの話ができないなら、素直に去るべきだ」

 

「わかっております」

 

 ヴェルダンディはそう言って頷き、歩き始めたアブラクサスの後ろをついて行った。

 


 

 名門の子が魔法省にしばらく務めた後に魔人議会(ウィゼンガモット)の議員とかになって外部顧問枠で省に出入りする、みたいなのは「貴族」のよくあるルートです。イギリス魔法界は狭いとはいえある程度の専門知識とか手触りを知っていたほうがいい、ということですね。

 

 もちろん中にはそのまま魔法省での栄達を狙う人たちもいますし、省に入らなくともそういう人達に手を貸すことは珍しくありません。というかそういうふうにして魔法界の要所に知人を置いておけるというのが「貴族」の強さではあるのですが。

 

 さて、今回相対するのはカンタンケラス・ノット。当時出回っていた匿名の怪文書「純血名鑑」の作者です。ちなみにこれを入手するのは当時のホグワーツの学生の身では難しいのですが、なにせヴェルダンディは欧州魔法界随一の頭脳を持った男のところにいたのでざっとではありますが目を通しています。

 

 ただしあまり過度にトムの出生の秘密をメタ的に探りすぎるのも限度があるんですよね。例えば予見の力で直接死の秘宝を探し当てる、なんてことはできません。ゲーム内の理屈で言えばフラグが揃わないと認識できないみたいな感じですね。神秘部案件の水準の予見とかをすればある程度はなんとかなるのですが、そうするとキャラロストします。不思議だ。

 


 

「カンタンケラスさん、今いいですか?」

 

 アブラクサスが暖炉の近くに座っていた男に声をかけると、彼はぎょろりとした目を部屋に入ってきた二人に向けた。年齢としてはアブラクサスの十ほど上であるはずだが、それよりもさらに十ほどは年上に見えるほど、深い皺が刻まれた顔をしていた。

 

「なんだ、マルフォイの倅か。そちらは?」

 

「ヴェルダンディ・ルスト……」

 

「私はアブラクサス・マルフォイに聞いている。嬢ちゃんは少し黙っていてくれ」

 

 口を閉じたヴェルダンディはそれに頷いて、半歩下がった。

 

「彼女はあの、以前話したことのある後輩です。今はスリザリンの四年生」

 

「それで、何の用だ? その齢で家系図でも欲しがるのか?」

 

「……ヴェルダンディ」

 

 アブラクサスはそう言って、ヴェルダンディを促した。

 

「はじめまして、ミスター・ノット。あなたの家系図についての知識はイギリス魔法界随一であると伺っております」

 

「ただ古い記録をまとめただけだ」

 

「いいえ。ジェルベーズ・オリヴァンダーのような、イギリス魔法界において敬意を払われるにふさわしい、古くから貢献してきた家系について深く理解しているとお聞きしました」

 

 それを聞いてアブラクサスは心臓が止まるような気がした。それは「純血名鑑」における大きな欺瞞の一つでありながら、誰も直接問おうとしない問題であった。

 

 イギリス魔法界のほとんどの人が、オリヴァンダーの店で杖を買う。彼らには誰もが敬意を払う。たとえ、魔法の力は血によらないと嘯く者たちでさえ。

 

 しかしジェルヴェーズの妻はマグル生まれであった。それでもなおカンタンケラス・ノットはオリヴァンダー家を純血名鑑から外すことはできなかった。もしそれを外せば、イギリスを歴史とともに支える純血名家という物語を維持できないからである。

 

「座れ」

 

 彼はそう言って、向かいの椅子を指で示した。

 

「はい」

 

「……それで、何を知りたい? ルストランジュの御令嬢」

 

「私をご存知だったのですか?」

 

「アブラクサスから聞いた。本来ならばルストランジュの家を名乗れない立場であることもな」

 

「立場の調整など、いかようにもできるでしょう」

 

「本題に入れ」

 

 カンタンケラスは本から一瞬だけ指すような視線をヴェルダンディに向けた。

 

「トム、あるいはマールヴォロという名前について、心当たりはありますか?」

 

「マールヴォロであればゴーント家。あとはそこの男に頼んでここの蔵書でも確認したまえ。新聞なら1925年の夏だ」

 

 それだけ言って、カンタンケラスはまた読んでいた本に目を戻した。

 


 

 カンタンケラスと話す機会を得るだけなら比較的簡単なんですが、本当に気難しいので変人相手の交流に慣れておくべきだと思います。これについてはある程度はケトルバーン教授と話していれば対応できるのですがね。なんで対応できるんだよ。

 

 今回はきちんと系譜学について理解していること、「純血名鑑」の意味を理解していること、そして端的に話せることを示してヒントを貰えました。というかなんでマールヴォロの名前だけで家名と起こした事件まで辿れるんですかね。「純血名鑑」のほうには当時のゴーント家の状態についてはあまり述べられていません。いやまあ相当やばい末裔しかいませんしね。ただ蛇語の話は書かれているので、トムがこの本を入手できればうまく調べる可能性もあります。

 

 普通にやればそれなりの調査が必要になりますが、ここでカンタンケラス・ノットを使うと一瞬で答えにたどり着けます。相当な記憶力の持ち主ですからね。

 

 あとは数日かけて記録を確認しておけばある程度推理をすることができるようになります。トムのギャングたちのネットワークを使って裏取りさせてもいいですね。本人には直接伝えたくない、もし不正確な血縁の情報が流れてしまったら彼の名誉に関わるし取り返しがつかないなどと言えば結構こっそりやってくれます。

 

 今の時点でトム・リドルは多くの純血名家の子女に接触していますし、彼らの親からも気に入られています。その父親がマグルだというのはやはり都合が悪いので、必要であれば隠れた魔法使いであった「リドル家」がどこからか生えてくることでしょう。というかそういうのを生やす仕事で小銭を稼いでいたのがこのカンタンケラス・ノットなんですがね。

 

 というわけで次回までに真面目に勉強してO.W.L.ぐらいは突破できるようにしておいた上で、帰ってきたトムと情報共有して一緒にリトル・ハングルトンに行くところですかね。いい感じの呪文を使って男装できるようにしておいたほうが出かける時に便利かもしれないな。

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