ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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投稿ペースが掴めていないので初投稿です


Part 14

 1942年夏。大日本帝国が昭南島(シンガポール)を支配下に組み込み、東南アジアの急進撃で勢力を拡大していた時代。あるいは北アフリカ戦線で砂漠の狐と海雀(オーク)がエル・アラメインで相対していた頃。当時のイギリスでは配給制が日常となっており、総力戦が普段の生活に浸透しつつありました。

 

 しかし彼らが感じていた苦労に比べれば、ホグワーツというのは実に優雅なところでありました。なにせ魔法で食べ物を増やせますし灯火管制とかもしなくていいんですからね。もちろんホグワーツを卒業したマグル生まれのうち、少なくない人数が徴兵されて各地で戦いましたし、そうでなくとも世界魔法戦争の惨禍はホグワーツの空気を刺々しく、あるいは冷えたものにしていました。

 

 とはいえ、子どもたちは学び続けます。というわけで戻ってきたトムの歓迎からやっていきましょう。

 


 

 上級大魔法使い(シュープリーム・マグワンプ)との気まずい時間から解放されたトムは、スリザリンの談話室でゆっくりとくつろいでいた。明日には汽車に乗ってホグワーツを去らないといけないということを忘れたいと思っていると、トムの前で今はあまり会いたくない少女が足を止めた。

 

「おかえりなさい」

 

 ヴェルダンディはそう言って、古びた紙片を一つ取り出した。

 

「……これは?」

 

 そう言いながらトムは受け取った紙に目を通す。新聞の切り抜きだった。「ゴーント達逮捕さる」という記事の中に、彼の知りたかった名前があった。マールヴォロ。それは魔法警察部隊の部隊長を攻撃し、逮捕された親子の父親側であった。

 

「ゴーント……」

 

 トムは自分がいない間にヴェルダンディを見張っていてくれと頼んだ同級生たちに失望した。もともと期待していたわけでもなかったが、後で文句を言わねばならない、とトムは決めながら改めて文字に目を通していった。そこでは自分と繋がっている可能性のある家系が、扇情的に、半ば馬鹿にするような形で記事となっていた。

 

「ご存知でしたか?」

 

「……あちら側では、ゴーント家は有名だったんだよ」

 

 そう言って、トムはぽつりぽつりと話し始めた。南アメリカ大陸にカステロブルーシューあれば、北アメリカ大陸にイルヴァーモーニーあり。そのイルヴァーモーニーの創設者の一人、烏女神のモリガンの末裔にして、英国の忌まわしき血族、ゴーント家の血を引くイゾルト・セイア。しかし、彼女は蛇語遣い(パーセルマウス)ではなかった。

 

 カステロブルーシューには、そのイルヴァーモーニーの卒業生が教授として働いていた。その教授はイルヴァーモーニーにある蛇紋木(スネークウッド)の木の来歴と、その木にまつわる伝承に出てくる杖を知っていた。イゾルト・セイアが彼女の両親を殺した伯母から盗んだ、サラザール・スリザリンの杖。それは蛇語(パーセルタング)によって目覚め、あるいは眠る力を持っていた。

 

「ちょっと待って、トム」

 

 ヴェルダンディは話が一旦途切れたところで声をかけた。

 

「なんだ」

 

「サラザール・スリザリンの杖が、蛇紋木(スネークウッド)?」

 

「ああ、そうさ。言いたいことはわかる。サラザール・スリザリンは、カステロブルーシューがそう呼ばれる前の時代に、その場所に来て、枝を手折ったんだ」

 

 蛇紋木(スネークウッド)は南アメリカに生える、硬い木材を生み出す木だ。そして当然ながら、サラザール・スリザリンが生きた時代には大西洋を超えることすら難しかった。かの赤毛のエイリークが到達したのと同時代と言ってもいい。

 

 だが荒波を越えたマグルと同時期に、あるいは彼らより先にサラザール・スリザリンは旅をした。そして杖にするにふさわしい木を手に入れたのだ、と。

 

「……カステロブルーシューの薬草学者が言うには、それは良い行いではなかったそうだ」

 

「枝を盗んだ、と彼らはみなしているの?」

 

「ああ。確かに向こうでも杖は一般的だが、それはカブラルより後に持ち込まれたものだという。ああ、カブラルについては当然知っているよな?」

 

 そう挑発的に言ったトムに、ヴェルダンディは小さく首を振った。

 

「ペドロ・アルヴァレス・カブラル。ブラジルを『発見』したというマグルなんだが……いや、このあたりはやめておこう」

 

 トムはそう言って息を吐き、状況を整理していた。かつてトムが蛇と話せるとダンブルドア教授に告げた時に、彼の反応が鈍かった理由がやっとわかった。蛇語遣い(パーセルマウス)はイギリス魔法界の汚点と強く結びついているのだ。木を盗んだ男の、そして偉大なる先人にとっての悪役となった女の用いた言葉を操れる存在として。

 

 イゾルト・セイアの娘の一人、リーニャ・スチュワードは己の蛇語遣い(パーセルマウス)の力が受け継がれぬよう、誰かと結ばれることも子を成すこともなかったという。それほどまでの力であったのだ。

 

 トムが蛇と話せることがわかった時、周囲の学生たちの視線は冷たくなった。一人ほど感動したような顔を向けてきた後輩がいた事を思い出し、来年度は彼女の世話をホグワーツでしなければならないのかと思うとトムは少し憂鬱になった。

 

 そしてそのゴーント家の血を、おそらく自分は継いでいる。改めて、トムは新聞を見た。メローピーという娘が、一人残されたという。

 

「……なあ、ヴェルダンディ。この事件があったのは」

 

「1925年」

 

 トムはそこから追加で計算をする必要はなかった。彼は自分の中に忌まわしい血が流れていることを、はっきりと理解した。

 


 

 イギリスは閉鎖的だから内部では気がつかれていませんけど、普通に国際的な魔法界ではあまり評判が良くないんですよね。いやまあダンブルドアで結構許されているところがあったりしますが、ダンブルドアもグリンデルワルドとの関係明かされたら結構辛い立場に追い込まれるんじゃないかな。

 

 というわけでトム・リドルの血族系のイベントをぶち壊すはずのつもりだったんですがなんかカステロブルーシューでかなり大当たり引いていますね。留学先で真面目に勉強するとかお前本当にホグワーツの学生としての自覚あるのか? 魔法をぶっ放して大問題引き起こすぐらいしないと名折れだぞ?

 

 さて、説明されたように蛇語遣い(パーセルマウス)はイギリスではサラザール・スリザリンの子孫に見られる特徴です。遺伝が見られるので一種の呪いと見てもいいかもしれませんね。現代において先天性の蛇語遣い(パーセルマウス)として知られているのはデルフィーニだけですが、歴史を紐解くとそれなりにいました。

 

 逆に言えば、そのような明白な特徴があったからこそゴーント家はいとこ婚みたいな形で血の純粋性を保とうとしたわけです。このあたりで培われた議論をもとに、ブラック家のような「高貴な家」が貴賎結婚を嫌う傾向とかそういうのをまぜこぜにしつつ、ちょっとマグルの優生学をひとつまみ、そして魔法界の社会構造への深い分析の上で生まれたのがかの「純血名鑑」になります。

 

 そんなふうに前提が多すぎる思想だったので、当然ながら子供世代には「名家だから強くて偉い」ぐらいの雑な概念に変化しましたし、汚れた血みたいな差別語がまかり通るようになりました。まあ逆に言えばそれぐらいしないといけないぐらいには戦後に「純血」の立場は弱まっていたとも言えるのですが。

 

 そこの不満を吸収したのが過激主義者と当時はみなされていたトム・リドル、あるいはヴォルデモート卿だというのは当時の思想史をやっている人には別に説明するまでもないですね。まあこの種のやばい人を下手に扱うとどうなるかの実例はマグルの歴史でも見られますしね。ワイマール共和国のフランツ・フォン・パーペンという保守政治家が、1930年年代初頭に当時首相になったちょび髭に対して、副首相の自分なら制御可能だとみなしていたのは有名な話です。

 

 さて、これでトムがかなり血について否定的になりました。ここから純血主義をやるには厳しいので、おそらく実力主義ルートに入るでしょう。そうしないと自分の蛇語をアイデンティティとして認めることが難しくなりますからね。

 

 このまま放っておくと夏休みの間にリトル・ハングルトンに自力で行って暴れることになるのでそこは調整しておきましょう。田舎デートってやつだ。

 


 

 古いジャケットを整え、トムは列車を降りた。地図によればリトル・ハングルトンはここからそう遠い場所ではない。わざわざマグルの移動手段を使ったのは慣れない場所に姿現し(アパリション)することを避けるためというのが大きかったが、母が過ごしただろう場所をその目で見ておきたいという思いがトムの中に生まれていたからという理由もあった。

 

「やあ」

 

 彼に声をかけてきた人がいた。背はトムより低く、声も高めだった。

 

「……もしかして、ヴェルダンディか?」

 

 その背格好を見て、トムは言う。一見すると少年に見えるが、ヴェルダンディを直接知っていれば雰囲気があまり変わっていないことは明白だった。

 

「よくわかったね、髪も切って、いくつか呪文と魔法薬を使っているというのに」

 

「薬の匂いがした。マグルなら気がつかないだろうが、これから会いに行くのは魔法使いだ」

 

 トムはいまさらなぜここにヴェルダンディがいるかを質問するほど愚かではなかった。

 

「……気をつけることにするよ。教授からもよろしく言われているからね」

 

「……ダンブルドア、か」

 

 その問いにヴェルダンディは答えなかった。とはいえ、ヴェルダンディが使った呪文や魔法薬はホグワーツの教授たちから教わったものである。自己変容術や自らの肉体をいじる魔法薬は決して安全なものではない。それを使いこなせる程度の実力が彼女にはあったし、トムが親を探す旅をしているからついていきたいと言えば協力を拒むような教授たちでもなかった。

 

 駅から歩き、歩き、時折休憩を挟み、サンドイッチを食べ、また歩いた。

 

「リトル・ハングルトンまであと1マイル、か……」

 

 トムはキイチゴの茂みから突き出した案内板を見て呟いた。

 

「メートルで書いてくれればいいのに」

 

 ヴェルダンディはため息を吐いた。

 

 標識に従って小道を進んでいくと、下り坂の先、谷間に小さな村が広がっていた。そしてそこから見える丘の斜面には、大きな屋敷が見えた。

 

「このあたりにあるはずなんだが……」

 

 トムはそう言って周囲を確認した。木々の間を進み、道に見えない場所を通るのは、かつて熱帯雨林の中でやらされたことに比べればトムにとっては造作もないことだった。

 

 そして二人は、奇妙な館に辿り着いた。周囲の木々は手入れをされておらず、建物は朽ちるに任されているようだった。そこに人は住んでいないのだろう、とトムもヴェルダンディも考えていたが、それでもそこがゴーントの屋敷であることは間違いなかった。

 

 魔法族らしく、二人は杖を構えて小屋に近づいた。トムはヴェルダンディに背後を任せ、ゆっくりと先に進んでいく。

 

 屋敷の中は暗いだろうと考えたトムは、持ち込んだランプに火をつけて中に入った。黴と蝋燭の臭いがした。トムはまだここに人がいる、と考えてゆっくりと進んだ。

 

 かつては少なくない人が過ごしていただろう建物は、荒れ果てていた。それでもトムにとっては、親と繋がりのあるかもしれない場所だった。

 

 トムはヴェルダンディの肩を叩き、無言でドアを指さした。おそらくこの先に、誰かがいる、と。ヴェルダンディがそれを理解したことを読み取るには、ちらりとその目を見るだけでトムには十分だった。

 

 トムは扉を叩く。思った以上に大きな音がしたが、それを気にせずトムは扉を開いた。

 

 ホッグズ・ヘッドよりも汚れた部屋の中央で、溶けたせいで崩れて消えかけた蝋燭に足元から照らされ、空き瓶に囲まれた男が肘掛け椅子から立ち上がっていた。顔は伸び放題の髪や髭に埋もれているようだった。そんな彼の右手には杖、左手には小刀。

 

「貴様!」

 

 喚く男がふらつきながら突進してきた時、トムの脇から赤い光が飛んで男に当たった。男は崩れ落ちるようにテーブルにぶつかり、黴だらけの床に深鍋が落ちて鈍い音を立てた。

 

 トムが振り返った時、そこには緊張した顔で杖を構えたままのヴェルダンディがいた。

 


 

 基本的にこのイベントは一年ぐらいズレたとしても史実通りに起こります。それはそうとこんなやつが伯父なんてトムくんも大変ですね。まあトムくんの父親のトムも死んだところで特に悲しまれないろくでなしだし、やっぱ家庭が酷いよ家庭が。そう考えるとメローピーってかなりいい方だったんですよね。トムを愛することを諦めて命を手放したとか言われていますが、トムを愛していなかったら孤児院までたどり着けないんですよ。

 

 というわけでこの後はうまくこのあたりの連続イベントを消化してトムが自分は母親から愛されていたんだなと消極的にでもいいのでわからせます。なにせトムは既にそばにいるという愛を知っていますからね。これはヴェルダンディではできない魂の繋がった相手と一緒に過ごさないと経験できないことなので、ナギニお姉様には感謝です。

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