ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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ちょっとシリアスになるので初投稿です


Part 15

 ここからしばらくはムービー多めですが、ちょくちょくヴェルダンディの操作も入れていきます。基本的に史実ルートだとモーフィン伯父さんに冤罪押し付けて父と祖父と祖母殺しに行きます。介入しないと今回のプレイでは初めてを捨てるのが近親になるんですがちょっとまずくないですか、史実だと最初は後輩の女の子相手でしたけど。

 

 重要なのはトムが抱くメローピー・ゴーントの認識を適切に調整することです。でも母親を捨てた復讐として父を殺したのなら、それはそれで史実のトム・リドルもなんだかんだ母親想いなところある気がするんだよな。少なくとも母親は内輪扱いされているので。

 


 

「おい、杖を貸せ」

 

 トムは部屋に清掃呪文(スコージファイ)を撒きながらヴェルダンディに言った。部屋の中心には男が椅子に縛られており、彼は目を覚まそうとしているところだった。

 

「はい」

 

 そう言って、ヴェルダンディは銀葉菩提樹(シルヴァーライム)の杖をトムの手に渡した。

 

「……悪くないな」

 

 杖を振り、軽く呪文を唱えてからトムは呟く。本来他の人の杖を使う時には独特の癖、あるいは杖職人たちの言うところの「忠誠心」の影響があるのだが、ヴェルダンディに渡された杖にはそれがなかった。かといって、弱いわけではない。特にこれからやろうとしている作業では、トムの持っているイチイの杖よりも相性がいいように思われた。

 

「私向けのものとはいえ、使いやすくはあるはず。ただ、その杖を使えるということは……」

 

「なんだよ」

 

「その芯材はセストラルの尾の毛。死を見たものにしか扱うことはできない」

 

「ああ、あの馬車を曳く」

 

 トムの言葉にヴェルダンディは頷いた。ホグワーツの飼っているセストラルの群れは、移動手段として重宝されていた。そして、今の時代には少なくない学生がセストラルを見ることができるようになってしまっていた。

 

 改めてトムは誰かの死を見た記憶を探ったが、思い当たるものは一つしかなかった。その女性の死を見たはずの時のことをトムは思い出せるわけではなかったが、それでもそれ以外に自分がこの杖を使える理由は、彼には思い当たらなかった。

 

「そして、死と向き合うものにしかその杖は使いこなせない」

 

「……ねじ伏せてやるさ、そんなもの」

 

 そう言って、トムは椅子に座った男に向き合う。

 

オイ、起キロ

 

 トムがヴェルダンディには聞き取れない言葉でそう言うと、椅子の男は目を開けた。

 

 それからしばらく、トムは男から何かを蛇語(パーセルタング)の会話で聞いていた。ヴェルダンディに会話の内容を聞き取られていないか注意しながらも、トムは情報を集めていく。

 

「……嘘はついていそうかい?」

 

 ヴェルダンディはトムに尋ねる。

 

「いいや。だが、本当のことを言っているかどうかは別だ」

 

 そう言って、トムは男に杖を向けた。

 

ヤ、ヤメロ! ソコノ ガキ モ 突ッ立ッタッテナイデ 助ケロ! 俺ハ ゴーント家 ノ 男 ダゾ!

 

「無駄だ。こいつは蛇語(パーセルタング)をろくに聞き取れやしない偽物だ」

 

 トムはそう吐き捨てて、杖を突き刺すように男の額に当て、その濁った目を覗き込んだ。

 

開心術(レジリメンス)

 

 それは心と記憶を覗き込む、神秘の真髄の一つであった。これに対抗するためには相応の訓練が必要であるが、トムの眼前にいた男はそのようなものとは無縁であった。

 

 トムは記憶に潜っていく。失意の中に死んでいたマールヴォロ。その原因である手紙。心の中にある何もかもが奪われていくかのような寒い監獄。魔法省からの来訪者やマグル、そして妹への暴行。父親から語られた家宝。愚かなマグル、あるいは他の汚れたものが混じった血とは違うという盲信。

 

「……大丈夫?」

 

 ヴェルダンディが声をかけなければ、トムは怒りと悍ましさでしばらく固まっていただろう。

 

「なあ、聞いてもいいか?」

 

「もちろん」

 

「こいつが俺の母をずっと、ずっと、彼女の心が二度と戻らなくなるまで、蔑んで、貶めて、否定していたんだとしたら……俺も、こいつにそれぐらいのことを味わわせてもいいよな?」

 

「いいだろうね」

 

 目の焦点の合わない男は、脳をぐちゃぐちゃにかき回されたような混乱の中で、その会話を聞いていた。そして、彼は微笑む少年を見た。さっきまで自分と話していた甥とは違う、別の恐ろしさを持った存在が、そこにいた。

 

「ひとまず、これは貰っておくか」

 

 トムはそう言って、男の汚い指にはまった指輪を掴んだ。

 

ソイツ ヲ 無クシタラ、親父 ニ 殺サレチマウ!

 

「お前の親父はもう死んでるんだよ」

 

 トムは奪った指輪をランプにかざした。今トムが持っている懐中時計の蓋の裏にかつて刻まれ、そしてダンブルドアによって消されたあの紋章が、男の記憶の中ではペヴェレル家のものだと言われていたものが、その指輪の石には彫られていた。

 

「……あとは、ここに来る時に下った坂から見えた館を覚えているか?」

 

 わめく男を無視して、トムはヴェルダンディに声をかける。

 

「うん」

 

「あそこに行く」

 

「理由は?」

 

「……トム・リドルがいるらしい」

 

「なるほど。ただ、魔法を使うのは注意したほうがいいよ」

 

「未成年魔法使い相手の面倒な法律か……」

 

 そう言ってトムは少し考え、床に落ちていた杖を拾い上げた。それは縛られている男が持っていたものだった。

 

「それを使う、と?」

 

「魔法省が使っている呪文についての本を読んだが、あれは杖と利用者の紐付けが成立していることを前提の一つとしている。だからそこに干渉すれば、あの館で何があってもこいつがやったことにできる」

 

「で、それで何をするんだい?」

 

 ヴェルダンディはそう言って、トムに向き合った。

 

「何、って……」

 

「痛みもなく殺す慈悲でもくれてやるのかい? 君を残して死ぬしかなかった人を見捨てた男に?」

 

「……馬鹿な。もっとあいつにふさわしい目に遭わせてやる」

 

 トムは自分が恐ろしいことを言っていると理解していた。ダンブルドアに知られれば間違いなく大事になるだろう。少なくとも、今ここで小屋の持ち主にした行為だけでも、魔法省に連行されるのには十分な理由になる。

 

 それでも、トムは覗き込んだヴェルダンディの目に揺らぎを見いだせなかった。彼女はどういうわけか、ある程度の閉心術が使えるようであったが、それでもトムには多少の隠し事をその上からでも見破れるほどの力量があった。

 

「なら、まずは相手について調べないと」

 

「……君は、誰かに捨てられたのか?」

 

 それはトムにしては曖昧な、直感にも近いものだった。ただ、そう考えれば理解できることもいくつかあった。

 

「ええ。私の父を、私は知らない。あなたと違って私は母と過ごした時間があったけれども、それでも本当はもっといたかった」

 

 トムはそれを聞いて、息を吐いた。飲み込まれそうになっていた。そもそもこいつがまともな人間なわけがない、とトムは考える。目の前の彼女は、ナギニとは違うのだ。

 

「……あれだけの屋敷なら、働いている人がいるだろう。そこから探るぞ」

 

 トムはそう言って、ヴェルダンディに杖を返した。

 


 

 いやぁ母親の過去を知って復讐を目指す少年、いいものですね。父親を殺して母親を手に入れたいと言えば典型的なエディプスコンプレックスでもあるのでしょうか。

 

 えっ婚約者がいる名士の息子がぱっとしない田舎娘と駆け落ちまがいの結婚までしたのに子供ができたら捨てて館にこもるなんてありえない? どうせ服従の呪詛(インペリオ)愛の妙薬(ラブ・ポーション)だろうって? それは証拠のない偏見ってものですよ、両親に守ってもらった英雄とか、恋人と理想を語らった経験のある男とかは、こういうところでまずい思想持つんですよね。やだやだ。

 

 というかヴェルダンディさん案外ノリノリだな。殺すなんてもったいないみたいなことを平気で言ってる。あとトムも乗るな乗るな。

 

 まあ次に会う人は善人だからいいでしょう。とはいえ戦争神経症(コンバット・ニューロシス)持ちなので話しかけ方には注意する必要がありますがね。

 


 

 まだ若者と呼ぶべき年齢のフランク・ブライスが、故郷であるリトル・ハングルトンに戻ってきて、半年が経とうとしていた。彼は砲弾を骨盤と大腿骨に喰らい、杖に頼らねば歩けない身体になっていた。

 

 トブルクの解囲を目指した作戦。敵の戦車は少なく、勝てるはずだと言っていた指揮官。8.8 cm対空砲(エイティーエイト)に狙われて燃え上がる戦車。海を越えてやってきた、ただ静かに酒を一緒に飲んだ時間を過ごした戦友が消えた。

 

 その記憶は、彼自身も気がつかないままにブライスを蝕んでいた。眠れない夜。動かない足。それでも彼は、庭師という仕事に小さな誇りを持っていた。たとえ館に住む偏屈な名士の家族と、数人の使用人しか見ることがないとしても、静かに仕事をしていれば、整った庭を作ることはできた。

 

 その日も、他の日と変わらないはずだった。ただ、彼が生け垣の枝を刈り込んでいると、少し離れたところから歩いてくる二人の人物がいた。

 

 ちらりと彼らを見て、ブライスはまた仕事に戻った。だが足音は彼の後ろを通り過ぎることなく、近くで止まった。

 

「……何だ、お前ら」

 

 たっぷりと時間が経っても動かない旅人を、振り返ったブライスは見た。二人の少年。このあたりでは見ない顔だった。

 

「良いお仕事をされていたので、思わず見てしまいました」

 

 少年の一人が言う。だが、ブライスの目はもう一人の、半歩後ろにいるほうの少年の方に向いていた。どこかで見たことがある。いや、よく見ている顔と似ている。自分が子供だった時に見かけた顔なら、もっと似ている。

 

「……この屋敷に、用でもあるのか」

 

「ええ。彼が少し、ここの人に聞きたいことがあるそうで」

 

 前の方に立っていた少年が言った。

 

「何を言うんだ。金の無心でもするのか」

 

 彼は語気を強めて言った。戦場ではいつもこうしていて、見込みがあると褒められたものだった。ただその褒めてくれた上官も、今はどこにいるかもうわからない。

 

「まさか!」

 

 後ろの方の少年は青白い顔を怒りでほのかに赤くした。だが、前の方の少年に制されてすぐに落ち着いた。

 

「……いきなり不躾で申し訳ありません。ここの館の方たちには、見知らぬ人に無心されるような心当たりがあるのですか?」

 

「……俺からは、言えん」

 

 それは雇われ人としての矜持であった。この屋敷にいる人物には給金以上の恩義は感じられなかったが、それでも手入れできる庭を与えてくれる人たちであった。

 

「しかし……」

 

 後ろに立っていた少年が一歩前に出て何かを言おうとした。

 

「帰れ! よそ者がいたと知ったらリドル様がどう思うか!」

 

 彼は自分の言葉が荒くなっていることに気がつけなかった。怒りを抑えるということができなくなっていた。時折、それがまずいもののではないかと思うことはあったが、彼にはどうしようもないものだった。

 

「リドル……」

 

 後ろの少年は、その名前を呟いて、小さく俯いていた。

 


 

 我々は言葉を持っています。心的外傷後ストレス症(Post Traumatic Stress Disorder)、略称はPTSD。戦争は人間の心を狂わせ、そして他人との交流を難しくすることがあります。しかし当時、それらは雑多な性格の変化として一括りにされていました。

 

 史実だとフランク・ブライスはトム・リドルによるリドル一家殺人事件の容疑者にして目撃者になりましたが、警察の捜査で死因が不明となったために証拠不十分として釈放されました。この問題が警察署のあるグレート・ハングルトンと事件現場のリトル・ハングルトンの確執を生んだとか色々あるのですが、それはさらに半世紀後に起こったフランク・ブライスの死もあって更に複雑になります。

 

 とはいえ、街の人達にとっては特に重要ではない偏屈な庭師が失踪してリドル邸の怪談に追加のエピソードができた、という扱いになったのでしょう。ブライスは誰も住む者がいない屋敷の庭を整える仕事をしていました。それは彼にとって、戦争で負った傷を癒す小さな慰めになったのかもしれません。

 

 ただヴォルデモート相手に啖呵切った大物であることは間違いないですし、善人寄りなのは確定なので気長に交流していきましょう。この手の人間は一回では攻略できませんが二日か三日ぐらいあればなんとかなりますし、今のトムなら大抵のものは修復呪文(レパロ)でどうにかなるぐらいに猛勉強しているはずです。うーんスペックがどんどん上がっていく。

 

 というわけでしばらくはあの小屋で過ごすとしましょう。トムがちゃんと呪文を駆使してそれなりに過ごしやすい環境を作ってくれます。まあ小屋の主は縛られたままなんですが別にいいでしょう。アズカバンよりはマシだと思ってもらわないとね。

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