ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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Part 16

 イギリスでは1939年国民兵役(軍隊)法によって、18歳から41歳までの男性が徴兵対象となりました。当然ながら、リドル邸に引きこもっていたトム・リドルもその対象となっているはずです。じゃあなんで屋敷にいたのか。

 

 理由の一つは精神疾患。普通にトラウマものですからね。もちろん当時のリトル・ハングルトンの住人にそういう配慮を求めるのは無理だったでしょうし、医者に金を積んで軍役不適格(Grade IV)に割り当ててもらった卑怯な徴兵忌避者扱いされてもおかしくはありません。いやまあちゃんと書類を用意できるって時点で金とコネがあるだろみたいな話は置いておくとしまして。

 

 というわけで村のパブで情報収集をしましょう。ピクニックにやってきたいいとこの坊ちゃんムーヴである。

 


 

 正十二角形の三ペンス真鍮貨(スリーペンスビット)を何枚か払った少年二人は、昼過ぎに村のパブ「首吊り男(ザ・ハングド・マン)」の椅子に座って紅茶とサンドイッチを囲んでいた。

 

「あんたら、観光かい?」

 

 薄いビールを飲んだ農夫が冗談交じりに言う。ここ数日このあたりにいる二人の少年についてはもう噂になっていたし、その彼らが気難しいフランク・ブライスと話していたとなればなおさらだった。それに、背の高いほうの少年の風貌と年齢を考えれば、噂話は盛り上がるものだった。

 

「そんなところです。なあトム」

 

「……はい」

 

 その名前に店内がざわめく。一人の女性が隣にいた男に話を聞いておくよう頼んで誰かを呼びに行っているのを、トムは魔法で強化した聴覚で聞き、そしてぬるくて薄い、ミルクも少ない紅茶を口に運んでいた。

 

 やはりマグルは不幸だ、とトムは考える。ホグワーツで出る紅茶はもっと濃かった。もちろん、トムは週に二オンス(六十グラム)配給される茶葉の裏にある、Uボートによる通商破壊で貨物船が減る中でも紅茶を届けようとするマグルたちの並々ならぬ努力を知ることはなかった。

 

「ここいらでなにか面白いものでもあったかい?」

 

「そういうものではないですよ。……スコットランドのほうの寄宿学校(パブリック・スクール)が夏の休みなので、二人で少し旅をしようと。彼は賢いんですよ、学校でも給費生になっていて、試験も受ければ全部一位。しかしトムはあれだね、もう少しおしゃべりを楽しんだほうがいいよ。皆さんだって色々聞きたいことがあるでしょう?」

 

 背の低い方の少年が言う。口調は少し砕けていたが、それでも拭いきれない育ちの良さがあった。

 

「静かにしろ」

 

 そうトムに言われた少年は、おどけたように肩をすくめた。

 

「……あんた、トムって言うのかい?」

 

「そうだ」

 

 トムは声をかけてきた夫人に返す。

 

「苗字はなんていうんだい?」

 

「リドルだ、トム・リドル……母がそう名付けた」

 

 パブがまた一気に騒がしくなった。一人ひとりは声を潜めているつもりでも、全員が口を開けばざわめきは避けられないのだ。

 

「この様子だと、当たりのようだね」

 

 そう言った背の低い少年を、トムは睨みつけた。

 

「……誰か、ここのトム・リドルについて話してくれる人はいませんかね、もちろん対価は払いますけれど」

 

 彼はそう言って店主を呼び、ビール二杯に相当するシリング銀貨二枚を渡した。

 

「おっ本物のお貴族サマだ、あのケチのトーマスなんかとは格が違うぜ」

 

「あたしが詳しいよ、なんたってトムが子供の頃から知っているんだ」

 

「おいおい、ここの店主以上に噂話に詳しい男はいないだろ」

 

 そうやって騒ぎ出した人達を見て、トムは息を吐いていた。少なくとも、彼らの知るトム・リドルという男はまともではなさそうだった。

 

「村外れのあばら家の娘っ子、メローピーとかいうやつと結婚したのには驚いたよ、あの時はあのリドル家にそこまでやる男が出るだなんてと思ったけれど、結局は女捨てて逃げ帰ってママのスカートの中さ」

 

「医者に金を積んで徴兵逃れたって話だぜ、あいつ」

 

「教会でもいい席に座っておきながらろくに金も出さないあの親父の息子だよ、やっぱり碌でもなかったんだ」

 

 銀貨なんてなくとも話す客たちを見て、トムの心はどんどんと冷めていった。時期からすれば、トムがまだ母の中にいた頃に、リドルはこのリトル・ハングルトンの屋敷に戻ってきたことになる。

 

「手を出したから責任を取る、っていうんなら男らしいとさえ言えるさ。でもねぇ、戻ったっきり屋敷から出てこないならそれはもうろくでなしだよ」

 

「他のところの地主さんだとああいう館を疎開のために使っているっていうんだけどな、ほらヤング・トム、言ってやりなよ。お前が親父さんをぶちのめしたって俺達は何も見なかったことにしてやるぜ」

 

 トムは淡い緑の陶器のマグを、音を立てて机に置いた。一瞬だけ、周囲の人々は口を閉じた。

 

「……すまない、もう十分だ」

 

 トムは話を聞きながら、周囲の人と目を合わせていた。そのたびに、彼の頭の中には彼らが語ろうとしないことも流れ込んできていた。

 


 

 いやあトムの親父さんは屑っすねぇ。まあ屋敷にいる本人に開心術したらまた別の真実が見えるかもしれませんが、人間は先に受け取った情報の方を優先するんですよ。というわけでトムは苦しい中でなんとか愛を見つけたもののそれでも捨てられた母と、その母を孕ませて逃げ帰ってきた野郎の子供だということを認識させられます。

 

 この時に感情移入するべきはどっちか、わかるかな? そうだね、お母さんだね。男運が悪いというか、もう少し相手を選べよというか。まあそれができていたら悲劇はなかったんですがね。

 

 さて、ここで史実と同様にトムが屋敷に押しかけて殺しても証拠がなければリトル・ハングルトンの住人は「捨てたはずの女の息子が現れて心臓発作でも起こしたんだろう」ということで納得してくれるでしょう。史実でも明らかに怪しい人がいたのになんかそんな感じでなあなあになってましたからね、リドル一家殺人事件。

 

 ただ、それじゃぁ面白くない。トムくんの大切な人を傷つけたやつらには死やアズカバンなど生ぬるい未来を与えてあげましょう。

 


 

清めよ(スコージファイ)清めよ(スコージファイ)清めよ(スコージファイ)……」

 

 小屋の中で、乱暴に髪と髭を切られた男が杖を持ってぶつぶつと呟いていた。部屋は多少は綺麗になっていたが、それでも染み付いた臭いや黴といったものの痕跡はあちこちに残っていた。

 

「……所詮は、この程度の魔法の腕か」

 

 そう言った少年は、手に持ったランプを掲げた。夏とはいえ、リトル・ハングルトンの中心部から戻ってくる頃には周囲はすっかり暗くなっていた。

 

「ああ、トム様。お帰りになりましたか」

 

 小屋の主は、甥に深々と、媚びへつらうように頭を下げた。

 

「見ろよヴェルダンディ、これがつい数日前まで自分こそが純血の中の純血だと言っていた男の姿だぜ。いいのかよマグルとの混血にそんなことをして」

 

 トムは嘲るように男を指して言った。

 

「いえ、トム様は我がゴーント家の真の誇りでございます」

 

「そうかよ」

 

 そう言ってトムは男の頬を叩いた。男は尊敬の眼差しを絶やすことはなかった。

 

「しかしまあ、なんともいい趣味だね」

 

 トムの隣を歩いていたヴェルダンディは言った。

 

「他人にしたことを、され返されない道理はないだろう。まさかそれすらもわからないような男ではあるまい」

 

 部屋の中で、トムは魔法で作った長椅子に座った。ある程度は小屋を修復呪文(レパロ)で整えたが、ダンブルドアがやる時ほどには上手にはできなかった。知識と理解がまだ足りていない、と奥歯を噛み締めながら、トムは向かいに座った呪文の解けつつある少女を見た。

 

「ところで、ここに住むのかい?」

 

 くつろいでいたトムにヴェルダンディは尋ねた。

 

「いや、どうせ住むならあの屋敷がいいな」

 

「名士なんてなるものじゃないってことは、今日の話を聞いていてわからなかったのかい?」

 

「それぐらいの仕事、僕なら造作もないことさ」

 

 そんな雑談をしながら、トムは状況を考えていた。確かにあのパブに行ったことで、多くの情報が集まったのは事実だった。今のトムの頭の中には屋敷の構造も、いつどこで使用人たちが働いているかも、あるいは館から人が出かける時間も入っている。

 

 しかし、それをどう使うかが問題であった。殺すだけなら簡単だ。証拠を残したくないのであれば、この自分と血が繋がっているとは思いたくない野蛮な男の思考と記憶をまた弄って、あの屋敷に行かせればいい。この男がもし死の呪詛(アヴァダ・ケダブラ)を唱えることもできないようなら、自分の手で殺した上でその功績を譲ってやってもいい、とトムは考えていた。

 

 ただ、それでは目の前のヴェルダンディの言いなりに近いではないか、とトムは思う。以前にコンパートメントでされたことと同じだ。相手の言葉に単純に従うのでも、あるいは簡単にその逆をやるのでもない。もっと巧妙に、ヴェルダンディの思いもよらないことをしなければならない。

 

 血の繋がりだけを見れば伯父に当たるのだろう男を作り直すのは案外難しく、それでもなお都合のいい存在ができたとは思えない。記憶を書き換えることで服従の呪詛(インペリオ)よりも汎用性が高い下僕を作れるかとも思ったが、本も読まずに育った馬鹿は馬鹿なままだった。

 

「……なあ、ヴェルダンディ」

 

 トムはそう言って、指輪をヴェルダンディに見せた。

 

「これがどうかしたのかい?」

 

「君はこれが何だか、知っているんだろう?」

 

「……知らない、というより知らないほうがいいことを知っている、かな」

 

「どういうことだ」

 

「説明すると長くなるんだけどね、どこかにあったかな……」

 

 そう言いながら、ヴェルダンディは机の上に積まれた新聞を探った。世界各地の新聞は、休暇中でもヴェルダンディのいる場所に丁寧に運ばれてきていた。

 

「まず、この写真を見てほしい」

 

「……ゲラート・グリンデルワルドか」

 

 新聞に大きく映され、身振りとともに団結を訴える男をトムは見て言う。さすがに新聞をほぼ読まない彼であっても、その名前ぐらいは知っていた。

 

「そう。この彼の後ろにある垂れ幕の紋章、見覚えがない?」

 

 そう言ってヴェルダンディが指さしたのは、背中合わせになった二つのGの下部分だった。

 

「……あの紋章、ペヴェレル家の」

 

「ちょっと待って、それ以上は言わないで」

 

 いきなり話を制してきたヴェルダンディに、トムは驚いた。そんなに嫌がるなら自分の推理を聞かせてやろうかとも思ったが、まずはヴェルダンディの話を聞くことをトムは選んだ。

 

「私は、予見者だ」

 

「ムディワ・オナイ教授のような?」

 

「多少違うけど、そう思ってもらっていいよ」

 

 そう言って微笑むヴェルダンディを見て、トムはようやくいくつかの事に納得がいった。行動が完璧すぎる時があったのは、未来を知っていたからだったのだ。

 

「それで、それがどうしてこの指輪について君が知りたくないという理由になるんだ?」

 

「いくつかの神秘的な遺物は、予見の力から外れるようになっている。だから見えにくいし、あまり自分の近くにあると先が見えなくなる」

 

「それはいい、いつも身につけておくことにしよう」

 

 トムは笑みを浮かべて、指輪を撫でた。おそらくはこの指輪はダンブルドアが恐れ、あの欧州の闇の魔法使いと繋がり、そしてイギリスの古い魔術と繋がりのあるものだ、とトムは考えた。それを指にはめているだけで、自分がそれをつける価値のある男であるという気がしていた。

 


 

 あとはしばらく時間を置けばトムが手の中で転がすっていう手順を見つけてくれるでしょう。あの昔話はやけにそのあたり具体的なんだよな。いやでもヴェルダンディが嫌いだからずっと指につけっぱなしだし子供向けの童話を読み直すようなことをしないとか、ないよね?

 

 あとはリトル・ハングルトンで残っているクエストはリドル邸に行くぐらいですね。とはいえ行ったところで特に何かあるわけでもないので多分飛ばしちゃうかもしれません。まあ洗脳されて逃げ出した人間にそこまで責任があるかと言われると微妙ですけど、それでもまあ面倒ぐらいは見てやる甲斐性はなかったんですかね。

 

 多分ここまで行けば、あとはもうトムはメローピーについて都合よく解釈してくれるでしょう。だって史実でも純血を保とうとして破滅した家と、家に依存した愚かで傲慢なマグルを見て、なぜか純血主義で一旗揚げようとか考えるような男ですよ。都合の悪いところは見ないという精神を感じる。

 

 というわけで最後の作業終わらせたらそれぞれの夏休みの残りを過ごしてホグワーツかな。トムが五年生になってホグワーツに入ると本来秘密の部屋を開けたタイミングまでに大規模な強化イベントが起こるので頑張って終わらせてもらいましょう。古代神秘の砦を攻略するんだ。

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