ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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夏の原稿を片付けたので初投稿です


Part 18

 さて、楽しいバジリスク討伐タイム。史実で討伐は事実上一人で行われましたが、今度は世界がついています。というわけで参加者を整理しましょう。

 

 アーマンド・ディペット。ホグワーツ魔法魔術学校校長。現代のイギリス魔法界における最長老の一人であり、しかしちょっとさすがにボケてきたんじゃないかと言われる老人です。御年三百と四歳。まあうん、ボケるわな。とはいえ信頼性は高いのですぐさまホグワーツ閉校とはなりません。歴史を見るとこの程度のイベントはちょくちょくありましたからね。

 

 アルバス・ダンブルドア。グリフィンドール寮監にして変容術教授。そしてホラス・スラグホーン、スリザリン寮監にして魔法薬学教授。年齢と経験としては中堅の教授陣でありながら、その腕は一線級と言っていいでしょう。国際的なコネクションと深い異文化理解を持つダンブルドアと、今のイギリス魔法界の有望な若手株の大半に唾をつけたスラグホーンが協力すれば、解決できない問題はまずありません。

 

 シルヴァヌス・ケトルバーン、魔法生物飼育学教授。今回はトムやヴェルダンディの学年を含むメンバーが彼の仕事に駆り出された時に人柱として巻き込んだのもあって、ルビウス・ハグリッドがケトルバーンの片腕扱いされています。そしてたぶんもうアクロマンチュラの卵を手に入れているんだよな。

 

 ここでどうやってアクロマンチュラの卵が手に入ったかは史実でも結構謎です。ちなみにこれに絡むイベントも複数あるのですが、どれもそれらしくなっています。グリンデルワルドと関係があったりなかったりする密輸団だったり、ナギニお姉様の持参品だったり。このあたりはイベントに絡まないならさらりと流されるのであまり気にしなくていいでしょう。

 

 追加メンバーがここからどう来るかはイベント次第ですね。というわけでまずは情報収集からです。トムが頭を潰された程度で壊れる組織を作ったような馬鹿ならあとで詰めてやる。

 


 

「これでよろしい?」

 

 椅子に座り、周囲を仮面をつけた生徒たちに囲まれたヴェルダンディは、ナイフで切った指先の血で羽ペンの先を濡らし、羊皮紙に署名をした。

 

「ああ。そしてようこそ、ワルプルギスの夜騎士団(ナイツ・オブ・ワルプルギス)へ」

 

 仮面をつけた青年が言う。ヴェルダンディが深夜に半ば連れ去られるようにして運ばれたのは、ホグワーツでも一部の人しか知らない部屋であった。城の七階にあり、とある手順を踏まなければ入れない場所。それを呼ぶ名前はいくつかあったが、最も有名な呼び名は「必要の部屋」であった。

 

「トム……と呼ばないほうがいいか。騎士たるあなたがたは、騎士団長(グランドマスター)のことをなんと呼ぶ?」

 

「我らの長にして、我らが忠誠を誓うは、死翔卿(ロード・ヴォルデモー)である。あのお方は父の名と祖父の名を乗り越え、新しい魂を手に入れた」

 

 そう言って、仮面の青年は杖を振った。宙を割いたように描かれたTOM MARVOLO RIDDLEの文字は、I AM LORD VOLDEMORTへと組み変わり、そして消えていった。

 

「……いい名前だ」

 

 ヴェルダンディは腕を組み、フランス語風の響きに納得したように頷いた。

 

「だろう?」

 

 青年も満足げに頷いた。

 

「……あなたが、今の代行と認識してよろしい?」

 

「ああ。あのお方から、もし何かあればルストランジュ嬢に事情を共有するようにと言われている。故に、我は執事長(セネシャル)として、汝を騎士団における助言者(メンター)として任命する」

 

「その任を、謹んでお受けいたします」

 

 椅子から降り、膝を曲げるヴェルダンディの頬を、青年は軽く撫でた。それを見て、周囲の学生たちは静かな拍手を送った。

 

「……で、エイブリー。本題に入りましょう。騎士団はこの状況をどう見ている?」

 

 ヴェルダンディの言葉に部屋の空気が変わった。薄暗かった部屋には蝋燭の明かりが灯り、二人を囲んでいた学生たちも仮面を外し、いつの間にか現れていた椅子に思い思いに座った。

 

死翔卿(ロード・ヴォルデモー)は秘密の部屋を探していた。ただ、その過程は僕たちにも共有されていなかった」

 

「秘密主義ね」

 

「あのお方の深い考えを僕たちが推し量るのは難しい。だが、まさかスリザリンの蛇にやられるとは……」

 

「石化自体は魔法薬で対応できるものよ。むしろこれを理由に校長や魔法省からこの騎士団が不穏分子扱いされないかどうかを気にしなさい」

 

「状況もわからないのにどうやって」

 

「あの部屋にいた怪物の正体については見当がついている。目を直接見れば死ぬけれども、間接的であれば問題はないわ。ゴーグルか専用の眼鏡をかけ、通路の曲がり角では鏡などを使うこと。これについての詳しい話は後ほどディペット校長から伝えられるでしょうけど、あなたがたは騒ぎを抑えることに注力して」

 

「……四寮全体に騎士団の団員はいる。彼らを使い、生徒を落ち着かせ、教授たちが怪物に対応できるようにするべき、とのことか?」

 

「その通り。さすがは彼の見込んだ執事長(セネシャル)

 

 そう言われたエイブリーは、一瞬浮ついた心を沈めた。彼は騎士団長からヴェルダンディに頼るのは最後にしろ、と言われていた。普通の授業の内容を聞く程度であればまだしも、騎士団の秘密を明かすのであれば厳格な魔法契約を交わせというのが騎士団長の指令であった。

 

 未来を見る。人の欲望を覗く。運命を操る。あの騎士団長がそこまで恐れる人物であるからこそ、その騎士団長がいない時にはヴェルダンディの力が必要になる、とエイブリーは判断し、騎士たちの同意を取り付け、この入団の儀式を行ったのだった。

 

「……トムは、本当に助かるのか?」

 

「まだ断言はできないから教授たちは言いたくないのだろうけれども、トムの見込んだあなた達なら話してもいいでしょう。スラグホーン教授がその人脈を使って材料を集めている。もちろん複雑な魔法薬だから彼であってもすぐに作れるというわけではないけれど」

 

「そうか、よかった……」

 

 エイブリーの顔に浮かんでいたのは、友人が助かるという事実への安堵だった。

 


 

 トムがいない間、ワルプルギスの夜騎士団(ナイツ・オブ・ワルプルギス)はヴェルダンディの助言を受けるようになります。トムが戻ると普通に追い出されます。妥当。しかし彼らは死翔卿(ロード・ヴォルデモー)の教えを受けているとはいえまだ学生の身、バジリスクを討てるほどの力もありません。彼らを前線に出して使い捨てるようなことはしませんのでご安心を。

 

 これで学生側の手駒はかなり強くなりました。勉強会からいつの間にか発展していた夜騎士団はかなりの勢力を持つようで、さっきの画面でも全寮の学生がいましたね。さすがにスリザリン中心とはいっても今のトムにとっては血筋よりも実力の方を優先しているのでしょう。もちろん純血もそれなりにいますがこの時代は名鑑に載ってなくても、あるいは載ってないからこそ純血だって名乗る家は少なくありませんでしたからね。

 

 あとはそうですね、ダンブルドア教授からも呼び出しが来ています。まったく、どいつもこいつもヴェルダンディを手紙運びの(ふくろう)か何かだと勘違いしてはいませんかね。

 


 

「ヴィセンシア・サントスからの手紙だ」

 

 変容術の教授室にやってきたヴェルダンディに、ダンブルドアは羊皮紙を差し出した。

 

「……個人的な、手紙ですね」

 

 ヴェルダンディは署名と紙を見て言う。上級大魔法使い(シュープリーム・マグワンプ)が一教授に送るにしては簡素なものだった。

 

「ああ。これを大きな問題にはしたくないのだろう。グリンデルヴァルト(Grindelwald)と戦わなければならない今、対抗勢力は団結する必要がある」

 

 ヴェルダンディはその言葉の響きに摩擦音を聞いていた。英語ではwの音を出す時に濁らないグリンデルワルドという発音になるが、ドイツ語ではその音を濁らせるグリンデルヴァルトという読みになるのだった。

 

「……ミス・ドゥラードについては?」

 

「彼女は魔法動物学の専門家と見ていい、とケトルバーンが言っていた。ならば、それを信じるべきだろう。カステロブルーシュー側からも許可は得ている。むしろ向こうで経験できない魔法動物に触れてこい、と言わんばかりだ」

 

 ダンブルドアはそう言って微笑み、ヴェルダンディも小さく笑った。こういったユーモアは、たとえ強がりであっても、緊張を解くためには必要であった。

 

「魔法動物学と言えば、我が国の誇る彼をホグワーツに招聘することはできませんか?」

 

「……彼には、彼の仕事がある。今は無理だ」

 

 ダンブルドアはグリンデルヴァルトに向けた多くの計画があり、そのうちの一つのためにニュート・スキャマンダーに頼らざるを得ない状況があった。そしてダンブルドアにとってはおそらくグリンデルヴァルトと関係のない今回の事件に、ニュートを動かせるほどの余裕はなかった。

 

「わかりました。そうなると、ダンブルドア教授がこの問題の調整役となるのでしょうか?」

 

「そうなるだろうな。ディペット校長は理事会との会議や魔法省への説明で忙しい。……ところで、ヴェルダンディ」

 

 俯いて手紙を読んでいる少女に、ダンブルドアは声をかけた。

 

「何でしょうか」

 

「トム・リドルの指輪について、何か知っているかね?」

 

 そう聞かれたヴェルダンディは目を上げて、ダンブルドアと視線を一瞬交わした。

 

「彼の伯父から、リドル家の後継者として認められた時に受け取ったものだと聞きました。それが何であるかは、知りません」

 

 ダンブルドアが覗き込んだ目の中には、嘘の揺らぎが感じられなかった。

 

 ありえない、とダンブルドアの中の猜疑心が叫ぶ。彼女はどう考えてもグリンデルヴァルトの送り込んできた人物だ。しかしもしそうであり、かつ開心術で見た揺らぎの無さが事実であれば、彼はもはや死の秘宝などというものに興味を失ってしまったということになる、とダンブルドアは考えた。彼の持っている杖も単なる強さ故に手にしたのであって、それが死の(ヴェール)を乗り越えうる力を有しているからではないということになってしまう。

 

 それは、ダンブルドアにとって辛い事実だった。しかし同時に、彼の決心を一つ固める理由にもなった。

 

「……そうか。もしトムが回復したら、その指輪を大切にするように、と伝えてくれ」

 

「興味は、ないのですか?」

 

「私には、もはや不要となったものだ」

 

 また一つ思い出が崩れていくのを感じながら、ダンブルドアはこれからの計画を練っていた。

 


 

 あとはそうですね、ナギニさんについても話が必要なんですがこれはトムがいない状態では伝えられないので手紙にしましょう。普通にホッグズ・ヘッド宛で送ってあげれば、適当なタイミングでアバーフォースさんが彼女に読ませてくれます。多分まだ常に蛇というわけではないけれど、あまりショックを与えると良くないと思うので文章は丁寧にしましょう。

 

 できればここでナギニさんがホグワーツに来てくれると助かるのですが、さすがに部外者の蛇を招き入れるとなると色々と面倒でしょう。特に彼女の経歴は不審ですからね。

 

 次の被害者が出るまでに、仕事を終わらせる必要があります。史実では舐めてるのかと言いたくなるような1キルでしたが、本気を出したバジリスクはその程度では終わりません。むしろ史実ではトムの指示に半ば嫌々従っていたと言っていいでしょう。

 

 サラザール・スリザリンの思想については現代でも議論が続くところではありますが、当時においてマグル生まれというのはかなり文化的な異物であったのではないかと考えられています。ただでさえ長距離の移動が少ないコミュニティが中心の時代、魔法使いのような飛び回ることが珍しくない人々にとってマグルの常識を持ち込む彼らは脅威だったでしょう。

 

 魔法の力や才能が少ない、という話はしばしば後世になってから付け加えられたものとされます。もちろんダームストラングのように闇を扱う以上は子供の頃から魔法族に育てられた「純血(Pure-blood)」でなければならない、みたいな意見もありますが、これはまあ扱うものが扱うものなので仕方のないところもあります。

 

 スリザリンは自分の作ったホグワーツにマグルの文化を持ち込みたくなかっただけだ、という風に見るのが一つになるでしょう。えっじゃあバジリスクを残すような恐ろしいことをするなって? 決闘で死の呪詛(アヴァダ・ケダブラ)を撃ちまくっていたような時代に現代の価値観を当てはめるのは普通に良くないと思いますよ。

 

 準備はできました。トム、仇は討ってやるからな……。

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