ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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疲れが取れにくくなっているので初投稿です


Part 19

 基本的に巨大なイベントを起こすと、世界は反動を返してきます。完全に分離したわけではないタイムラインは収束しようとするものですからね。一方でどうしようもない改変を起こせば世界は断ち切られます。

 

 例えばロンとハーマイオニーをくっつけないとハーマイオニーが魔法省大臣にならずホグワーツ教授になったりしますが、その場合でもそれ以外の世界は一部の学生の寮が変わるぐらいしか変わりません。蝶が羽ばたいても竜巻は起こらないのです。

 

 しかし世界線の分岐が起こる運命の弱いタイミングというのは限られます。その一つが1943年6月。トムが五年生の時の学年末であり、マートル・ウォーレンの死が起きた時です。

 

 というわけで時間を進めていきましょう。バジリスクが早く捕まるといいけど主人公が直接動いているわけじゃないから周囲の努力だと限界があるんじゃないかな……。

 


 

「ヴェルダンディ・ルストランジュ。君を夜騎士団から追放する」

 

 夜中のスリザリンの談話室で、トムはヴェルダンディに告げた。周囲にいるのは夜騎士団のメンバーだけであり、彼らも二人の会話を聞くというよりも予期せぬ来訪者が来ないように見張っているという側面が強かった。

 

「かしこまりました、死翔卿(ロード・ヴォルデモー)

 

「夜騎士団員以外が、僕を、その名前で、呼ぶな」

 

 単語を区切りながら、騎士団長は強くヴェルダンディに言った。

 

「……わかった、トム」

 

 ヴェルダンディの言葉を聞いて、トムは呪文も唱えず、ヴェルダンディが血で書いた署名の入った羊皮紙を手の中で燃やした。多くの保護と防御の籠った魔法の品を破壊するのは容易ではないのだが、トムにとってその程度の火を操るのは既に難しいことではなくなってた。

 

「……で、何が起こってるんだ?」

 

「私を何だと思っているの、トム。基本的な情報は夜騎士団の皆さんから聞いているでしょう。ああ、あと退院おめでとう。バジリスクに睨まれた気分はいかが?」

 

 戦時下という、魔法界においてさえ物資が潤沢とは言えない時代にあっても、ホグワーツの有望株にかけられた呪いを解くために少なくない人が手を貸した。その中心にいたスラグホーン教授には有能な学生を助けて恩を売りたいという下心もあったが、それと同じぐらい自分が監督する寮の学生への危害を見過ごせないという教授らしい立場もあった。

 

「……最悪だ。やつは俺のことを、スリザリンの裏切り者、だと」

 

「サラザール・スリザリンがどんな人物かはわかっていたでしょうに。それとも雑種(half-breed)のあなたが、マグルの世界で育ったあなたが、彼の後継者だと蛇から承認を貰えるとでも?」

 

 その言葉に、周囲にいた夜騎士団の構成員が一斉にヴェルダンディの方を睨んだ。

 

「ヴェルダンディ。同級生として忠告しておくが、今のホグワーツでその言葉をもう一度使うことがあれば、あらゆる人が君との関わりを断つだろう」

 

 トムは強く言い切って、ヴェルダンディをじっと見た。

 

 それらの言葉は、それなりに古くからあったものだった。侮蔑語は違いがあれば自然と生まれうる。古くは湧き者(Magbob)という呼び方もあったが、魔法界とマグル界が袂を分かつにつれて異なる文化からの来訪者に向けられる視線は変化していっていた。

 

 穢れた血(Mudblood)雑種(Half-breed)血の裏切り者(Blood traitor)不発(Squib)うつけ者(Muggle)。それらは隠語として、あるいは軽い嘲りとして最初は使われた。時代によっては、その対象となった人々が自らをそう呼んだことすらあった。時代が過ぎるに連れ、一般用語として用いられるようになったものもあった。

 

 ただ、それらの多くはまともな紳士淑女であれば、少なくとも公の場では口にするべきではないという認識は最低限共有されていた。マグルは既にヴァンゼーで最終的解決のための陳腐な議論を済ませていたのに比べれば、魔法界は穏健であったと言っていいだろう。

 

「……そうね。申し訳ありません」

 

 素直に、静かに頭を下げるヴェルダンディにトムは息を吐いた。事実、トムはすでに蛇にそのようなことを言われていた。その上で、力を理解せず、血とやらをことさらに重んじる愚物に何を言われようが気にすまい、とトムは決めていた。

 

「あのバジリスクを、殺してやる。手を貸せ。既に二人石になっているなら、殺したところで誰も文句を言うまい」

 

 彼の言葉に、騎士団員は頷いた。彼らの師にして友である男を否定した老いた蛇は、新しい魔法界には不要なものである、というのが彼らの共通意見であった。

 

「アフパドル卿の二の舞にならないことを祈るわ。ケトルバーン教授の手によってホグワーツの各所に雄鶏が飼われているから、朝の間はバジリスクはおそらく地下深くにいる。配管や水路は教授たちによって捜索されているけれども、未だ成果が上がっていない」

 

「教授たちが? 無駄だ。僕よりも彼らはホグワーツの遺産についての知識を持たない」

 

「半世紀前にその深淵に触れようとした学生は、神秘部案件になって消えたわよ」

 

「あれは伝承だろ」

 

「だといいけれど」

 

 そう言って、ヴェルダンディは息を吐いた。

 

「それと、私にはあまり頼らないで。先を見る力は、かなり弱まっているから」

 

 ヴェルダンディは声を潜め、トムの耳元で囁いた。

 

「……これの、せいか?」

 

 トムはつけていた指輪を撫でた。

 

「いいえ。個人的な理由。……私がまだ正気でいようとするなら、何度も見ることはできない。それでも一つ、言えることはある」

 

 ヴェルダンディはトムに視線を合わせた。

 

「六月。あなたが蛇と相対する機会は訪れる。レイヴンクローの学生が、あなたを導くでしょう」

 

 そう言って、ヴェルダンディはあくびを一つして、椅子に倒れ込んだ。少し驚いたトムがヴェルダンディの肩を軽く揺すったが、彼女は寝息を静かに立てるだけだった。

 


 

 デメリットのランダムイベントの中ではマシな方を引きましたね。必要な睡眠時間が増えるのと、魔法史の授業を履修することによる魔法史学習バフが手に入らなくなります。もともとバフがそんなあるわけではないですし、古代ギリシア魔法史とかがカリキュラムに入っているわけでもないんですけどね。

 

 とはいえ夜のイベントがしばらく制限されるのは辛いですね。こっそり夜中にホッグズ・ヘッドに行ってナギニお姉様といいことしたりするんでしょ、知ってますよ。まあそれぐらいのことはしてあげないとね、ナギニお姉様はとても心配していましたから。蛇から戻れなくて時折アバーフォースさんの代筆で近況報告みたいになったりしていましたが。あ、もちろんこの手紙はトムに渡してあります。嫌な顔してましたけど。

 

 というわけであとは時間飛ばし。このままスリザリンの蛇が潜伏ルート入ると基本的には詰みです。ナギニさんの投入か、あるいは蜘蛛の集団による捜索か。これらには時間がかかるので、のんびり過ごしていきましょう。今なら石になってもすぐに復帰できますからね。

 

 よく考えなくても生徒が石になったら閉校するけど死んだら普通に続けるのっておかしいよな、安全対策とか再発防止みたいな概念は魔法界にはないのか? そんなマグルかぶれの思想で魔法が発展するなら苦労しない? はい……。

 

 というわけで容赦なくスキップを入れます。おっと、五年生の末にはまあまあ重要なイベントがありましたね。正直今後のプレイ結果で色々変わりうるのですが、それでも六年生と七年生でかかる学業効率ボーナスが貰えるのは嬉しいのでちゃんとやっておきましょう。

 


 

「ミス・ルストランジュらしい、と言えばそうだがね」

 

 スラグホーン教授は向かいの学生の書いた羊皮紙を見た。年度末の試験は、バジリスクが潜むと噂されるホグワーツにおいて通常通り行われることが決まっていた。

 

「国際魔法協力局というのは、今の私には高望みでしょうか?」

 

「いいや、そう言いたいわけではない。来月のO.W.L.試験も、君たちの学年についてはあまり心配をしていない」

 

 スラグホーンはそう言って、満足そうに微笑んだ。だが、彼の中には少し気がかりなこともあった。

 

「どうしましたか、教授」

 

「……いや、おそらく私の父が、君のことを気に入るだろう」

 

「スラグホーン局長、ですか」

 

「ああ。彼は私と同じぐらい……なんというか、友人を作るのが趣味でね」

 

「昨今の情勢下、外交において重要な立場にあると伺っています。……できれば魔法省に就く際に教授に口添えを、とお願いしたいところですが」

 

 そう言って、ヴェルダンディは小さく笑った。

 

「まあ、父は自分の目で見たものを信じる人でね。それと、この戦争が終わったら引退したいようだ。紹介はできるが、そこまで期待しすぎない方がいい」

 

「……戦争は、終わりますかね」

 

 ヴェルダンディは声を潜めた。世界魔法戦争と呼ばれているものは、各地でグリンデルヴァルト陣営の歪みが見え始めてきた。信奉者(アコライト)の指導者が自ら飛び回り、正当性を主張しなければならないほどには、その求心力は薄れてきていた。

 

 各地で反攻勢力が固まりつつあった。アメリカのMACUSAは内部の不穏分子の鎮圧を終え、イギリス魔法省との連携を公式に発表した。国際魔法使い連盟の人事刷新は親グリンデルヴァルトの人物を一掃し、最終決戦に向けた戦力の蓄積を始めていた。

 

 マグルの世界でも、枢軸国はその勢いを失いつつあった。エル・アラメインの戦いの勝利以降イギリスは勢いを取り戻し、チュニジア戦線においてアフリカの支配権を確保しつつあった。東部においても冬のスターリングラード攻防戦を制しきれなかったことは、ドイツの弱体を示していた。

 

 ただ、風がイギリスの背中を押す向きに吹いたからといって、戦争がすぐに終わるわけではない。この後息を吹き返す可能性も十分あった。そのような情報を、ヴェルダンディはホグワーツの中で二番目に詳しく分析していた。もちろん、一番詳しく分析をしていたのは変容術教授であった。

 

「終わるさ、きっと。そうすれば、君たちの時代だ」

 

「私達を教えていた、教授の時代の間違いでは?」

 

 その言葉に、スラグホーンはにんまりと微笑んだ。ただそこには野心や欲望というよりも、もっと俗物的な期待が込められていた。

 

 スラグホーンは他人を教えるのが好きだった。成長した学生たちが活躍するのを見るのが好きだった。そうやって成長した彼らから特別扱いしてもらう時、仕事の意義を感じていた。

 

 もちろん、それは期待の薄い学生に対して目をかけないということでもある。たとえスリザリン生であれ、少なくない学生が、最低限の授業での付き合い以上のものを、スラグホーン教授と持つことができなかった。

 

「……なるほど、君ほどの人材であれば魔法省において大きな活躍ができるだろう。情勢がどうなろうと、君ならきっと乗り切れるはずだ」

 

「お褒めにあずかり、光栄です」

 

 ヴェルダンディはスラグホーン教授に頭を下げた。

 

「錬金術の授業については、今の様子なら開催されるだろう。むしろ今年は魔法試験局の人たちが怒られないかが心配だ。そうだ、確かマーチバンクスはあそこに入ったんだった。もしよければ、昔話を聞いてくれるかい?」

 

「喜んで」

 

 ヴェルダンディは微笑んで言った。

 


 

 スラグホーン教授の話はまあまあ長いんですが、聞いておくと魔法省内部ですぐにスラグ・クラブのネットワークと繋がれるので便利なんですよね。学校時代のエピソードを共有して仲良くなるのはイギリス上流階級にはよくあることです。

 

 というかスラグホーン教授、ヴェルダンディのことをなんだかんだ気に入ってくれていますね。ありがたいことです。聞いてくださいよグリフィンドールの寮監が真面目な勉強クラブとか無邪気な宝探しに疑いの目を向けてきたりするんですよ、酷いですよねぇ。

 

 さて、学業については実は裏技があります。マートル・ウォーレン絡みの事件が起こることが確実なので、O.W.L.試験のスケジュールが崩れるんですよね。なので一日か二日、追加で詰め込める余裕が出ます。あともし怪我をしたら試験において特別な配慮とか別日程とかしてもらえるので、それにも期待できます。

 

 正直言って今のヴェルダンディの学力は就職には十分でも箔をつけるには足りませんからね、できるだけ追い込めるところは追い込んで、微妙な強化については蛇にでも噛まれてスキップしたいところです。あ、トムは普通に全教科合格をやってくるので特に何もサポートする必要はないです。ずるいよなあの才能。

 

では次回、試験と討伐。運命の歯車を組み替えてやりましょう。

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