ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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季節の変わり目で投稿ペースが落ちているので初投稿です


Part 20

 試験イベントは基礎力上げていれば通りますし、直前の一夜漬けイベントは役に立ったりたたなかったりの振れ幅が激しいのであまり信用できるものではありません。結局六段階評価で詳しい評価も出ないのであまり詳しく考えなくてもいいんですけれどもね。

 

 というわけでさらりと片付けていきましょう。ここまでオールスター揃えておいて倒せないなんてことはあってはなりませんからね。というより普通であればプレイヤーキャラクターが大活躍するところなのですが、今回はそこまで個人の能力値が高いわけではないのですよ。

 


 

 O.W.L.試験。あるいは標準魔法水準試験。一般教育の習熟度確認であり、この試験で落とした科目の進路に進むことはまず不可能とされるもの。これは概ねイギリスのマグル界においてSchool Certificateに相当するものであったが、魔法界では中等教育と高等教育が同一の機関で行われることを加味すると単純に比較できるものではなかった。

 

 一科目につき一日、それを二週間かけて行うこの試験は多くの学生に苦しみを与えるものだった。学校始まって以来の天才と言われるトム・リドルでさえ、楽な顔はできないほどであった。

 

 魔法薬学の答案用紙に向かってヴェルダンディが羽ペンを走らせて記号を書き入れていると、不意に目の前が青白く霞んだ。

 

「スラグホーン教授、試験は中止だ。生徒たちは落ち着いて規定の方法で避難するように。トムとヴェルダンディは、急ぎ大広間まで来るように」

 

 部屋の中でその声を発しているのは、半透明の不死鳥だった。

 

「守護霊の呪文に、こんな使い方があったとは……」

 

 トムが呟き、そして席から立ち上がった。

 

「それぞれの寮の監督生たちの指示に従って移動を! スラグホーン教授は誘導を優先してください。ミスター・エイブリー、君はミス・ロジエールを補佐してくれ」

 

 彼の指示に、教室内はかすかなざわめきとともに準備を始めた。学生たちの動きは、最低限の練習を積んでいるものだった。

 

「……ヴェルダンディ、動くなよ」

 

 廊下にヴェルダンディと出たトムは、杖を持っていくつかの呪文を唱えた。

 

「姿現しは効かないわよ、箒の引き寄せとかなら」

 

「もっと直接的なものだ、飛んでいく」

 

「えっ」

 

 トムはヴェルダンディを小脇に抱えるようにし、床を蹴った。次の瞬間、二人は箒を使わずに廊下の真ん中を、宙を進んでいた。

 

「これは!?」

 

「バジリスク相手の切り札だ! まだ無言呪文にまではできていない!」

 

 風切音に負けないようトムは叫んだ。それは魔法界において未だ実現していないものの一つ、支えなしの人体飛行の実現だった。

 

「なぜ今になって蛇が動き出したか、わかるか?」

 

「わからない! 動かなかった理由なら雄鶏と監視だと検討はつくけど!」

 

 トムの質問にヴェルダンディが叫ぶ。

 

「ホグワーツを閉校にするつもりだ! あの蛇は学校の配管を通って潜んでいる! そして夏休みになる前に大きな動きを見せないといけないと考えたんだ!」

 

 トムはそう叫びながら、大広間までの扉をかなり強い魔法で開けていった。蝶番が軋む音がするものもあったが、今は時間のほうが重要だった。

 

 サラザール・スリザリンの蛇の目的を、トムは直感的ではあるが理解するようになっていた。それはホグワーツという場所を、マグル生まれが学ぶには危なすぎる場所にすることだ、とトムは考えていた。魔法界で生まれ育った人物であれば日常的に知っているような魔法生物の避け方を、マグル生まれはわざわざ学ばなければならない。ならば、魔法生物がどこにいるともわからない学び舎であればマグル生まれを排除することができる、というものだ。

 

 もちろん、それは根拠のない推測に近かった。論理的に考えれば、狂人の発想であるかもしれない。しかしホグワーツを愛した、そして血に複雑な想いを持つ二人の天才の思考が、時代を越えて重なることは魔法のあるホグワーツでは決してありえないものではなかった。

 

「降りるぞ」

 

 そう言ってトムは多少乱暴に地面に降り立ち、ヴェルダンディの腰に回していた手を離した。

 

 二人が勢いを半ば残したまま転がり込んだ大広間では、既に人が集まっていた。机の上には霧のような塊がホグワーツ城の形を作っており、それを用いて教授たちが今後の議論をしているところであった。だが、生徒はトムとヴェルダンディの二人だけだった。

 

「蛇は追い詰められている」

 

 ディペット校長は言った。

 

「蜘蛛の動きから居場所を彼らが……ケトルバーン教授と彼の助手たちが突き止めたわけだ。ダンブルドア教授とヴェルダンディが発見したあの地下空間で、蛇は待っている」

 

 ディペット校長の言葉を聞いて、トムは不満そうに鼻を鳴らした。あの部屋を見つけたのは自分であって、それを後から追いかけたのがその二人だと指摘をしたかった。とはいえその先で自分がどのようなことになったかを思い出し、彼は黙って椅子に座った。

 

 城の地下に複雑に伸びる通路は、スリザリンの談話室や湖とも繋がる網のような構造をしており、魔法の力をもってしても完全にその構造が把握できるものではなかった。

 

「準備をしたバジリスクを相手にするためには、広い知識と技能が必要になる。ダンブルドア教授が指揮を取る。その目を直接見なければ、即死は免れる……というのは、ケトルバーン教授の判断だ」

 

 そう語るディペット校長は、ホグワーツの教授陣の中でも指折りに問題を起こすケトルバーン教授のことを恨めしく思っていた。しかし、彼の腕と知識は疑いようのないものであった。

 

 そこまで話したところで、部屋にダンブルドア教授が入ってきた。彼の顔には焦燥が浮かんでいた。

 

「どうだ、ダンブルドア」

 

 ディペット校長はそう言った後に、ダンブルドア教授がここまで慌てるほどの事態が起こっていることを悟った。

 

「学生が一人足りない! レイヴンクローの三年生、マートル・ウォーレンがあのトイレにいる可能性がある!」

 

 トムはヴェルダンディの方を見た。彼女の顔には読み取れる表情がなかったが、覗き込んだ目には緊張と怯えによる揺れがあった。

 


 

 やっぱりマートルさんは巻き込まれる運命なんですねぇ。ちなみにトムをここまで持ってきても彼女を犠牲にして勝つみたいなルートに進むことがありました。トムが彼女を盾にしたり囮にしたりですね。極限状態で彼が他人を救うことを選べるかどうかが運命の試練になっているのかもしれません。

 

 死すべき人を生かしたままにすることは、大きな負担が伴います。しかし一旦レールが切り替わってしまえば、世界は最初からそれが当然だったかのように進んでいきます。そうすると運命の制約が緩んで改変も楽になるんですよね。隙あらば合流というかメインタイムラインと韻を踏ませようとしてくる動きはありますが。

 

 あ、戦闘シーンはありません。ヴェルダンディさんが行くならまだしも、今回は後方支援ですからね。

 


 

「トム先輩!」

 

 聞き慣れない声で、トムは薄目を開けた。目の前にいたのは、にきびが目立つ、眼鏡を掛けた後輩だった。

 

「……ミス・ウォーレン、ここは」

 

 ふらつく頭と渇いた喉を感じながら、トムはかすれた声で言う。

 

「医務室、です。バジリスクに噛まれて、不死鳥の涙も間に合うかぎりぎりだったと聞いて、わたし……」

 

 そう言って顔を伏せ、シーツを涙で濡らして泣き出した彼女に、トムは呆れた。

 

「……バジリスクは、どうなった」

 

「倒しました。トム先輩が」

 

「僕、が……」

 

 そうして、ようやく彼の中にその実感が湧いてきた。倒れたダンブルドア教授から託された剣を持ち、宙に飛び、そして魔法を解いた。自分の体重をかけて蛇の頭を貫いた。

 

「はい。トム先輩がいなければみんな死んでいたかもしれません……」

 

「それぐらいでいいでしょう、マートル」

 

 そう言ってマートルの襟首を掴んでトムのベッドから引き剥がしたのは、ヴェルダンディだった。

 

「……いや、君の顔を見るぐらいならマートルと一緒にいたほうがいい」

 

「トム先輩!」

 

 喜んで顔を上げたマートルであったが、彼女はヴェルダンディに視線を向けられてしゅんと肩を下ろした。

 

「O.W.L.の再試験はあなたが回復したら行われる。聖マンゴ魔法疾患傷害病院は魔法省に徴用されているから、治療はここで行われる。よかったわね、夏休みの間ずっと、ホグワーツにいられるわよ」

 

「……それは、嬉しい話だね」

 

 トムは本心からそう言った。あの場所に帰らなくてもいいことよりも、このホグワーツを自分の場所として守れたことのほうが嬉しかった。

 

「あなた以外の被害はケトルバーン教授ぐらいね。彼はゴーグルが壊されたのだけど、バジリスクに睨まれた時に杖で自分の左目を吹き飛ばした。だから致命的な石化が広がり切らず、死にはしなかったわ」

 

「……は?」

 

「文字通りよ。彼は歴史上初めてバジリスクと目を合わせて死ななかった人物になったわ。それに教科書にある『即死』という文言も改定する必要があるかもしれないわね」

 

「……ああ」

 

「それと、彼を含めて蜘蛛を使って蛇の場所を特定していた人達は魔法生物規制管理部の動物課に詰められているわ。どうやらアクロマンチュラを活用したらしい」

 

「……XXXXX級(クインティプル・エックス)の対応に、XXXXX級(クインティプル・エックス)を持ち出したのか? あいつらは?」

 

「らしいわね。ホグワーツらしいと言えばそうだけど」

 

 ヴェルダンディの言葉を聞いて、トムは小さく笑った。それを冗談として笑える日常が、戻ろうとしていたのだ。

 

「それと、あと数日のうちに立って歩けるようにしておくことね。ホグワーツの英雄がふらついて功労賞を受け取るなんて、さまにならないわよ」

 

 ヴェルダンディはそう言って、トムのいた病室から去った。部屋には言葉の意味がまだ飲み込めなかったトムと、驚いて固まっているマートルが残された。

 


 

 ちなみにトムがマートルを救うとマートルからトムへの好感度がバグります。まああの年頃の少女って顔がいい男が大好きですからね。普通に覗きとかしまくっているあの子、精神がなかなかに図太いので危ないところに突っ込む癖と自殺癖さえなければ……いや相殺にならないどころか悪化させているな……。

 

 さて、マートルが救われたので世界の運命は大きく切り替わります。このまま放置しても、夏休みのうちにリドル邸殺人事件を起こすことはないでしょう。そもそもリハビリがあるので夏の間は医務室ですが。つまりヴェルダンディが自由に動けることになります。

 

 ではその間に何をやるか。トムが闇の道に進みすぎないようにします。このまま放置しておくとホグワーツの愛着からゆかりの品を集める探索が始まってヘプジバ・スミスが死にます。いやまあああいう重要な品はトロフィールームに置いてもいいと思うんですけどね。史実では手に入らなかったグリフィンドールの剣を今回使えてしまったので遺物コンプリートもできるのが嫌なところ。

 

 スリザリンの学生がなんでグリフィンドールの剣を使えたのかですが、端的に言えばグリフィンドール性があったからですね。入学前から初対面の子を壁ドンしたり、ろくな計画も立てずに突っ走って石化したり、後輩を守って戦うあたりはかなりグリフィンドールですよ。

 

 その方向性が強くなりすぎると、平気で闇の魔法とか禁呪を使うようになります。一体誰なんだ磔の呪詛(クルーシオ)を使ったけど甘くて煽られていたり服従の呪詛(インペリオ)を気軽に唱えて銀行強盗に入ったりするようなやつ……。

 

 というわけで、トムくんには分霊箱を作ってもらいましょう。何言っているかわからないと思いますがそういうチャートなのでご安心ください。しかし、あいにくヴェルダンディさんはそこまで天才ではありません。多少の予見で運命を捻じ曲げることはできますが、普通なら知識がないので極端な幸運判定の成功があってもなお届かない神秘の深奥になります。

 

 適切な師がいればいいんですが、残念ながらイギリスにはそんな死とか闇の魔術とかを極めた人がいないんですよね。ダンブルドア教授でさえおそらく名前や原理は知っていたとしても今回やりたいようなタイプの問題には対応できないでしょうし、ここはそのあたりの実戦経験豊富な現役の人に教えを請いたいところです。

 

 では、学びの旅に必要なものを用意しておきましょう。ポリジュース数日分、偽造の身分証明書、ドイツ語とポルトガル語の知識。つまりはそういうことです。連合国でも枢軸国でもないとされた中立国、あるいは信奉者(アコライト)による支配が弱い場所を経由して、おじさまに会いに行きましょう。久々の帰省ですね。皆元気にしているかな……。

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