ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

21 / 25
少し精神とスケジュールに余裕が出そうなので初投稿です


Part 21: 五年生 - 5

 数千両もの戦車がクルスク付近でぶつかり、ドイツが戦術的優勢を保ちながらもソ連軍の連続攻勢の前に敗北した夏。地中海ではシチリア島への上陸が成功しムッソリーニが失脚。激しくなるドイツへの戦略爆撃、さらに暗号解読によって狙い撃たれる潜水艦。ドイツ首脳部が最終的な勝利が難しいという現実を突きつけられていた、という頃です。

 

 魔法史の方を見ると各地でレジスタンスが反撃を開始、信奉者(アコライト)の軍勢はそれに対しての抑圧を強めながらも劣勢が続き、支配地域を縮小させているあたりですね。大規模な反攻作戦は起こってはいませんが、包囲網がじりじりと狭められている感じです。

 

 つまり楽しい旅行にはぴったりの時期ということですね! まずは飛行機で中立国へと向かいましょうか。文書についても一応本物を用意しますが、飛行機にはチケットを買って乗るわけではなく魔法のかかった書類を手にして搭乗します。まあ、そもそもこの時代にそんなのに乗るのは訳ありな人達ばかりですし、ノルウェー亡命政府からの特別な仕事だと言われたら特に疑う理由もありませんね。とはいえ入国は正規のルートで行われるのできちんとやりましょう。

 


 

 ──1943年8月、ストックホルム

 

 英国海外航空(B O A C)が定期運航する旅客機は、予定時刻から少し遅れて日付が変わって間もない深夜にブロンマ空港に到着した。ロッキード社のロードスターから降りる数人の乗客は、暗闇に紛れるように、入国審査のために空港の建物へと進んだ。

 

「書類を出せ」

 

 英語の指示に従い、白髪の交じった女性は旅券を出した。荷物は鞄一つ。審査官は写真と眼の前の人物を見比べた。彼女は緊張しているようだったが、この真夜中に来る便の乗客は少なからずそうだった。

 

「……入国目的は?」

 

「貿易取引のための、通訳です」

 

 査証を一瞥し、日付にも文面にも問題がないことを彼は確認した。これでいい。少なくとも、言い訳にはなる。

 

 彼は夜勤の審査官として、定期的に英国から飛んでくる飛行機についてそれなり以上の噂を知ってしまっていた。この種の飛行機が到着するのは、普通の飛行機が飛ばないような深夜か悪天候。運航はイギリスの会社と言いながら、機長はノルウェー人。出発地点はスコットランド、王立空軍ルーチャーズ基地。ここまできて、時勢を考えればその飛行機が何のためにあるかはわかるというものだ。

 

 それでも、スウェーデンは中立国だ。東のフィンランドは継続戦争をソ連と戦い、西のノルウェーはドイツの上陸を受けて占領された。その中でスウェーデンは非常に難しい立場を強いられていたが、きちんと書類が揃っている人物を通さない理由はなかった。

 

「問題ない。通っていい」

 

Tack så mycket.(ありがとうございます)

 

Varsågod.(どうも。) Trevlig resa.(良い旅を)

 

 スウェーデン語の礼に軽く返して、審査官は彼女を視界の隅で見送り、また次の入国者に向かい合った。

 

 見送られた方の彼女は、しばらく歩いて足を止めた。椅子の上においた鞄を軽く叩いてから開け、中からスキットルを出し、そして一口飲もうと手をかけた。そこで、彼女は手を止めた。

 

「……何も、しないわ」

 

 スキットルを鞄の脇に置き、彼女は両手を挙げてドイツ語で呟いた。薄暗い空港の建物の中で、電灯がちらついた。

 

「あの方がお待ちだ。ついてこい」

 

 暗がりから返ってきたドイツ語に、女性は息を吐いて周囲を見た。杖を向けた男女が合計三人、彼女の周囲を囲んでいた。

 

「わかったわ。それと夜で人が少ないとはいえ、あまり魔法を使うべきではないのでは?」

 

「最低限の人払いと消音だけだ。トレレボリまでの車を用意してある」

 

「用意周到ね」

 

 彼女は案内され、停まっていたボルボのセダンに乗せられた。車が走り出してしばらくすると、後部座席に挟まれるように座っていた彼女の顔が奇妙に歪み始めた。そしてその風貌は、二十歳以上若返ったかのように皺が取れ、少女の姿に落ち着いた。

 

「……お久しぶりね、ミス・ルストランジュ」

 

 若返った彼女の隣に座っていた女性が口を開いた。久しぶりのフランス語の響きに少女は緊張をほどき、年頃の少女らしい笑みを浮かべた。

 

「堅苦しいでしょう、昔みたいにヴェルダンディで構わないですよ。そして、あなたの姪にはいつもお世話になっております」

 

 ヴィンダ・ロジエールは、信奉者(アコライト)たちの中で重要な地位にあった。同時に、彼女の姪はホグワーツ魔法魔術学校で学ぶヴェルダンディの同級生であり、ワルプルギスの夜騎士団の騎士の一人であった。

 

「彼女は元気?」

 

「ええ。友達と一緒に健やかに過ごしております」

 

「そう。それと、手紙の一通も出さずに帰ってくるな、とアバナシーが文句を言っていたわ。車と切符の手配は彼の仕事だったから、後で挨拶をしておくように」

 

「今の情勢で(ふくろう)便を出すのは怪しすぎます。中立国経由で新聞を取り寄せるだけでも、私のホグワーツでの肩身はかなり狭いのですよ?」

 

「あの方は、あなたがとても楽しそうであったと言っていました」

 

 そう言われたヴェルダンディは、少しだけ苦笑いをした。

 


 

 家族のように接してくれた人達との数年ぶりの再会。いいものですね。言語が入り混じりすぎていて編集が大変になりそうですが、まあ時代が時代なので仕方がありません。いやぁおじさまが帰ってくるタイミングを見ていてくれたので楽になりましたね。ちゃんと定期的に何やってるか遠くから見てくれるのありがたい。

 

 ここからの移動ルートとしてはザスニッツまで船、そこから列車でミュンヘンのあたりまで、あとは車でいい感じに、というところです。城の位置を守るためには物理的移動が一番楽ですからね。

 

 まあ帰省シーンはカットでいいでしょう。空襲で酷いことになった街とか活気のない街並みとか、そういうものを見ても気が滅入るだけですから。空襲をされる側からする側になって、活気が取り戻されてきたイギリスと比べると、当時のドイツの雰囲気というのは嫌なものですね。

 


 

 ヴェルダンディは懐かしいアルプスの空気を胸いっぱいに吸い込み、城を見上げた。そこは本拠地であると同時に、監獄でもあった。

 

 その一室に、城の主の部屋があった。

 

「入れ」

 

 彼女が扉を叩こうとする前に、中から声がした。

 

「失礼します。そしてお久しぶりです、おじさま」

 

「あれは、蘇りの石だ」

 

 部屋にヴェルダンディが入るか入らないかの時に、老人は口を開いた。老いと焦燥がその顔に表れており、かつて持っていた堂々とした風格は削られていた。それでもなお、彼は只者ではない威圧をまとっていた。

 

「……酷いですわね。私はそれが何であるか気がつかないように、それなりに注意していたのですが」

 

 その雰囲気に押しつぶされそうになりながら、ヴェルダンディは彼を見据えた。

 

「ああ、そうか。だから君は教授に、自分はその指輪について知らないと、その秘宝たちへの興味など失った人物に育てられたのだと、そう言ったのだね?」

 

「……他に言いようが、ありますか?」

 

「……まあ、いい。帰ってきた理由を聞かせてもらおうか」

 

 そう吐き捨てて、苛立った老人は椅子に座り、水煙草を吸った。

 

「おじさまは、ホークラックスをご存知ですか?」

 

「『闇の魔術に対する防衛術』の夏休みの課題かね? 深淵への探求について、ホグワーツが私の母校よりも進んでいたとは驚きだ」

 

「退学になっていましたよね」

 

「極めきったということだよ。……もちろん、分霊箱(ホークラックス)についてもな」

 

 そう言って、彼は深く煙を吐いた。

 

「魂の分割と、その器への守護。腐りしハーポの生み出した、闇の中の闇。そして、究極の愛だ」

 

「……どういう、ことですか?」

 

「考えてもみたまえ。もし愛する者を守ることができ、そして自分の一部が常にその者と共にあるようにできるならば?」

 

「ああ、だから終わりを作るために、死ぬことができるようにするために、バジリスクの毒を」

 

「その通りだ。ハーポはケイローンと同地域の人物であるから、その恐ろしさを知っていたのだろう。ああ、ホグワーツではこういう時に良くできた学生に点を与えるのだったな。ミス・ルストランジュ、アズカバンに十点」

 

 男は小さく笑った。ヴェルダンディも微笑みを返した。

 

「それは、アズカバンに送られることが法によって定められている許されざる呪詛ではありませんが」

 

「作成には忌まわしき行為が、多くの場合は殺人が伴う。ならマグルでも殺してそれを作るかね? それが今後のイギリスで、許されるとでも?」

 

「無理でしょうね。マグルとの融和とまではいかなくとも、マグルを支配しようという魔法使いは十年後には全員牢獄送りになっているでしょう」

 

「私との同居人だ。どうだい、ホグワーツを卒業したらここに来るのは」

 

「お誘いありがとうございます、遠慮いたしますわ」

 

 二人は視線を向け合い、そしてほぼ同時にそらした。

 

「……分霊箱(ホークラックス)、か。呪文であればこの城に参考になる本はいくらかあるだろうが……この手のものに興味を持つには、君は才覚が足りないだろう。身をわきまえなければ、残るのは破滅だけだぞ」

 

「ええ。だからこれはほんの好奇心ですが──」

 

 ヴェルダンディは質問を告げた。男はそれを聞いて、満足そうに笑った。

 

「そうか、それであれば私の専門だ。いずれ秘宝によって行おうとし、彼にも共有することはなく、そして今なお追い求めるものだ。そして純粋に学問的なものを越えた、実践を教えられるのは、私だけだろう」

 

「世間体など気にしない師を持って、私は光栄です」

 

「彼はこのことには厳しいだろう。彼は私に並ぶ闇の知識への理解を持ちながら、それを自分のものにできなかったがゆえに傲慢になった。愛や忠誠、そして無垢。自分がそれを理解していると、ゆえに他人の持つそれらを正しく扱えると、彼は信じている」

 

「……一応は、あれでも私の変容術の師ではあります。それ以上は、私の口からは」

 

「そうか。……知りたいことは、以上かね?」

 

「ええ。あまり長居をすると面倒なことになりますし、数日中には戻らなければ」

 

 そう言ってヴェルダンディは椅子から立ち上がり、男に背を向けた。

 

「……わかっているとは思うが、忠告をしておくぞ」

 

 それを聞いて、ヴェルダンディは足を止めた。

 

「何でしょうか」

 

「吊るされた男は、九夜の間傷と飢えを受けた。祝福された王が与えた大釜は、兵たちから声を奪った。世界の運命に抗う意志を通すためには、犠牲が必要となるだろう」

 

「……心します。そして、ありがとうございました」

 

「構わん。この大陸を出てから、お前は私にとって誰でもない人となる」

 

「さようなら、おじさま。誰から学んだかは忘れても、何を学んだかを忘れることはないでしょう」

 

「知っているとも」

 

 最後の言葉が去っていった少女の耳に届いたかどうか、男は知ることはなかった。

 


 

 いやぁ、やはりこの人は強いですね。なんだかんだ甘いところも助かる。帰り道はイベリア半島、ポルトガル経由でイギリスまで船です。だからポルトガル語を学んでおく必要があったんですね。そちらについての文書もヴェルダンディさんの手元に用意してあるのでそこはご安心ください。

 

 ちなみに途中でムービーの音がなくなりましたが、これは仕様です。ある種の整合性担保ですね。予見者属性を持っているキャラと交流して特定の条件を満たすと出るのですが、この場所で言われた言葉が後から整合性があるように埋まるタイプのものになっています。つまり後でここで言ったものだと伏線回収できれば結構好き勝手に行動していいってことですね。

 

 ちなみに今回知りたかったタイプの知識を知っているのは、世界でおじさまだけです。ああいや、おじさまってもう呼べないのか。少し寂しくはありますが、彼女もそろそろ大人になりますからね。親離れが必要な年齢になるのです。

 

 普通は信奉者(アコライト)ルートを進めたうえでトム・リドルの情報を渡すとか、あるいはトム経由で分霊箱(ホークラックス)の詳細を知るために魔法薬学教授ではなく最高の闇の魔法使いに相談するとかで手に入る情報なのですが予見者特性持ちだとかなりスムーズに行きますね。彼女の分霊箱の知識自体はたぶんトムが教授に質問する世界線を見たのでしょう。

 

 というわけでさくっと帰って楽しい分霊箱作りをやっていきましょう。いやぁトムくんとの共同作業、楽しみですね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。