ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート 作:魔法省真理部記録局
楽しい欧州旅行から帰ってきたところからスタートです。六年生となると選択授業が中心になりますが、既にO.W.L.でまあまあの点を取っているので魔法を本気で使うような役職でなければ今からホグワーツ中退して働くというのも選択肢には入ってきます。まあだいたいの学生は何かしらN.E.W.T.レベルの授業を受けられますし、もし全落ちとしても六年生と七年生でO.W.L.再試験受けて就職資格手に入れるとかできますからね。
このあたりはリスキリングとか転職とかが難しいイギリス魔法界のキャリア事情とかも絡んでくるのですが、運がいいと普通に百や百五十生きることも珍しくないのでマグルの常識がなかなか通用しないんですよね。
というわけで六年生を始めていきましょう。いやあ学生らしく授業を受けるのも大事ですね。
「これが
トムは手の中で、先程の魔法薬学の授業で賞品として手に入れた小さな薬瓶を揺らしていた。小さなしぶきがきらきらと、ガラスの中で跳ねていた。
「いつ使うかは決まった?」
隣のヴェルダンディに話しかけられ、トムはむっとした表情を浮かべた。
「使いたい時には大抵禁止されているんだ、戦利品の一つとして取っておくさ」
「そう言って箱に詰めて使っていないもの、どれだけある?」
「……関係のないことだろ。それに君からの戦利品はここにちゃんとある」
そう言って、トムは銀時計の入った場所を服の上から軽く叩いた。
「あー、みんな集まっているね。それじゃあ、授業を始めようか」
誰も気がつかないうちに、その教師は立っていた。枯れ木のような、弱々しく震える老人。しかしその目は知恵に満ちており、学生たちを沈黙させるのに十分なほどであった。
「私のことを知っている人は、どれだけいるかな?」
ヴェルダンディは、恐る恐る手を挙げた。教室の中には、そうした学生が何人かいた。
「うん、嬉しいね……。けれども、今年はただの教授だから、あまり緊張せずにフラメル教授と呼んでほしい。アルバスから頼まれて、君たちに錬金術をこれから教えることになる」
「おいヴェルダンディ、まさか彼って」
トムは無言で
「ええ。フランスを代表する錬金術師であり、マグルの世界では写本業者にして篤志家として知られた、あのニコラス・フラメルよ」
その名前はトムも知っていた。生命について調べていれば本の中に出てくる人物であるし、そもそも錬金術の予習をしている中で欧州における代表的な人物として真っ先に挙がるような存在であった。
「……なんでそんな人が、今の情勢のホグワーツで教鞭をとるんだよ」
「私だって知りたいわよ」
二人が話す横で、フラメル教授は危なっかしく杖を持ち、石に向けた。
「錬金術の本質は、物質の純化です。鉱物界のものを植物界のものに、植物界のものを動物界のものに、動物界のものを人間界のものに変える時、君たちは錬金術の入門の道を歩いているのです」
ぶつぶつと呪文を唱えたフラメルの前で、石からは草が生え、草の露からは蜂が生まれていた。
「かつてこの探求が目標としていたこと、つまり卑金属を黄金に純化すること、そして人間を超越した、完全な存在にすることは、今のところできていません」
「はい先生」
トムは真っ直ぐに手を挙げた。
「うん、何かね?」
「フラメル教授は賢者の石を作ったと聞いています。それなのに、人間を超越すること……例えば不死を手に入れるのは、不可能だと言えるのですか?」
トムは眼の前の男が十四世紀から生き続けている男だと知っていた。だからこそ、その彼が完全など不可能だと言う時、それは秘密を隠しているのだと見えた。
「うん、とても良い質問だ。私が偶然にも作り出したあの石を再現できた人はいない。確かに私は長く生きているが、成功したのはあの一度きりだ。そして黄金を作り出すことはできても、それはあくまで変容術の範疇であって錬金術の目指す純化の方向性とは異なる」
その言葉に不満そうなトムを見て、フラメルは話を続けた。
「そして、何があっても死なない肉体を手に入れることは未だできていない。アムリタ、ネクタル、あるいは
学生たちが羽ペンを走らせ、フラメルの言葉を書き留めていた。フランスが、いや欧州が誇る錬金術師の言葉であった。魔法界においても指折りの教育機関であるホグワーツでさえ、彼を招聘できることは名誉と見なされるべきというほどの人物なのだ。
「君、名前は?」
「トムです、トム・リドル」
「おお、君が。アルバスから聞いているよ。そうだね、君が生命に興味を持つというのなら、それについて話そうか。昔のことだがパラケルススというやつがいてね、ホムンクルスという生命を作ろうとしたときのことなんだが……」
トムは話を書き取りながら、ちらりと隣のヴェルダンディを見た。羽ペンを動かすこともなく、頬杖をついて、彼女は正面を見据えていた。既に錬金術の予習は終わっているというわけか、とトムは息を吐く。
彼にはヴェルダンディに聞かなければならないことがあった。夏休み、毒の影響でろくに動けなかった間、多くのことをトムは考えていた。そしてダンブルドアから共有された事実を踏まえれば、ある一つの可能性への疑いがトムの中に生まれてきていた。
というわけで1938年シナリオの六年生で錬金術の授業が開講されるとニコラス・フラメルが教授になります。まあ史実でも同じぐらいのタイミングで反攻作戦の協力のために夫婦でイギリスに渡っているのですが。
とはいえ今回錬金術の授業で特に学んでおきたいことはないんですよね。もう知識としてはおじさまに教わったわけで、あとはタイミングを狙って実践するだけです。まあこの予見さえ成功すればあとは結構どうにでもなるので正気度を削る覚悟を決めてしっかりやっていきましょう。
ちなみにフラメル教授の内容に補足をしておくと水銀から金を作るというのは1941年にハーバード大学のサイクロトロンによって中性子線を当てる事によって実現しています。できたのは放射性の金でしたがね。
行わなくちゃいけない儀式は複雑ですが、理論上は偶然にも起こりうるものです。とはいえあれは複雑に条件が絡んだものだったので、意図的に起こすためにはそれなりに準備と儀式の場所が必要ですね。まあ談話室でいいか、トムに探してもらうのも面倒だしね。
トムは杖を持って、スリザリン寮の談話室に入った。そこには、彼を待っていたかのように長椅子に座るヴェルダンディがいた。数日中に聞こうと思っていたことが、先手を取られて実行されてしまっていた。
「……なあ、ヴェルダンディ」
「あら、監督生が夜ふかしとは」
「冗談はよせ。三つ聞かせろ」
トムは杖をヴェルダンディに向け、じりじりと進んでいった。その右手の中指には、いつもつけている指輪がなかった。
「ええ、構わないわ」
「一つ、指輪と
深夜に目覚めた時、トムは指輪を失っていたことに気がついた。それから急いで戦利品を入れていた箱を調べたが、それも魔法によって開けられていた。多くのものは無事だったが、最も最近手に入れた魔法薬が奪われていた。そこまでやる人物に、トムは一人しか心当たりがなかった。
まずは寮内にいないか確認し、その後はホグワーツの神秘に潜って居場所を探るつもりであったが、その手間は省けたようだった。しかし同時に、相手がなにか準備している可能性にトムは警戒しながら進んでいった。
「両方とも私が持っているわ」
「そうか。二つ、夏休みの間、どこにいた?」
「少し昔暮らしていた場所に戻っていまして」
「嘘だ」
ヴェルダンディの心には歪みと揺らぎがあった。今やトムは、相手が嘘をついていない時でさえ、騙そうとしているかどうかを見分けられるようになっていた。
おそらく、そこに暮らしていたのは事実なのだろう。しかし明らかに隠していることがあった。相手を誤解させ、その責任を押し付けるようなやり方がヴェルダンディの常套手段だということを、トムはよくわかっていた。
「……ダンブルドア教授から聞いた。君が大陸の方でグリンデルワルドと繋がっているという疑いがある」
「あら、あの猜疑心の強い教授がそこまで話すとは。ええ、その通り。彼のところに行って、とあるものについて色々とお話を」
ヴェルダンディはそう言って、足を組んだ。
「蘇りの、石か」
「その通り。この石が必要だったの」
ヴェルダンディはそう言って、手の中にある指輪をトムに見せた。
「……今から君を拘束して、ダンブルドアのところに連れて行く」
「深夜の出歩きは校則違反ですよ?」
「そんなものじゃないだろう、君がやっているのは。あの石が何をもたらすのか、君は理解して盗んだんだろう?」
「
トムの手が止まった。その通りだった。
禁書庫から持ち出した本を含め、トムは闇の魔術と呼ばれるものの力に惹かれていた。癒えぬ、そして代々伝わることになる傷や呪い、死霊術、そして分霊箱のようなものまで。しかし、それらがトムの望む形で死を超越するものであるかどうかは怪しかった。
その中でダンブルドアの言葉から推測した方法は、トムからすれば陳腐な秘宝の使い方に過ぎなかった。最も恐れられる闇の魔法使いと呼ばれる男ですら、そのようなつまらないことをするのだとトムは笑いたくなった。
それでも、彼は油断をすることがなかった。ヴェルダンディがもしグリンデルワルドと繋がった人物であり、トムに近づいた理由がその石を手に入れ、戦争を有利にし、世界を支配することなのであれば。
それに気がついた時、トムの中で多くのものが組み上がった。なぜ最初のコンパートメントであれだけのことをしたのか。リトル・ハングルトンの旅になぜ同行してきたのか。秘密の部屋でバジリスクを倒したことすら、あるいはヴェルダンディの計画のうちだったのかもしれない。
「……三つ、なぜ俺の運命を捻じ曲げた?」
「嫌でしたか? スリザリンの蛇に『君は正当な後継者だ』とでも言ってもらいたかったのですか? 純血主義者に頭を下げるために家系図から父を消し去るつもりだったのですか? ああそもそもゴーントの血を彼らが受け入れてくれると思って」
「黙れ!」
トムは叫んで、杖をヴェルダンディの喉に突き立てた。
「グリンデルワルドやお前にとって、俺はしょせんは駒だって言うのか?」
トムの言葉に、黙ったままヴェルダンディは微笑んだ。何かを企んでいたり、隠している様子はなかった。少しの緊張とともに、彼女は座っていた。
「
トムは三つの
「……闇の呪文ですよ、それは」
呪文が切れた後、ヴェルダンディはトムを睨みつけるようにして言った。
「ああ、そうかい。じゃあ呪文を使わないでやるよ」
そう言ってトムは杖を投げ捨て、ヴェルダンディの首に両手をかけた。長椅子に倒されたヴェルダンディは、顔を赤くし、声にならない声を出していた。一発か二発膝で蹴れば、すぐに抵抗は少なくなった。そうでなくとも、この年齢の男女の体格差であればヴェルダンディがトムに勝てる道理はなかった。
「俺の人生は俺のものだ! お前の命だって俺に使われるものに過ぎないんだよ!」
首を絞めながら、トムはこの犠牲の使い道まで丁寧に考えていた。そうだ、指輪を分霊箱とやらにしてしまおう。いや、時計のほうが面白いかもしれない。ヴェルダンディの贈り物を有効活用する方法だ。
そうしている間に、トムの下であがいていた身体からは徐々に力が抜けていった。暴れていた身体は止まり、瞼は半開きとなり、そして談話室は静かになった。
「やった……」
そう言ってトムは切れた息を整えた。そして、自分がやったことを目の当たりにした。
首に手の跡が残る、乱れた寝間着姿の少女。いつもの掴みどころのない顔とは違って、はっきりと苦しさに歪んだ表情。
彼女はトムの暗部を知る秘密の共有者であり、彼の教え子であり、そして、無二の友人だった。
そのただ一人は、今や何も言わず、長椅子の上で横たわっていた。
トムは自分の中で、何かが壊れたのを感じることができた。
ヴェルダンディの腕が、長椅子から力なくずり落ちた。その手の中で、指輪が三度転がった。
うーん情熱的な初めてでしたね。しかし夜の談話室で無理やりって感じでしたけどこれ大丈夫ですかね、全年齢でいいですか? なにか規制されたりしませんか? まあ後輩に取られるよりはよほどいいか。でもあれも直接やったわけじゃないから微妙なんだよな、死後それなりに経ってから日記を分霊箱にできたってことは殺人カウントはされたらしいですが。
ともあれ、これで条件は揃いました。次回は解説のムービーからかな。