ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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夏の原稿その二を殺して話タイトルを変えてきたので初投稿です


Part 24: 六年生 - 3

 六年生の日常生活を送りつつ今後の長期チャートについて整理していきましょう。トム・リドルの強化ルートには大きく二つあり、一つは魔法省内部で出世していくもの、もう一つは外をあちこち回って経験を積むものです。

 

 史実では後者を闇方面に特化して進みましたが、もちろんそれをやるとホグワーツの教授職は手に入らなくなります。ダンブルドアが決闘で勝った場合には校長が変わることがほぼ確定しているので、今の状態だとさすがに素直にポストをもらうのは難しくなります。

 

 ではどうするか。ちゃんと表に出せるキャリアを用意して、その上でダンブルドアに雇わせるのです。彼も国際的な協力の価値をよく理解している人物。こういう英雄相手には、英雄を英雄たらしめている、その価値観ゆえに逆らえないような丁寧な根回しが一番効くんですねぇ。

 

 ということでヴェルダンディさんは魔法省でのんびり十年ぐらい仕事をしてトムくんが帰ってくるのを待つことになります。だからまああとはしばらくすっ飛ばしてもいいのですが一応ね、ちゃんと学生らしいことをしておきましょう。

 


 

 部屋の中心に立つトムの頬には、尾で叩かれた赤い痕が残っていた。

 

「馬鹿じゃないの二人とも! そりゃ年頃の二人だから過ちの一つや二つあるだろうとは思うけど、まさかこんな危ないことをするなんて!」

 

 叫ぶ蛇の言葉を聞いて、二人はただ黙ってうつむくしかなかった。

 

「トム。あなたは何度失敗したら覚えるのですか? その賢さは飾りですか? 私のことを大切にしていると言うのなら、あなたも自分のことを大切に思いなさい!」

 

 それでもトムに不服はなかった。概ねその通りであると認識していた。それと同時に、かつてであればここでナギニをどうするかを考えていただろうと思う自分にトムは気がつくことができた。

 

 その後に起こるだろうことにトムは思考を巡らせる。傷ついたナギニと、嘲るヴェルダンディ。そうなるのであれば、素直に今はナギニの言葉を聞き、反省することもやぶさかではなかった。

 

「……ミス・ルストランジュ。あなたは必要なことだからといって無茶をしないこと。あなたがそれをする必要はあったのですか? 一つ間違えたら、いいえ、間違えなくても死んだのですよ!」

 

「……はい、私は自らの命を軽率に用いました」

 

「……別に、そうすることが悪いとか、そこまで言いたいわけではないの。必要だと思っているなら、それは……止めたくは、ない。でも、あなたたちが何かをする時、それはあなたたちだけの問題ではないの」

 

 ナギニはそう言って、床に身体を伸ばした。話せる人が一人増えた嬉しさはあったが、その意味を聞かされて冷静でいられるほど彼女には余裕がなかった。

 

 自分を対等な相手だとしてみてくれる年下の少年に絆されていた部分はあった。彼が自分には見せない冷酷さがあると知ったときさえ、特別に見てもらえていることを悪くないと思っていた自分もいた。しかし、その少年はナギニが思っていたよりも恐ろしい人物だったのだ。

 

 ナギニは殺し、殺される場面を見てきた。人間として、死は恐ろしいものであった。だからこそ暴力に怯え、そこから救い出してくれた人に対して敬慕を抱いたのだ。しかしその相手を看取り、長い時間が経過していた。だからこそ、少年に求められればそれを受け入れる事も考えていたのだ。

 

 それほどまでの相手であった少年が何をしたかをヴェルダンディから蛇語で聞かされ、ナギニは悲しさと呆れと怒りと、その他の複雑な感情が入り混じった状態にあった。

 

 ナギニが黙って二人を睨んでいると、扉を叩く音がした。

 

「入っていいか」

 

 ぶっきらぼうな声が聞こえたのを聞いて、二人はナギニに確認するような視線を向けた。

 

「……二人とも、もういいわよ」

 

 ナギニにそう言われて、トムとヴェルダンディは伸ばしていた背筋から力を抜いて、深く息を吐いた。

 

「どうしたんですか、アバーフォースさん」

 

 扉を開けたトムは、平然とした顔で言った。

 

「……二人とも、今日は一旦帰れ。バタービールは奢ってやる」

 

 そう言った彼の後ろをついて二人は地下室の階段を上がり、小汚い机を挟んで座った。

 

「……君のせいだぞ」

 

 小声でトムがヴェルダンディに言う。

 

「自業自得でしょう」

 

 ヴェルダンディはそう返して、ぬるいバタービールを飲んで外を見た。暗くなりはじめた外には雪が降っていた。

 

「……良心の呵責を持てれば、と思ったことは今ほどにはない」

 

「私には向けなくていいから、ナギニさんにはきちんとした対応をしなさい。あと分霊箱にするなら私よりもナギニさんにするんだったとか思わないこと。思っても言わないこと」

 

「心を読むな」

 

「流れ込んでくるのよ」

 

 二人はしばしば敵意の籠った目線を飛ばし、互いに不満そうな顔を向けながら、バタービールを少しずつ減らしていっていた。

 


 

 お姉様のガチ説教は心に響きますね……。トムのそばにいるのが真人間で良かった……。まあこの後トムはたぶんそれなりに人を殺してカルマ的には闇寄りになるとは思うのですが、ナギニお姉様がいれば致命的なところまではいかないでしょう。

 

 ナギニさんがそこらへんの倫理観をちょっと緩めてくれると助かるんですがね。まあラインとしては人を殺した悪人に対しては殺していい、そうでないならせいぜい死ぬほど痛めつけるだけみたいなところになるでしょう。いわゆるクラウチ・ラインというやつです。

 

 ちなみにトムが心から悔いるのはかなり難しいというバランスになっています。一応過去にそういうのを色々試したチャートもあるんですがトムの才能って自分への自負とある種の傲慢さが原動力なのでそこを削るとうまく行かないんですよね。分霊箱相手なら攻略はまだ可能なので、それを使って本体を狙うみたいなものもありますが。

 

 あとはそうですね、今後の国際魔法界を手に入れるために必要なことをやっておきますか。

 


 

 イギリス魔法省には複数の派閥があった。今のところ、ブラック卿(ロード・ブラック)ことアークタルス・ブラック三世がそれを取りまとめているが、戦後にはどうなるかは未だ不明確であった。

 

 ユージーン・スラグホーン国際魔法法務局局長は、オールド・スラグホーン派閥と呼ばれるものを率いていた。彼は表に立つよりも、裏で人を動かすことを好んだ。魔法省五階、国際魔法協力部は彼の庭であり、部長ですら彼に頭を下げなければ仕事ができないとさえ言われるほどであった。

 

「……息子から話は聞いているよ、よく来てくれたね」

 

 柔らかい笑顔を浮かべる老人は、優しくヴェルダンディの手を握った。その服装は今からマグルの外交会議に出ても問題ないほどの紳士然とした三つ揃え(スリーピース)であった。

 

「お招きいただき光栄です。……教授からのクリスマス・パーティーのお誘いを断ってしまったのは心苦しいのですが」

 

「そうだろうな。ただ、私はもうすぐ去ることになる身だ。これからはあまり私を気にしすぎないでくれ。君が働く外交の世界というのは、失敗を前提にしてどう対応していくかを瞬時に考えていかねばならない場所なのだから」

 

 そう言いながらも、スラグホーン局長は眼の前の少女を見ていた。息子が推薦した程度の素質はあるようだ、と最小限の儀礼からは見て取れた。服装は学生としてはこんなものか、というもの。及第点ではあるし、実務が好きな息子が作っている派閥の中であれば人気が出るだろう、というのが彼の見立てであった。

 

 それ故に、彼は惜しさを感じていた。気品と風格の素地があるのに、それが磨かれきってはいない。臆せぬ胆力があるのに、姿勢が甘い。実戦を積めば良いのだろうが、そのような場所は今あるだろうか、と彼は思いを巡らせる。

 

「……教授から聞いた時には、局長は厳格な人物であると思ってしまっていました」

 

「規律ともてなしは相反するものではない。たとえば、この会場は実に整えられているだろう?」

 

 そう言って、スラグホーン局長は腕を伸ばした。ここが1944年のロンドンであるとマグルに言えば、ありえないと断言するだろう。煌々と輝く灯り、皿の上に並ぶ豪華な食事。カイロやテヘランで新秩序の準備が進んでいたとはいえ、未だイギリス市民は戦争の真っ只中にあったのだ。

 

「……(アレテー)とは習慣(ヘクシス)によってなる、ということでしょうか」

 

「うむ、(リウ)君であれば克己復禮爲仁(クゥジーフーリーウェイリェン)、と言うだろう」

 

 聞き慣れない響きに背筋を伸ばすヴェルダンディを見て、スラグホーン局長は微笑んだ。

 

「己の欲に打ち勝ち、儀礼に従うことこそが(レン)、すなわち人間としての道である、というものだ」

 

「……心しておきます」

 

 そう言ったヴェルダンディに、スラグホーン局長は頷いて泡の浮かぶ白葡萄酒を飲み、そして他の人と話すために去っていった。

 

「気に入られたな」

 

 いつの間にかヴェルダンディの隣に立っていたのは、アブラクサス・マルフォイだった。

 

「なかなか怖い御方でした。あの優しい笑顔で握手をされれば、誰だって彼の味方になりたいと思うでしょう」

 

「それでもブラック卿(ロード・ブラック)よりも下だ。学生でなくなれば、彼らと直接対峙することになる。それまでの間に、どこにつくかを決めておくべきだろうな」

 

 アブラクサスはそう言いながら、今のヴェルダンディの立場がどこにあるのかを考えていた。ヤング・スラグホーン派閥であるのは間違いないが、あれは一枚岩の組織ではない。彼女の立場を考えるならばイギリスにあるレストレンジ家との関係を調整せねばならないため、安易に派閥には引き込みにくい。それに、そこまでの判断はまだアブラクサスには許されていなかった。

 

 アブラクサス個人としては、彼女がトムあたりと結婚して、静かに消えてくれるのであれば、いくらでも祝辞を書くし、祝い金も弾むつもりでいた。必要であれば魔法省に通いやすい家を紹介してもいい。それだけで不確定要素を削ることができ、敵に回さなくて済むのであれば安いものだ、という価値判断をアブラクサスはできるようになっていた。

 

「……若者にはまだ見えないものも多いのです。あまり選択を急かすようなことはしないでくださいね、アブラクサス先輩」

 

「時間は待ってはくれないぞ」

 

 アブラクサスはそう返したが、その言葉は自分に向けたものでもあった。あと二年程度で、このルストランジュ・ヴェルダンディという若手が、魔法省に、そしてイギリス魔法界に入ってくるのであった。

 


 

 純血名鑑がスラグホーン家を選んだ理由の一つ、ユージーン・スラグホーン。二十世紀イギリス魔法界の外交史をやればしばしば名前が出てくる大物です。とはいえ史実ではあのヌルメンガード裁判の調整を終えたら引退してしまうんですがね。

 

 というわけで今から頑張ってヌルメンガード裁判に派遣されることを目指します。省に入ってすぐの若者にはちょっとハードなお仕事ではありますが、事前に関係者に話を通しておいた上で色々頑張ればけっこうなんとかなるはずです。

 

 ちなみにさっきスラグホーン局長が言っていた(リウ)君というのは劉洮(リウ・タオ)、前中国魔法省大臣ですね。まあこの時代の中国ってかなり難しい立場にあって正統政府とされるのは重慶の中華民国国民政府ですが南京には日本の傀儡の汪兆銘政権が、延安には毛沢東率いる中国共産党政権が、それに新疆とかチベットとかも独立していて、中国魔法省は大清帝国時代の版図をカバーしていたのもあってなんかこう大変なことになっています。

 

 特に世界魔法戦争極東戦線は敵とか味方とかよくわからないんですよね、そもそも関係者が語りたがらないのもあるし資料も少ないしでなんていうかこう、ろくでもない気配だけが漂っています。もし1932年の選挙で彼が勝っていれば、彼によってまとめられた中国魔法省によって極東情勢はより安定した可能性はありますし、日中戦争の魔法界への流入も避けられたという意見はあります。まあそのあたりを考えても起こったことの前には無意味なのですが。

 

 あとまあ戦後復興時期に彼が東アジアにおける魔法界の顔役になったので批判しにくいみたいなのもありますね、麒麟に頭を下げられなかったこととかグリンデルワルドとの思想的共鳴とか色々分析はあるんですがこの話はやめておきましょう、誰も幸せにならない。

 

 というわけで六年生も真面目に勉強やって、七年生の履修はN.E.W.T.でいい成績取れる科目だけに絞ってインターンメインにしていきますかね。ではまた次回。

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