ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート 作:魔法省真理部記録局
さて、デルフィーニ誕生フラグは満たしています。そしてタイミング的に今からならちょうどいいでしょう。まあまずはね、義姉様に挨拶をしておかなければなりません。まるで乙女ゲーだな。
とはいえこのあたりは本当に繊細な交渉が必要になると思います。気を引き締めていきましょう。
ナギニは感じた振動で視界に意識を戻した。もはや彼女はまぶたを閉じるという感覚を思い出せなくなっていたが、それでも自分の意識をはっきりと持っていた。
「ナギニさん、少しお話をしてもいいですか?」
彼女の前にいたのは、トムの妻となったヴェルダンディだった。ナギニはトムが彼女を選んだと知った時、自分の中の蛇としての本性が頭をもたげた。全てを牙で刺し、傷つけ、そして堕ちてしまいたくもなった。ただ、二人の関係は思っていたようにはならなかった。
トムは毎晩のようにナギニと些細な話をし、共にホグワーツの寝台で寝ることもあった。彼女は時折トムに絡まって学校の中を歩くこともあったし、その時に自分を見る生徒の目が最初の時の警戒から次第に慣れていくのを見ていた。
ナギニは今の状態を嫌ってはいなかった。正直に言えば、気に入っていた。だからこそ、ヴェルダンディからの提案に彼女は警戒していた。
「……なに?」
彼女はヴェルダンディに
「……トムはさ、自分の子供を愛せるようになると思う?」
「……なにもしていない子供に暴力を向けることは、ない、と思う」
ナギニはそう言いながらも、トムの衝動性を知っていた。ホグワーツの教授として、学生たちのいたずらの対象となったことも一度や二度ではない。しかし、噂によればそういった事をした子供たちもしばらくするとトムの話をよく聞くようになってしまうようだった。何をしているのかナギニには推し量ることはできなかったが、それでもダンブルドア校長が見たらいい顔をしないだろう行動であることは間違いなかった。
ただ、そうでもしなければまとめられない学生が多いというのも確かだった。血の問題がイギリス魔法界において徐々に湧き上がってきている気配は、間接的にしか世界と触れないナギニにも伝わってくるものだった。純血、半血、マグル生まれ、スクイブ。スクイブが家にいれば嘲りの対象となり、あるいは純血であること自体が敵視されることがある。寮自体が持つ傾向も相まって、その対立は徐々に起こっているようだった。
その中で、トムはかなり苦労していることをナギニは知っていた。夜中、学生が寝静まった後にナギニと話しながら酒を飲む時間は彼にとって素顔を晒せる数少ない時間であるらしく、彼は力もないくせに大きな口を叩く学生についての愚痴を吐くことが多かった。そして力がある学生に対しては嬉々としてそれを上回る力を見せ、そしてダンブルドア校長に怒られるのがいつものことだったのであるが。
「それは愛ではないわよ。教授として自分の血を引いた子だろうと特別扱いはしない、というなら仕事をする人として理解はするけれどもね」
「……ヴェルダンディ。あなたはトムを傷つけようとしているのよ」
ナギニはそう言うしかなかった。その中にどれだけ表に出したくない自分の感情が混ざっているのかを、ナギニははっきりとは掴めていなかった。
「……痛みなしには、変われないものもあるの。もし子供の時に母親に愛されていれば自分はどうなっていたか、という答えに彼を向かい合わせるための方法の一つだとは思うけれど」
「そんなことをしなくても、トムはちゃんと教授の仕事をやっている」
「本当にそう?」
そう言われて、ナギニは口を閉じた。グリフィンドール寮のクィディッチ狂い、マクゴナガル教授とはどうやら対立する仲のようで、試合が近い時期のトムは緊張と興奮を隠せないこともあった。箒なしに飛ぶことを禁止する規則に対して時代遅れだと文句を言っていたこともあった。
「……ナギニ。たぶん彼は子供ができようが、あなたへの愛が変わることはないと思う。そこを心配するのは違う」
「私が心配するのはそうなってしまうことのほうよ。愛されなかった子供がどうなるか、私が知らないと思う?」
ナギニの言葉に、ヴェルダンディは目を伏せた。
「ねえ、ヴェルダンディ。あなたがしたいこともわかる。トムとの関係のために色々なことをしてきたのも知っている。そうしなければトムはあなたとそういう事をしようとも思わなかったでしょう。……許すとか、認めるとか、そういう話じゃないの。トムがそれを選ぶなら、私はそれについて何も言えない」
「……それでも、私は自分のことを卑怯だと思う」
「思えばいいのよ。それを抱えているうちは、きっと大丈夫」
ナギニはそう言って、とぐろを巻き直した。ナギニも自分の中に小さくないものを抱えていたし、それが消えていないうちは自分が人間である、というふうに思おうとしていた。
うーんこれは認めてもらったってことなのかな。既にトムはナギニさんと一緒にすやすやしているので完全にNTRなんだけどまあでもトムがナギニさんに向けているのってそういう感情じゃなくて、なんていうか姫に対する騎士というか、姉に対するそれとかに近いと思うんですよ。だから夫婦とは違うのでノーカンってことになりませんかね。
さて、というわけでトムくんとのなかよしシーンですがこの実況はR-15なのでそういうシーンはありません。当然じゃないですか。えっちょっとだけ見たい? 仕方がないなぁ……。いいよ。
ぐったりとベッドに横たわるヴェルダンディの背中を見て、トムの中にはようやく達成できた征服に伴う満足感が湧き上がっていた。
「これで満足か、ヴェルダンディ」
笑いそうになるのをこらえながら、トムは呟いた。
「まあまあ、ね。あまり経験はないみたいだったけれど」
そう言って、ヴェルダンディはトムの方に視線を向けた。
「声が枯れているぞ」
「そっちだって、相当疲れているんじゃないの?」
二人の間には、睦まじい空気はなかった。刺々しい言葉と敵意。ヴェルダンディの背中には歯型と爪の跡が残っていた。
「……良い機会だから聞いておくが、なぜ今なんだ?」
トムはそう言って、少し身体を起こした。
「さあ。昔見たものの中に、この時がいいっていう直感があった。それぐらいよ」
「……もしそうなら、1970年までに全てを終わらせておく必要があるな」
「それには同意する」
そう言って、ヴェルダンディは薄いシーツの中で身体を転がした。
「この先、どうなると思う?」
「予見ではない、個人的な予測で良ければ」
「ああ」
トムはヴェルダンディの判断がある程度正しいことを知っていた。何より、彼女はその気になれば未来を思いのままに作ることのできる地位にいた。もし彼女が正当な対価を払うのであれば、彼女の予見した通りの世界を用意することもトムにとってはやぶさかではなかった。
「イグナティウス・タフトは過激すぎる。
「誰だ?」
「ノビー・リーチ。マグル生まれ。権利運動で知られる人物。ダンブルドアとの繋がりも深いし、スラグ・クラブにも彼の支援者はいる」
「ホグワーツにいても名前ぐらいは聞く。だが、大臣になれるか?」
「慣習では実質的な信任選挙だけれども、立候補が禁止されているわけではない。今の純血運動の反動としての反純血が繋がれば十分可能な範囲よ。それに、反純血思想は純血思想よりわかりやすい」
「……魔法界を長年支配する悪、か」
「当たらずとも遠からずだけれどもね」
ヴェルダンディの言葉を聞きながら、トムは血筋について考えていた。ヴェルダンディ・ルストランジュはおそらく純血、それも名家ルストランジュ家の娘だ。イギリスのレストレンジ家から半ば認められた形であり、魔法省ではレストレンジと呼ばれることも多くなっているとトムは聞いていた。
トム自身の系譜は、マグルと純血の混ざったものだった。ただ、自分の魔法の力の源として、あの狂ったゴーント家によってそれでもなお保たれてきた何かがあるという考えはあまりトムにとって心地よいものではなかった。
「しかし、その魔法界の支配者たちがマグル生まれの大臣なんて許容できると思うか?」
「無理でしょうね。今以上に
「……信頼できる人物は、夜騎士団の中にも少ない」
「ひとまず今は静観ね。議会が一度大臣を引きずり下ろすことができたという実感を与えたほうがいい。それは議会が強いからではなくて
「侮り過ぎではないか?」
「その区別がつくようなら純血主義なんてやってないわよ」
ヴェルダンディはそう言いながらベッドから身体を持ち上げる。ホグワーツにいた頃からすれば時間の進みを感じさせる輪郭が、トムの目に入った。
「……分霊箱になっても、保存はされないんだな」
「呪文で固定すれば話は別でしょうけれどもね。あるいは私の魂を完全に抜いてしまえばそうなったかもしれない」
「そうか、死体を元にすれば魂を持って動く分霊箱を……」
闇の魔術の専門家として、トムは頭の中に魔術儀式の構造を思い浮かべ始めていた。
「ねえトム。あなたと同じ目的を持って、あなたと好きなものが重なっている相手ってどう思う?」
「消すしかないな」
そう言って、トムは小さく首を横に振った。自分を増やすことにはあまり意味がない。この意識と魂が永続し、死を打ちのめし、超越しなければ意味がないのだ。しかし分霊箱という神秘以上にそれを維持する方法は、多くの魔術を学んでもなお薄かった。
強いて言うのであれば真の賢者の石であるが、それは彼の腕でも決して容易ではないものだった。不完全な石であれば今はデヴォンで暮らす錬金術師から奪うこともできたが、そこまでする価値は彼にはまだ見いだせなかった。
「ひとまずは、その時を待ちましょう。まだノビー・リーチが大臣になるかどうかもわからないのだから」
「……予見はどうなんだ?」
トムは自分に覆いかぶさるように抱きついてきたヴェルダンディに言った。
「ずっと見えていないわよ。だから欲しいものを手に入れるために、こういう面倒なことをしなくちゃいけない」
トムの中に、少し収まっていた嗜虐心がまた湧き上がっていた。唾を飲み込み、トムはヴェルダンディの手首に手を回した。
よし全年齢! 仲良し夫婦がおしゃべりしてスキンシップしているだけ! 夫婦ならこれぐらいしますもんね。何も問題ない。とはいえ普通ピロートークってもっとこう特別な話をするとかじゃないんですかね。まあこの二人ならこういうことになるか。
というよりヴェルダンディの未来視がどこまで残っているのかは正直わからないんですよね。かつて見ていた分の記憶があれば改変される前の世界の結末までは概ね追いかけているはずですが、大臣の結末まで見れたかと言われると怪しいわけですし。ある程度は積んできた経験と分析でカバーして、世界については概ね韻を踏むだろうという前提で動いているとかかな。
そういうわけで操作しているとは言っても彼女が取りうる行動の中で方向性を指定するって感じが近いんですよね。このあたりがしっかりしているのがこのゲームの面白いところではあります。もちろんそういう再現モードを切って最初から分霊箱を最速で壊しまくるみたいな方法もあるのですが、それはそれ、これはこれ。
あとはのんびり待つだけです。魔法省は産休とか育児用の対応とかかなりしっかりしているのでその点は楽でいいですね。マグルがこの水準に追いつくのは1975年雇用保護法のあたりです。とはいえ女性の社会進出とかキャリアウーマンの増加というのは自動的に出生率を下げていくんですけどね。まあ、純血が減っているのは血が濃くなりすぎたというよりも純粋に社会学的な問題だと思いますよ。