ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート 作:魔法省真理部記録局
すくすくと育ったデルフィーちゃんですが、なんかずっと反抗的です。おかしいな、仕事に忙しくてめったに帰ってこない母親と、夏にだけ戻ってきて会話しない謎のおじさん、話を聞いてはくれるがぶっきらぼうで怒りっぽいのが抜けない庭師の人と、秘密をあかせない同世代の子供たちというだけなのに何が悪いというんだ。
それはそうと歴史の方はデブリン・ホワイトホーンがニンバス・レーシング・ブルームを設立して画期的なモデルであるニンバス1000を発売した年、1967年です。エリアス・グリムストーンの名機、大西洋横断を実現したあのオークシャフト79に並ぶ頑丈さと信頼性を持ちながら、競技用箒で盤石の地位を当時は有し、なんと月にまで行ったとクィブラーが語るクリーンズウィープ・シックスの市場を揺るがすほどの性能。クィディッチがスニッチ獲得で決まるカスゲーになった原因とも言われるあのニンバス1000です。元からカスゲー? それはそうかも。
でも考えてみてください、箒の能力向上とともにスニッチが獲得しやすくなっているわけですよ。それなのに点数配分は変わってない。かつてはクァッフル・ゲームとスニッチ・ゲームのどちらがその場面で中心になるかをブラッジャー・ゲームが決めていたわけです。かつてはスニッチ・ゲームを中心にやろうとすればシーカーを護衛することに重点を置く必要があり、結果としてクァッフル・ゲームに力を割くことができなかったわけです。その時には百五十点という数字は決して大きいものではなかったということになります。
それが今ではどうですか、一人の腕の良いシーカーがいれば残り六人は不要みたいな感じのゲームバランスですよ。技術発達を悪いと言うつもりはありませんが、スニッチの動きの規則を改定するかクァッフルの得点を二十点にするかしたほうがいいじゃないですかね。あ、時計を持ち込めばいいとかいう考えなしの自称合理主義者はお呼びではないです。動的なゲームの切り替わりによる駆け引きは時間制限があっては成り立たなくなるんですよ。あとマグルだってクリケットとかいうよくわからない謎のゲーム楽しんでますよ。
というわけで夏休みのリドル邸になります。マグルの学校も夏休みですし、デルフィーさんは普通に友達と山道駆けずり回る元気な子です。
デルフィーはそのおじさんが嫌いだった。いつも帰ってきたらママとなにか不思議な話をしているし、地下室に変な本とかを入れているし、どこかの学校で教えているらしいけどデルフィーにもデルフィーの友達にも冷たい人だった。
トム・リドル。この家の持ち主で、デルフィーのママの旦那さん。でも、他の子達が言っているような夫婦ではなかった。それに、この家には秘密があった。
ママからは絶対に話しちゃだめ、と言われたし、トムおじさんからは秘密を守るための魔法もかけられていた。本当ならわたしだって呪文を唱えて色々なことができるのに、と不満がりながら遊んで帰ってきたくたくたの身体でデルフィーはご飯を食べていた。
「……デルフィーニ。宿題は進んでいるのかね」
デルフィーがローストビーフを食べているとき、おじさんが言った。
「そんなものないの。読んでおきなさいって言われた本はもう読み終わった」
「ま、『許されない呪詛とその法的影響』みたいな本を読んでいるような子には詩集なんて簡単かもね」
「何てものを読ませているんだ」
「パパの本だって読んだよ、『呪いのかけ方、解き方』とか」
自慢げにデルフィーは言った。魔法は使っちゃいけないという約束だったが、勉強しちゃいけないとは言われていない。
「ヴェリディアンの子供向けの本を闇の魔術だとでも勘違いしているのか? 思い上がるなデルフィーニ、あんなものはホグワーツでは一年生でも使えるものだ」
「使えないわよ」
ママの声をおじさんは無視して食事を続けていた。いつもそうだった。
「どうせトムはそうやってわたしのことを子供だからってばかにするんだ」
デルフィーはトム・リドルが嫌いだった。頭を撫でてもらったこともなかった。学校の勉強を頑張っても魔法使いには意味がないと言って褒めてくれなかった。デルフィーのママはまだ話を聞いてくれたけれど、仕事が忙しいと言って一緒にいてくれないことも多かった。
そんなデルフィーはデザートも手早く食べ終え、
目を閉じると、いつの間にか眠っていたようだった。デルフィーは怒られたら嫌だな、と思いながらこっそりと廊下を歩いていた。
「反抗勢力となりうる実力者で動ける者はいない。イギリスにおいて最強の闇の魔法使いは俺だ」
「闇祓いはあのムーディーがしごいてなお年に一人か二人が残る水準で基本的に全員がこちら側。『聖二十八家』の半分弱の若い世代も、夜騎士団の構成員ね」
デルフィーは扉の隙間から、大人二人が話しているのを見てしまった。デルフィーの前で見せる優しい、あるいは距離を取ったような態度ではなく、もっと仲が良くて、特別にみえる話し方だった。
「……十分ではないのか?」
「何に十分か、よ。例えばここで今から大臣をすげ替えて
「ダンブルドアに任せればいい」
「ダンブルドアがこれを解決できるならいいけれども、できないならもっと面倒なことになるわよ。安全のためにとか言って官僚に
「……権力を自由にできるほどの隙を与えず、かつ魔法大臣に就任せねば大混乱が起こる、と言う程度か」
「政治的安定性を取るなら密告や儀礼みたいな方向もあるけれども、トムはそういうの嫌いでしょう?」
「……人を使うのは悪くはないが、勝手に動かれるのは面倒だな」
「組織である以上ある程度は任せる必要がある。だから魔法省はそのままに乗っ取らなくてはならないの」
ママの言葉に、トムは頷いていた。
「となると、彼らに計画を告げるのは直前にするべきか」
「一度協力者に計画を説明すれば、そこから敵対勢力に話が伝わるのは時間の問題。夜騎士団の幹部たちが重要な職にいるというのは、同時にそれだけ見張られているし、彼らの部下から情報が漏れる可能性が高まるということでもある」
「……具体的に、どこになら優先的に伝えるべきだ?」
「魔法省付き
「噂を先に作るのか」
「ダンブルドアの言葉を誰もが信じるとしても、彼が口を開く前にある程度の真実をこちらで固めてしまうことはできる。その上で起こった矛盾については混乱の中の不幸な出来事、とすればいい」
デルフィーは二人の会話を完全に理解しているわけではなかったが、それでもやろうとしていることはなんとなくわかった。二人は魔法の世界を乗っ取ろうとしているのだ。
「何してるの、デルフィー」
「ナギニさんこそどうしたの」
「夜遅くまであなたのお父さんが話しているからなにかと思ったのよ」
ナギニはデルフィーの友達だった。トムの友達、あるいは「愛人」みたいな蛇で、綺麗な目と滑らかなうろこを持っていた。デルフィーはトムおじさんのことが嫌いだったが、ナギニに会えるのは好きだった。
「……シャワー浴びずに寝ちゃったから、怒られたらやだなって」
「怒られないわよ。ついて行ってあげるから」
「はーい……」
ナギニに寄り添ってもらいながら、デルフィーは廊下をこっそりと歩いていった。
というわけで元気なデルフィーちゃんでした。というかナギニさんのお姉さん力が強すぎる。それはそれとして複雑な家庭にはなっているな。価値観自体はマグル寄りではあるのだが力を思いっきり振るって自分の立場を見せつけてやりたいという感情があります。良いことです。そういうのは勉強の原動力になりますからね。
基本的に賢さも問題なし、闇の魔術についての学習速度も上々です。スネイプ級まで仕上がるかはともかく、もう少し素直な感じにはなっているでしょうね。
さて、では視点を今の魔法界政治情勢に移してみましょう。ノビー・リーチは閣僚構成を反純血名家としてわかりやすい形でまとめ、その隙間にスラグ・クラブが入り込んでいます。一方で
とはいえどうにかしなくてはいけない、じゃあどうするんだという混乱が起こっている状況であると言えるでしょう。ただ史実と違ってその不満の吸収先がないわけです。史実では没落しかけてた「R」を魔法省の腐敗に対する反抗勢力として再構築して率いたペレグリンもまだこの頃には失せ物探し人をやっている頃ですから。
その中で史実では複数の潮流がでました。後の死喰い人に繋がる系譜が有名ですが、そうではなくもう少し古典的な、つまり陰謀と暴力で今の体制を調整しようとする派閥もありました。あまり違いがないように見えるな。
そしてアブラクサス・マルフォイがノビー・リーチを大臣の椅子から蹴り落としても同じ系統のジェンキンス政権が生まれたことでこちらの古き良き手段を用いたほうは衰退し、半分マグルの血が混じった男の暴走に純血が巻き込まれることになるわけです。おそらく英国における純血主義の衰退に最も貢献したのがトム・リドルなのではないでしょうか。
あ、ここからの映像は
「リドル教授、お久しぶりですな」
リトル・ハングルトンの屋敷に予約もなく訪ねてきた男に、休暇中のトムは驚いていた。
「マルフォイ先輩ではありませんか、どのような用件で?」
「なに、省で世話になったヴェルダンディ君への土産を届けに来たのと……君にも話がある」
「聞きましょうか」
トムはそう言ったが、応接間にアブラクサス・マルフォイを招く素振りは見せず、玄関で対応をするだけであった。もちろん、アブラクサスも彼からそこまで歓迎されているわけではないことはすぐに読み取れたし、屋敷の主の前でそのようなことについて何かを言うほど無粋でもなかった。
「ブラック家の令嬢が君に首ったけだと聞いたが、本当かね?」
「関係のある話かね?」
トムは質問に質問で返したが、アブラクサスは意に介さなかった。
「ナルシッサ・ブラックは私の義理の娘となる令嬢だ。その姉もレストレンジ家に嫁ぐことになっている。それを君がどうにかしようというのであれば、色々と大変なことになりかねない、ということだ」
「こちらだって困っているんだ、付きまとわれている」
「……嘘ではないようだな」
アブラクサスはそう言って、トムの肩を叩いた。
「誤解であったとアークタルスとシグナスには伝えておこう。そういえば君のところの娘も彼の孫と同世代だったな」
「ええ。土産物、ありがとうございます。ヴェルダンディに渡しておきましょう」
「ああ、あとそうだ。君達がやろうとしていることの噂は聞いている。私以外にそこまで知ることができる者はいないだろう。その上で、もしこれ以上アークタルスが暴走するようであれば、私はそれを止めるつもりだ」
そう言って、アブラクサスは足取り軽く帰っていった。取り残されたトムは、押し付けられたマルフォイ・アポセカリーと書かれたラベルの貼られた葡萄酒の瓶を眺めていた。
はい。アブラクサスにはバレました。こっちまだ情報流していないんだけどどこからどうやって掴んだんだよ、あの男怖すぎるだろ。その上でこっちに寝返る可能性も見せてくるのは普通に怖いな。まあ、トムくんの計画は及第点と言ってもいいぐらいの出来になっていそうです。
まあ関係者の繋がりを辿れば何かをやろうとしていることぐらいはあからさまですからね。スラグ・クラブほどのほほんとしているわけではないので危惧しているところで半分はカマかけでしょうし、トムは情報は渡さなかったがごまかしはしきれなかった、あたりでしょうか。
というわけで次回、魔法省をひっくり返していきます。