ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート 作:魔法省真理部記録局
1970年。史実ではじわじわと持ち上がっていた純血主義が明確に形を持ち、ヴォルデモート卿を頂点とした組織「
大臣の体調がかなりまずくなっているので、そのタイミングで事を起こすことにしましょう。既に準備は終わっており、あとはその時が来るのを待つだけです。
──1970年1月、イギリス魔法省八階、
「二時間後に
ヴェルダンディはエイブリー議員の前で、計画書を開いて見せていた。誓いを立てなければその文字を見ることができないという魔法道具であり、かつこの誓いは
「大忙し、だな」
「
「担当はクラウチ局長だったな、後で挨拶をして示唆しておこう」
「重要なのは、騎士団以外がこれを転覆計画だとみなさないこと。いくつかの偶然が噛み合った結果、我々は非難すべき悪を見つけ、その混乱を収拾する必要があるからこそ、適切な対応が必要となるわけだから」
そう言うヴェルダンディの言葉を聞きながら、エイブリー議員は別の紙を見た。その名簿に並ぶ人物は、イギリス魔法界でも名士と言ってもいい人たちばかりであった。海外との繋がりがある者、富で知られる者、あるいはその裏の噂で恐れられる者。
「……これだけの人物を、なんとかしきれるか?」
「最悪の場合、こちらには二枚の切り札がある」
「
「そう。どちらも一人だけで十人程度の並の魔法使いには対応できる」
「ミス・レストレンジは?」
エイブリーにそう言われたヴェルダンディは、苦笑いとともに肩をすくめた。
「省内部の調整で手一杯よ、逆に言えば、私が省にいる限り、魔法法執行部は止めておける」
「ああ、頼んだ」
エイブリー議員は頷いた。
「この作戦は、それぞれがそれぞれの正義に基づいて実行されねばならない。議員の中には明らかになった時点でアズカバン送りがふさわしい罪状を並べているものもいる。我々にどういう意思があれ、彼らに罪を償わせ、そして被害者を救済することを悪とは言わせない」
ヴェルダンディは言った。人間というものは、力を持てば自らの欲を満たそうとする傾向がある。そしてしばしば、その欲は留まることを知らない。ましてや自分たちと同じような見た目をもち、しかし絶対に逆らうことができないほどの力の差がある種族を前にして、狂わないほうが難しいだろう。
そういう意味で、魔法界とマグル界の分離は双方にとって利のあるものであった。
グリンデルワルドの失敗以降、良くも悪くもマグルに関わろうとする人は減っていた。しかしながら、欲は抑圧されればされるほど湧き上がるものである。そして、表に出ることのできない事情は少ない場所に集まりがちなのだ。
密猟、存在の売買、闇の物品や魔術の活用。その全てに明確な法的線引が構築できているわけではなかったが、世論が肯定、あるいは弁護し得ない罪状が名簿には並んでいた。
「……よく、これだけの名簿を作れたな」
「苦労したのよ。闇祓いたちを止めておくことにも苦労した。一歩間違えれば私は秘密をもみ消した純血として彼らに告発される側よ」
「俺もそうなる可能性が否定できないところだ」
そう言って、エイブリー議員は小さく笑った。
「さて、博打といきましょう。賭けるは我々の魂。報酬は新たなる魔法界」
「そして、
二人は頷いて、それぞれの仕事場へと向かっていった。
トム・リドルとアルバス・ダンブルドアは使えば勝てるのですがあくまで局所戦限定、というところがあります。史実では鍛えられた
考えてみれば当然なんだよな。素人が訓練を積んだテロ対策部隊に匹敵できると思いますか? そもそも闇祓いというのは闇の魔法使いに対して対抗できるようにしたものです。防御側の有利を正面から突破して勝つための訓練を日夜続けているような人ですよ。
しかし動き始めれば、状況はすぐに伝えられてしまいます。純血主義者が裏で組んでいて怪しげな儀式であるとかをしていたなんてことが新聞に載った日には、状況が理解できる人からすれば自分たちが潰されるとわかるわけです。
そこで穏便にできそうな人を事情聴取の形で魔法法執行警邏で勾留しておくわけです。すると残るのは過激派だけ。そこで起こった問題を新聞とラジオを通して増幅させれば、強い大臣を求める環境が生まれるわけです。
次のムービーはトム・リドル教授が校長室に仕掛けておいた魔法道具から再構築したものです。ここまで浸透されてホグワーツって大丈夫なのか? まあダンブルドアがこの手の小物好きなのが悪い。そこまで闇ってわけじゃないだけで、あの校長室の機械類は全盛期のマルフォイ家が持っていたものに匹敵するんだよな。マクゴナガル校長の時代には色々と片付けられていますが、それでもいくつかは残されています。
──1970年1月、ホグワーツ城
六十八歳を数えるアークタルス・ブラックは、決して無能な男ではなかった。
少なくとも千年近いブラック家の歴史において、その血はイギリス魔法界の王家と呼ぶにふさわしい格式を保っていた。有力者から妻を娶り、あるいは名家に娘を嫁がせた。それらは常にうまく行ったわけではなかったが、歴史が積み上げられればそのような不名誉な噂を否定する方法も同時に手に入るのが常であった。
そして彼はそのブラック家においても特に有能と言えた人物だろう。名家とそれに従う家に間違いなく利をもたらし、混乱する世界魔法戦争下のイギリスにおける律法と司法の安定化をもたらした。その過程でブラック家は多くの富を吐き出すことになり、それはマーリン勲一等程度では埋めきれないものであったが、それでも貴族としての責務、と彼は割り切っていた。
激しくなる純血主義者を名乗る若者たちにも、彼は理解を示したつもりであった。魔法界において彼の年齢は決して長老と呼ぶべきものではない。だからこそ、若い力と彼らの持つ考えを肯定していたつもりであった。
だからこそ、彼は必要な時に頭を下げることを厭わなかった。その判断は、ブラック家においては珍しいものであったと言えるだろう。
フィニアス・ナイジェラス・ブラックの肖像画を通して、その予約は秘密裏に取られた。曽祖父からの叱責にも、彼は耐えた。自らで出向かわねばならないという屈辱にも、彼は動じなかった。
今や朧げな過去となりつつある学び舎の記憶をもとに、彼は一人で無人の城を歩き、二階の廊下で足を止め、ガーゴイルを見上げた。かつてこのガーゴイルを下がらせるためには、ブラック家の家訓を、「
「
アークタルスは肖像画経由で伝えられた合言葉を告げた。馬鹿馬鹿しい。なぜあの甘ったるい菓子の名前をつけるのだ。自分はそういう茶目っ気を理解しているという演出のつもりでもあるのだろうか。
「よく来たのう、アークタルス。会うのは
アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア。八十八歳。マーリン勲一等。国際魔法使い連盟
「お久しぶりです、校長」
「急ぎの話、と言っていたな。座りたまえ」
やらねばならぬことの多い来客に来訪の手間を取らせたかと思えば、帰るなと言わんばかりに椅子を案内する。こういう一つ一つが意図的にずらされたものであるとアークタルスは考えていた。
「……失礼する」
アークタルスは、表立った地位をほぼ持たない。ブラック家の家長などというものは、社交界を出れば失われる肩書だ。だからこそ、ここにはホグワーツに多くの学生を送るブラック家の保護者として顔を出す、という形になっていた。
「それで、儂に何をしろと?」
「……ダンブルドア教授。あなたに、魔法大臣になっていただきたい」
そういう風に頼むべきだ、と言っていたのはアブラクサス・マルフォイだった。彼の言葉に嘘があるようには思われない。ブラック家を売ったわけではないのだろう。しかし、彼とともに堕ちることを拒んだという気配は、敏感なアークタルスには感じ取れた。
「力というのは恐ろしいものじゃ。新聞を見たかね?」
そう言って、ダンブルドアは
「……この記事が、どうしたのだ」
「儂には君の名前がここにないことが不自然にさえ思える。大臣が倒れ、闇の品を扱う店に今までになかったほどの手入れが行われる。その中で、純血を永遠なれと語る家がやってくる」
「……誓って、私は彼らの悪に手を貸したわけではない」
嘘ではなかった。噂を聞きながら資金や人脈を提供したことはあった。厳密に言えば危ない品を贈り物として渡してきた家もある。それでも、ブラック家にはイギリス魔法界の王たる意地があった。
「そうか。それで、儂が大臣になると何ができるというのだね? アークタルス」
「……この混乱を、止めることができる」
「捜査の手はブラック家にまで伸びるとしても、もし後ろめたい所がないのであればただ毅然としていればよろしい」
「そういう問題ではないのです、これは間違いなく計画されたもので」
「計画、か」
ダンブルドアの言葉は、熟練の政治家であるアークタルスをもってしても聞いたことがないほどの鋭さを持っていた。
「ええ」
主導権を完全に握られないように、小さく言うのがアークタルスの限界であった。
「儂は一人、この絵を作るだけの力のある男を知っておる」
「……誰ですか」
「この学校の教授の一人じゃ」
改めて、アークタルスは新聞を見た。拘束された者ではなく、拘束した者の名前に。彼らの中には聖二十八家に連なる純血もいたが、彼らはある世代に固まっていた。
「……あなたが監督を怠ったのではないですか」
「そうする義務はない。しかし、教え子を守るのは教授の義務じゃ。……ホグワーツが守られるのであれば、儂はお主に手助けをすることもやぶさかではない」
何も言っていない、ということはアークタルスにもわかった。約束になっていない言葉。そしておそらく、彼はここでアークタルスが帰ったところでブラック家の子女を学校内で軽んずるような真似はしないのだろう。
圧倒的な差が、そこにはあった。だからこそ、アークタルスは信念を曲げ、紳士としての振る舞いを捨てることを決意した。
「ならば、戦争になりますな」
「君達が、勝手に争うだけじゃ」
「私はダンブルドアの下で、大臣の命を狙った過激派と争うことになるでしょう。あなたが大臣となれば止められる混乱を抑えるために、私は血を流すことも厭いません」
それは誓いでもあり、脅しでもあった。ダンブルドアは眼の前の愚かな男に手を差し伸べないという選択ができないという、相手の甘さを前提とした、政治家としては取るべきではない賭けであった。
「……よかろう。君がそこまで言うのであれば、大臣の椅子のために名前を貸そう。ただ、儂に大臣としての仕事を期待するでないぞ」
「……かしこまりました」
アークタルスの老いた手に食い込んだ自らの爪が、皮膚を破って血をにじませていた。しかし、その痛みのおかげで、アークタルスは自分が負わされたものの重みを理解する事ができていた。
よし、ダンブルドアの大臣就任の言質! というよりこのぐらいの会話で第一次魔法内戦ぐらいのことまで読み切れるのは流石ダンブルドアと言わざるを得ない。
というわけで、次回は後始末になりますね。