ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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史実との解離が始まるので初投稿です


Part 5

 さて、前回からの続きです。まだコンパートメントでお話していますね。ちなみにコンパートメントには時々来訪者イベントが来ます。監督生の見回りイベントとか探し物とか陣営招待ですね。ある種のチュートリアルにもなっていますが、トムの場合は振る舞いと雰囲気が人を寄せ付けない感じなのでデフォルトでは起こりません。

 

 そろそろ時間ですね。ここから攻略チャートの中でもかなり繊細な部分が始まります。

 


 

「……つまり、蛮勇のグリフィンドール、お人好しのハッフルパフ、狡猾なスリザリン、個人主義のレイヴンクローの四寮があるのですわ」

 

「本当によく知っているな」

 

 トムはそう言いながら、この少女に少しずつ苛立ちを募らせていた。彼女の説明を聞き流しながら、トムは自分が持っている魔法の力について考えていた。本当は孤児院なんかではなく魔法使いたちの中で育ち、このように教えられる立場に甘んじる必要などなかったはずではないか。だが、それを顔に出さないほどに彼は自分のふるまいを制御できた。

 

「ただの知識です。実際に勉学を始めたらどうなるかはわかりませんわ」

 

「……学校、だからな。勉強があるか」

 

 トムが通っていた基礎学校(elementary school)は、教師も学生も馬鹿ばかりだった。訛った発音の教師の言うことをずっと繰り返すだけ、あるいは教科書を書き写すだけ。そんな無能な教師の中にはトムの出来が気に食わない者もいたが、そういった大人はすぐに不幸な目に遭うのだった。

 

 ホグワーツが少しはまともな学び舎であればいいが、とトムは思った。たとえ他の人達よりも、眼の前の少女よりも魔法を知らなくたって、学べば追いつくことができる。そうすれば自分の魔法の力の由来も、自分が選ばれた者であるという証拠も示すことができる。そう思いながらトムが顔を上げると、ヴェルダンディは小さく笑っていた。

 

「……何か、おかしなことでもあるのか?」

 

「いえ、可愛らしいなと思いまして」

 

 そう言いながら彼女は口角を上げた。

 

「……どういうことだ?」

 

「自分より弱い奴らをいたぶって今まで王様気取りだったのに、ちょっと知らない場所に放り込まれただけで猫を被ってしまうだなんて」

 

 トムはすぐに言い返そうとしたが、その前に落ち着いて息を吸って、吐いた。今まで苛立ったことは何度もあった。許せないことをされた経験もある。それでも、彼は常にその報いを受けさせてきた。だから今回も同じだ。そう思いながら、燻るものを抱えてトムはヴェルダンディを睨む。

 

「反論もできませんの? 他人を傷つけ、折るための魔法は今までずっと使ってきたのでしょう?」

 

 トムはそう語るヴェルダンディを見る。十一歳の少女は背が伸びてくる時期だが、彼女はそれでもトムよりも小さかった。すでに魔法やこの世界を知っているのかもしれないが、それでも肉体はまだ小柄な少女だった。

 

 決めた。今ここで思い知らせてしまおう。魔法では勝てなくとも、一発か二発、痛みを教えてやればこういった口の利き方をしてくることはなくなるだろう。どうせこの先、ホグワーツから彼女は逃げられないのだ。閉じ込められた場所で、ずっと自分の行動を後悔させてやる。

 

 トムは立ち上がり、向かいに座る少女に膝蹴りを入れる。薄い脂肪や筋肉越しの内臓を感じられるほど素直に、トムの膝はヴェルダンディの腹部にめり込んだ。手応えがない。弱い。口ではあれだけ言っていたのに、この程度か。

 

「な、にを……っ」

 

 そう言ってヴェルダンディが上げた両手の手首を、トムは掴む。恐怖を与えてやる。自分が無力だと思い知らせてやる。

 

「ヴェルダンディ」

 

 そう囁いて、彼は顔を近づけて、睨みつけた。

 

「何をやっているんだ、君たちは!」

 

 扉を開く音と同時に声がして、上級生の女子生徒が二人、コンパートメントへと入ってきた。先頭の女性は緋と金のネクタイを締め、その後ろの呆れたような顔をした女性は緑と銀のネクタイをしていた。

 

「あ……あの、先輩がた」

 

 そう言ったヴェルダンディは息を切らせ、顔を赤くし、そして気がついたように腕を力の緩んだ手の中から抜いて、服の袖で唇を拭いた。彼女のとろりとした眼を見て、そして彼女に覆いかぶさるようになっていた男子学生の顔を見て、緋と金のネクタイの女子学生は腕を組んで頷いた。

 

「……そういうのはホグズミードに行ける年齢になってから、堂々とやりなさい!」

 

「でも……私が、誘ったんです。彼は悪く、なくて……」

 

 ヴェルダンディは申し訳なさそうに、息を切らせながら視線を下ろした。

 

「そこの少年。名前は?」

 

 緑と銀のネクタイの女子学生は、そう言いながら細長い手帳と羽ペンを取り出した。

 

「……トム・リドル」

 

「そちらの少女は」

 

「ヴェルダンディ……ヴェルダンディ・ルストランジュ」

 

「ルストランジュ? ……レストレンジ?」

 

 ペンを動かしていた女子学生はそう言って後輩の少女を見る。

 

「イギリスでは、そうです、わ」

 

「そうか……」

 

 まだ呼吸の荒い少女を見ながら、銀と緑のネクタイの女子学生は手帳の紙をちぎり取り、素早く取り出した杖でそれを燃やした。

 

「おい、見回りに戻るぞ。私たちはここで何も見なかった、いいな?」

 

「指図しないでよ! あ、もし学校でそういうことしたいとかあったら聞いてね、色々と場所は教えてあげるから」

 

 そう言って、二人はコンパートメントから出ていった。後には息が整ってきたヴェルダンディと、不機嫌そうなトムが残された。

 


 

 よっし上手く行った! このイベント起こすの本当に難しいんですよ。まず原則としてトム・リドルはキレませんし、物理的に手を出すこともありません。なのでその前提を丁寧に壊していく必要があったんですね。

 

 まず初手蛇語(パーセルタング)で自尊心を一つ折ります。このあたりはゴーント家チャートなら楽なのですが、そうでない場合はどうにかして学ぶ必要があります。しかしこの時代に蛇語(パーセルタング)を学ぶとなるとモーフィン・ゴーントか、アメリカにいるイゾルト・スチュワードの子孫を辿るか、古代ギリシャの伝説的魔法使いである腐りしハーポに頼るか、あるいはナギニお姉様になります。

 

 ここでナギニお姉様に頼るのが一番楽なのですが、普通のイギリス魔法界一般市民チャートだとあまり接触する機会がありません。普通であれば外の掃除中の彼女の前で怪我とかして助けてもらってそこから何回か関係を深めて言葉を教えてもらうのですが、今回はおじさまのアシストがあったので対応できました。

 

 ちなみに一文を覚えるだけであれば結構なんとかなります。寝言を聞いて覚えたロンが再現できたぐらいですからね。発音の調整はちゃんとしてもらわないと意味が変わってしまうので注意しましょう。

 

 そして丁寧に彼の心を折っていきます。自分が消えることへの恐怖を魔法の力で覆い隠そうとしていたところにヴェルダンディさんの母の死で追い打ちをかけた上で死の秘宝の話をして調整、あとは懐中時計経由で彼の嫉妬心を煽ります。大切な人から何かを贈られたみたいな経験のない彼にとって、それを奪うことは自分の価値の証明になりますからね。

 

 あとは魔法界の話をしてヘイトを高めてから弱みを狙えば逆上します。今回は一回では足りずに二回目の行動が必要でしたが、これはやりすぎると怒らせようとしているなと気がつかれて無視されるようになります。

 

 そして手を出してもらうのですが、彼は今の時点で簡単ないたずら呪文(ジンクス)であれば唱えられる実力を持っています。中古の少し版が古い指定の教科書だけしか持っていないのにですよ。ハーマイオニーさんは両親が理解があったので本をいっぱい買ってもらって基礎知識を持っていましたが、トムはそこを観察力と推察で補っています。

 

 で、そこで魔法を使えばいいと煽ることで魔法以外の選択肢に思い当たらせ、物理攻撃をさせます。この時に巡回の監督生の皆さんとタイミング合わせるのは難しいのですが、ここで予見者の力を使いました。

 

 ちなみにイギリス魔法界のジェンダー感覚は当時のマグルとは安易に比較できません。ネクタイをつけた女子学生の意味を当時の魔法界は理解していたんですかね? マグルの認識だと明確な男装であり、社会規範に対する挑戦か倒錯的な服装です。まあかっこいいは正義だからいいか。

 

 さて、これで誰でもトムくんに壁ドンしてもらう方法がわかりましたね。必要なのはある程度のコミュニケーションスキル、演技力、あとは一言だけの蛇語(パーセルタング)で、監督生のタイミングは事前に何時に来てほしいと依頼すればけっこういけます。皆さんもトム・リドル攻略チャートを走るときは是非参考にしてください。

 

 あ、とはいえコミュニケーションスキルの伸ばし方がちょっと難しくはあります。暴力直後に監督生の先輩方相手にするにはある程度のカリスマ系の能力とかを持っている人を探すのがいいですね。イギリスのレストレンジ家ルートであればアークタルス・ブラック三世と接触するのがいいでしょう。彼は当時すでに「ブラック卿(ロード・ブラック)」の名で恐れられているイギリス魔法界の重鎮ですから。

 

 なので今回みたいにグリンデルワルドに見つけてもらわなくてもこのイベント自体を起こすことはできます! ね、簡単でしょう?

 

 このイベント後にはトムくんは口を利いてくれなくなるのでしばらくは綺麗なスコットランドの景色を楽しみましょう。というか別に加速してもいいな。組分けだけは確認しておかないとチャートが変わるので注意しましょう。見逃して違った寮のテーブルに行くと名前を覚えてもらいやすくなるので悪くないんですけれどね。

 


 

「ルストランジュ、ヴェルダンディ!」

 

 羊皮紙から名前を読み上げながら、最近副校長となったアルバス・ダンブルドアは椅子に座った少女を見た。不自然な点は多い。彼女に出した入学許可証を受け取ったのは詳細を聞かされていないマグルであり、その手紙もやってきたフクロウに持っていかれたという。

 

 フランスのレストレンジ家については、彼の調査範囲の外だった。彼女の直前に呼ばれた男子生徒のレストレンジは本家の息子であったが、彼自身もフランスからの新入生に驚いていたようだった。

 

 特にダンブルドアにとって、レストレンジの名前は苦々しい記憶とともにあった。彼が信頼していた魔法省の職員、リタ・レストレンジは闇との戦いの中で亡くなっていた。だが、彼女はレストレンジ家の中でも例外であった。

 

 ダンブルドアは帽子を被せ、目を閉じた少女ではなく、帽子のほうにそのきらめく視線を向けた。

 

 ──無謀さ、利己心、そして甘さ。いずれもあるが、君は目的のためには手段を選ばないだろう。それでもなお、共に走る友を得ようとするのであれば……

 

 一拍遅れて、帽子が口を開く。

 

「スリザリン!」

 

 声とともに、緑と銀のネクタイを付けた学生たちが座るテーブルから大きな拍手が広がった。一方でなぜか緋と金のネクタイを付けた学生たちのテーブルからは不満そうな声が漏れていた。自分が寮監をしている学生たちであっても、教授からはわからない行動をするものなのだな、と彼は小さく笑った。

 

 その後の数人を見送り、ダンブルドアはまた次の生徒の名前を呼ぶ。

 

「リドル、トム!」

 

 呼ばれて出た彼は、自信に満ちたような顔をしていた。ただ、熟練の魔法使いの目からすれば、そこにはどうしても揺らぎのようなものが感じられた。

 

 ダンブルドアが彼の目をちらりと覗き込む。以前見たときには硬かった心が、どこか揺れていた。

 

「……いいかね、トム」

 

「お願いします」

 

 帽子が被せられ、少し時間が経った。

 

 ──スリザリンは嫌かね? しかしその狡猾さは否定できるものではない。君は過ちから学べるだろう……

 

「スリザリン!」

 

 また拍手。そして大きな不満の声。

 

「なんであの情熱的な子がうちの寮に来ないの?」

 

 そう言って驚いたように立ち上がった緋と金のネクタイを付けた少女は、監督生だった。

 


 

 さきほどのコンパートメントイベントの嬉しいところの一つは、グリフィンドールからの評価が継続的に上がるというものです。完全に擬態したトム・リドルは全寮からの評価が高い状態で卒業するのですが、今回のチャートだと仮面の維持が難しい場所が出てきます。

 

 しかしこのイベントを起こすと、そこで出てくる冷酷さとか苛烈さとかをグリフィンドールの皆さんが勇気のある判断と勘違いしてくれるようになります。こうすると多少トム・リドルが無茶をしても好感度が減らないんですね。

 

 当然ながらデメリットとしてトムとヴェルダンディの関係性はある程度勘付かれました。ダンブルドアの開心術(レジリメンス)はもちろん魔法的なものもあるのですが、それは感情の読み取りみたいなものも含まれているので完全パッシブでも結構心を読んできます。マグルでも十分訓練されれば嘘発見器(ポリグラフ)を騙せる程度に閉心術と似たものが使えるみたいな話ですね。ただし魔法耐性は少ないので磔の呪詛(クルーシオ)されたりすれば簡単に口を割ってくれます。

 

 では入学式も終わったところでまた次回。しばらくは今後のために人脈の整備をしていきつつ新入生らしく勉強することになるでしょう。

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