ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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ちょっとパラドゲーしてきたので初投稿です


Part 6

 さて、楽しい入学式を終えて普通の学生生活が始まりますと言いたいところですが今回のチャートではもう少しやっておくことがあります。

 

 まずはヴェルダンディさんの立ち位置の決定。これは今後のトム・リドルのスリザリン寮内部での振る舞いに絡んできます。本当は初手で誰かがヴェルダンディさんかトムくんに「穢れた血」とか言ってくれれば平均的には早くなるんですが、こう言われたルートでも少なくない確率でトムが血統コンプレックスになってヴォルデモるんですよね。めんどくさいガキだなこいつ、かわいいね。

 

 というわけで新入生に声をかけてくれる監督生とちょっとお話しておきましょう。ここでヘマするとこの後の展開が色々と変わってきますからね。

 


 

 壮麗だが、どこか重苦しい地下の空間。五年生となって緑色のバッジを胸につけたアブラクサス・マルフォイは、新入生を談話室の椅子に座らせながら彼らの家名を吟味していた。

 

 エイブリー。レストレンジ。ロジエール。彼らについては家ぐるみの付き合いがある。そうでない者も、ある程度はその立場をわかっていた。夏の休暇中に二人の大物たちと短くない時間を過ごし、いかに権力を活用するべきかを叩き込まれていた彼は、自信に満ちた、しかし優しい表情で一人の少女に目を向けた。

 

 ヴェルダンディ・ルストランジュ。短い時間しかなかったとはいえ、確認できた限りでは彼女の名前を誰も知らなかった。あの血統好きのブラック家さえ把握していないとなると、私生児に近い立場かもしれない。しかし、だからといって今の情勢でレストレンジ(ルストランジュ)の淑女を下手に扱い、「純血」たちの団結を崩すわけにはいかなかった。

 

 そして彼女に隣へと座られ、ネクタイを彼女の手で結ばれている無表情の少年にも彼は目を向けた。トム・リドル。マグルらしい名前であるし、リドルという家名は聞いたことがなかった。ただ、それですぐにマグル生まれだと決めつけるのはよくない。出自不明の優秀な魔法使いが後から家系図が見つかったことで「純血」だとわかることはあっても、一度汚れた血とされた者がそうなることは難しいのだ。

 

 それに彼の家名は奇妙であるし、魔法界らしいものかもしれない、とアブラクサスは考えていた。マグルにも大工(カーペンター)とか剛腕(アームストロング)といった奇妙な名前をつける文化があることからは目をそらしつつ、不誠実(マルフォイ)の家で育った彼は期待に目を光らせる後輩たちに寮で生活する時の注意点などを話していった。

 

「……あとはそうだな、スリザリン寮は伝統を重んじる。君たち新入生も──長らく魔法界に貢献してきた者たちの『響き』には、それにふさわしい敬意を払うべきだろう」

 

 そう言うと、純血の新入生たちは素直に頷いた。アブラクサスには彼らのその無知が羨ましくもあった。カンタンケラス・ノットから純血とは何であるかを教えられていた彼は、もはやそのような甘さを持つことはできなかった。

 

「それでは、各自寝室に向かいたまえ」

 

 そう言って新入生を解散させた後、彼は眼の前に立つ少女に気がついた。彼女は決して目立つ風貌ではなかった。誰かを引き込むような強さも、敵に回せないと感じられる威圧感もない。

 

「……何かね、ミス・ルストランジュ」

 

 フランス語はマルフォイ家では教養と言えた。彼の家自体がフランスに起源を持つものであるし、海を越えた交流は今の時代だからこそ重要だった。

 

「レストレンジで構いませんわ」

 

「……あえて、だ。二人いると困ったことも多くてね」

 

「あら、それではブラック家など大変でしょう」

 

「ワルブルガとルクレティアの二人がいるわけだからな」

 

 そう言ってアブラクサスは小さく、上品な笑みを浮かべた。

 

「……それで、歴史と伝統を重んじるスリザリン寮の監督生、アブラクサス・マルフォイ先輩に質問があるのですが」

 

「何だね?」

 

「目を突かれた母を持つ私のようなものは、それでもなお(カラス)でいられるのでしょうか?」

 

 凡百の学生であれば、この(リドル)の意味すらわからなかっただろう。しかし彼はマルフォイ家の跡取りだ。聖二十八家として選ばれた家も、それ以外の家も、ある程度は頭に入っている。そしてレストレンジ家の家訓は「烏は烏の目を突かぬ(Corvus oculum corvi non eruit)」。互いに争うことはないという意味であるが、彼女の発言をもとにすればその意味は逆転する。

 

 コーヴァス系は当主が死に、後継者については噂しか残っていない。ロドルファス系はイギリスにいる。となれば彼女はフランスに残っていたシリル系の分家、フルクラン系と考えるのが妥当だが、あの家は女子しか残らなかったはずだ。となれば烏の目を突いた烏である父親がどこかにいたことになる。

 

 もちろん、それはアブラクサスにとっては貴族と呼ばれる、あるいは純血の名家においてよくある話であった。マルフォイ家としてはそこまでして保つべき「純粋さ」などないだろうと裏で嗤いたくなるものであるが、それでもそれは確実に存在した。

 

「……スリザリン寮は、友情を尊ぶ」

 

 彼は心を閉じ、感情を出さない技を身に付けていた。それは影の中で動き、人を操るためには必要な技能だ。

 

 ただ、眼の前の冴えない少女は、彼とは別の方法で、そういった操り方を学んでいるようだった。まだ一流というわけではないだろう、と本物たちを見てきた彼は理解できる。しかし彼女はいずれそこに到達しうると、彼は正面に立つの少女に対してある種の直感を持っていた。

 

「わかりましたわ、先輩」

 

 そう言って、少女は微笑んだ。

 

「……質問は、以上かね?」

 

「ええ。先輩のことを知ることができてよかったです。困ったときには、友に頼らせていただきますわ」

 

 そう言って彼女は軽く膝を曲げ、ローブをつまんで礼をした。

 


 

 まーたマイナーどころじゃないキャラクター拾ってきやがりましたね。そうかヴェルダンディ嬢はノゼア(Nozéa)・ルストランジュの娘だったのですか。誰だって?

 

 というわけで家系図を見てみましょう。フランスのルストランジュ家はコーヴァス(Corvus)系とシリル(Cyrille)系があり、シリル系の分家としてフルクラン(Fulcran)系がありました。ここでの系というのはその家の当主の名前ですね。代々長男は父の名を継ぐので、コーヴァスの息子コーヴァスの息子コーヴァスの息子コーヴァスの息子コーヴァスみたいなことになります。

 

 当然面倒なことになるので、例えばイギリスでの話にはなりますが神秘部を封鎖しようとして頑張ったけれどもストレスで退陣したロドルファス(Rodolphus)・レストレンジ大臣が父や息子と区別する必要からしばしば「ラドルファス(Radolphus)」と名乗っていた、みたいなことがあります。おかげで当時の文献を探すと結構混乱することになるんですよね。

 

 そしてシリル系の男子直系はシリル・ルストランジュで途絶えることになるのですが、彼の姉であるフロクセル・ルストランジュはジョデル・ヴォランと結婚して娘のクインティラをもうけ、彼女はフルクラン系の最後の男子フルクラン・ルストランジュと結婚して、一人娘のノゼア・ルストランジュを産みます。そしてシリル系ルストランジュの家系図はここで閉じるわけです。あの家は男系主義ですからね。

 

 というわけでこのノゼア・ルストランジュの娘がヴェルダンディです。父親については別に探らなくたっていいでしょう。たぶんルストランジュ家ですし、そのあたりやると面倒なことになりそうな気配が深いので。

 

 あとそうですね、ヴェルダンディの母方の祖父がヴォラン家となればメタ知識を持っていてもおかしくないっていうのもあります。気になる人はVolant Charitable Trustの設立者をご確認ください。

 

 ともかくこれでアブラクサス先輩からは「友」として認めてもらえました。いやぁ純血として認めるとイギリスのレストレンジ家とかと微妙に対立するし、かといって無視するにはルストランジュの響きは強いので、中立に見えてスリザリン寮の気風にも合う「友」で誤魔化そうとしたんでしょうが言質を取られましたね。

 

 ちなみに史実をご存じの方はよく知っていると思いますが、マルフォイ家は別に純血には正直興味ありません。名家と結婚してきたので結果的に純血の条件を満たしただけですし、彼らは血を濃くしすぎないようにしています。おいゴーント家の悪口はそのくらいにしておけよ。

 

 しかしまあ何度接触しても恐ろしい男ですよ、アブラクサス・マルフォイ。なにせノビー・リーチ大臣を消し去ることに成功した男ですからね。ノビー・リーチは最初のマグル生まれのイギリス魔法省大臣であり、自身への反感を利用して重職から純血を一掃したことで魔法省を改革した怪物です。史実で彼の次にマグル生まれとして魔法大臣になったのが現職のハーマイオニー・グレンジャーだと考えると、あれに匹敵する人物を排除することに成功した男がアブラクサス・マルフォイというわけです。怖いだろ。

 

 ちなみにアブラクサスの息子は死喰い人運動に振り回された愚物扱いされることあるんですが幾度の政変と裏切りを重ねて最後まで生き延びていることを踏まえると普通に強い人です。そのまた息子も立場を理解して半ば隠居しながらも着実に影響力を取り戻しつつコレクション増やしてますからね。何だよあの一族。ウィーズリー家が対等な敵とみなしたのも妥当な強さです。

 


 

「……ねえ、ヴェルダンディ」

 

 部屋でベッドを整えていたヴェルダンディに、同室の少女が小さく声をかけた。

 

「なんでしょうか、ミス・ロジエール」

 

「……私のおばさんを、知っている?」

 

「ええ」

 

 そう言ったヴェルダンディは懐中時計の蓋を開け、その裏側にある緑色の炎に照らされた紋章を見せた。

 

「……よかった。昔、お世話になったの。私は小さい頃にイギリスに来たから、あまりそっちの話を知らなくて」

 

「ただ、それ以上は黙っておくように」

 

 そう言って、ヴェルダンディは彼女の口元に人差し指を立てた。

 

「……わかった。何かあったら頼って。なんかあなたの家、大変そうだから」

 

「わかりましたわ。その時は友として頼らせていただきます」

 

 そう言って、ヴェルダンディは手を出した。向かい合った少女はその手を握り返した。

 

「ここだけの話、アルバス・ダンブルドアは大陸と繋がりのあるあなたを疑うでしょう。しかし明確な証拠がない限りは手が出せないはずです。それでもあまり家名を出しすぎるであるとか、あなたのおばさまを自慢するようなことはしないほうがいいでしょう」

 

 手を引くようにして半歩踏み出し、相手の耳元で小さく、囁くようにヴェルダンディは言う。

 

「……そういうのを、考えなくちゃいけないの?」

 

「ルストランジュの名前を私が名乗るのは、簡単なことではないのですよ」

 

「そっか、気をつけるね」

 

「ええ」

 

 そう言って、ヴェルダンディは繋いでいた手を、ゆっくりと離した。

 


 

 もしかしてこのヴェルダンディさんってかなりヤバい系の少女じゃないですか? おかしいキャラメイクの過程では魔性の女(ファム・ファタール)属性とかつけていないはずなんだけどな。むしろトム・リドルが魔性の男(オム・ファタール)として振る舞うのが史実なんだが。

 

 というわけでロジエールさんです。しかしこの家もなかなかうまいことしますよね。もしグリンデルワルドが敗北したとしてもダンブルドアの庇護下にいれば助かるという計算です。イギリスはダンブルドアがいるから手出しできない、みたいな考え方は結構当時でもありましたし、世界魔法戦争時代のイギリスの被害はかなり少ないと言ってもよいでしょう。

 

 もちろんそれは一教授であるダンブルドアの功績に帰すのは不適切、というのは近代魔法史をやっていれば言えることです。魔法大臣レナード・スペンサー゠ムーンによるマグル界との協調、魔人議会(ウィゼンガモット)を団結させて挙国一致内閣に相当するものを作ったブラック卿(ロード・ブラック)ことアークタルス・ブラック三世の貢献、あるいはダンブルドアとの決闘に合わせて行われた最終反攻作戦の下準備をしていた上級大魔法使い(シュープリーム・マグワンプ)のヴィセンシア・サントスといった人々の果たした役割は大きいと言えるでしょう。

 

 まあたぶんこのプレイではそこまで世界魔法戦争の趨勢を左右できるレベルにはならないと思います。例えばルビウス・ハグリッドプレイでうまくやるとニュート・スキャマンダーの弟子として暴れることとかできるんですがそれはきっと他の人がやってくれるでしょう。

 

 では次回は楽しい学校生活。ホグワーツらしい日常生活は基本飛ばしていくのですがそれでも回収しておきたいイベントはあるのでね。

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