ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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Part 7

 今回採用するチャートではトム・リドルに秘密の部屋を開けてほしいので、まずはそこまでたどり着く必要があります。デフォルトでは五年生で部屋を開けるのですが、これは少し判定が複雑になっています。

 

 確かに部屋を開けるだけなら二年生でもできる簡単なことなのですが、ではそれをゴーント家から得ることのできる情報無しでやるとなると難しい。正攻法で行くためには複雑なクエストを達成してホグワーツの神秘を理解した上でロウェナ・レイブンクローが作った幾重にも張り巡らされた謎を破って教授たちの護るホグワーツの根幹にまで触れる必要があります。なんで謎掛けで突破できるようにしたのかは知りませんが、これが解ければ私の後継者にふさわしいとか考えたんじゃないですかね。創設者のお前ら本当に仲良しなんだな。

 

 これは忍びの地図(マローダーズ・マップ)の作成過程と似ているのですが、史実でトムが秘密の部屋を開けた時はもっとアクティブな調査をしていました。マグル風に言うのであればマローダーズは学校のサーバーを覗き見して点数とか出席とか見ていたのに対し、トムはそのシステムのコードを読んで隠されていたディレクトリを見つけたみたいな感じですね。

 

 なので五年間も秘密の部屋を開けられなかったのはサイドクエストに気を取られていたからだみたいな非難もありますが、それは普通に間違っています。なにより史実ではダンブルドアのGG値が上がらないようにして、優等生の仮面を常に被りながら、「ワルプルギスの夜騎士団(ナイツ・オブ・ワルプルギス)」を裏で動かし、そしてスリザリンの継承者の伝統から秘密の部屋を探し当てたんすからね。トム、お前も走者にならないか? そのチャート構築能力、世界新の領域に近い。

 

 では今後のチャートを整理しましょう。まずはGG値の調整。トム・リドルが暴走して裏で動かないようにする必要があるので、ダンブルドアとどこかで接触して情報交換をしておきましょう。ちなみに目を合わせすぎると詰みます。

 

 あとは早めにトム・リドルに自分の血を自覚させたいですね。スリザリンの継承者になった後で自分の生まれを知るとキレるルートに入ってしまいます。まあ家系図探しについては史実では隠れて行っていたのですが、GG値を上げていいならスリザリン寮のネットワークが使えます。

 

 ではひとまずトムを揺さぶりつつ最初の時期を過ごしていきましょう。ホグワーツ入学後の授業イベントなんてみんな嫌ってほど見ているからいくら飛ばしたっていいよね?

 


 

『そろそろ戻る時間だぞ、ミス・ルストランジュ』

 

 ヴェルダンディがフランス語の声が聞こえた後ろのほうを振り向くと、髭を生やした笑顔の男が満月の光に照らされて立っていた。その佇まいは威厳というよりも、友人がいたずらをしているのを見つけたような、どこか愛嬌のあるものだった。

 

「……ダンブルドア教授、こんばんは」

 

 少女は立てて灯りに使っていた杖を床から取り、英語で挨拶をした。

 

(ふくろう)の面倒を見ているのかね?」

 

 ダンブルドア教授は(ふくろう)小屋に入り、周囲を見ながら言った。

 

「ええ。毎日彼らには無茶をさせていますもの」

 

 そう言って、ヴェルダンディは彼らの吐き戻し(ペリット)を確認していた。羽毛や骨が固まっていたが、異常なものはなさそうであった。

 

ガルグイユの叫び(ル・クリ・ドゥ・ラ・ガルグイユ)銀の蝙蝠(ディー・ズィルベルネ・フレーダーマウス)、そしてニューヨーク・ゴースト。海外の新聞を一つならともかく、これだけ取る学生は珍しい」

 

 (ふくろう)は本来、そんなに飛び回る鳥ではない。彼らは狩りのための瞬発力は持っていても、鳩や渡り鳥のような持続力が高いわけではない。彼らがどのように海を超えるような長距離の手紙を運んでいるかは魔法動物学における謎の一つとなっていた。

 

 実はどこかにあるポートキーを回収して活用しているのではないかという仮説もあったが、未だ研究は進んでいなかった。ただ、(ふくろう)にとって長距離の手紙運びは楽な仕事ではないのだろう、というのは共通見解であった。

 

「きちんと読んでいるわけではなく、目を通しているだけに近いので買いかぶりというものですわ。それに、今の情勢では外の世界を知ることも大切でしょう?」

 

「ホグワーツの護りを信頼していないのかね?」

 

「……ここは砦として、かなりの軍勢相手にも耐えることはできるでしょう。しかし、ここは学び舎です。生徒はいつかここから出ていかねばならない」

 

「ほう! 学びについて学生に教わるのは久しぶりだ。しかしそうだ、教師はいつも学校にいるから忘れてしまうが、ここは人を送り出す場所だったな」

 

 ダンブルドア教授はそう言いながら、杖を振って小さな椅子と机を出した。ヴェルダンディは促されるままにそこに座った。

 

「……ホグワーツには、慣れたかね?」

 

 そう言いながら、ダンブルドア教授はヴェルダンディの横顔を見た。彼女は視線を月の浮かぶ夜空へと向けていた。

 

「ええ、フランスにいた時と勝手が違って戸惑うこともありましたけれど」

 

「それはよかった。イギリスで生まれ育った子であっても、寮生活で辛くなってしまうことがある。苦しい時には、素直に吐き出すのもまた大切なことだ」

 

「それを弱さだ、と思ってしまう学生もいますわ。ただ、私は寮監のスラグホーン教授も、もちろんダンブルドア教授も信頼いたしております。もし困ったことがあれば、相談させていただきますわ」

 

 たとえ帰りが遅くなったとしても、少なくとも寮監のスラグホーン教授は仕方がないと言って笑うのは確実だった。校長のアーマンド・ディペットは管理職として少し眉をひそめるかもしれないし、管理人のアポリオン・プリングルは鞭を取り出すかもしれないが、それでもダンブルドア教授とスラグホーン教授が一言言えば許されるだろう範囲にあった。

 

「友達は、できたかね?」

 

「トム・マールヴォロ・リドル」

 

 彼女が言うと、ダンブルドアは少しだけ眉を上げた。

 

「君から見て、彼はどういう人物なんだい?」

 

「それより先に、ダンブルドア教授から見た彼をお聞かせ願えればと思いますわ」

 

 そう言われて、ダンブルドアは頷いた。

 

「そうだな……賢い。非常に賢い。魔法の腕、集中力、学んだ知識の活用。どれをとっても、入学してからわずかこれだけで多くの教授を驚かせる水準だ」

 

 ダンブルドアから見ても、珍しい賢さを持った少年だった。幼い頃から魔法に親しむものはいる。教え子にある種の才能を感じたことも幾度となくある。しかし、ここまで完成度が高い学生はダンブルドア教授にとって初めてと言っても良かった。

 

「けれども弱点、あるいは本人が言うには気にしなくてもいい些事、というのも多いですわ。新聞を読もうとしないところとか」

 

「ふむ、彼は図書館から本を多く借りていると聞いたのだが」

 

「彼が求める知識には範囲があるのでしょう。ただ、彼は自分が認めたもの以外には価値がないと考えがちですの」

 

「……そういうところに気がつけるのは、ミス・ルストランジュがホグワーツに入る前から多くのことを経験してきたからかもしれないな」

 

 ダンブルドアは彼女をうまく捉えきれていなかった。魔法の能力は悪くない。平均以上ではあるだろう。例年であっても優秀であるとはいい難く、なによりトム・リドルの前では彼女の強みは霞んでいる。それでもなお、彼は彼女に対してある種の警戒を持っていた。

 

「母が亡くなり、ルストランジュ家で頼れる人がいなくなった後、私は多くの人に助けられました。彼らは強い意志と目的を持っていて、それでもいろいろな人の集まりで、そういった人に助けられたからこそ、私は自分が認めないものに価値がない、などとは言わないのです」

 

 ダンブルドア教授の脳裏に、古い言葉が蘇った。マグルは劣っているのではない。ただ魔法族と違うだけである。彼らには見えないものがあり、我々だけが見えるものがある。だからこそ、高みにいるものとして、彼らを導かねばならない。

 

 思考が繋がっていく。多くの地域の情報を集め、各地で信奉者(アコライト)を増やし、長く潜む内通者を用意する手法。彼の念入りなやり方に比べればこの眼の前の少女はある意味ではわざとらしすぎるところもあったが、それすら彼の策略のうちではないだろうか。

 

 そしてその少女がトム・リドルを友とするのであれば、彼の力が恐るべき方向に向くのではないか。少なくとも、寮監であり、友であるホラスには、二人について話しておくべきだろうとダンブルドアは決心した。

 


 

 一応セーフ……だよな? ひとまずダンブルドア教授が今すぐ開心術を使ってくるレベルではないけれども、ある程度警戒させることには成功したはずです。しかしタイミングが完璧ですね。夜中に人がいない場所を訪れるという形で多少誘導したところもありますが、たぶん警戒がそれなりに最初からありますね。

 

 ダンブルドアの特徴の一つは自分以外の存在の賢さをあまり認めたがらないところです。トムと似たところではありますね。だから秘密は自分だけが管理しようとするし、そのせいで後手に回ることも珍しくない。

 

 だから報連相をちゃんとしないと部下はついてこないんですよ。弱みを握るのとカリスマとそれっぽさだけでどうにかやるのには限界があるんです。全部恐怖でやろうとするよりはよほどマシですが。グリンデルワルドを見なさい、ああいうふうに目的が共有されてみんなが自発的に動く組織っていうのはいいものなんですよ。まあまだマグルの世界では反ナチ思想家のピーター・ドラッカーがアメリカ移住してすぐぐらいなんですけどね。

 

 あとはそうですね、普通にトムと絡んで好感度調整しておきますか。

 


 

「だから加熱状態で山荒(ヤマアラシ)の針を入れると大変なことになる。属性が逆転しないんだ……」

 

 スリザリンの談話室で、トムはそう言いながら同級生たちに勉強を教えていた。どういうわけか、彼はここしばらくいろいろな人から勉強を教えてほしいと言われて忙しくしていた。

 

 目立ちすぎたのかもしれない、というのはある。入学してすぐの間、彼は何度も寮点を与えられた。さすがに今は落ち着いてはきたが、それでも彼の最初の活躍がスリザリン寮の競争において小さくない働きをしたのは事実だ。寮内の先輩からも一目置かれるようになっている。

 

 勉強を教えるのは、学ぶより難しかった。ただ、相手を理解させることができた時には達成感があった。

 

「……次からはもう少し予習をするといい、ロドルファス。そうすれば悩むことがなくなる」

 

「いやあありがとうトム! 君のような友人を持てて本当に俺は良かったよ!」

 

 そう言いながらロドルファス・レストレンジは握手をトムと交わした。もしトムが穢れた血であったりすれば、こうやって頼むことは絶対になかっただろう。ただ、信頼できる人物であると親から伝えられていた監督生のアブラクサス・マルフォイが認めている人物であれば、友として頼ることに迷いはなかった。

 

「……ヴェルダンディに、何か言われたのか?」

 

「ああ、うん。私には無理だからトムに頼るといいよって」

 

 少し前にロドルファスは家の繋がりがあるのかと考えておそるおそるヴェルダンディと話をしたのだが、遠い親戚ということであまりその点については話さないことにしよう、というところで話がついていた。ただ、それ以降は授業の質問とかをたまにするような、顔見知り程度の関係となった。

 

「あいつめ……」

 

 珍しく不機嫌そうな表情をするトムに、少し前に流れてきた噂を思い出しながら、失礼にならないようにロドルファスはすぐに彼の前を去った。

 


 

 トムくん、教師としての才能はかなりあるんですよね。なにせ死喰い人の皆さんって彼の指導のおかげで闇祓いに匹敵するだけの力を手に入れたんですよ? もちろん恐怖とか忠誠とかの力もありますし、ある程度の力量がなければ死喰い人の上層部にはなれませんでしたが。

 

 あとここで重要なのがトムが完璧な人間ではなくなっているということです。少なくともヴェルダンディとの関係については噂がすでに色々流れて変なことになってしまったので、腐れ縁というかトムの方からはヴェルダンディに対して別に好きでもなんでもない、という態度を取るようになっています。ヴェルダンディも授業でペア組んだりとかチェスの誘いをして断られたりとか、そういう距離感です。ただの友達だって。

 

 まあもちろん周囲がどう解釈するかなんてのはわかりませんけどね! 少なくともグリフィンドールのほうではトムはちょっと行き過ぎて手を出したけどそこから照れ隠しで表面的には何事もなかったかのように振る舞っている、となっています。

 

 次のイベントはクリスマスですかね。まあその頃にはトム・リドルの才能は明らかになって、ヴェルダンディのメッキも剥がれてくる頃なのでまた新しくイベントを起こせるというわけです。

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