ハリー・ポッター 「オーグリーの旗を掲げよ」RTA 1938年シナリオ トム・リドル攻略チャート   作:魔法省真理部記録局

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読みたいものが積まれているので初投稿です。


Part 9

 アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア。彼に返り討ちにあったプレイヤーは数知れず、ダンブルドア討伐自体が一つのレギュレーションになるほどの大物です。そして彼の恐ろしさの理由の一つはそのあらゆる分野に精通した知性にあります。

 

 なので下手に知恵比べとかすると楽しんで乗ってくるんですが、周囲から見ているとなに言ってるのかわからなくなります。老年になるとそのあたりも調整できるのですが、大決闘前だとたまに危ないことがありますね。

 

 というわけでクリスマスの朝から始めていきましょう。魔女は殺せとか女と寝るように男と寝るなとか書かれている聖典がある宗教の救世主の誕生を魔法学校が祝うとはどういう了見しているんですかね。

 


 

「……カタロニアン・ファイアボール種の最後の一匹が殺された、ですって」

 

 スモークサーモンを食べながら、ヴェルダンディは呟いた。

 

「何が?」

 

 トムはケジャリーを食べていた手を止めてヴェルダンディに聞く。クリスマスの朝の大広間にはまばらにしか学生がいなかったが、だからこそ屋敷妖精(ハウスエルフ)たちは腕を振るってなかなかに豪勢な食事を出していた。

 

「フランコ将軍の軍がドラゴンの生息地を脅かしたの。機密保持法のための行為だとは言ってはいますけど、どこまでこのドラゴンから取られたものが闇市場に流れるのかしら……」

 

「朝からそんな話をして楽しいのか?」

 

「楽しいから読んでいるわけではありませんわ。ところで、いま何時?」

 

 そう聞かれたトムは、自分で見ろよと一瞬言いそうになった。廊下で、授業の終盤で、あるいは消灯時間の前に懐中時計を確認している彼女の姿は、トムにとってすでに日常の一部となってしまっていた。

 

 その時計は、今はトムの手の中にある。図書館で調べた魔法でどうにか形だけはそれらしくしたし、時間を知るという機能は保てていたが、その中身は時計とは言い難い状態にあった。

 

「……九時半だ」

 

「いい時計を持っているようだね、トム」

 

 後ろからした声に、トムは慌てて振り返った。足音は一切聞こえてこなかった。

 

「少し、それを見せてもらえるかのう」

 

 ダンブルドアはそう言って、きらめく目をトムへと向けた。

 

「……これは、僕のものです」

 

 トムは時計を服の内ポケットに戻しながら返した。

 

「ヴェルダンディ、君もああいった時計を持っていなかったかね?」

 

燭台(chandeliers)も本当は一緒にあげたかったんですが、持っていなかったので」

 

 ヴェルダンディは新聞から目を離さずに言う。トムはその言葉に、英語のシャンデリアとは違う響きを感じ取っていた。

 

「……さすがだな、司祭どの(Monseigneur)

 

 トムはダンブルドアとヴェルダンディが何を言っているのかは理解できなかったが、ダンブルドア教授はそれを知っていた。

 

 ジャン・バルジャン、私の兄弟よ。君はもはや悪に与するのではなく、善に与するのだ。私が君から買い取るのは、君の魂だ。私は暗い想いや破滅の精神から君の魂を救い出して、神へと捧げるのだ。

 

 古典の一節を頭の中で思い出しながら、ダンブルドアはヴェルダンディに乗ることにした。

 

「ところでダンブルドア教授は、銀製品の手入れの道具をお持ちですか?」

 

 ヴェルダンディは新聞を閉じ、教授の方を見て言った。

 

「うむ。時計であれば私もいくつか持っているし、機械いじりは趣味だ。なにしろジョコンダ・サイクスが使った時計を整備したのは私でね」

 

 そう言ってダンブルドアはトムに微笑んだ。もちろん、トムは1935年に世界で初めて箒で大西洋を横断した人物である魔女については聞いたこともなかった。

 

「もしよろしければ、少し彼の時計を確認してもらえますか? おじさまから入学祝いにもらったものですが、きちんと手入れをできていなかったので」

 

「……よいかな、トム」

 

 トムは一瞬だけ視線を泳がせ、わずかに逡巡した後にそれを差し出した。ダンブルドアからすれば、それはかなり追い詰められたうえでの行動だと判断できた。おそらく、このように差し出させることすらヴェルダンディの計画のうちなのだろう。

 

 しかしそれで、トムに学びがあるのであれば、彼をオネットム(honnête homme)、紳士にすることができるならば、ダンブルドアはそれを許容し得た。

 

「どうぞ」

 

 しかし最終的にトムは堂々と、なにもやましいところはないという顔をしてそれを手渡した。

 

 受け取ったダンブルドアは蓋を開け、そして固まった。トムはダンブルドアの青く揺れる目を覗き込んだ。後悔、疑念、葛藤、決意。それらが変わっていくのはほんの一瞬だったが、以前に孤児院で話したときとは違う、揺らぐダンブルドアを見て、トムは少しだけ目の前の相手の評価を下げた。

 

「……ヴェルダンディ、この時計を魔法で修理したかね?」

 

「あー……したかもしれません」

 

 ダンブルドアから目をそらしながら、ヴェルダンディは言う。

 

「こういった繊細な道具は、魔法で簡単に直せるものではない。その構造と機能を深く知らなければ、形だけを真似たものになってしまう」

 

 そう言って教授は机の上に銀の懐中時計を置き、杖を取り出して振った。

 

泡よ(エバブリオ)

 

 ダンブルドアの言葉とともに、時計が泡のようなもので包まれた。

 

「部品が散らかるといけないから、まずはこういった呪文を唱えてから作業をするといい」

 

 教授がまた杖を振ると蓋がひとりでに開き、丁寧に一つずつ部品が宙へと浮いていく。

 

拭え(テルジオ)清めよ(スコージファイ)滑れ(グリセオ)

 

 歯車、ゼンマイ、あるいはトムにはよくわからない奇妙な部品まで。それら一つ一つが少しだけ輝きを取り戻し、そしてまた組み合わされていく。

 

防水せよ(インパービアス)扉よ閉じよ(コロポータス)回れ(サーカムロータ)

 

 空中で再度組み立てられた時計は机に小さな音とともに戻され、そしてそれらを囲っていた泡は消え去った。

 

動け(ロコモーター)のような呪文だけで壊れた時計を動かそうとすると、どうしても問題が起こる。詳しいことについては……O.W.L.(ふくろう)試験でやるような、難しい内容だ。私に変容術を教えてくれたマチルダ・ウィーズリー教授はこういったものを直すのが好きでね、もしよかったら図書館にある彼女の本を読むといい」

 

 ダンブルドアはそう言って、トムに時計を手渡した。

 

「銀は手入れをしないと黒ずむが、丁寧に使い込まれたものは独特の輝きを放つ。もし君が自分で直すなら、傷を消さないほうがいいだろう」

 

 その言葉を聞きながら、トムは懐中時計を開いた。裏蓋にあったはずの謎の紋章は、跡形もなく消えていた。

 


 

 マグル文学オタクどもがよ……。堅気(カタギ)の前でわけわかんない話するなって教わらなかったのか? あ、これはヴィクトル・ユーゴーの「ああ無情(レ・ミゼラブル)」におけるミリエル司教のシーンですね。これ自体がある種の暗号になっています。

 

 どういうことかと言いますと「トムはこの懐中時計をヴェルダンディから盗んだ」「しかしヴェルダンディはそれを許容して、彼を真人間にしようとしている」という情報をトムにはわからない形でヴェルダンディはダンブルドアに伝えています。トムに足りないものは「教養」ってやつですね、だからそれはオタクがする語録での会話なんよ。

 

 ちなみにこういう比喩を使ういい点の一つは開心術による嘘判定を回避できることです。なにせトムはこの時計を盗んでませんもの。実質濡れ衣である。でも勝手にダンブルドア教授が勘違いしただけなんでぇ……。

 

 一応新聞の方を見たりわざとらしく視線をそらしたりして多少は対策していますが、これには当然限界があります。本気で覗き込まれたら終わりなのでほどほどにしないといけませんね。

 

 そして思ったより乱数の引きが良かったのか、トムがたぶんダンブルドアへの開心術判定に成功していますね。普通は難しいんですが、元カレとの思い出引っかかれちゃってダメージ食らったタイミングなら通るのか。

 

 なおもしここで紋章についてダンブルドア教授から聞かれた場合には「イギリスの旧家のものらしい、私も知らない」と答えれば大丈夫です。だって嘘じゃないもん。ペヴェレル家の紋章だもん。いやぁ歴史と伝統ある紋章を勝手に利用して欧州大陸魔法界における政治的タブーに変えたグリンデルヴァルトってやつは許せねぇなぁ。

 

 次の大きなイベントは三年生頭なので、ここからはしばらく時間に余裕ができます。ではどうするか。真面目に勉強をするんだよ、ホグワーツを何だと思っているんだ。

 

 ひとまず隠し科目である錬金術の授業を取ることを目標にしてやっていきましょう。トム・リドルが教える側に回ると学年全体のレベルが上がるので錬金術の開講に必要な人数が集まるんですよね。別に錬金術自体は今回のチャートで必須というわけではないのですが、ちょっとやりたいことのためにはそれぐらいの知識が必要になってきます。

 

 できたら欲しいのは変容術と魔法薬学の(O)、薬草学と魔法生物飼育学の(E)ですね。O.W.L.合格レベルでも人数が足りなかったらねじ込めはするんですが。あとは古い本を読めるようになりたいので魔法史と古代ルーン文字学を履修しておきたいところです。

 

 それ以外はまあ、最低限でいいか。ガラテア・メリィソートの闇の魔術に対する防衛術は役立ちそうに見えるんですがやりたいことがちょっと奥深すぎるので相対的に意味がないです。あと闇属性の予見者の場合には占い学でオナイの婆さんと話すといろいろと干渉してまずいので距離を取るようにしましょう。

 

 ちなみに呪文学はそこまで手を回せる余裕がないので捨て……と思いきや、実はちょっと重要人物がいるので頼み込んで講義をしてもらうことにしましょう。そうすることで学年全体にバフが乗るので自動的に授業のレベルが上がります。なおこの人、少なくとも呪文教育については間違いなく優秀なんですが、かなり面倒なんですよね。美人さんではあるんだけど。

 


 

 寮を示すはずのネクタイは黒く、ローブは二十年も使っていたかのように擦り切れていた。その七年生の女性が、頭を下げる一年生に対して困惑していた。

 

「ええと……」

 

「ヴェルダンディです、ヴェルダンディ・ルストランジュ。ゴズホーク先輩に頼みたいことがありまして」

 

「私、に?」

 

「はい!」

 

 なぜだろう、とミランダ・ゴズホークは考える。彼女は自分が勉強のできる方だとは思っていなかった。苦労して教科書を読んでも書かれている内容がわからないから独自に解釈をするしかなかったし、姉たちから教わった嘘の呪文にさんざん騙されてきた。だから自作のちょっとしたいたずら呪文(ジンクス)を使って些細な復讐をしたこともあったのだが、それはミランダにとっては今は関係のないはずの話だった。

 

「ゴズホーク先輩が、呪文についてとても詳しいと色々な人から聞きました。だから、私たちが呪文を学ぶのを手伝ってほしいんです」

 

「……私よりも、もっといい人がいるよ」

 

 そう言って、ミランダはそばかすのある顔を伏せた。

 

「先輩は、教科書がわかりやすかったと思いますか?」

 

 思うわけがない。ミランダはその言葉を聞いて、下唇を噛んだ。私ならもっとうまくできるのに、という思いは彼女の中に常にあった。書き溜めた日記には自分で作り直した呪文の法則が、あるいはそんな古い方法に頼らなければいけない教師たちへの批判があった。

 

「……まさか。私のほうがもっとうまくできる」

 

 それは彼女の、偽らざる本心だった。さんざん馬鹿にされて、惨めな思いをしてきた。その中で後輩の言葉は、ミランダにとって拒めないものだった。

 

「私もそう思います。だからお願いしたいんです」

 

 ヴェルダンディはミランダのほうに一歩踏み出した。真剣な表情のヴェルダンディを見て、ミランダは小さく頷いた。

 


 

 名著「基本呪文集」の作者、ミランダ・ゴズホークさんです。ちなみに彼女は自分のことを他人から好かれないけれども孤独でもいいと思っていますが、自作のいたずら呪文(ジンクス)を周囲に連発して浮いてしまったタイプです。たぶんスネイプの同類。まあこの辺の話って同時代の人があまり語らないし「基本呪文集」の前書きでは末っ子としての惨めさが強調されているんですがね。

 

 彼女に一年間教えてもらうと、その後文通できるようになります。そうしておくとプレイヤーキャラクターの卒業と同時に「基本呪文集」の初版本フルセットが手に入る嬉しいイベントもあるんですが本題はそこではなくてですね、本来なら十年か二十年先取りした教育水準の呪文学学習速度を手に入れられるってことは大きいんですよ。

 

 これをトム・リドルの特別補習と合わせることで勉強に重点を置けばかなりのレベルにまで魔法の力を高めることができます。まあクラス全体が底上げされているので順位がそこまで大きく上がるとかはないんですけどね! あとプレイヤーキャラクターがトム・リドルから一定以上の執着を持たれている状態でミランダと仲良くするとトムの呪文学レベルが上がります。理由? わからないですね……。

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