インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第十二話 公になった印

――翌日。

 

教室。

 

ざわつく空気の中、山田真耶が教壇に立つ。

 

「え、えーっと……では、クラス代表を発表します」

 

一瞬の静寂。

 

全員が注目する。

 

「本クラスの代表は――織斑一夏くんです」

 

「……は?」

 

間の抜けた声が、教室に響いた。

 

それは当の本人、一夏のものだった。

 

同時に、ざわめきが広がる。

 

「え? 勝ったのセシリアじゃ……」

「どういうこと?」

 

その中で。

 

「異議はありませんわ」

 

凛とした声。

 

セシリアが、静かに立ち上がる。

 

「今回の件、私が辞退しましたの」

 

「えっ!?」

 

山田が驚く。

 

だがセシリアは続ける。

 

「少々、大人げなかったと反省しております」

「彼の可能性に賭けてみるのも、悪くないと思いましたので」

 

視線が一夏に向く。

 

「……いや、ちょっと待て」

 

一夏が立ち上がる。

 

「俺、やるなんて一言も――」

 

「決定事項だ」

 

織斑千冬の声。

 

逃げ道はない。

 

「……分かりました」

 

渋々、受け入れる。

 

その様子を――

 

一花が、静かに見ていた。

 

そして、微笑む。

 

――

 

放課後。

 

食堂は貸し切り。

 

クラス代表決定パーティーで賑わっていた。

 

「なんでこうなるんだよ……」

 

ぐったりする一夏。

 

「主役ですもの」

 

セシリアが涼しく言う。

 

そこへ。

 

「新聞部の黛薫子ですの」

 

インタビューが始まる。

 

だが。

 

「……あら?」

 

薫子の視線が止まる。

 

「その指輪……」

 

一夏の右手、薬指。

 

「……」

 

一瞬の静寂。

 

「右手の薬指って……恋人の意味じゃ……」

 

――爆発。

 

「誰!?」

「彼女!?」

 

大混乱。

 

その中で。

 

箒とセシリアの視線が同時に動く。

 

そして――

 

一花へ。

 

「……」

 

一花は気づく。

 

そして、微笑む。

 

勝ち誇るように。

 

「……貴様か」

 

箒が詰め寄る。

 

「その指輪、お前が――」

 

「そうだよ」

 

あっさり認める。

 

ざわめきがさらに広がる。

 

「なんでそんなものを……!」

 

一花は、ため息をつくように。

 

「一夏には、責任を取ってもらわないといけないから」

 

静かに言った。

 

「……責任?」

 

空気が凍る。

 

一花は、自分の左肩に触れる。

 

空の袖。

 

「私を、傷物にした責任」

 

その言葉に――

 

全員が息を呑む。

 

「……」

 

一夏は、言葉を失う。

 

何も言えない。

 

否定も、肯定も。

 

ただ立ち尽くす。

 

その時。

 

「……そんな顔しないで」

 

一花が、ふっと表情を緩めた。

 

ほんの少しだけ。

 

優しい声で。

 

「あの日の事を後悔しているかも、知れないけど……」

 

一夏を見る。

 

まっすぐに。

 

「私は、私の選択でこの左腕を差し出した」

 

はっきりと言い切る。

 

「そこに後悔はないわ」

 

その言葉は――本心だった。

 

誰のせいでもない。

 

自分で決めたこと。

 

だからこそ。

 

一瞬だけ、空気が緩む。

 

だが――

 

次の瞬間。

 

「……だけど」

 

声の温度が、変わる。

 

わずかに低く。

 

静かに。

 

「責任を取らないのは、流石にないわよ?」

 

微笑む。

 

優しく。

 

逃げ場を塞ぐように。

 

「……っ」

 

一夏の喉が詰まる。

 

言葉が出ない。

 

周囲も、何も言えない。

 

その構図は、あまりにも完成していた。

 

「だから」

 

一花が、最後に言う。

 

「ちゃんと傍にいてもらうよ」

 

穏やかな声。

 

だが――

 

拒否は許されない。

 

その意味が、はっきりと伝わる。

 

食堂の空気は、完全に変わっていた。

 

祝福の場は。

 

いつの間にか――

 

逃げ場のない舞台へと変わっていた。

 

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