インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第十三話 愛のシナリオ

――食堂、喧騒の中。

 

「だから違うって言ってるだろ!」

「じゃあその指輪なんなんだよ!?」

 

クラスメイトたちに囲まれ、一夏は完全に追い詰められていた。

 

問い詰める声。

 

疑いの視線。

 

逃げ場はない。

 

「……っ」

 

言葉が出ない。

 

説明できない。

 

何を言っても、納得されないと分かっているからだ。

 

その光景を、少し離れた場所から――

 

一人の少女が見ていた。

 

だが。

 

すぐに興味を失ったように、踵を返す。

 

――テラス。

 

外の空気。

 

静かな風。

 

「……」

 

流星一花は、手すりにもたれながら目を閉じる。

 

喧騒は、ここまで届かない。

 

「……少し、うるさすぎたかな」

 

小さく呟く。

 

だが、その表情に後悔はない。

 

その時。

 

「……」

 

足音。

 

隣に、人が立つ。

 

そして――

 

無言のまま、腰を下ろした。

 

「……」

 

一花は目を開けない。

 

視線も向けない。

 

だが、分かっている。

 

そこにいるのが誰か。

 

――織斑千冬。

 

言葉はない。

 

空気が張り詰める。

 

静寂が、その場を支配する。

 

そして。

 

最初に口を開いたのは――千冬だった。

 

「……全ては、お前の台本通りなのか?」

 

低く、静かな声。

 

問いかけ。

 

確認。

 

だが、その中には確かな警戒があった。

 

「……」

 

一花は、何も答えない。

 

沈黙。

 

だが――

 

その無言こそが、答えだった。

 

「……そうか」

 

千冬は、小さく息を吐く。

 

否定しない。

 

ならば――それで十分。

 

「一体、いつからだ?」

 

続けて問う。

 

その視線は鋭い。

 

見逃さないという意思。

 

「……ふふ」

 

一花が、わずかに笑う。

 

そして、ゆっくりと目を開いた。

 

「最初から――って言ったら、信じられる?」

 

軽い口調。

 

だが、その中身は重い。

 

「……」

 

千冬は何も言わない。

 

否定もしない。

 

ただ、続きを待つ。

 

「でも」

 

一花が続ける。

 

「一つだけ、ミスをしたわ」

 

その言葉と共に。

 

自分の左肩に触れる。

 

空の袖。

 

「……」

 

空気が、わずかに変わる。

 

「私ね」

 

一花は、どこか遠くを見るように言う。

 

「ある日、一夏に恋をしたの」

 

あまりにも自然に。

 

「一目惚れ、ってやつかな」

 

軽く笑う。

 

「だから、傍にいたくて」

「学校も合わせて、ずっと隣にいた」

 

そこまでは、ただの話。

 

だが。

 

「……知ってたのよ」

 

声が、少しだけ低くなる。

 

「彼が誘拐されること」

 

「……っ」

 

千冬の目が細くなる。

 

だが、一花は止まらない。

 

「でも」

 

わずかに、表情が歪む。

 

「まさか、殺されるなんて思ってなかった」

 

その一言には――

 

ほんの僅かな“誤算”が滲んでいた。

 

「……だから」

 

一花は、ゆっくりと息を吐く。

 

そして。

 

「決めたの」

 

視線を前に戻す。

 

その瞳は、もう揺れていない。

 

「もう、彼を失わないようにって」

 

静かな決意。

 

それは、揺るがない。

 

「……」

 

千冬は、何も言わない。

 

ただ、見ている。

 

その在り方を。

 

その危うさを。

 

そして。

 

その確固たる意思を。

 

「……」

 

一花が、立ち上がる。

 

風が、髪を揺らす。

 

「千冬さん」

 

振り返る。

 

微笑む。

 

いつもの、穏やかな笑顔で。

 

だが――

 

その奥は、まるで違う。

 

「これが、私の描く――」

 

一瞬、間を置く。

 

そして。

 

「“愛のシナリオ”です」

 

はっきりと、言い切った。

 

その言葉に。

 

迷いは、一切ない。

 

「……」

 

千冬は、沈黙する。

 

理解している。

 

これはもう――止まらない。

 

止められない。

 

「全部、手に入れる」

 

一花が続ける。

 

静かに。

 

だが、確実に。

 

「誰にも渡さない」

 

断言。

 

「織斑一夏は――」

 

その名前を、愛おしむように呼ぶ。

 

「私のものだから」

 

微笑む。

 

それは。

 

愛か。

 

執着か。

 

それとも――

 

その両方か。

 

「……」

 

千冬は、ただ見ていた。

 

その背中を。

 

そして。

 

何も言わなかった。

 

言えなかったのか。

 

言わなかったのか。

 

それは――まだ分からない。

 

だが一つだけ、確かなのは。

 

物語は、すでに動き出しているということ。

 

そしてその中心にいるのは――

 

流星一花という存在だった。

 

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