インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第十四話 紅き来訪者

――翌日。

 

「転入生?」

 

一夏が顔を上げる。

 

「そうなんです! 二組に転入してくるらしくて……中国からの方だとか!」

 

山田真耶が嬉しそうに説明する。

 

「へぇ……中国から」

 

何気なく呟いた、その時。

 

ふと――

 

一つの顔が、脳裏に浮かんだ。

 

「……まさか」

 

中学二年の頃。

 

突然、転校していった少女。

 

気が強くて。

 

よく怒って。

 

でも――

 

(……鈴)

 

名前が、自然と浮かぶ。

 

「いや、そんなわけ……」

 

あり得ない、と頭では分かっている。

 

だが。

 

胸の奥が、妙にざわつく。

 

その時だった。

 

――ガラッ!!

 

教室の扉が、勢いよく開かれる。

 

「――織斑一夏はどこ!?」

 

響く声。

 

はっきりとした口調。

 

教室の空気が、一瞬で変わる。

 

全員の視線が、入口へ向く。

 

そこに立っていたのは――

 

赤を基調とした制服の少女。

 

ツインテール。

 

鋭い目つき。

 

一目見て、分かった。

 

「……鈴?」

 

思わず、名前がこぼれる。

 

その瞬間。

 

少女の表情が、ぱっと変わった。

 

「――!」

 

そして。

 

「久しぶりね、一夏!!」

 

満面の笑み。

 

迷いなく、こちらへ歩いてくる。

 

「中国代表候補生――凰鈴音よ!」

 

胸を張って名乗る。

 

教室が、一気にざわつく。

 

「え、代表候補生!?」

「またかよ……!」

 

だが、一夏にはそんな声は入ってこない。

 

「……マジで鈴かよ」

 

目の前の現実が、まだ信じられない。

 

「何よ、その反応!」

 

鈴――凰鈴音が頬を膨らませる。

 

「久しぶりの再会なんだから、もっと感動しなさいよね!」

 

「いや……急すぎてな……」

 

苦笑する。

 

だが。

 

(ほんとに、鈴だ)

 

懐かしさが、じわじわと込み上げてくる。

 

その空気を――

 

「相変わらず、小さいわね。鈴ちゃんは」

 

軽く壊す声。

 

「へ?」

 

鈴の後ろから、ふわりと手が伸びる。

 

そのまま――

 

頭を撫でる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「なっ――!?」

 

「ちょ、ちょっと何すんのよ!」

 

鈴が慌てて振り払おうとする。

 

だが。

 

びくともしない。

 

「やっぱり軽いね」

 

くすくすと笑う声。

 

その主は――

 

流星一花。

 

「……っ!」

 

鈴の表情が引き締まる。

 

「相変わらずの馬鹿力は健在なのよ……一花!!」

 

名前を呼ぶ。

 

睨みつける。

 

だが、一花は気にした様子もなく。

 

「久しぶりだね」

 

穏やかに微笑む。

 

「元気そうでよかった」

 

「よく言うわよ……!」

 

鈴は、ようやく手を振りほどく。

 

一歩下がる。

 

警戒するように。

 

「……アンタもいるんだ」

 

視線が細くなる。

 

「当然でしょ?」

 

一花は肩をすくめる。

 

「だって――」

 

ちらりと、一夏を見る。

 

そして。

 

「彼の傍にいるのは、私だから」

 

静かに言った。

 

その一言で。

 

空気が変わる。

 

「……は?」

 

鈴の眉がぴくりと動く。

 

「何それ」

 

明らかに、引っかかる言い方。

 

「どういう意味よ」

 

「そのままの意味だよ」

 

一花は、あっさりと返す。

 

余裕を崩さない。

 

むしろ――

 

楽しんでいるようにすら見える。

 

「……っ」

 

鈴が歯を食いしばる。

 

視線が、一夏へと向く。

 

そして。

 

「……あ」

 

気づく。

 

右手。

 

薬指。

 

嵌められた指輪。

 

「……は?」

 

空気が、もう一度変わる。

 

「ちょっと待ちなさいよ、それ」

 

鈴が一歩踏み出す。

 

「何、その指輪」

 

問い詰めるような声。

 

一夏が固まる。

 

(……またか)

 

嫌な予感しかしない。

 

そして。

 

その中心にいるのは――

 

「……」

 

一花。

 

変わらず、微笑んでいる。

 

その表情は。

 

完全に“仕掛ける側”のものだった。

 

――新たな火種が、落とされた。

 

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