インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第十五話 二人目の幼馴染

――教室。

 

張り詰めた空気。

 

今にも何かが起きそうな、その瞬間。

 

「……何の騒ぎだ」

 

低い声が、空気を切り裂いた。

 

「ひゃ、ひゃいっ!?」

 

山田真耶が慌てて続く。

 

入口には――織斑千冬。

 

その一言で、空気が凍る。

 

「授業の時間だ。無駄口を叩く余裕があるなら、外周でも走ってこい」

 

冷たい視線。

 

誰も逆らえない。

 

「……解散」

 

短く告げる。

 

それだけで、全員が席へと戻っていった。

 

騒ぎは、強制的に終わらされる。

 

だが――

 

(……また増えたな)

 

箒が、内心で舌打ちする。

 

表情には出さない。

 

だが、確実に焦りがあった。

 

(中国代表候補生……)

 

セシリアもまた、静かに考えていた。

 

新たな存在。

 

それも、幼馴染。

 

(……面白くありませんわね)

 

微笑みは崩さない。

 

だが、その内側は穏やかではない。

 

――

 

昼休み。

 

食堂。

 

「で? どういうことよ」

 

トレーを置くなり、鈴が切り出した。

 

「久しぶり~って空気じゃないんだけど?」

 

真正面から。

 

遠慮なし。

 

「……まあ、そうなるよな」

 

一夏が頭をかく。

 

その隣には鈴。

 

そして。

 

「……話は聞かせてもらうぞ」

 

箒。

 

「ええ、詳しく」

 

セシリア。

 

しっかりと、ついてきていた。

 

「なんでアンタたちもいるのよ……」

 

鈴が呆れる。

 

「当然だろう」

 

箒が腕を組む。

 

「織斑のことだ、無関係ではない」

 

「クラスメイトとしても、把握しておくべきですわ」

 

セシリアも続く。

 

「はぁ……」

 

鈴は一つため息をつく。

 

そして。

 

「……で?」

 

視線を一夏へ。

 

「アンタとあの女、どういう関係なのよ」

 

核心。

 

逃げられない質問。

 

「……幼馴染だよ」

 

一夏が答える。

 

「小さい頃から一緒で……ずっと隣にいた」

 

「ふーん……」

 

鈴が目を細める。

 

「それ、どの時期?」

 

「え?」

 

「私、知らないんだけど」

 

ぴたり、と空気が止まる。

 

「あー……そうか」

 

一夏が思い出す。

 

「箒が転校した後だな」

 

「……っ」

 

箒の眉がわずかに動く。

 

「小1から小4までは箒で……」

「その後、小5から中2までは鈴」

 

「……なるほどね」

 

鈴が頷く。

 

「入れ替わりってわけ」

 

「……そういうことになるな」

 

一夏も頷く。

 

「……ふん」

 

箒が鼻を鳴らす。

 

「筋は通っているな」

 

「ええ、少なくとも話としては」

 

セシリアも一応納得する。

 

だが――

 

問題はそこではない。

 

「で」

 

鈴が、改めて口を開く。

 

「本題」

 

視線が、一夏の右手へ向く。

 

薬指。

 

指輪。

 

「それ」

 

短く言う。

 

「……」

 

一夏が言葉に詰まる。

 

説明しづらい。

 

というより――

 

説明できない。

 

「……まあ、いいわ」

 

鈴が先に視線を逸らした。

 

あっさりと。

 

「え?」

 

拍子抜けする一夏。

 

「いいのか?」

 

「いいわよ」

 

鈴は肩をすくめる。

 

「大体、予想ついてるし」

 

「……は?」

 

「昔からそうだったじゃない」

 

箒とセシリアが顔を上げる。

 

「……どういう意味だ?」

 

箒が問う。

 

鈴は少しだけ、遠くを見るような目をして。

 

「一花よ」

 

名前を出す。

 

「アイツの独占欲」

 

「……っ」

 

箒の表情が、わずかに硬くなる。

 

「中学の頃から、ずっとあんな感じだったわ」

 

鈴が続ける。

 

「一夏の隣は“自分の場所”って顔してさ」

 

思い出すように、苦笑する。

 

「正直、今さらって感じ」

 

「……」

 

セシリアが沈黙する。

 

「つまり」

 

箒が低く言う。

 

「貴様は、それを知った上で来たのか」

 

「そ」

 

鈴が頷く。

 

「だから、諦めてた部分もあった」

 

あっさりと。

 

だが。

 

次の瞬間。

 

「でも」

 

視線が鋭くなる。

 

「今は別」

 

はっきりと言い切る。

 

「ここは学園」

「条件は全員一緒でしょ?」

 

その言葉に。

 

空気が変わる。

 

「……なるほど」

 

セシリアが小さく笑う。

 

「面白くなってきましたわね」

 

「ふん……」

 

箒も、口元をわずかに歪める。

 

三人の視線が――

 

同時に揃う。

 

向かう先は、一つ。

 

「……」

 

流星一花。

 

この場にはいない。

 

だが――

 

確実に、中心にいる存在。

 

「……勘弁してくれよ」

 

一夏が頭を抱える。

 

だが。

 

そんな願いは――

 

誰も聞いていなかった。

 

静かに。

 

確実に。

 

戦いは、次の段階へと進んでいた。

 

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