インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第十七話 火種と既視感

――翌日。

 

教室。

 

「えー、本日は皆さんにお知らせがあります!」

 

山田真耶が声を張る。

 

「来週、クラス代表戦が行われます!」

 

「おおー!」

 

教室が沸く。

 

「優勝者には――食堂のスイーツ券が贈られます!」

 

「「「おおおおお!!」」」

 

歓声が爆発する。

 

「代表! 頼んだぞー!」

「絶対勝てよー!」

 

「お前ら目的それかよ!?」

 

一夏が突っ込むが、止まらない。

 

「……はぁ」

 

頭を抱える。

 

「やるしかないか……」

 

その様子を――

 

「……」

 

一花が、静かに見ていた。

 

――

 

放課後。

 

「ならば私が鍛える」

 

箒が前に出る。

 

「剣道場での稽古が最適だ」

 

「非効率ですわ」

 

セシリアが即座に否定する。

 

「実戦経験が必要です。アリーナで私が指導します」

 

「何だと……」

「当然の判断ですわ」

 

火花。

 

「いや、ちょっと――」

 

「黙っていろ」

「口を挟まないでください」

 

「はい」

 

終了。

 

「……どうする?」

 

鈴が呆れる。

 

その時。

 

「――どっちでもいいんじゃない?」

 

後ろから、声。

 

「……っ」

 

一夏の身体が固まる。

 

次の瞬間。

 

背中に、柔らかな感触。

 

腕が回される。

 

「一花……!」

 

逃げられない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「一夏は私のものよ」

 

耳元で、静かに。

 

「……っ」

 

箒とセシリアが動く。

 

だが。

 

「……はぁ」

 

鈴がため息をつく。

 

「やっぱりね」

 

「ちょっと待ちなさい」

 

二人の前に立つ。

 

「今はやめときなさい」

 

「何故だ!」

 

「無駄だから」

 

即答。

 

「これ、初めてじゃないのよ」

 

鈴が一花を見る。

 

「昔も同じことがあった」

 

「一夏の周りに人が増えた時、必ずこうなる」

 

「最近、一花は一夏の傍にいなかったでしょ?」

 

「……ああ」

 

「だから反動。“取り戻してる”のよ」

 

空気が重くなる。

 

「しかも今――完全に入ってる」

 

「……何に?」

 

「遮断モード」

 

はっきりと言う。

 

「一夏に触れてる間、外の言葉は届かない」

 

「……っ」

 

箒が声を張る。

 

「一花! 離れろ!」

 

「……」

 

反応はない。

 

微笑んだまま。

 

抱きしめたまま。

 

「ほらね」

 

鈴が言う。

 

「何も聞こえてない」

 

そして。

 

「でも例外がある」

 

視線が、一夏へ向く。

 

「……」

 

一夏は、わずかに目を伏せる。

 

知っている。

 

それを。

 

「……一花」

 

静かに呼ぶ。

 

その瞬間。

 

「……なに?」

 

即座に返る声。

 

はっきりと。

 

迷いなく。

 

「――っ!?」

 

箒とセシリアが息を呑む。

 

「……やっぱりね」

 

鈴が小さく呟く。

 

「一夏の言葉だけは、届く」

 

「……」

 

一花が顔を上げる。

 

だが、腕はまだ離さない。

 

「どうしたの?」

 

柔らかい声。

 

「……離れてくれ」

 

一夏が言う。

 

迷いはない。

 

その一言に。

 

ほんのわずかな間。

 

そして――

 

「……うん」

 

静かに。

 

素直に。

 

腕がほどける。

 

離れる。

 

だが。

 

完全には離れない距離で立ち止まる。

 

「……まだ」

 

小さく呟く。

 

「足りないから」

 

視線は、一夏だけを捉えている。

 

「また来る」

 

それだけ言い残し。

 

くるりと背を向ける。

 

「……」

 

去っていく背中。

 

静かで。

 

迷いがない。

 

「……なんだ、今のは」

 

セシリアが呟く。

 

「……異常だな」

 

箒も低く言う。

 

「だから言ったでしょ」

 

鈴が肩をすくめる。

 

「アイツ、一夏に対してだけは――別物なのよ」

 

「……」

 

一夏は何も言わない。

 

ただ。

 

自分の右手を見る。

 

薬指の指輪。

 

そして。

 

去っていった一花の背中を思い出す。

 

(……分かってる)

 

あれが、どういう状態か。

 

(でも……)

 

止められるのは、自分だけ。

 

その事実が――

 

妙に重く、胸に残った。

 

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