――クラス代表戦当日。
アリーナは、熱気に包まれていた。
「第一試合――一組代表、織斑一夏!」
「対するは――二組代表、凰鈴音!」
歓声。
視線。
すべてが集まる。
「……鈴とかよ」
一夏が苦笑する。
「何よ、不満?」
鈴が構える。
その表情は――真剣そのもの。
「全力で来なさいよ、一夏」
「言われなくても」
白式が展開される。
同時に。
鈴の専用機も展開される。
「――始め!」
開始の合図。
次の瞬間。
「はあっ!」
鈴が一気に距離を詰める。
速い。
迷いがない。
「っ!」
一夏が迎撃する。
金属音。
衝突。
「……やるじゃない!」
鈴が笑う。
「そっちこそな!」
打ち合い。
読み合い。
互いに一歩も引かない。
だが。
(……読まれてる?)
違和感。
一夏の動きに対して、鈴の反応が早すぎる。
「そこ!」
攻撃が、的確に差し込まれる。
「ぐっ……!」
弾かれる。
距離を取る。
「シックスセンスってやつよ」
鈴が得意げに言う。
「なんとなく分かるの」
「なんとなくでそれかよ……!」
舌打ち。
押されている。
確実に。
(指輪は……)
ちらりと、右手を見る。
だが。
――何も起きない。
沈黙。
(……反応、なしか)
妙な安心と、不安が混ざる。
「どうしたのよ!」
鈴が踏み込む。
「余裕なくなってきたんじゃない!?」
「……っ」
連撃。
防戦一方。
(このままじゃ押し切られる……!)
その時。
鈴の動きが、ほんの一瞬――甘くなる。
(今だ……!)
一夏の目が変わる。
「……もらった!」
一気に踏み込む。
セシリアから叩き込まれた技術。
――瞬時加速。
一瞬で、視界から消える。
「なっ――!?」
鈴の背後へ。
完全に死角。
「終わりだ!」
雪片二型を振りかぶる。
その一撃が――
決まるはずだった。
――その瞬間。
「――警告! 防御シールドに異常発生!」
場内に、警報が鳴り響く。
「なに!?」
観客席がざわつく。
「おい、あれ……!」
空。
アリーナ上空。
防御シールドが――
「――割れた?」
ひび割れ。
そして。
破砕。
「――っ!?」
次の瞬間。
何かが、落ちてくる。
高速で。
轟音と共に。
――ドンッ!!
アリーナ中央に叩きつけられる。
衝撃。
土煙。
試合は、強制的に中断された。
「……なんだ、あれ」
一夏が呟く。
煙の中。
ゆっくりと――
それは立ち上がる。
「……IS?」
鈴が警戒する。
だが。
「……違う」
一夏の直感が告げる。
異質。
明らかに、何かが違う。
現れたのは――
全身を装甲で覆われたIS。
顔も、機体も。
一切の識別情報がない。
無機質。
不気味なほどに。
「識別コード、なし……?」
管制の声が震える。
「そんな……あり得ない……!」
「おい、聞こえてるか!」
一夏が叫ぶ。
「ここは試合中だ! 所属を――」
反応はない。
微動だにしない。
「……」
沈黙。
だが。
次の瞬間。
「――っ!?」
空気が変わる。
殺気。
明確な。
敵意。
「来るわよ!」
鈴が叫ぶ。
同時に。
そのISが――
一夏へと、踏み込んだ。
「なっ――!?」
速い。
異常な加速。
「くっ!」
受ける。
だが。
「――重っ!?」
衝撃が違う。
純粋な質量と出力。
押し切られる。
「何なのよ、コイツ!」
鈴も動く。
援護に入る。
だが。
「っ!」
攻撃が通らない。
装甲が、硬すぎる。
「反応がない……?」
セシリアの声が管制から入る。
「完全に無人……いえ、それ以上に――」
言葉が途切れる。
「――戦闘しかしていませんわ」
機械的な動き。
感情のない攻撃。
ただ。
破壊するためだけに動いている。
「……くそっ!」
一夏が構える。
試合は終わった。
これは――
戦闘だ。
そして。
その異常事態を。
遠くから見ている者がいた。
「……来たんだ」
静かな声。
流星一花。
その目は――
わずかに細められていた。
「予定より、少し早いけど」
微笑む。
だが。
その瞳は――
まったく笑っていなかった。
物語は。
次の段階へ、踏み込んだ。