インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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長年溜め込んでいたアイデアを放出したくなったので、良ければ読んでください。
もし、タグに追加して欲しい物があればコメントからどうぞ


第一話 全ての始まり

俺が覚えている最後の光景は――

助けに来てくれた彼女が、必死に叫んでいる姿だった。

 

シャツの下で温かいものが広がっていく。

それが自分のものだと理解するのに、時間はかからなかった。

 

意識が遠のいていく。

その中で最後に見えたのは――

悲しみに歪んだ、彼女の顔だった。

 

――すべての始まりは、一時間ほど前に遡る。

 

俺は姉が出場する大会――第二回モンド・グロッソを観戦するため、ドイツを訪れていた。

前回大会で総合優勝を果たした姉の招待もあり、旅費は全額負担。

断る理由など、どこにもなかった。

 

期待と興奮を胸に、会場へ向かう途中――

すべては一瞬で崩れた。

 

「――っ!」

 

気づいた時には、すでに拘束されていた。

抵抗する間もなく、俺は廃工場のような場所へ連れて行かれる。

 

両手両足は縛られ、身動きは取れない。

 

そして、少し離れた場所から声が聞こえた。

 

『第二回モンド・グロッソも、いよいよ大詰めです』

 

どうやら誘拐犯たちは、会場中継を見ているらしい。

その中で、ある単語が耳に入る。

 

『織斑千冬選手の登場です!!』

 

「くそっ……!」

 

一人の男が苛立ち混じりに声を上げた。

 

「政府の連中……弟の存在を切り捨てやがった!」

「……撤収だ。作戦は失敗だ」

 

リーダー格の男が静かに立ち上がる。

そして、こちらへ歩いてくる。

 

ホルスターから銃が抜かれた。

 

「恨むなら、政府を恨め」

 

乾いた声。

 

「――織斑一夏」

 

次の瞬間、銃声が響いた。

 

身体に鋭い衝撃が走る。

息が詰まり、視界が揺れる。

 

(……ああ、終わったのか)

 

そんな思考がよぎった、その時だった。

 

「一夏!! 助けに――!!」

 

扉が勢いよく開かれる。

 

そこに立っていたのは――

流星一花だった。

 

クラスメイトであり、誰もが認める才色兼備の少女。

そんな彼女が今――息を切らし、こちらを見ている。

 

「……ゆるさない」

 

静かに、しかし確かな怒りを込めた声。

 

誘拐犯たちが一斉に銃を構える。

だが、その瞬間――彼女の動きが変わった。

 

スカートの下から取り出されたのは、異様な存在感を放つ黒い銃。

通常の拳銃とは明らかに違うそれを、彼女は迷いなく構える。

 

 

【挿絵表示】

 

 

そして――発砲。

 

ドンッ!!

 

衝撃と共に、空気が震えた。

銃声というより、何かが“叩き潰された”ような音。

 

次の瞬間――

撃ち抜かれた男の身体が、まるで弾かれたように後方へ吹き飛んだ。

 

「な……っ!?」

 

敵たちが動きを止める。

一撃で、戦況が変わった。

 

「な、なんだあの銃は……!」

「ふざけるな……!」

 

混乱の中、再び発砲。

 

ドンッ! ドンッ!

 

引き金が引かれるたび、男たちの身体が次々と宙を舞い、

叩きつけられるように床へ転がる。

 

「この……化け物が!!」

 

残った一人が発砲するが――

弾は届かない。

 

わずかに身を捻るだけで回避される。

まるで、見えているかのように。

 

そして最後。

 

一花の銃が、静かに火を噴いた。

 

ドンッ――

 

直撃した瞬間、男の身体は勢いよく吹き飛び、

壁に叩きつけられて動かなくなった。

 

静寂。

 

戦闘は、終わっていた。

硝煙の匂いだけが残る空間。

 

彼女はゆっくりとこちらへ駆け寄ってくる。

 

「……一夏」

「……一花?」

 

意識が薄れていく中で、彼女に抱き起こされる。

 

「ごめん……ごめんなさい……」

「もっと早く来ていれば……」

 

何度も繰り返される謝罪。

その声を聞きながら、視界が暗くなる。

 

やがて――

彼女は何かを決意したように呟いた。

 

「……もう、これしかない」

 

そして、俺の血で何かの“陣”のようなものを描き始める。

 

「君は後悔するかもしれない」

「でも……これは、私の罪だから」

 

光が溢れる。

 

そこから現れた“何か”が、彼女に語りかけた。

 

『代償は必要だ』

 

その言葉に、一花は迷わず頷いた。

 

次の瞬間――

彼女の左腕に異変が起きた。

 

「っ……!」

 

苦悶の表情。

それでも彼女は止まらない。

 

そして、意識が途切れた。

 

――

 

気がつくと、真っ白な空間にいた。

目の前には巨大な扉と、人型の存在。

 

『無茶をするな……少年を救うために、ここまでやるか』

 

一花は何も答えない。

ただ、静かに立っている。

 

『いいだろう。願いは叶えてやる』

 

その代わり、と人影は告げる。

 

『代償は受け取る』

 

次の瞬間。

 

激しい痛みと共に、彼女の左腕が消えた。

 

意識は、そこで途切れた。

 

――

 

「……う……」

 

目を開ける。

 

俺は生きていた。

 

「……俺、助かったのか?」

 

身体を確認する。

傷はない。

 

「なあ、一花。俺は――」

 

言いかけて、止まる。

 

彼女の姿を見た瞬間だった。

 

「一花……その腕……」

 

左腕が、なかった。

 

それでも彼女は――微笑んでいた。

 

「大丈夫……腕の一本くらいで、君が助かるなら……安いよ」

 

そっと、抱きしめられる。

 

「これは私の責任だから……君が気にする必要はないよ」

 

その言葉に、俺は何も言えなかった。

 

ただ思った。

 

自分は、あまりにも無力だと。

 

もし力があれば。

もし守れたなら。

 

こんな結末にはならなかった。

 

遠くでサイレンが鳴る中――

俺はただ、泣くことしかできなかった。

 

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