――管制室。
「私も出ますわ!」
セシリアが立ち上がる。
「このままでは――!」
「やめろ」
千冬の低い声が遮る。
「各ゲートはロックされた。今出ても無駄だ」
「そんな……!」
山田真耶が操作盤を叩く。
「完全封鎖です……外に出られません……!」
「……っ」
セシリアは拳を握りしめるしかなかった。
「……」
その後ろで。
流星一花は、静かにモニターを見つめていた。
――
アリーナ。
「くそっ……!」
一夏が息を荒げる。
押されている。
明らかに。
「これ、普通じゃないわよ……!」
鈴も構え直す。
逃げ場はない。
やるしかない。
その時だった。
――『……委ねなさい』
「……っ!?」
耳元で、声。
「なんだ……今の……」
一瞬の隙。
その直後。
右手の指輪が――熱を帯びる。
「っ――!?」
激痛。
鋭く、焼き付くような痛みが走る。
「ぐあっ……!」
思わず膝が揺らぐ。
そこから。
黒い痣が、じわりと浮かび上がる。
手の甲から。
腕へ。
首へ。
そして――頬へ。
「……な、にそれ……!?」
鈴の声が震える。
だが。
「……っ、あああああああ!!」
一夏は、叫びと共に踏み込んだ。
さっきとは違う。
速度。
重さ。
すべてが跳ね上がる。
「――っ!?」
未知のISが反応する。
だが遅い。
「オオオオオオ!!」
振り下ろす。
衝撃。
装甲が軋む。
「……っ!」
初めて、防御が崩れる。
「なにそれ……!」
鈴が息を呑む。
だが。
一夏は止まらない。
「はぁっ、はぁっ……!」
呼吸は荒い。
苦しそうに。
だが、攻撃は苛烈。
「オラァ!!」
叩き込む。
連撃。
一撃一撃が重い。
だが――
「くっ……!」
決定打にはならない。
装甲が、まだ耐える。
「……まだ」
耳元の声が、強くなる。
――『もっと』
「ぐっ……!」
再び、痛み。
痣が広がる。
腕から首へ。
頬へ。
さらに侵食する。
「やめなさい、一夏!!」
鈴が叫ぶ。
だが届かない。
「……もっと……!」
一夏の口から、漏れる。
それは――
自分の意思か。
それとも。
「――っ!」
一瞬、動きが止まる。
そして。
静かに、構える。
「……?」
鈴が息を呑む。
その姿勢は――
明らかに異質。
「まさか……!」
一夏が息を整える。
痛みに耐えながら。
それでも。
「――晴天流」
低く呟く。
「疾風」
次の瞬間。
消える。
完全に。
視界から。
「――っ!?」
鈴の目が追いつかない。
そして。
一閃。
――斬。
だが、それだけでは終わらない。
振り抜いた軌跡から――
斬撃が、飛ぶ。
空気を裂き。
一直線に。
所属不明のISへと叩きつけられる。
「――っ!?」
直撃。
轟音。
衝撃波。
装甲が、深く抉られる。
「……効いた……!」
鈴が叫ぶ。
初めての、有効打。
だが。
「はぁ……っ、はぁ……!」
一夏の呼吸は限界に近い。
痛み。
侵食。
負荷。
すべてが身体を蝕む。
「……まだだ」
低く呟く。
その声には――
まだ“何か”が混ざっている。
――管制室。
「……今のは」
セシリアが息を呑む。
「通常の技ではありませんわ……」
「……」
千冬は無言。
ただ。
視線を横へ向ける。
そこには――
「……」
流星一花。
静かに。
微笑んでいる。
「……いいね」
小さく、呟く。
「馴染み始めている」
その言葉。
それは賞賛ではない。
観察。
そして――確認。
その瞳は。
確信していた。
これは偶然ではない。
“進行している”のだと。
そして。
まだ、止まらないことも。