インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第十九話 囁き

――管制室。

 

「私も出ますわ!」

 

セシリアが立ち上がる。

 

「このままでは――!」

 

「やめろ」

 

千冬の低い声が遮る。

 

「各ゲートはロックされた。今出ても無駄だ」

 

「そんな……!」

 

山田真耶が操作盤を叩く。

 

「完全封鎖です……外に出られません……!」

 

「……っ」

 

セシリアは拳を握りしめるしかなかった。

 

「……」

 

その後ろで。

 

流星一花は、静かにモニターを見つめていた。

 

――

 

アリーナ。

 

「くそっ……!」

 

一夏が息を荒げる。

 

押されている。

 

明らかに。

 

「これ、普通じゃないわよ……!」

 

鈴も構え直す。

 

逃げ場はない。

 

やるしかない。

 

その時だった。

 

――『……委ねなさい』

 

「……っ!?」

 

耳元で、声。

 

「なんだ……今の……」

 

一瞬の隙。

 

その直後。

 

右手の指輪が――熱を帯びる。

 

「っ――!?」

 

激痛。

 

鋭く、焼き付くような痛みが走る。

 

「ぐあっ……!」

 

思わず膝が揺らぐ。

 

そこから。

 

黒い痣が、じわりと浮かび上がる。

 

手の甲から。

 

腕へ。

 

首へ。

 

そして――頬へ。

 

「……な、にそれ……!?」

 

鈴の声が震える。

 

だが。

 

「……っ、あああああああ!!」

 

一夏は、叫びと共に踏み込んだ。

 

さっきとは違う。

 

速度。

 

重さ。

 

すべてが跳ね上がる。

 

「――っ!?」

 

未知のISが反応する。

 

だが遅い。

 

「オオオオオオ!!」

 

振り下ろす。

 

衝撃。

 

装甲が軋む。

 

「……っ!」

 

初めて、防御が崩れる。

 

「なにそれ……!」

 

鈴が息を呑む。

 

だが。

 

一夏は止まらない。

 

「はぁっ、はぁっ……!」

 

呼吸は荒い。

 

苦しそうに。

 

だが、攻撃は苛烈。

 

「オラァ!!」

 

叩き込む。

 

連撃。

 

一撃一撃が重い。

 

だが――

 

「くっ……!」

 

決定打にはならない。

 

装甲が、まだ耐える。

 

「……まだ」

 

耳元の声が、強くなる。

 

――『もっと』

 

「ぐっ……!」

 

再び、痛み。

 

痣が広がる。

 

腕から首へ。

 

頬へ。

 

さらに侵食する。

 

「やめなさい、一夏!!」

 

鈴が叫ぶ。

 

だが届かない。

 

「……もっと……!」

 

一夏の口から、漏れる。

 

それは――

 

自分の意思か。

 

それとも。

 

「――っ!」

 

一瞬、動きが止まる。

 

そして。

 

静かに、構える。

 

「……?」

 

鈴が息を呑む。

 

その姿勢は――

 

明らかに異質。

 

「まさか……!」

 

一夏が息を整える。

 

痛みに耐えながら。

 

それでも。

 

「――晴天流」

 

低く呟く。

 

「疾風」

 

次の瞬間。

 

消える。

 

完全に。

 

視界から。

 

「――っ!?」

 

鈴の目が追いつかない。

 

そして。

 

一閃。

 

――斬。

 

だが、それだけでは終わらない。

 

振り抜いた軌跡から――

 

斬撃が、飛ぶ。

 

空気を裂き。

 

一直線に。

 

所属不明のISへと叩きつけられる。

 

「――っ!?」

 

直撃。

 

轟音。

 

衝撃波。

 

装甲が、深く抉られる。

 

「……効いた……!」

 

鈴が叫ぶ。

 

初めての、有効打。

 

だが。

 

「はぁ……っ、はぁ……!」

 

一夏の呼吸は限界に近い。

 

痛み。

 

侵食。

 

負荷。

 

すべてが身体を蝕む。

 

「……まだだ」

 

低く呟く。

 

その声には――

 

まだ“何か”が混ざっている。

 

――管制室。

 

「……今のは」

 

セシリアが息を呑む。

 

「通常の技ではありませんわ……」

「……」

 

千冬は無言。

 

ただ。

 

視線を横へ向ける。

 

そこには――

 

「……」

 

流星一花。

 

静かに。

 

微笑んでいる。

 

「……いいね」

 

小さく、呟く。

 

「馴染み始めている」

 

その言葉。

 

それは賞賛ではない。

 

観察。

 

そして――確認。

 

その瞳は。

 

確信していた。

 

これは偶然ではない。

 

“進行している”のだと。

 

そして。

 

まだ、止まらないことも。

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