インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第二十話 幕引きの手

――アリーナ。

 

「はぁ……っ、はぁ……!」

 

一夏の呼吸は、限界に近かった。

 

白式の各部が、警告音を鳴らし続ける。

 

「――シールドエネルギー、残量ゼロ」

 

無機質な音声。

 

そして。

 

「――強制解除、実行」

 

「っ……!」

 

装甲が、弾けるように消える。

 

白式が解除される。

 

「く……っ」

 

膝をつく。

 

身体に力が入らない。

 

痣は、まだ消えきっていない。

 

痛みだけが残る。

 

「一夏!」

 

鈴が叫ぶ。

 

だが――

 

間に合わない。

 

「……っ!」

 

所属不明のISが、ゆっくりと向きを変える。

 

標的。

 

無防備な一夏。

 

「やめ――」

 

鈴が踏み出す。

 

だが。

 

距離が足りない。

 

「……くそっ!」

 

間に合わない。

 

その瞬間。

 

ISが動く。

 

無機質に。

 

躊躇なく。

 

一夏へと――

 

振り下ろされる一撃。

 

「――ダメだよ」

 

声。

 

静かで。

 

それでいて、場を支配する響き。

 

次の瞬間。

 

――ガシャァンッ!!

 

地面が裂ける。

 

そこから。

 

無数の“鎖”が、噴き出す。

 

黒く。

 

重く。

 

禍々しい鎖。

 

それが――

 

所属不明のISに絡みつく。

 

「――っ!?」

 

動きが止まる。

 

強制的に。

 

「なに……これ……」

 

鈴が息を呑む。

 

引きずり込むように。

 

縛り上げるように。

 

鎖は、ISの動きを完全に拘束する。

 

「……っ」

 

一夏の視界が、揺れる。

 

意識が、遠のく。

 

その中で。

 

見えた。

 

一人の姿。

 

「……一花……?」

 

かすれた声で、名を呼ぶ。

 

そこにいたのは。

 

流星一花。

 

ゆっくりと歩み寄る。

 

その表情は――

 

穏やか。

 

だが。

 

瞳は、冷たい。

 

「……」

 

拘束されたISを見上げる。

 

まるで。

 

価値を測るように。

 

そして。

 

小さく、息を吐く。

 

「用済みの役者には――」

 

一歩、踏み出す。

 

「退場を願おう」

 

その言葉は。

 

宣告だった。

 

次の瞬間。

 

鎖が、締まる。

 

軋む。

 

圧縮される。

 

「――っ!?」

 

所属不明のISの装甲が、悲鳴を上げる。

 

力任せではない。

 

制御された破壊。

 

逃げ場はない。

 

「……」

 

一花は、ただ見ている。

 

淡々と。

 

終わりを見届けるように。

 

――管制室。

 

「……あれは……何だ……」

 

千冬が低く呟く。

 

理解の外。

 

明らかに、ISではない。

 

「……一花さん……」

 

山田が震える声で言う。

 

セシリアも、言葉を失っていた。

 

――アリーナ。

 

「……」

 

鈴が、一花を見る。

 

理解できない。

 

だが、確信する。

 

(……あれが)

 

(本当の――)

 

言葉にならない。

 

ただ一つ。

 

明確なのは。

 

“敵ではない”という安心と。

 

“理解できない”という恐怖。

 

その両方だった。

 

「……一夏」

 

一花が、しゃがみ込む。

 

優しく。

 

そっと。

 

倒れかけた身体を支える。

 

「よく頑張ったね」

 

穏やかな声。

 

先程までとは別人のように。

 

「……あとは、任せて」

 

耳元で囁く。

 

その声は――

 

甘く。

 

そして、絶対だった。

 

「……」

 

一夏の意識が、完全に落ちる。

 

その瞬間。

 

一花の表情が、わずかに変わる。

 

無表情。

 

そして――

 

再び、立ち上がる。

 

視線の先には。

 

まだ壊れきっていない“敵”。

 

「さて」

 

小さく、呟く。

 

「続きを始めましょうか」

 

舞台は、まだ終わっていない。

 

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