インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第二十一話 支配者の戦い

――アリーナ。

 

「さて」

 

流星一花が、静かに歩み出る。

 

拘束された所属不明のIS。

 

だが――

 

「……っ!」

 

鎖を軋ませる。

 

力任せに、引きちぎろうとしている。

 

「無駄だよ」

 

一花が淡々と告げる。

 

「それ、私の“領域”だから」

 

――バキィンッ!!

 

数本の鎖が弾ける。

 

「……へぇ」

 

わずかに目を細める。

 

「まだ動けるんだ」

 

興味を持ったように。

 

ISが再び構える。

 

出力が上がる。

 

空気が震える。

 

「……来る!」

 

鈴が身構える。

 

だが。

 

一花は動かない。

 

ただ、見ている。

 

「……」

 

突進。

 

高速。

 

殺意。

 

――だが。

 

「遅い」

 

一花の姿が消える。

 

次の瞬間、背後。

 

「そこ」

 

軽く触れる。

 

――ドンッ!!

 

内部から爆ぜる衝撃。

 

装甲が歪む。

 

「……っ!?」

 

だが、それでも倒れない。

 

「……しぶといね」

 

小さく呟く。

 

そして。

 

一歩、引く。

 

距離を取る。

 

「じゃあ」

 

右手を、ゆっくりと上げる。

 

「終わりにしようか」

 

その瞬間。

 

空間が――揺らぐ。

 

「……?」

 

鈴が眉をひそめる。

 

何もない。

 

何も起きていない。

 

――ように見える。

 

だが。

 

「……そこ」

 

一花が、何もない空間を見つめる。

 

その手のひらの中に。

 

“何か”があるように。

 

「……」

 

指先が、わずかに動く。

 

まるで――

 

掴んでいる。

 

見えない“何か”を。

 

「……それ」

 

静かに、告げる。

 

「もう、いらないよね」

 

その言葉と共に。

 

右手が――振り下ろされる。

 

――ビキッ。

 

何かが、裂ける音。

 

だが。

 

目には見えない。

 

ただ――

 

その瞬間。

 

アリーナ中央にいる所属不明のISが。

 

――ズレた。

 

「……え?」

 

鈴が、思わず声を漏らす。

 

次の瞬間。

 

――斬。

 

何の前触れもなく。

 

ISの機体が――

 

真っ二つに裂ける。

 

遅れて。

 

空間が、裂けた。

 

そこに、亀裂が走る。

 

一花の手元と。

 

ISの存在していた場所。

 

同じ“何か”が、同時に断たれたように。

 

「……なに、今の……」

 

鈴の声が震える。

 

理解が、追いつかない。

 

攻撃が、見えない。

 

動作も、原理も。

 

何もかもが。

 

「……」

 

一花は、何も言わない。

 

ただ、手を下ろす。

 

それだけで。

 

すべてが終わっていた。

 

――管制室。

 

「……今のは……」

 

セシリアが呟く。

 

言葉が続かない。

 

「……」

 

千冬も、沈黙する。

 

理解できない。

 

いや。

 

理解してはいけない類の“何か”。

 

「……一花さん……」

 

山田が震える。

 

モニターの向こう。

 

そこにいるのは。

 

もはや――

 

“生徒”ではない。

 

――アリーナ。

 

「……」

 

鈴は、ただ立ち尽くす。

 

目の前の現実を。

 

受け入れきれずに。

 

「……何よ、あれ」

 

かすれた声。

 

返事はない。

 

ただ一つ。

 

確かなこと。

 

「……次元が違うとか、そういう話じゃない」

 

理解できない。

 

分類できない。

 

「あれは……」

 

言葉を探す。

 

だが。

 

見つからない。

 

その先で。

 

一花は、振り返る。

 

そして。

 

何事もなかったかのように。

 

静かに、一夏の元へと歩いていく。

 

舞台は終わった。

 

――誰も、何が起きたのか分からないまま。

 

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