――夕方。
食堂。
いつもより、人は少ない。
だが。
一角だけ、空気が違った。
「……」
沈黙。
テーブルを囲む三人。
篠ノ之箒。
セシリア・オルコット。
凰鈴音。
誰も、すぐには口を開かない。
「……で?」
最初に沈黙を破ったのは、鈴だった。
「どう思った?」
ストレートな問い。
「……」
箒が目を伏せる。
「……理解不能だ」
短く、吐き出す。
「だが、一つだけ確かなことがある」
顔を上げる。
「流星一花は――危険だ」
はっきりと断言する。
「……同意見ですわ」
セシリアも静かに頷く。
「戦闘技術の範疇ではありません」
思い出す。
あの瞬間。
「空間を……裂いた」
言葉にするだけで、違和感が残る。
「ISの性能では説明がつきません」
「でしょ?」
鈴が肩をすくめる。
「アタシもそう思う」
そして。
少しだけ表情が変わる。
「……でもさ」
視線を落とす。
「怖いってだけじゃないのよ、あれ」
「……何?」
箒が問う。
「アイツ」
鈴が言う。
「一夏のために、やってる」
その一言。
「……っ」
空気が、変わる。
「……それは……」
箒が言葉を詰まらせる。
「分かっている」
セシリアが静かに言う。
「だからこそ厄介ですの」
「そう」
鈴が頷く。
「止める理由が、正しいから」
「……」
沈黙。
「……だが」
箒が拳を握る。
「それで許されるわけではない」
強い声。
「一夏をあそこまで追い詰めたのも、あの力だ」
「……っ」
鈴が目を細める。
「確かにね」
一夏の姿を思い出す。
痣。
苦しそうな呼吸。
「……あれ、普通じゃなかった」
「ええ」
セシリアも頷く。
「明らかに負荷がかかっていましたわ」
「……なら」
箒が言う。
「尚更、放置はできん」
まっすぐな視線。
「流星一花は、一夏を守る存在でありながら――」
一拍置く。
「壊す可能性もある」
断言。
「……」
鈴が息を吐く。
「ほんと、めんどくさい関係ね」
だが。
その目は、真剣だ。
「でもさ」
ニヤリと笑う。
「だからこそ、放っておけないんでしょ?」
「……当然だ」
箒が即答する。
「……ええ」
セシリアも微笑む。
わずかに。
だが、確かな意思。
「織斑一夏は、クラス代表ですもの」
「それだけじゃないでしょ」
鈴がツッコむ。
「……」
二人が、わずかに視線を逸らす。
「……ふーん」
鈴が楽しそうに笑う。
「いいじゃん」
そして。
前に身を乗り出す。
「なら、決まりね」
「……何がだ」
箒が問う。
「対抗するってことよ」
きっぱりと。
「流星一花に」
その言葉に。
一瞬の静寂。
だが。
「……ああ」
箒が頷く。
「負けるつもりはない」
「当然ですわ」
セシリアも応じる。
「誰であろうと」
「へぇ」
鈴が笑う。
「やる気じゃん」
そして。
三人の視線が、交わる。
敵ではない。
だが、仲間でもない。
それでも。
「――あいつは渡さない」
誰かが、心の中で呟いた。
同じ言葉を。
同時に。
静かな火花が。
新たに散り始めていた。