インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第二十四話 新たな火種

――翌日。

 

教室。

 

「……」

 

重い空気が漂っていた。

 

昨日の戦闘。

 

そして、その結末。

 

誰もが言葉を失ったままだった。

 

「えー……」

 

山田真耶が、気まずそうに口を開く。

 

「昨日のクラス代表戦ですが……」

 

一拍。

 

「安全性の問題により、中止となりました」

 

「「「ええええええええ!?」」」

 

教室が一気に騒がしくなる。

 

「スイーツ券は!?」

 

「……ありません」

 

「「「そんなぁぁぁぁぁ!!」」」

 

一気に沈む空気。

 

「……そこまでかよ」

 

一夏が呆れる。

 

その時。

 

「それと」

 

千冬が教室に入ってくる。

 

「今日から一組に転入生が二人入る」

 

ざわつく教室。

 

「入れ」

 

扉が開く。

 

銀髪、眼帯の少女。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

短く、鋭い声。

 

続いて。

 

金髪の少年。

 

「シャルル・デュノアです。よろしくお願いします」

 

対照的な二人。

 

「以上だ。席につけ」

 

千冬が告げる。

 

だが――

 

ラウラは動かない。

 

そのまま、一夏へと歩み寄る。

 

「……?」

 

一夏が顔を上げた、その瞬間。

 

――パァンッ!!

 

乾いた音。

 

「……は?」

 

頬に走る衝撃。

 

思考が止まる。

 

「私はお前の存在を認めない!」

 

ラウラの声が教室に響く。

 

ざわめきが起きる。

 

だが――

 

次の瞬間。

 

それすら、消えた。

 

「――っ!?」

 

ラウラの身体が、宙に浮く。

 

顔面を、片手で掴まれていた。

 

流星一花。

 

何も言わない。

 

ただ、見ている。

 

その目は――

 

完全に冷えていた。

 

「くっ……!」

 

ラウラが反応する。

 

腕を掴み、引き剥がそうとする。

 

だが、動かない。

 

まるで固定されているかのように。

 

ミシ、と音が鳴る。

 

骨が軋む音。

 

「……っ!」

 

ラウラの表情が歪む。

 

さらに力が強くなる。

 

メキメキ、と。

 

明らかに危険な音。

 

「流星! 離せ!」

 

千冬が腕を掴む。

 

だが。

 

反応はない。

 

完全に、外界を遮断している。

 

力は、止まらない。

 

「……っ!」

 

ラウラの抵抗も、通じない。

 

このままでは――

 

その時。

 

「――もう大丈夫だから!!」

 

一夏の声。

 

その瞬間。

 

ぴたりと、止まる。

 

指の力が、抜ける。

 

ラウラの身体が床に落ちる。

 

「はぁ……っ」

 

荒い呼吸。

 

「……」

 

一花はゆっくりと一夏を見る。

 

そして、近づく。

 

「……大丈夫?」

 

優しい声。

 

先程までとは別人のように。

 

「……ああ」

 

一夏が苦笑する。

 

「びっくりしたけどな」

 

「……ごめん」

 

小さく呟く。

 

視線が頬に落ちる。

 

「痛い?」

 

そっと手を伸ばす。

 

優しく触れる。

 

撫でるように。

 

「いや、平気だって」

 

「……ほんと?」

 

少しだけ不安そうに覗き込む。

 

「ああ」

 

一夏が軽く笑う。

 

「だから、落ち着けって」

 

「……うん」

 

素直に頷く。

 

そして、そっと手を離す。

 

「……」

 

そのやり取りを。

 

教室中の視線が、見ていた。

 

誰も、言葉を発せない。

 

ついさっきまでの“それ”と。

 

今の姿。

 

あまりにも違いすぎる。

 

「はぁ……っ」

 

ラウラが床に膝をついたまま、荒い呼吸を繰り返す。

 

解放された直後。

 

だが、その視線はすぐに上がる。

 

「……」

 

真っ直ぐに。

 

流星一花を睨みつける。

 

その目にあるのは、恐怖ではない。

 

「……貴様」

 

低く、押し殺した声。

 

「……」

 

一花は何も答えない。

 

ただ、一夏の方へ視線を向けたまま。

 

まるで、ラウラなど存在しないかのように。

 

「……いいだろう」

 

ラウラが、ゆっくりと立ち上がる。

 

まだ息は乱れている。

 

だが、その姿勢は崩れない。

 

「訂正する」

 

一歩、踏み出す。

 

「貴様は“例外”だ」

 

その言葉。

 

教室の空気が張り詰める。

 

「私は任務において、無駄な感情は排除する」

 

淡々と。

 

だが確実に、宣言する。

 

「だが――」

 

視線が鋭くなる。

 

「貴様は違う」

 

明確な意思。

 

「危険因子として、排除対象に認定する」

 

ざわり、と教室が揺れる。

 

完全な“敵宣言”。

 

「……」

 

それでも一花は、反応しない。

 

ただ――

 

一夏の頬に触れたまま。

 

「……」

 

ラウラの眉が、わずかに動く。

 

無視されている。

 

それが、理解できる。

 

だが。

 

怒りではない。

 

むしろ――

 

「……いい」

 

小さく呟く。

 

「それでいい」

 

その瞳に、宿るもの。

 

それは、戦意。

 

「貴様は、いずれ私が――」

 

言葉を切る。

 

だが、その先は誰でも分かる。

 

倒す。

 

そう言っている。

 

「……」

 

教室の空気は、完全に変わった。

 

新たな対立。

 

明確な軸。

 

そして。

 

「……」

 

流星一花は。

 

そのすべてを。

 

意にも介さない。

 

ただ、一夏だけを見ていた。

 

その構図が。

 

何よりも異常だった。

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