インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第二十五話 屋上ランチ戦線

――昼休み。

 

屋上。

 

風が心地いい。

 

「ここ、空いてていいよな」

 

一夏がレジャーシートを広げる。

 

その周りに集まる六人。

 

一夏、一花、箒、セシリア、鈴、シャルル。

 

「ふふ、気持ちいいですね」

 

シャルルが微笑む。

 

「で、今日は弁当組か」

 

鈴が腕を組む。

 

「おう」

 

一夏が頷く。

 

「俺と、箒と、セシリアと、鈴だな」

 

「四人か」

 

箒が静かに腰を下ろす。

 

「……一夏」

 

「ん?」

 

「二つあるが」

 

弁当箱を指す。

 

「ああ、これか?」

 

一夏が笑う。

 

「一花の分」

 

「……」

 

一花は当然のように隣に座っている。

 

「……相変わらずね」

 

鈴が呆れる。

 

「仲がいいんだね」

 

シャルルが素直に言う。

 

その一言に。

 

「……いや」

 

鈴が即座に否定する。

 

「いいどころか――危険人物よ」

 

「え?」

 

シャルルが目を丸くする。

 

「一花の行動原理、知ってる?」

 

鈴が箸を構えながら言う。

 

「“一夏をいじめる奴は死刑”だから」

 

「……」

 

「え?」

 

シャルルが固まる。

 

「冗談……だよね?」

 

「冗談じゃないのよ、これが」

 

鈴がため息をつく。

 

「というか、ついさっきもあったじゃない」

 

「え?」

 

「朝よ、朝」

 

鈴が軽く顎で示す。

 

「ドイツの代表候補生」

 

「……ああ」

 

一夏が苦笑する。

 

「……?」

 

シャルルが首をかしげる。

 

「一夏に手出したでしょ」

 

「ああ……まあ」

 

頬を軽く触る一夏。

 

「で?」

 

シャルルが促す。

 

「結果?」

 

鈴があっさり言う。

 

「返り討ち」

 

「……」

 

「……え?」

 

シャルルの思考が止まる。

 

「しかも一瞬」

 

鈴が付け加える。

 

「……」

 

シャルル、無言。

 

「ね?」

 

鈴が肩をすくめる。

 

「冗談じゃないでしょ?」

 

「……うん、全然冗談じゃないね……」

 

完全に引いている。

 

少し視線を遠くへ向ける。

 

「一花が腕なくして帰ってきたでしょ?」

 

「……ああ」

 

一夏が苦笑する。

 

「そしたらさ、ファンクラブが本気でキレて」

 

「朝、呼び出されたのよ。一夏が」

 

「朝!?」

 

シャルルが声を上げる。

 

「そう、登校時間よ」

 

鈴は平然としている。

 

「使われてない教室に連れてかれて」

 

「部屋はカーテン閉めて真っ暗」

 

「ロウソクだけ灯ってて」

 

「全員、覆面」

 

「……もうダメでしょそれ」

 

シャルルが頭を抱える。

 

「で、“異端審問会を開始する”って」

 

「……」

 

 

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一夏が目を逸らす。

 

「罪状は“流星一花に重傷を負わせた罪”」

 

「いや……まあ……」

 

否定はしない。

 

「完全に有罪の流れでね」

 

鈴が続ける。

 

「判決は――」

 

一拍。

 

「死刑」

 

「は!?」

 

シャルルが立ち上がりかける。

 

「しかもね」

 

鈴の声が少し低くなる。

 

「壁に十字架、立ててるやつがいたのよ」

 

「貼り付け用の」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

空気が止まる。

 

「本気だったのよ、あいつら」

 

鈴が肩をすくめる。

 

「で、判決下そうとしたその瞬間――」

 

――バンッ!!

 

「ドアが開いた」

 

静かに言う。

 

「一花が立ってた」

 

「……」

 

一夏も、わずかに表情を引き締める。

 

「何も言わずに入ってきて」

 

「……」

 

「空気が、変わった」

 

鈴の声がわずかに低くなる。

 

「で、“執行”って言おうとした瞬間」

 

「……止まったのよ」

 

「止まった?」

 

「動けなくなったの」

 

きっぱりと。

 

「……」

 

「そのまま、一花が一夏の前に立って」

 

「一言だけ」

 

小さく、再現する。

 

「“その判決、取り消して”」

 

「……」

 

「そしたらさ」

 

鈴が苦笑する。

 

「全員、従ったのよ」

 

「はぁ!?」

 

「満場一致で“無罪”」

 

「意味が分からないよ!?」

 

シャルルが完全に崩れる。

 

「でしょ?」

 

鈴が頷く。

 

「……あれは、やばかったな……」

 

一夏が遠い目をする。

 

「普通に死ぬかと思った」

 

「軽く言わないでよそれ!?」

 

「いやマジで」

 

「……」

 

シャルル、絶句。

 

「……で、結論」

 

鈴が箸を持ち直す。

 

「一花のファンクラブがやばい」

 

「それはもう間違いないね……」

 

シャルルが深く頷く。

 

「常識通じなさすぎでしょ……」

 

「ほんとそれ」

 

鈴も同意する。

 

その横で。

 

「はい、あーん」

 

一花が箸を差し出す。

 

「ん」

 

一夏が普通に食べる。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

三人が固まる。

 

「……何してるのよ、あんたたち」

 

鈴が呆れる。

 

「いや……その……」

 

シャルルが戸惑う。

 

「普通なの……?」

 

「普通よ」

 

鈴が断言。

 

「慣れれば」

 

「慣れたくないんだけど!?」

 

思わずツッコむシャルル。

 

「ほら、一夏」

 

今度は一花が口を開ける。

 

「……はいはい」

 

一夏が箸でつまんで運ぶ。

 

「あーん」

 

ぱくり。

 

満足そうに頬を緩める一花。

 

「……」

 

箒の箸が止まる。

 

セシリアも、静かに視線を逸らす。

 

「……で」

 

鈴が仕切り直す。

 

「せっかくだし、交換する?」

 

「いいな」

 

一夏が頷く。

 

「じゃあまず箒のから」

 

「うむ」

 

箒が弁当を差し出す。

 

一口。

 

「お、うまい」

 

「当然だ」

 

誇らしげな顔。

 

「次、鈴」

 

「ほい」

 

「これも普通にうまいな」

 

「“普通”って何よ!」

 

「褒めてるって!」

 

軽い言い合い。

 

「では、わたくしのも」

 

セシリアが自信満々に差し出す。

 

見た目は完璧。

 

彩りも、美しさも文句なし。

 

「……じゃあ、いただきます」

 

一口。

 

「……」

 

止まる。

 

「あれ?」

 

「どうです?」

 

セシリアが期待の目で見る。

 

「……これ」

 

一夏がゆっくり言う。

 

「味見した?」

 

「……え?」

 

セシリアが固まる。

 

恐る恐る、自分でも一口。

 

「……」

 

「……」

 

「……っ!?」

 

次の瞬間。

 

「な、なんですのこれぇぇぇぇ!?」

 

崩れる。

 

「味……しませんわよ!? いや、しますけど変ですわよ!?」

 

「自分で作ったんだろ!?」

 

「こんなはずでは……!」

 

頭を抱えるセシリア。

 

「見た目は完璧なのにねぇ」

 

鈴がニヤニヤする。

 

「料理は見た目じゃないってことだな」

 

一夏が笑う。

 

「くっ……!」

 

セシリアが悔しそうに俯く。

 

その横で。

 

「……美味しい」

 

一花がぽつり。

 

セシリアの弁当を食べている。

 

「え?」

 

全員が見る。

 

「……ほんと?」

 

一夏が聞く。

 

「うん」

 

普通に頷く。

 

「一夏が作ったのよりは落ちるけど」

 

「比較対象おかしくない!?」

 

鈴がツッコむ。

 

「……」

 

セシリアが固まる。

 

「……」

 

そして、ゆっくりと一夏を見る。

 

「……後で教えていただけます?」

 

「いいけど」

 

即答。

 

「……お願いしますわ」

 

小さく頭を下げる。

 

その様子に。

 

少しだけ、空気が柔らぐ。

 

「……なんだかんだ、楽しいね」

 

シャルルが微笑む。

 

その言葉に。

 

「……まあな」

 

一夏が笑う。

 

屋上に、穏やかな時間が流れていた。

 

――ただ一人。

 

その中心にいる存在の“危うさ”を。

 

全員が、どこかで意識しながら。

 

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