インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第二十六話 白式の異変

アリーナ。

 

「ふぅ……」

 

一夏は軽く息を吐く。

 

白式を展開した状態での基礎機動訓練。

 

まだ稼働時間の制限が厳しく、長時間は持たない。

 

「相変わらず、制限がネックですわね」

 

セシリアが腕を組む。

 

「けど、動き自体は悪くない」

 

横でシャルルが頷く。

 

「一夏は近接寄りだけど……装備的にはかなり尖ってるよね」

 

「ああ」

 

一夏も同意する。

 

「白式はほぼ近接特化だしな」

 

「対して、僕のは――」

 

シャルルが軽く手を上げる。

 

次の瞬間。

 

展開されるIS。

 

「ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ」

 

流れるような白銀の機体。

 

両肩、背部に複数の火器。

 

「僕は銃火器メインで戦うタイプ」

 

シャルルが軽く手を上げる。

 

次の瞬間。

 

展開されるIS。

 

「ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ」

 

展開された機体は――

 

鮮やかなオレンジを基調とした装甲。

 

白式とは対照的に、温かみのある発色。

 

各所に配置された火器ユニットが、実戦的な印象を強めている。

 

「へぇ……」

 

一夏が感心したように見る。

 

「結構派手だな」

 

「そう?」

 

シャルルが少し笑う。

 

「視認性は高いけど、その分――」

 

肩部の武装が展開する。

 

「制圧力で押し切るのが僕のスタイル」

 

「遠距離制圧か」

 

「うん。近づかせない戦い方だね」

 

「対照的ですわね」

 

セシリアが頷く。

 

「わたくしは機動戦寄り……一夏は近接特化」

 

「バランスはいいかもな」

 

一夏が言う。

 

白・青・橙。

 

それぞれ違う役割。

 

それが、自然と並んでいた。

 

「……で」

 

一夏が白式のコンソールに目を落とす。

 

「さっきから気になってたんだけど」

 

「どうかしたの?」

 

シャルルが覗き込む。

 

「なんか……変なデータが入ってる」

 

「変な?」

 

「見たことない項目だ」

 

操作する。

 

画面に表示される文字。

 

『晴天流奥義書』

 

「……は?」

 

セシリアが眉をひそめる。

 

「なんですの、それ」

 

「俺が聞きたい」

 

一夏が苦笑する。

 

「こんなの、入れた覚えないぞ」

 

「外部からの干渉……?」

 

シャルルが真剣な顔になる。

 

「いや……」

 

一夏が首を振る。

 

「システム的には“元からある”扱いになってる」

 

「……妙ですわね」

 

「とりあえず、中身見てみるか」

 

恐る恐る開く。

 

表示されるのは――

 

技の一覧。

 

構え。

 

呼吸。

 

斬撃の軌道。

 

「……なんだこれ」

 

一夏が呟く。

 

「完全に“剣術の教本”だな……」

 

「しかも、かなり具体的」

 

シャルルが食い入るように見る。

 

「再現できるレベルで書かれてる」

 

「……試してみるか?」

 

一夏がぽつりと言った、その時。

 

「――貴様も専用機持ちだったな」

 

声。

 

上から。

 

三人が同時に見上げる。

 

そこにいたのは――

 

カタパルトデッキの上。

 

ISを展開した少女。

 

黒い装甲。

 

鋭い存在感。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ……」

 

一夏が呟く。

 

「シュヴァルツェア・レーゲン」

 

低く名乗る。

 

「なら、話が早い」

 

ラウラが見下ろす。

 

完全に上からの視線。

 

「私と戦え」

 

「……は?」

 

一夏が眉をひそめる。

 

「なんでそうなる」

 

「理由など不要だ」

 

「いや、必要だろ」

 

一夏はため息をつく。

 

「悪いけど、今は訓練中だし――」

 

「逃げるのか?」

 

ラウラが言葉を被せる。

 

「……あ?」

 

空気が変わる。

 

「女の影に隠れることしかできない弱者か」

 

ぴたりと。

 

一夏の足が止まる。

 

「……」

 

「どうした」

 

ラウラが口元を歪める。

 

「あの女がいなければ何もできない――」

 

「……」

 

沈黙。

 

次の瞬間。

 

「――取り消せよ、今の言葉」

 

低い声。

 

明確な怒気。

 

「……」

 

セシリアとシャルルが息を呑む。

 

「ほう」

 

ラウラがわずかに笑う。

 

「ようやくその気になったか」

 

「……」

 

一夏が構える。

 

白式が反応する。

 

「来い」

 

ラウラも応じる。

 

完全な臨戦態勢。

 

――その時。

 

『両者、戦闘行為を中止せよ』

 

管制室からの警告。

 

『許可されていない戦闘は禁止だ』

 

「……ちっ」

 

ラウラが舌打ちする。

 

「興がそれた……」

 

そう言い残し。

 

ISを解除。

 

そのまま踵を返す。

 

「……」

 

一夏はしばらく動かなかった。

 

拳を握りしめたまま。

 

「……一夏」

 

シャルルが声をかける。

 

「大丈夫?」

 

「……ああ」

 

短く答える。

 

だが、その目には。

 

確かな火が灯っていた。

 

「……あいつ」

 

小さく呟く。

 

「次は、逃げねぇ」

 

静かに。

 

だが、はっきりと。

 

新たな対立が――

 

確実に、動き出していた。

 

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