インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第二十七話 忠告

――放課後。

 

アリーナを後にした帰り道。

 

「……はぁ」

 

一夏は小さく息を吐いた。

 

ラウラとの一悶着。

 

頭の中に、あの言葉が残っている。

 

――あの女がいなければ何もできない。

 

「……くそ」

 

小さく舌打ちしかけた、その時。

 

「……ですから、お願いします」

 

聞き覚えのある声。

 

足が止まる。

 

壁越し。

 

少し先の通路。

 

「……」

 

一夏は反射的に身を隠した。

 

覗き込む。

 

そこにいたのは――

 

「……ラウラ?」

 

そして、その向かいに。

 

「無理だ」

 

織斑千冬。

 

短く、切り捨てるような声。

 

「何度言わせる」

 

「しかし――!」

 

ラウラが食い下がる。

 

「私はまだ――」

 

「見込みはある、か?」

 

千冬が被せる。

 

冷たい声。

 

「……っ」

 

言葉に詰まるラウラ。

 

「今の貴様に、教えることはない」

 

「……!」

 

拳を握る。

 

「ならば……ドイツに戻ってでも――」

 

「断る」

 

即答。

 

一切の迷いがない。

 

「私はもう軍には関わらん」

 

「……っ」

 

ラウラの表情が歪む。

 

それでも。

 

「それでも……私は――!」

 

なおも食い下がる。

 

だが。

 

「しつこいぞ、ボーデヴィッヒ」

 

千冬の一言で。

 

空気が止まる。

 

「……」

 

沈黙。

 

やがて。

 

「……失礼します」

 

ラウラは踵を返した。

 

そのまま、足早に立ち去る。

 

「……」

 

静寂。

 

一夏は、息を吐いた。

 

(……なるほどな)

 

頭の中で繋がる。

 

ドイツ。

 

あの日。

 

自分が誘拐された事件。

 

その後の捜査協力。

 

その代償として。

 

千冬は――

 

ドイツ軍の教官を、二年間務めていた。

 

(その時か……)

 

ラウラとの接点。

 

自然と納得がいく。

 

「……」

 

もうここにいる意味はない。

 

一夏はその場を離れようとする。

 

「――聞いていたな」

 

「っ!?」

 

背筋が凍る。

 

振り返る。

 

「……千冬姉」

 

そこには、いつの間にか立っていた千冬。

 

「隠れるのが下手だな」

 

「いや、バレないと思ってたんだけど……」

 

苦笑するしかない。

 

「……まあいい」

 

千冬が軽くため息をつく。

 

「帰りか?」

 

「ああ」

 

「そうか」

 

短い会話。

 

だが、不思議と重くはない。

 

「……」

 

少しの沈黙。

 

そして。

 

「……一つ、言っておく」

 

千冬が口を開く。

 

「流星一花のことだが」

 

「……」

 

一夏の表情がわずかに引き締まる。

 

「……飲み込まれるなよ」

 

静かに。

 

だが、はっきりとした言葉。

 

「……」

 

一夏は、少しだけ考える。

 

そして。

 

「……分かってるよ」

 

短く答える。

 

「……ならいい」

 

千冬はそれ以上何も言わない。

 

「じゃあな」

 

「ああ」

 

一夏は背を向ける。

 

そのまま歩き出す。

 

足音が遠ざかる。

 

「……」

 

残された千冬。

 

一人。

 

空を見上げる。

 

「……」

 

小さく、息を吐く。

 

「愚弟も……」

 

ぽつりと。

 

「面倒な者に好かれたな……」

 

呟きは、誰にも届かない。

 

ただ、静かに――

 

空へと消えていった。

 

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