――翌日。
アリーナ。
「……まさか、あなたと被るとは思いませんでしたわね」
セシリアが軽く息を吐く。
「それはこっちのセリフよ」
鈴も肩をすくめる。
「マッチ戦に向けて訓練って考えることは同じってことね」
「……ふふ、それもそうですわね」
軽く笑う。
互いに距離を取る。
空気が引き締まる。
「なら――」
「ええ」
「軽く、やる?」
その時。
「――随分と余裕だな」
第三の声。
「……!」
二人が同時に振り向く。
そこにいたのは――
「ラウラ・ボーデヴィッヒ……」
黒いIS。
シュヴァルツェア・レーゲンを展開している。
「訓練、か」
見下ろすような視線。
「その程度で満足しているのか?」
「……何が言いたいのですの」
セシリアが眉をひそめる。
「弱い、と言っている」
即答。
「――っ!」
鈴の目が鋭くなる。
「……あんた、喧嘩売ってるの?」
「事実を述べているだけだ」
ラウラの声音は変わらない。
「なら――」
セシリアが構える。
「証明して差し上げますわ」
「いい度胸だ」
ラウラがわずかに笑う。
「来い」
――戦闘、開始。
――
場面は変わる。
「……なんだ?」
一夏は足を止める。
アリーナ方面が騒がしい。
「何かあったのか……?」
嫌な予感。
そのまま走る。
――アリーナ。
目に飛び込んできた光景。
「――っ!」
セシリアが吹き飛ばされる。
地面を滑る。
「くっ……!」
鈴も、弾かれるように後退。
二人とも――
防戦一方。
「なんだよ、これ……」
一夏が呟く。
完全に、一方的。
「……」
ラウラがこちらに気づく。
ゆっくりと視線を向ける。
そして――
何も言わずに。
再び動く。
「がっ……!」
セシリアに、追撃。
防御の上から叩き潰すような一撃。
「やめろ!!」
一夏が叫ぶ。
だが――
ラウラは止まらない。
「ぐっ……!」
今度は鈴へ。
過剰なまでの攻撃。
まるで――
見せつけるように。
「……っ!」
一夏の中で、何かが切れる。
「……白式!」
瞬時に展開。
「やめろって言ってんだろ!!」
地面を蹴る。
一直線に突撃。
斬撃。
「……」
ラウラはそれを、あっさりと回避する。
「遅い」
「――っ!」
一夏はそのまま滑り込む。
「今のうちだ!」
セシリアと鈴を回収。
距離を取る。
「……下がってろ」
短く言う。
「一夏……!」
「大丈夫だ」
そう言い切る。
「……」
ラウラがゆっくりと向き直る。
邪魔者は排除された。
視線が、完全に一夏へ向く。
「来い」
無言の圧。
「……っ!」
一夏が踏み込む。
その瞬間。
「――!?」
身体が、止まる。
動かない。
「なっ……!?」
まるで、拘束されたように。
「……」
ラウラの視線が、僅かに細まる。
「それが、貴様の限界か」
「くそ……!」
力を込める。
だが、動かない。
「なら――終わりだ」
ラウラが構える。
プラズマ刀。
振り上げる。
振り下ろされる。
「――っ!!」
その時。
――ガキィィィン!!
金属音。
「……なに?」
ラウラの動きが止まる。
そこにいたのは――
「そこまでだ」
織斑千冬。
生身。
だが、その手には。
IS用ブレード。
ラウラの一撃を、受け止めていた。
「織斑……教官……」
ラウラが目を見開く。
「決着をつけたいなら」
千冬が言う。
「試合でつけろ」
冷静な声。
「ここは戦場じゃない」
「……」
ラウラが、ゆっくりと刀を引く。
「……了解しました」
短く答える。
視線を一夏へ向ける。
「……次だ」
それだけ言って。
ISを解除。
立ち去る。
「……」
一夏はその場に立ち尽くす。
身体の拘束が解ける。
「……なんだよ、今の」
小さく呟く。
見えなかった。
何も。
ただ――
止められた。
完全に。
「……」
千冬が一夏を見る。
「無茶をするな」
「……してねぇよ」
苦笑する。
「……」
千冬は何も言わない。
ただ。
一度だけ、強く見た。
「……準備しておけ」
ぽつりと。
「次は、正式だ」
「……ああ」
一夏が頷く。
戦いは――
避けられない。
そう、理解していた。