インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第二十八話 不可視の脅威

――翌日。

 

アリーナ。

 

「……まさか、あなたと被るとは思いませんでしたわね」

 

セシリアが軽く息を吐く。

 

「それはこっちのセリフよ」

 

鈴も肩をすくめる。

 

「マッチ戦に向けて訓練って考えることは同じってことね」

 

「……ふふ、それもそうですわね」

 

軽く笑う。

 

互いに距離を取る。

 

空気が引き締まる。

 

「なら――」

 

「ええ」

 

「軽く、やる?」

 

その時。

 

「――随分と余裕だな」

 

第三の声。

 

「……!」

 

二人が同時に振り向く。

 

そこにいたのは――

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ……」

 

黒いIS。

 

シュヴァルツェア・レーゲンを展開している。

 

「訓練、か」

 

見下ろすような視線。

 

「その程度で満足しているのか?」

 

「……何が言いたいのですの」

 

セシリアが眉をひそめる。

 

「弱い、と言っている」

 

即答。

 

「――っ!」

 

鈴の目が鋭くなる。

 

「……あんた、喧嘩売ってるの?」

 

「事実を述べているだけだ」

 

ラウラの声音は変わらない。

 

「なら――」

 

セシリアが構える。

 

「証明して差し上げますわ」

 

「いい度胸だ」

 

ラウラがわずかに笑う。

 

「来い」

 

――戦闘、開始。

 

――

 

場面は変わる。

 

「……なんだ?」

 

一夏は足を止める。

 

アリーナ方面が騒がしい。

 

「何かあったのか……?」

 

嫌な予感。

 

そのまま走る。

 

――アリーナ。

 

目に飛び込んできた光景。

 

「――っ!」

 

セシリアが吹き飛ばされる。

 

地面を滑る。

 

「くっ……!」

 

鈴も、弾かれるように後退。

 

二人とも――

 

防戦一方。

 

「なんだよ、これ……」

 

一夏が呟く。

 

完全に、一方的。

 

「……」

 

ラウラがこちらに気づく。

 

ゆっくりと視線を向ける。

 

そして――

 

何も言わずに。

 

再び動く。

 

「がっ……!」

 

セシリアに、追撃。

 

防御の上から叩き潰すような一撃。

 

「やめろ!!」

 

一夏が叫ぶ。

 

だが――

 

ラウラは止まらない。

 

「ぐっ……!」

 

今度は鈴へ。

 

過剰なまでの攻撃。

 

まるで――

 

見せつけるように。

 

「……っ!」

 

一夏の中で、何かが切れる。

 

「……白式!」

 

瞬時に展開。

 

「やめろって言ってんだろ!!」

 

地面を蹴る。

 

一直線に突撃。

 

斬撃。

 

「……」

 

ラウラはそれを、あっさりと回避する。

 

「遅い」

 

「――っ!」

 

一夏はそのまま滑り込む。

 

「今のうちだ!」

 

セシリアと鈴を回収。

 

距離を取る。

 

「……下がってろ」

 

短く言う。

 

「一夏……!」

 

「大丈夫だ」

 

そう言い切る。

 

「……」

 

ラウラがゆっくりと向き直る。

 

邪魔者は排除された。

 

視線が、完全に一夏へ向く。

 

「来い」

 

無言の圧。

 

「……っ!」

 

一夏が踏み込む。

 

その瞬間。

 

「――!?」

 

身体が、止まる。

 

動かない。

 

「なっ……!?」

 

まるで、拘束されたように。

 

「……」

 

ラウラの視線が、僅かに細まる。

 

「それが、貴様の限界か」

 

「くそ……!」

 

力を込める。

 

だが、動かない。

 

「なら――終わりだ」

 

ラウラが構える。

 

プラズマ刀。

 

振り上げる。

 

振り下ろされる。

 

「――っ!!」

 

その時。

 

――ガキィィィン!!

 

金属音。

 

「……なに?」

 

ラウラの動きが止まる。

 

そこにいたのは――

 

「そこまでだ」

 

織斑千冬。

 

生身。

 

だが、その手には。

 

IS用ブレード。

 

ラウラの一撃を、受け止めていた。

 

「織斑……教官……」

 

ラウラが目を見開く。

 

「決着をつけたいなら」

 

千冬が言う。

 

「試合でつけろ」

 

冷静な声。

 

「ここは戦場じゃない」

 

「……」

 

ラウラが、ゆっくりと刀を引く。

 

「……了解しました」

 

短く答える。

 

視線を一夏へ向ける。

 

「……次だ」

 

それだけ言って。

 

ISを解除。

 

立ち去る。

 

「……」

 

一夏はその場に立ち尽くす。

 

身体の拘束が解ける。

 

「……なんだよ、今の」

 

小さく呟く。

 

見えなかった。

 

何も。

 

ただ――

 

止められた。

 

完全に。

 

「……」

 

千冬が一夏を見る。

 

「無茶をするな」

 

「……してねぇよ」

 

苦笑する。

 

「……」

 

千冬は何も言わない。

 

ただ。

 

一度だけ、強く見た。

 

「……準備しておけ」

 

ぽつりと。

 

「次は、正式だ」

 

「……ああ」

 

一夏が頷く。

 

戦いは――

 

避けられない。

 

そう、理解していた。

 

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