インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第三十五話 選ばれるということ

店内は、色とりどりの水着で溢れていた。

 

鮮やかな色彩。軽やかな布地。照明に照らされて並ぶそれらは、まるで別世界のように華やかだ。

 

だが――

 

「……なんで俺ここにいるんだろうな」

 

織斑一夏は、場違いな存在のようにぽつんと立っていた。

 

明らかに女性向けの水着売り場。

 

周囲の視線が痛い。

 

「一夏」

 

背後から声がかかる。

 

振り向いた瞬間、一夏の思考が一瞬止まった。

 

そこにいたのは――一花だった。

 

黒を基調にしたシンプルなビキニ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

無駄のないラインを強調するデザイン。露出は決して過激ではないのに、妙に目を引く。

 

「……どう?」

 

軽く首を傾げる。

 

試すような視線。

 

一夏は一瞬言葉を失い――

 

「……似合ってる」

 

それしか言えなかった。

 

一花は、くすりと笑う。

 

「そう」

 

それだけで十分だった。

 

そのまま、ゆっくりと一夏に近づく。

 

距離が、自然に詰まる。

 

逃げる理由も、避ける理由もない。

 

「じゃあ、これにするわ」

 

あっさりと決める。

 

だが。

 

それで終わりではなかった。

 

「――でも」

 

くるりと一回転する。

 

布がわずかに揺れる。

 

「一夏は、他のも見たいんじゃない?」

 

視線を絡める。

 

逃げ場を塞ぐように。

 

「……いや別に」

 

即答する一夏。

 

だが、その反応すら想定内だった。

 

「遠慮しなくていいのに」

 

一歩、さらに近づく。

 

指先が、そっと一夏の手に触れる。

 

そして――そのまま、絡める。

 

恋人繋ぎ。

 

「どうせ、最後に選ぶのは私なんだから」

 

静かな声だった。

 

だが、その言葉の意味は重い。

 

“選ばせる”ように見せて、“選択肢は最初から決まっている”。

 

その事実を、一夏はぼんやりと理解していた。

 

「……はいはい」

 

苦笑しながらも、手は離さない。

 

離せない。

 

それを確認するように、一花はわずかに微笑んだ。

 

――――

 

数分後。

 

試着室のカーテンが再び開く。

 

今度は白を基調とした水着だった。

 

どこか“白式”を思わせるような、無意識の統一感。

 

「これ、どう?」

 

問いかける声は同じ。

 

だが、その奥にある意図は違う。

 

一夏は少しだけ考えてから答える。

 

「……さっきの方が似合ってた気がする」

 

一瞬の間。

 

そして。

 

一花は、静かに笑った。

 

「正解」

 

その一言に、ぞくりとした感覚が走る。

 

「ちゃんと見てるのね」

 

満足そうだった。

 

そのまま再び近づき、今度は腕を絡める。

 

完全に、逃がさない形。

 

「じゃあ最初のにするわ」

 

決定。

 

迷いはない。

 

そして――

 

「ね、一夏」

 

耳元に、そっと顔を寄せる。

 

吐息がかかる距離。

 

「こうやって選ばせる方が、楽しいでしょ?」

 

囁く。

 

甘く。

 

だが、どこか支配的に。

 

一夏は、何も言えなかった。

 

ただ、苦笑するしかない。

 

「……まあな」

 

それが肯定であることを、一花は理解していた。

 

ゆっくりと身体を離す。

 

だが、手は離さない。

 

そのままレジへと向かう。

 

周囲の視線は、相変わらず集まっていた。

 

だが。

 

一花は一切気にしない。

 

むしろ――

 

見せつけるように、一夏の腕に身体を寄せる。

 

「ちゃんと見ててね」

 

小さく囁く。

 

「これは――一夏が選んだ水着なんだから」

 

その言葉は、ただの事実ではない。

 

“印”だった。

 

周囲に対する。

 

そして、一夏自身に対する。

 

静かな宣言。

 

織斑一夏は、流星一花のものだと。

 

誰にでも分かる形で。

 

刻み込むための。

 

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