インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第四話 再会の温度差

午前の授業。

 

ISの基礎理論についての講義が続く中――

 

「……」

 

ふと、視線が引っかかった。

 

前方、少し離れた席。

 

黒髪を後ろでまとめた女子生徒。

 

姿勢が良く、無駄のない所作。

 

(……どこかで見たような)

 

記憶の奥に、引っかかる。

 

だが――

 

「……気のせいか」

 

小さく首を振る。

 

あり得ない。

 

そんな偶然があるはずがない。

 

「何見てるの?」

 

隣から、一花の声。

 

「いや、別に」

 

誤魔化す。

 

「ふーん」

 

興味なさげに流される。

 

だが、その視線は一瞬だけそちらを見ていた。

 

――

 

授業が終わり、休み時間。

 

ざわざわとした教室の中。

 

「ねえ、さっきの見てたでしょ」

 

一花が小さく言う。

 

「……何のことだよ」

 

「前の席の子」

 

核心を突かれる。

 

「……まあ、ちょっとな」

 

観念して答える。

 

「知り合い?」

 

「……分かんねえ」

 

正直に言う。

 

「似てる気はするんだけどな」

 

「へえ」

 

一花が、少しだけ目を細める。

 

「じゃあ、確かめてみれば?」

 

「……簡単に言うなよ」

 

そう言いながらも――

 

視線が、またそちらに向く。

 

その時。

 

「――織斑一夏」

 

名前を呼ばれた。

 

教室が、一瞬静まる。

 

声の主は――

 

その少女だった。

 

「……っ」

 

立ち上がる。

 

ゆっくりと振り向く。

 

目が合う。

 

間違いない。

 

「……箒?」

 

思わず、口に出る。

 

すると。

 

「やはり、お前か」

 

その声。

 

その言い方。

 

間違えようがなかった。

 

「……久しぶりだな、一夏」

 

教室が、一気にざわつく。

 

「え、知り合い!?」

「今名前呼んだよね?」

「幼馴染とか!?」

 

視線が一斉に集まる。

 

「……ちっ」

 

小さく舌打ちする。

 

「目立つなよ、お前……」

 

「無理を言うな」

 

箒は平然としていた。

 

「確認が必要だった」

 

「……まあ、そうだけどよ」

 

苦笑する。

 

懐かしさと、気まずさが混ざる。

 

「元気そうだな」

 

「お前もな」

 

短いやり取り。

 

それだけなのに――

 

妙に、実感が湧く。

 

「……幼馴染、か」

 

後ろから、誰かが呟く。

 

完全にバレた。

 

「まあ、そんなとこだ」

 

開き直るしかない。

 

「ふーん……」

 

周囲の視線が変わる。

 

興味と、少しの距離。

 

さっきまでとは違う空気。

 

「……人気者だね」

 

隣で一花が小さく笑う。

 

「やめろ」

 

「事実でしょ?」

 

楽しそうだ。

 

「……お前も大概だろ」

 

「私は別枠だから」

 

あっさりと言う。

 

(……否定できねえ)

 

「では、次の授業に移る」

 

千冬の声が教室を引き締める。

 

ざわめきが収まる。

 

「私語は慎め」

 

一瞬だけ、こちらに視線が向く。

 

何も言わない。

 

だが――

 

(全部把握してるな、これ)

 

間違いなく、見られていた。

 

――

 

午後。

 

屋外トレーニングエリア。

 

「本日は基礎体力および反応訓練を行う」

 

千冬の声が響く。

 

ISは使わない。

 

純粋な基礎訓練。

 

「……ようやく動けるな」

 

軽く肩を回す。

 

「座ってるだけよりはマシだ」

 

「油断するな」

 

横に並ぶ箒が言う。

 

「基礎こそが全てだ」

 

「分かってるよ」

 

軽く返す。

 

だが、その目は真剣だった。

 

(……やっぱり変わってない)

 

この真っ直ぐさ。

 

昔と同じだ。

 

「では開始」

 

号令と同時に、全員が走り出す。

 

ランニング。

ダッシュ。

反応テスト。

 

単純だが、負荷は高い。

 

「っ……!」

 

息が上がる。

 

だが――

 

(まだいける)

 

身体がついてくる。

 

「……ほう」

 

横から声。

 

箒だ。

 

「やるな」

 

「そっちこそ」

 

ほとんど息を乱していない。

 

「日頃の鍛錬の差だ」

 

「だろうな」

 

苦笑する。

 

だが、不思議と嫌じゃない。

 

「……一夏」

 

箒が、少しだけ真剣な声で言う。

 

「ここに来た理由は知らん」

 

「……ああ」

 

「だが」

 

視線が向く。

 

「来た以上は、逃げるな」

 

その言葉は、まっすぐだった。

 

「……分かってる」

 

頷く。

 

逃げるつもりはない。

 

もう、戻れないと分かっているから。

 

――その時。

 

少し離れた場所。

 

日陰に立つ、一花の姿が見えた。

 

こちらを見ている。

 

参加せず、ただ観察している。

 

「……あいつ、また見てるな」

 

小さく呟く。

 

「知り合いか?」

 

箒が聞く。

 

「ああ」

 

短く答える。

 

「昔からのな」

 

「……そうか」

 

それ以上は聞いてこない。

 

ただ、一言だけ。

 

「妙な気配の者だな」

 

「……だろ」

 

同意する。

 

一花は、こちらの視線に気づくと――

 

 

【挿絵表示】

 

 

軽く手を振った。

 

そして、微笑む。

 

(……何考えてんだよ)

 

同じ場所にいるはずなのに。

 

どこか、違う世界にいるような感覚。

 

「……集中しろ」

 

箒の声。

 

「ああ」

 

意識を戻す。

 

走る。

 

動く。

 

繰り返す。

 

その中で――

 

はっきりしてきた。

 

ここは“普通の学校”じゃない。

 

そして。

 

関わる人間もまた、普通じゃない。

 

それでも――

 

「……悪くねえな」

 

小さく呟く。

 

少なくとも。

 

一人じゃない。

 

それだけは、確かだった。

 

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