インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第六話 届かない距離

夜。

 

寮の自室。

 

「……」

 

机に向かいながらも、手は止まっていた。

 

開いたままのノート。

書きかけの文字。

 

だが、思考はまったく別のところにある。

 

――流星一花。

 

あの少女の顔が、頭から離れなかった。

 

「……特別な関係、か」

 

小さく呟く。

 

あの言い方。

 

曖昧で、だが確信を含んだ声音。

 

「……ふざけるな」

 

ペンを強く握る。

 

感情が、わずかに滲む。

 

「何が“特別”だ」

 

自分でも分かっている。

 

ただの言葉ではない。

 

あれは――

 

“既に入り込んでいる者”の余裕だ。

 

「……」

 

奥歯を噛みしめる。

 

思い出す。

 

一夏の反応。

 

否定しなかった。

できなかった。

 

(……あいつは、分かっているのか?)

 

自分がどこに立っているのか。

 

誰に何を背負わせているのか。

 

「……いや」

 

首を振る。

 

違う。

 

あの男は、そういうやつじゃない。

 

昔から――

 

無自覚に、誰かを巻き込む。

 

「……変わっていないな」

 

小さく息を吐く。

 

懐かしさと、苛立ちが混ざる。

 

だが。

 

問題はそこじゃない。

 

「……あの女だ」

 

視線が鋭くなる。

 

流星一花。

 

あの目。

 

あの立ち位置。

 

「……違う」

 

はっきりと、理解する。

 

自分とは違う。

 

根本から。

 

「戦う者の目ではない」

 

それでも、強い。

 

いや――

 

だからこそ、強い。

 

「……何を見ている」

 

ぽつりと呟く。

 

あの少女は、どこを見ているのか。

 

同じ場所に立っていない。

 

もっと遠く。

 

もっと先。

 

まるで――

 

“すべてを知った上で立っている”ような。

 

「……気に入らん」

 

感情が、はっきりと形になる。

 

嫉妬ではない。

 

恐れでもない。

 

これは――

 

「……見下されているようだ」

 

その感覚だった。

 

対等ですらない。

 

最初から、上から見られている。

 

「……ふざけるな」

 

静かに、しかし確実に熱がこもる。

 

拳を握る。

 

「一夏は――」

 

言葉が、自然と出る。

 

「そんな場所に置かれる人間ではない」

 

まっすぐな想い。

 

昔から変わらない。

 

「……守られるだけの男じゃない」

 

だからこそ。

 

「……あんなやつに」

 

一瞬、言葉を止める。

 

そして。

 

「好きにさせるか」

 

はっきりと言い切った。

 

沈黙。

 

だが、そこに迷いはない。

 

「……力がいるな」

 

ぽつりと呟く。

 

現実を理解する。

 

感情だけでは、届かない。

 

あの場所には。

 

「なら――」

 

立ち上がる。

 

「鍛えるしかない」

 

それしかない。

 

遠回りでも。

 

正面からでも。

 

「……追いつく」

 

誰に、とは言わない。

 

だが、決まっている。

 

「そして――」

 

静かに、しかし強く。

 

「越える」

 

その言葉には、確かな意志があった。

 

――一花の余裕。

 

――一夏との距離。

 

そのどちらも。

 

認めた上で。

 

それでも、諦めない。

 

「……見ていろ」

 

小さく呟く。

 

誰に向けたものかは、分からない。

 

だが――

 

その夜。

 

一つの決意が、確かに生まれていた。

 

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