インフィニット・ストラトス 〜愛のシナリオ〜   作:ぬっく~

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第七話 見えている者

夜。

 

学園の一角。

 

関係者以外立ち入り禁止の区画。

 

その奥にある、静かな部屋。

 

「……やっぱり、そうなるよね」

 

誰もいないはずの空間で、一花がぽつりと呟いた。

 

窓の外には、夜の校舎。

 

灯りのついた寮棟。

 

その中の一室に、視線を向ける。

 

「真っ直ぐで、分かりやすい」

 

小さく笑う。

 

「だから、嫌いじゃないよ」

 

言葉とは裏腹に、その表情は落ち着ききっていた。

 

驚きも、焦りもない。

 

ただの“確認”。

 

「でも――」

 

視線が、わずかに細められる。

 

「遅いかな」

 

ぽつりと落ちる言葉。

 

それは、誰に向けたものか。

 

自分でも分かっている。

 

「君は、もうこっちに来てるから」

 

一夏の姿を思い浮かべる。

 

あの日。

 

血の中で倒れていた少年。

 

そして――

 

「私が、引き上げた」

 

静かな確信。

 

選択ではない。

 

結果でもない。

 

「決定事項」

 

淡々とした言葉。

 

そこに、迷いはなかった。

 

「……」

 

一瞬だけ、沈黙。

 

その後。

 

「――それでも」

 

小さく、息を吐く。

 

「抗うなら、それもいい」

 

否定しない。

 

止めもしない。

 

むしろ――

 

「その方が、面白い」

 

わずかに、口元が緩む。

 

だが。

 

その直後だった。

 

「……」

 

ふと。

 

左肩に視線が落ちる。

 

そこには――何もない。

 

「……はぁ」

 

小さく、息を吐く。

 

ほんの一瞬だけ。

 

ほんのわずかに。

 

表情が揺らいだ。

 

「……ほんと、高くついたな」

 

冗談めかした声音。

 

だが、その奥にあるものは軽くない。

 

痛み。

 

喪失。

 

そして――

 

「後悔は、してないけど」

 

言い切る。

 

迷いなく。

 

それだけが、揺らがない軸だった。

 

「……一夏」

 

名前を呼ぶ。

 

誰もいない空間で。

 

「君は、どうするんだろうね」

 

問いかけ。

 

答えは返らない。

 

それでも。

 

「選ばせてあげるよ」

 

優しく言う。

 

だが、その意味は――優しくない。

 

「自分で来るか」

「それとも、引き寄せられるか」

 

どちらでもいい。

 

結果は変わらない。

 

「どっちでも、君はここに来る」

 

確信。

 

それが、一花の“強さ”だった。

 

そして。

 

「――その時」

 

わずかに、目を細める。

 

「まだ、隣にいられるかな」

 

その言葉だけが。

 

ほんの少しだけ――

 

“余裕ではない何か”を含んでいた。

 

静寂。

 

夜は深い。

 

誰も知らない場所で。

 

誰にも見せない顔で。

 

それでも一花は――

 

最後には、いつものように笑った。

 

「……まあ、いいか」

 

軽く肩をすくめる。

 

「どう転んでも、退屈はしないし」

 

その笑みは、やはり余裕に満ちていた。

 

すべてを見通したような。

 

何もかもを受け入れたような。

 

そして――

 

ほんの少しだけ。

 

「……楽しみにしてるよ」

 

そう呟いた声には。

 

確かに、“期待”が混じっていた。

 

 

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