教室。
いつもより張り詰めた空気の中、千冬の声が響いた。
「本日は、クラス代表を決定する」
ざわめきが広がる。
「本来なら一年での選出は行わない」
その言葉に、誰もが頷く。
だが――
「今回は例外だ」
空気が変わる。
理由は、言われるまでもなかった。
視線が、一斉に一人へ向く。
「……また俺かよ」
織斑一夏。
ISを起動させた“例外”。
「推薦制とする。異論のある者は挙手しろ」
静寂。
その中で――
「……はい」
小さな声。
一人の女子生徒が手を挙げた。
「織斑くんが、いいと思います」
それをきっかけに。
ぽつり、ぽつりと手が上がる。
「起動させたのは事実ですし……」
「適性はあるんじゃ……」
確証はない。
だが、期待がある。
「……」
一夏は、何も言わない。
ただ、その視線を受け止める。
やがて。
「他に推薦は?」
千冬の問い。
その瞬間――
「お待ちなさい」
凛とした声が響いた。
教室の空気が張り詰める。
立ち上がったのは、セシリア・オルコット。
金の髪を揺らし、優雅に一歩前へ出る。
「その決定には、賛同できませんわ」
はっきりと言い切る。
「彼はまだ何も証明していない」
「それにも関わらず代表に選ばれるなど、公平性を欠いています」
正論だった。
教室が静まる。
「……続けろ」
千冬が促す。
「では、提案いたします」
セシリアは視線を一夏へ向ける。
「実力で決めましょう」
空気が張り詰める。
「ISを用いた模擬戦」
「それにより、代表の座を決定することを提案します」
一瞬の沈黙。
そして――
ざわめきが爆発した。
「一年で!?」
「ありえない……!」
当然だ。
本来、一年にISの実戦使用は許可されていない。
だが。
「……いいだろう」
千冬の一言で、すべてが止まる。
「ただし、特例だ」
鋭い視線が二人に向けられる。
「両者とも“例外”として扱う」
「安全制御を最大までかけた上での模擬戦とする」
その言葉の重みは、誰もが理解した。
「異論は?」
「ありませんわ」
セシリアが即答する。
迷いはない。
「……やる」
一夏も短く答えた。
逃げない。
それだけは決めている。
「よし」
千冬が頷く。
「試合は明日、アリーナで行う」
決定だった。
そして――
「もう一点」
千冬が続ける。
教室が静まり返る。
「織斑一夏」
「……はい」
「お前には、専用機を支給する」
――一瞬、誰も言葉を発せなかった。
「……え?」
理解が追いつかない。
だが次の瞬間。
「お待ちなさい!!」
セシリアの声が響く。
その表情には、明確な怒りがあった。
「専用機は、代表候補生にのみ与えられるものですわ!」
教室中が頷く。
それは常識だった。
「それを、彼に……?」
鋭い視線が千冬に向けられる。
「説明を求めます」
張り詰めた空気。
その中で。
千冬は、静かに口を開いた。
「織斑一夏は――」
一拍、間を置く。
「今回の件をもって、“代表候補生に準ずる存在”とする」
「――っ!」
教室がざわめく。
セシリアの表情が歪む。
「ふざけていますわね……!」
抑えきれない感情。
「そのような前例――!」
「ないな」
千冬が即答する。
「だからこそ“例外”だ」
完全に断ち切る言葉。
「……」
セシリアは言葉を失う。
だが。
ゆっくりと息を吐き――
「……いいでしょう」
顔を上げる。
その目には、決意が宿っていた。
「ならば、証明していただきます」
視線が一夏へ向く。
「その“例外”が、本物であるかどうか」
挑戦状だった。
「……ああ」
一夏は、真正面から受ける。
「証明してやる」
静かに言い返す。
もう、迷いはない。
「楽しみにしていますわ」
セシリアが微笑む。
だが、その目は鋭い。
完全な敵意。
そして――
物語は、次の段階へ進む。
例外同士の衝突。
その幕が、今上がろうとしていた。