地雷系彼女(マイ・フェア・レディ)   作:あなたへのレクイエムです

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17.コレガ × イチバン × ハヤイ

 ゲッ ゲッ ゲッ ゲッ

 

 

「う、うわああぁああああぁああッ!?」

 

 

 青空の下、恐怖と絶望の叫びが木霊する。

 

 俺の眼下では、やたら漫画を描くのが上手そうな声をした86番の男が、得体の知れない人面鳥に鉤爪で鷲掴みにされて、どこかに連れ去られていく真っ最中。

 聳え立つ塔の外壁登攀……降下は、かくして失敗に終わり、男はそのまま何処かへと運ばれていってしまった。

 前世で見たソウル系のムービーでなんかこんなのあったなあ……と、俺は呑気に思う。

 いやまあ、人が死ぬ光景って、ウチの職場環境ではわりと見飽きた日常ではあるし。

 

 犠牲者の悲鳴が遠ざかると、タワーの屋上には再び不気味な静寂が訪れた。

 

 

「……こりゃ、外壁を伝うのは無理みてーだな。怪鳥に狙い撃ち……」

 

「きっとどこかに、下へ続く扉があるはずだ」

 

 

 周囲の受験生はその惨劇に言葉を失い、そして正気を取り戻すと次々にタワーの屋上を調べはじめる。

 

 トリックタワー。

 

 断崖絶壁の上に聳え立つ、異様な高さの塔。

 とはいえ天空闘技場が991mで世界で四番目の高さだというから、まあそれ以下の高さなのだろう。

 プロハンターによって運用される超長期刑囚の監獄であると明かされるのは、中に入って、試()官として減刑のために奉仕している彼らと対面してから……いや、受験生に説明されるのは一階に降りてからだったっけ?

 何にせよ、この罠と狂気、囚人と悪意で満たされた塔こそが、第三次試験の舞台だった。

 合格するには、制限時間である72時間以内に地上へ降りること。ルールは単純だ。

 

 二次試験でのやり取りが、良くも悪くも残った受験生たちのやる気に火をつけたらしい。

 真剣な面持ちで床を調べ回る彼らを横目に、俺は自然な動作で懐から携帯電話を取り出し、耳に当てた。

 

 

「……はい、進捗状況の報告です。ええ、現在第三次試験の会場に到着しました。見えますか?」

 

『あはははは! 今の見た!? ねえルモア、今の見た!?』

 

「見えてたみたいですね」

 

 

 業務的な報告を装う俺の鼓膜に、スピーカー越しではない、脳に直接響くような高い笑い声が突き刺さる。

 左目の奥が、火で炙られたようにジリジリと熱を持つ。

 ネオンが「見せて!」と言う以上、俺にそれを拒む権利はない。

 

 

『あの鳥……鳥? 鳥だよね多分。

 ちょっとキモいけど……でもカワイイかも? キモカワイイって感じ。

 あ、そうだ! 今の鳥、あれ捕まえて家の庭で飼えないかな?

 番犬はもういるし、番鳥にちょうど良さそう。ねえ、ルモア、捕まえられない?

 あの鳥なら、ほら、その、なんとかって子より役に立ちそうだよ?』

 

 

 弾むような、無邪気な少女の声。

 俺はネオンの反応に苦笑しながらも、なだめるように答えた。

 

 

「……試験中ですよ。

 やっても良いですけど、不合格になっても良いんですか?」

 

『ちぇっ、つまんないの。

 そこは『どっちもやらなきゃいけない』って言ってくれて良いと思うんだけどな』

 

「無理を言わないでください。

 ペットが欲しいなら、エリザさんと一緒にスクワラさんの犬の散歩にでも行ったらどうです?」

 

『毎日レディも連れて三人で行ってるもん。

 ふんだ、こないだ運動しろとか言ったのルモアじゃない。

 ……いいよ、ルモア。頑張ってね。レディと待ってるから。

 試験に落ちたら瓶詰めだからね。忘れちゃダメだよ?』

 

 

 ふふっ、という含みのある笑い。

「じゃあね」という囁きが、俺の瞳を爪で撫でるような感触と共に遠のいていく。

 俺は息を吐いて、どこにも繋がっていない携帯電話をスーツのポケットに入れた。

 

 

(ちょっと不安定だなぁ。……エリザさんに迷惑かけてないと良いけど)

 

 

 ここ数日のネオンとのやり取り。

 彼女の心の声は異様なほどにテンションが高く、それは日に日に、危ういほどにまで昂まっているようだった。

 まあ、しょっちゅう癇癪は起こしていたし、ワガママも言ってはいたけれど──……。

 幼い頃のネオンの姿を思い出す。もう何年も、こんな風になったネオンを見た覚えはない。

 いや。

 

 ()()()()見ていた。

 

 自分の興味のあること以外は何一つ考えない。気にしない。

 何年も顔を合わせていたダルツォルネさんの生死よりも、オークションが優先。

 他人に興味を向けたのは、せいぜいがスクワラさんが死んだ後のエリザさんへの気遣いくらい。

 もちろん占いについて、彼女は人を助けるために行っていたが、それも()()に利用されている事に嫌気が差していた風に見える。

 ライト=ノストラードが約束を持ち出す時は必ず自分を騙して、納得させて、約束を破るための言い訳である事を彼女は理解していた。

 

 救いようがない──と言う者もいるのかもしれない。

 原作の読者で、ネオン=ノストラードの外見以外で、彼女を擁護する意見はほとんど見た覚えがない。

 何も知らないが故にどこまでも残酷で、愚かで、馬鹿な行動をして破滅した少女。

 誰からもその末路を顧みられない。

 

 ネオン=ノストラードという少女の本質。

 

 エメラルド色の瞳を昏く輝かせ、彼女はどこまでも自由奔放で、予測不可能な、素敵な女の子だ。

 占いで悪い未来を言い当てる事で人を助けたいと、ペンを取ったのがネオンなのだ。

 それが、危なっかしいほどに繊細で可愛らしい、俺から見た彼女の姿だ。

 誰にも文句は言わせない。

 

 

(そう言えば、こんなに長い時間離れたのは……初めてだったかな)

 

 

 昨夜、ガラにもなくネテロ会長に縋ってしまった時の事を思い出す。

 

 6歳の時から今日まで、俺はずっと彼女と一緒にいた。彼女もずっと俺と一緒にいた。

 離れ離れになって──寂しい? うん、たぶんきっと、俺は寂しいのだ。

 おかげで昨夜は、ずいぶんと恥ずかしい振る舞いをしてしまったと思う。

 ネオンに見られずに済んで良かった。

 

 とすると、この不安定さは……ネオンも寂しがっている、のだろうか?

 それを嬉しいと思って良いのかはわからないが……。

 ……うん、やっぱりエリザさんに苦労をかけていそうな気配はする。

 

 

「お土産にお菓子買ってくかな。エリザさんの分も……」

 

「……ったく。愛されてるねぇ、アンドー」

 

 

 にやにやと薄笑いを浮かべて、電話──ではないが──を終えた俺の肩をハンゾーが叩く。

 

 

「エリザってのは女だな?

 かーっ、ボスの次は彼女と電話かよ。ボディガードってなあ」

 

「今のも上司との電話だよ。

 エリザさんは上司の世話役で、俺の同僚の……片思い相手か。両片思い?」

 

「ラブコメの波動が出てないかそれ」

 

 

 わりと二人とも仲良さそうにしてるんだけど、付き合ってるとかまだ聞かないんだよな。

 婚約して足を洗う予定だったとか原作ではそんな話だったはずだが、ここから8ヶ月の間に進展するんだろうか。

 二人の結果を想像して、俺は顔をしかめた。

 考えなければならなくても、考えたくない事だってある。

 

 

(どうすれば良いかじゃなくて、どう在りたいか、ね……)

 

 

 簡単に言ってくれるものだ。

 その意味するところだって、はっきりと掴み取れているわけではない。

 だけど、先達の言葉だ。

 ネテロ会長は俺なんか想像もできない物を見て、経験してきた。その言葉には意味がある。

 意識できるよう、努力しなければ。

 俺はネクタイを締め直し、悩みを顔の下へと押し込めた。

 少なくとも、できる限りは格好つけておくことにする。

 ネオンがいつ見に来ても良いように。

 

 

「それより、任せて悪かった。何か見つかったか?」

 

「ああ、こっちだ。ポンズが今調べてる」

 

 

 ハンゾーがちらっと周囲を見回すのに合わせて、俺も周囲を見る。

 明らかに、受験生の数が減っている。

 

 

 72時間。余裕がないわけじゃないだろうけど、急がないと間に合わない計算かもしれない。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「あ、アンドーくん。もう電話は終わった?」

 

 

 石畳にぺたりと座り込んでいたポンズが、近づく俺達の姿にほっとしたような顔を上げた。

 

 

「悪いな。昨日に続いて連続で」

 

「気にしなくていいわ。仕事なんでしょ? それより、こっち」

 

 

 ポンズが指し示したのは、不規則に並んだトリックタワー屋上の石畳の一つだった。

 彼女が細い手で軽く押すと、かこ、と静かな音を立てて床が沈み、空洞が現れる。

 明らかに、下の階層へ続く入口だった。

 

 

「ハンゾーが見つけたの。

 それで……私の蜂たちを飛ばして、床の隙間や音を探らせてみたけど」

 

 

 石畳の隙間からは、ぶぅんと微かな羽音を立てて数匹の蜂が戻ってくる。

 ポンズは指先で虚空にサインを描いて「ありがとね」と蜂を帽子に迎え、深刻な顔で俺を見た。

 

 

「あちこちに隠し扉がある。中は迷路みたいね。

 かなり複雑な作りになってて、蜂たちだと覚えきれない。

 だからどの入口がどこに繋がっているかは、入ってみないとわからない。

 三人で一緒のルートに行ける保証はないわ」

 

「俺もあっちこっち歩いてみたけどよ、どうもこれ、一度使ったらロックされるみてーだな」

 

 

 ハンゾーがとんとんと、爪先で床を叩いて言う。

 恐らく他の受験生が使った後の隠し扉だったのだろう。音は響くが、床が動く気配はない。

 

 

「扉がどれだけあるかもわかんねえが、数次第じゃ、下手すりゃ此処で()()だぜ。

 制限時間は72時間、参加者40人、ただし入口は20人分だけですなんて、ありそうな話だ。

 あんまり迷ってる時間はねーぞ」

 

「……ねえ、どうする? アンドーくん、ハンゾー」

 

 

 ポンズは、ひどく深刻な……緊張した顔をしていた。

 俺とハンゾー、ポンズの関係は、あくまでも試験突破のための協力関係だ。

 ハンゾーはダチだと言っているし、俺だって別に悪い気はしない。けど、優先順位はある。

 もし此処で三人別れ別れになって、一人ずつ各々別の道を進むことになった場合。

 まず間違いなく、自分は不合格になる……と、ポンズは考えているはずだ。

 単独での戦闘能力があまりにも低いことを、彼女は自覚しているからだろう。

 そのうえで、緊張した表情は……恐怖もあるし、怯えもあるが、けれど縋るようなものではなかった。

 切り捨てられても構わないという、覚悟の表情だった。

 

 俺は彼女が、命がけで何処かの誰かのために、情報を伝えるべく走れる事を知っている。

 疑いの余地はなかった。

 

 俺の目に気づいたポンズが、やや強張った、けれど勝ち気そうな笑みを浮かべる。

 

 

「いいよ、別に。それで怒ったりとか、そういう事はないから。

 それにほら、私だってハンター試験の受験者なんだから、自力で合格するわよ」

 

「俺ァ最悪ここで一旦別れてもしょうがねえとは思うがな。アンドーの意見も聞きてえ」

 

「そうだな……ちょっと待ってくれ、十秒くれ。考える」

 

 

 俺は黙り込み、いつもの癖で心臓──ネオンの占いをしまってあるところへと手を当てた。

 

 はっきり言えば、ポンズの考えは杞憂も良いところだ。

 だってポンズが原作で不合格となるのは、次の四次試験、ナンバープレートの争奪戦。

 ここで俺とハンゾーと別れたところで、彼女はトリックタワーを攻略するだろう。

 

 ()()()()だ。

 

 ()()()()と言い換えても良い。

 

 ここは原作の漫画の世界ではない。である以上、その後どうなるかはわからない。

 俺の知識はあくまで参考に過ぎず、これを前提にした行動は危険以外の何物でもない。

 

 もしかしたら死刑囚突破十人抜きなんて道かもしれない。

 もしかしたらポンズはゴンたちと一緒の道に入り込むかもしれない。

 もしかしたら少しの罠以外は延々と何もない通路(『ハンターの系譜』)をひたすら進むだけかもしれない。

 

 もしかしたら。

 もしかしたら。

 もしかしたら。

 

 だが……どうするべきか、ではない。

 考えるべきは、どう在りたいか、だ。

 

 

 空を衝く塔は 嘘と裏切りで積み上げられ

 多数の意思が 少数の真実を飲み込んでいく

 見かけの平穏に 欺かれてはならない

 選ぶべき道は 常に多数の足跡とは逆にあるのだから

 

 

 

 俺は指針とすべき確かなものを、既にネオンから授かっている。

 後は俺がこれをどう判断し、どう行動するか──……行動したいか。

 

 

(この内容……素直に()()()()()だと受け取って良いのか?)

 

 

 ポンズたちと降りた先が、原作のゴンたちと同じシステムで、違うルートなのだろうか。

 三人なら奇数。多数決は成立する。あるいはさらに二人、合流することになるのか。

 それとも俺一人だけ多数決の道に入るということか?

 

 

(いや……いや、いや、待て)

 

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 ネオンの占いは、()()()()()()()()()と言っているのだ。

 多数決の道では、どう足掻いても不可能な行動だ。

 なぜなら選ばれた時点で、それは多数が行く道となってしまう。

 ゴン達の最後の壁抜けにしたところで、多数で選んだ上での行動だ。

 

 

(なら、その前……飲み込んでいく、という所から考えてみよう)

 

 

 真実を飲み込んでいく……。

 今まさに、受験生たちは床の隠し扉を通って、階下に潜っている。

 つまり()()()()()()()()と言って良い。

 

 見せかけの平穏。欺かれるな。選ぶべき道は……。

 

 

(……常に多数の()()とは逆にある?)

 

 

 俺は、はたと気づいて顔を上げた。

 足跡というからには、既に()()()()()()()の道があるはずだ。

 そのまま、素早く周囲を見回す。

 空──森──鳥。

 足跡。大勢が進んだ後。足元の隠し扉。大勢が進んでいく、塔の内側。その逆。

 

 ()()()

 

 

「……ポンズ、さっきのあの鳥の種類と特徴はわかるか?」

 

「え? アレは……オオガキアゲラ。

 雑食性で、特に大型の哺乳類……というか人間を好む。

 習性は獰猛。仲間内で奪い合ったりするから、犠牲者はバラバラになる事も多い。

 危険なのはあの巨大な口と牙。あとは足の鉤爪。

 体が大きい分、飛行速度は遅いんだけど、空中で静止できるのが特徴。

 たぶん向こうの森の方に巣があって……あれ、でも、待って……」

 

 

 淀み無くスラスラと図鑑を読み上げているように語ったポンズが、ふと押し黙った。

 彼女は()()()()()()()塔の屋上から四方を見回し、そして彼方の山の方を睨み、呆然とした表情で呟いた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……確かにな」

 

 

 ハンゾーが空を見上げ、そこに滲む幾つかの黒点──オオガキアゲラの群れを睨みつけた。

 改めて周囲の空を観察すれば、なるほど、塔の周りには何羽もあの怪鳥が飛んでいて、周回しているのがわかった。

 様子を窺っているという気配はない。だがホバリングして、待機しているようだ。

 なぜなら翼を広げた輪郭、その影が、常に此方側を向いている──……。

 

 

「あいつら、塔より高く飛べるらしいぜ。てことは、高度制限の類はなさそうだ。

 自分たちの動きが鈍いから外壁降りてる奴を狙ったにしたって、屋上だって広くはねえ。

 だったら此処にいる俺達だって、魅力的なエサのはずだぜ。

 外壁に張り付いた奴だけを襲うように仕込まれてるって見た方が良さそうだが……。

 ……できんのか?」

 

「オオガキアゲラを調教した話は聞いたことないけど……。

 ……でも、観測事実を認めるべきかな。

 私も蜂に似たような事はさせられるから、無理だとは言えないわね。

 それにあの人、連れ去られただけだよ。良く考えたら、食べられてない」

 

「さっき、ビーンズさん……協会の事務員が言ってたよな。

 ここは()()()()()()()だって」

 

 

 ハンゾーとポンズが導き出す情報を処理しながら、俺は思考を続ける。

 二人の顔を見回し、コツ、コツと、爪先で足元の隠し扉をわずかに押し開いてから言った。

 

 

「そもそもさっきの86番、あれが()()()だったとしたらどうだ?

 俺達に外壁は危険だと思わせて、塔の中に引きずり込むための()()()()だとしたら?」

 

「ありえるな」

 

「悪辣。ていうか、悪趣味……」

 

 

 顔を引きつらせながら呻いたポンズが、改めて周囲を見回し、頷いた。

 

 

「でも、たぶんアンドーくんが正しい。

 あれが野生のオオガキアゲラだったら、さっきの人は原型をとどめてない。

 あの場で食い散らかされてるか、群れで取り合いになって引き裂かれてるはず。

 そのまま鷲掴みにされて運ばれてくのはおかしいよ」

 

「もう誰も行きたがらない、こっちの外壁が最短ルートなのは間違いないだろ。

 72時間って制限時間もあわせて、全部誘導なんじゃないのか?」

 

「……確かに。みんな、塔の中に入る事しか考えてない」

 

 

 ポンズが隠し扉を見つめ、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 

 

「でも、どうやって降りるの? さっきの人みたいに外壁を手掴み?」

 

「フリーソロはちょっとぞっとしないよなぁ……」

 

 

 俺は苦笑しながら、断崖絶壁に等しい塔の外壁から地上までを見下ろした。

 そう、ルートがわかったところで、方法がないのだ。

 

 (ネン)を使えば余裕だが、あいにくと今は使えないので、選択肢からは除外する。

 徒手、命綱、安全装置なしでのクライミングを行うフリーソロ──この場合はトリオか。

 それだって手につけるための滑り止めのチョークと、専用のシューズは必須装備だ。

 

 

(それになあ、86番が言うみたいに手がかり足がかりになりそうな隙間は豊富だけど……)

 

「下手なとこを掴んだらスイッチが入って高圧の油が吹き出しそうな気がするんだよな……」

 

「なんでアンドーくんはそんな具体的によくわかんないけど怖いこと言うの???」

 

 

 ポンズにちょっと引かれた。悲しい。

 波紋って強化・変化・放出の高度な組み合わせだと思うんですよね。

 

 などと俺とポンズが話していると、不意にハンゾーが「ふっふっふ」と低い声で笑い出した。

 

 

「見よ、忍者の活動を助ける雲隠流の巻き上げ機構付きフックロープを……!」

 

 

 どこからともなくハンゾーが得意げに掲げたのは、まさしく忍び道具と言った風情の鈎縄だ。

「おおー」と俺が感心した声を上げると、ハンゾーは得意満面といった様子で鼻の下を擦った。

 

 

「こいつ使って一気に降りようぜ。

 さっきも言ったが、隠し扉にはロックがかかる。そこにひっかけりゃ外れねえよ」

 

「でも妨害してくる奴がいるでしょ。ジュースのおじさんとか。

 フックがはずれなくても、縄を切られたらどうするの?」

 

「急いで懸垂下降するしかないんじゃないか?」

 

 

 ポンズはしばらく考え込んだ後「うちのコに見張らせておく」と、やや青ざめた顔で言った。

 

 

「よし、決まりだな。一気に降りるぞ!」

 

 

 ハンゾーの宣言と共に、作戦は実行に移された。

 

 ぶぅんと蜂が微かな羽音を立てて飛ぶ中、ハンゾーが手近な隠し扉の隙間に特製の鈎をガッチリと食い込ませ、固定し、扉を一回転。

 強固なロックがかかったことを確認する。

 あとはロープを屋上の縁から投げ落とせば、地上まで続く、細く、けれど強靭な一本の……文字通りの頼みの綱が垂れ下がり、これで完成だ。

 

 俺が嗜みとして持ち歩いてる手袋をはめている間、ハンゾーは手早く自分の忍び装束にロープを通して固定。

 そして投げ渡されたロープを、俺も自分のベルトに通しておく。

 

 

「……あの、アンドーくん」

 

 

 そうして準備を進めていると、ふいに、ポンズが申し訳なさそうに俺のスーツの裾を引いた。

 

 

「どうかしたか?」

 

「その、えーっと……ロープなんだけど」

 

 

 ポンズが自分の腰元を見て、困惑したように呟いた。

 

 

「……私、ベルトがないから、それできない……」

 

 

 小さな、けれど無視できない問題だった。

 

 この高さからの懸垂下降だ。

 当然、ロープにただ掴まっているだけでは握力が持たないし、摩擦で手が焼ける。

 本来ならグローブにハーネスとカラビナが必要だが、そんな準備はない。

 ハンゾーは忍び装束に近い身軽な格好で、こういう状況も想定してある。

 対して俺は、無駄に頑丈な本革のベルトを締めたスーツ。手袋もこの通り。

 そしてポンズの服装は機能的だが、ゆったりとしたタートルネックの服にズボンだ。

 体重を預けられるような頑丈なベルトは通っていない。

 

 

「…………」

 

 

 ポンズはハンゾーを見た。

 それから、俺を見た。

 

 

「……アンドーくん。……いい?」

 

「構わないよ」

 

「ごめん……」

 

 

 消え入りそうな声。判断基準はあえて問うまい。

 戸惑いと羞恥に顔を真赤にしたポンズの細い腕が、おずおずと俺の首に回された。

 俺が躊躇無くその腰を掻き抱くと、彼女はびくりと震える。

 心地良いやや低めの体温と、意外なほど柔らかな感触がスーツ越しに密着する。

 

 

「冷え性? 緊張してる?」

 

「は、蜂たち、あんまり熱いの、得意じゃない、から……薬で、代謝……ちょっと落としてるの」

 

 

 ポンズはやや声を上擦らせながら言った後、ぼそぼそと小さな、けれど真剣な声音で囁いた。

 

 

「お、重くない……?」

 

「いや、全然。軽いもんだよ」

 

「そ、そっか……」

 

 

 女の子、そしてあらゆる女性は羽のように軽いのだ。

 ……と、言えるようにならなければならないと、俺は仕込まれている。

 

 ネオンの護衛ということは、ネオンと一緒にパーティに出るという事なのだ。

 そこでの無作法はそのままノストラード・ファミリーの格に直結する。

 ネオンだってあれだけワガママに見えて、立ち居振る舞いはちゃんとお嬢様ではあるのだ。一応。

 当然俺はネオンとレディを、彼女達と並んで見劣りしない程度にはきちんとエスコートできなければならない。

 とはいえ実際問題、ポンズの体重は俺に取っては軽い。

 確かにネオンより重いが、あれは彼女がお嬢様だからで、それに比べれば健康的で良いと思う。

 

 

(ハンゾーは、たぶんちょっと余計なこと言いそうだもんな)

 

 

 ポンズが俺を選んだ基準を想像するが、あえて口には出すまい。

 俺はポンズを抱きかかえながらも、特に思うことはないので、正解ではある。

 なにしろネオンのダンス練習相手は俺だし、護衛として庇う事も日常茶飯事だ。

 というか、俺の瞳を見るネオンとの距離は毎日もっと近い。

 女性と密着したからといって慌てるようでは、此処までの日々、生きてはこれなかっただろう。

 

 ネオンと暮らす日々は、日常が目の毒だ。

 その点に関しては、俺はハンゾー以上、キルア以上だという自負がある。

 

 

「アンドー、ポンズ、いいかぁ?」

 

「ああ、いつでも」

 

「ちょっ……と、待って、心の準備がッ!」

 

「待たねえ! 行くぜッ!」

 

 

 ハンゾーの合図と共に、俺たちは塔の縁を蹴った。

 浮遊感、そして落下。凄まじい風切り音が耳を打つ。

 爆発的に広がった視界に映るのは、頭上いっぱいの青空。そして遠ざかっていくタワー屋上。

 

 

「あ、あいつら飛び降りたぞ!?」

 

「何考えてんだ、正気か!? さっきの86番見てなかったのかよ!」

 

 

 まだ屋上に残ってる連中の叫びも、あっという間に聞こえなくなる。

 俺とハンゾーは一定の速度を保ちながら、壁面を蹴って下降を続けた。

 その度、腕のポンズが「ひうっ……!」と短い悲鳴を漏らすのがわかる。

 

 自分の意思で降下するならともかく、他人に命を預けるのは恐ろしいものがあるだろう。

 歴戦のパイロットだってジェットコースターはおっかないものだと聞く。

 首にかかった腕は、小刻みに震えていた。心細げな鼓動が伝わってくる。

 俺は何も言わず、ただきつく腰を抱いた腕に力を込めることで応えた。

 

 

「──来るぞ! 注意しろッ!!」

 

 

 不意に下降の風切り音を切り裂いて、ハンゾーの鋭い怒号が響いた。

 彼方から徐々に異様な哄笑にも似た鳴き声が近づいてくるのが、俺にもわかった。

 

 

 ゲッ ゲッ ゲッ ゲッ ゲッ

 

 

 先程の群れと同じなのか、違う群れなのかはさだかではない

 オオガキアゲラ。

 塔の外壁を這う獲物を狙う、あの妖鳥たちが、俺たちという格好の獲物を目掛けて迫りつつあった。

 

 

「ア、アンドーくん、早く……っ 早く!」

 

「わかってる。大丈夫だポンズ、さっきの奴より降下速度は速いんだ。

 襲われるより先に地上に──……」

 

「違う、そっちじゃない……上!」

 

 

 俺の腕の中でポンズが顔を強張らせ、同時に彼女の帽子の周りで、数匹の蜂が緊急信号を伝えるように激しく旋回した。

 

 

「屋上の子が知らせてくれた! 誰かがロープにナイフを当ててる……ッ!

 まずい、切られる!!」

 

「何だと!?」

 

 

 ハンゾーが顔を上げ、遥か頭上の屋上の縁を睨む。

 だが、そこから声は届かない。見えたのは、鈍く光る刃物の輝きだけだ。

 嫌がらせか、それとも脱落者を増やすための戦略か。

 どちらにせよ、今ここでロープを断たれれば俺達がどうなるかは明白だ。

 

 

「たぶん、あのジュースのおじさん……!」

 

「……クソ、このロープたっけえんだぞ!?」

 

(そう言えばアイツ、原作でも2時間くらい屋上をうろついてたみたいだったな……)

 

 

 俺にはトンパのニヤついた下卑た笑顔が手に取るように思い描けた。

 奴め、自分は塔の中に逃げ込む準備を整えた上で、他の受験生の妨害をしてたに違いない。

 基本的に相手を直接殺すような妨害はしてこない奴だが、試験中の罠で落下して死に行く受験生を見て興奮するような奴でもある。

 この状況、怪鳥どもに襲われてる最中ならもう死んだも同然と判断してロープを切りにかかっても不思議ではない。

 ハンターハンターは伊達ではないということか。これで食ってけるんじゃあないか。毎年一ヶ月近くハンター試験に参加するのに普段どうやって食ってるんだアイツ。

 

 上にはトンパ、横には怪鳥、下には地面。

 逃げ場のない、文字通りの絶体絶命。

 

 だけど俺は慌てない。

 大丈夫だと──()()()=()()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

 同時に、思考は停止しない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()のにも等しいからだ。

 なら、俺はその期待と信頼に応える必要がある。

 予言が道しるべなら、その道を走るのは俺の足でなければいけない。

 

 足。

 大勢とは真逆。

 真実。

 怪鳥。

 つまり。

 

 答えをくれたのは、ハンゾーだった。

 

 

「……アンドー! ロープを捨てるぞ!」

 

「……仕方ない、やるか!

 鳥にしがみつこう! このまま落ちるよりマシだ!」

 

「え、あ、ちょ、ちょっと、ま──……」

 

 

 ポンズが何か言おうとしたが、ハンゾーは迷わず、自慢の忍具を腕に仕込んだ刃で切断した。

 刹那、支えを失った体が虚空へと投げ出される。

 

 

「ぃ、やああああぁあああッ!?」

 

「イヤアアアァッ!!」

 

 

 ポンズの悲鳴が風に掻き消される中、俺は渾身の叫びと共に逆に壁を強く蹴って、迫りくるオオガキアゲラの群れへ飛び込んだ。

 狙うのは、その異様に巨大な頭では決して届かないだろう──奴らの背中だ。

 牙と鉤爪以外は恐るるに足らずと、教えてくれたのはポンズだ。

 

 

「……らああああッ!!」

 

 

 ハンゾーもまた、別の個体の背に飛び乗り、クナイを突き立てて御していた。

 突然の重りに驚いた怪鳥は、バランスを崩して激しく旋回する。

 凄まじい遠心力。

 俺は振り落とされないよう、左腕でポンズを、右腕で怪鳥の首を、力任せに絞り上げた。

 オオガキアゲラの喉から、赤子の断末魔にも似た異様な叫びが響き渡る。

 

 

「これ……落ちてる!? 落ちてるよアンドーくん!!」

 

「わかってる、離すなよ!」

 

「う、うん……っ!」

 

 

 ポンズがぎゅうっと力を入れて俺の体にしがみつく。

 その間も怪鳥は暴れ、悲鳴を上げながら、螺旋を描いて地上へと墜落していく。

 重力加速度を乗せて時速百キロを超える死のダイブ。

 地面が、一気に視界いっぱいに迫ってくる。

 俺は激突の直前、鳥の首から抜いた右腕で、ポンズの頭をしっかりと抱えて保護した。

 

 ────衝撃。

 

 ぐしゃり、という生々しい肉の潰れる音と、骨の砕ける感触。

 怪鳥の巨体が、地面に叩きつけられて文字通り弾け飛ぶ。

 俺はその衝撃と反動を利用してポンズを抱えたまま怪鳥の上から飛び降り、転がり落ちるように着地を決める。

 

 視界が安定した時には、ピクリとも動かなくなったオオガキアゲラの残骸が、巨大な肉のクッションとなって横たわっていた。

 

 

「…………生きてる?」

 

 

 俺の腕の中で、ポンズが震える声で呟く。

 その頬には、怪鳥の返り血がひと筋ついていた。

 

 

「……まあ、死んではいないな。怪我はないか?」

 

「……大丈夫」

 

 

 ほっと、息を吐く。

 ポンズは俺の腕の中で、ひどく悔しそうに唇を噛んで俯いて、小さな声で呟いた。

 

 

「ごめん、足手まといだね、私……」

 

「オオガキアゲラの武器が口と足だって教えてくれたのはポンズだろ。

 それに屋上の監視もしてくれてたのはポンズだ。問題ないよ」

 

「そーそー! 気にすんなよ! 役割分担ってやつだぜ。

 俺のロープはまあ、しゃーねえな。無傷なら必要経費、安いもんだ」

 

 

 少し離れた場所で、同じく鳥をクッションにして着地したハンゾーが砂を払って立ち上がる。

 俺も未だ抱えたままのポンズをゆっくりと地面に降ろし、乱れたネクタイを整え、スーツに付着した羽毛を指先で払う。

 それから俺はポンズにハンカチを差し出した。

 ポンズはしばらく押し黙っていたが、やがて「うん」と呟いて、そっと受け取り、頬を拭く。

 

 

「……後で、返すね。これ。洗って……か、新品か……」

 

「気にしなくて良いよ。ハンカチもまあ、消耗品だ」

 

 

 ポンズはハンカチをぎゅうっと強く握りしめて、俯いてしまった。

 身体面で彼女が非力なのは事実。同時に俺達が彼女の知識を頼みにしているのも事実。

 別に相反することでもなく、俺もハンゾーも特にポンズを負担には思っていない。

 

 けど、これは結局、この状況をポンズが受け入れて納得できるかどうかだ。

 こういう時は気持ちの整理がつくまで、深く踏み込まない方が良いだろう。

 

 

(……ハンゾーのロープについては、後で弁償するかなぁ)

 

 

 忍具、フックロープ。幾らぐらいするのかは知らないが、俺もそれなりに貯金はある。

 というか、このスーツにしろ他の服にしろハンカチにしろ、だいたいネオンがコーディネートして仕立てて用意して、「むふーっ」と満足げに腕組みしてうんうん頷きながら押し付けてくるから、俺はほとんど自分の金を使わない。

 護衛団の給料はなかなかのものなので、口座の残高桁数は上がる一方なのだ。

 

 ハンゾーだけなら巻き上げ機構なり、忍び装束の側のロックを外すなりすれば良かった。

 俺が腰のベルトに通していたから、切断しなければいけなかったのだ。

 あそこで躊躇無くロープを切ってくれたのは、ハンゾーが此方を気遣ってくれた結果。

 なら必要経費を支払うのはこっちだろう。領収書も切ってもらおう。

 そんな事を考えながら潰れた鳥の亡骸を見やった俺は、ふと、その言葉を口に出して呟いた。

 

 

「……(シュク)忍法、()()()()()

 

「あん? なんだって?」

 

「いや、ハンゾーが忍者だったから、ついな」

 

 

 飯綱が鳥を落とすように空中の敵に飛びかかって叩き落とし、相手の体で衝撃を吸収する忍法。

 まさか自分がやる事になるとは思わなかったが……上手くいくもんだ。

 全員生還。トリックタワー脱出RTAなら最速じゃあないだろうか。これが一番速いと思います。

 

 俺達はひとまず改めて全員の負傷状態を確認してから、トリックタワーの下へと向かった。

 巨大な塔の外周をぐるりと回ると、やがて塔の大きさに比較するとかなり小さな入口が一つ。

 近づいた俺達を、ぱち、ぱち、ぱちと乾いた拍手が出迎えた。

 

 

「よぉ、どうやらあんたたちが一番乗りみたいだな」

 

 

 壁に背を預けたその屈強な男の胸には()()()のナンバープレート。

 それを認めたポンズが、まだ自己嫌悪の色が抜けない顔で、咎めるような目を向ける。

 

 

「試験官だったの……?」

 

「試()官な。なかなかの()()()だったろ?」

 

 

 86番の男は、にやりと不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「『ナンバープレートをつけてるのは受験生だけ』とは言ってないからな。

 最初に言われただろ、ここは()()()()()()()だって。

 飛行船の中で合流したのさ。全員の()()()()()()()()()気付けたと思うぜ?」

 

 

 その返答にハンゾーは顔をしかめたが、俺はまあ、予想通りだというのもあったし、次の試験──原作通りなら──の布石かという理解が及んだのもあるし、特に不快感を覚えることはなかった。

 なんたって漫画がめちゃくちゃ上手そうな声をしているんだ。

 この人も腰をどうか労ってもらいたい。

 

 

「まあ、安心しろ。第三次試験だけだ。これ以上は俺達が騙す意味もない。

 次の試験はリッポー、ここの所長が詳しく説明するから、俺からは言えんけどな」

 

「所長?」

 

「ここはプロハンターが運営してる刑務所だよ。

 で、中には減刑と引き換えに雇われた試練官の囚人がいるわけだ。

 俺も試練官の一人。受刑者としては元……泥棒でね。試練官のお勤めでようやく赦免、釈放さ。

 けどどうせカネ目当てに壁登るなら稼ぎが良くて合法な方が良いから、続けさせて貰ってる。

 ……ま、試験終了まであと70時間ちょいか? それまで中でのんびりしてな」

 

 

 そういって86番の男は俺達をトリックタワーの中へと迎え入れた。

 

 案内された先は、原作でゴンたちが囚人戦で消費した時間を過ごすために使われたのと同じような部屋だったが、自分の目で見てみると、石造りの塔の中とは思えないほど快適そうな作りだ。

 ベッドにソファ、バスルーム。食べ物飲み物嗜好品。本棚には各種書籍に小説、漫画もあるし、大型モニター、部屋の隅には端末まである。起動してみると電脳ネットにも繋がっていて、至れり尽くせりだ。

 ハンゾーが奥の扉を開けて「厨房にジムまであるぜ!」と嬉しそうな声をあげた。

 

 

「こりゃあ大助かりだぜ。

 三日ってなるとどう暇を潰すか迷ってたからよ。俺ァ退屈だと死んじまうんだ」

 

「……私はとにかくちょっと休みたいな……」

 

「とりあえず俺は、そうだな……」

 

 

 俺は部屋の端末を叩いて目当てのサイトを開くと、よしと頷いた。

 

 

「……動画でも見るかな」

 

「……なに、それ」

 

 

 俺の言葉に、ポンズがようやく笑みを取り戻して、大きく伸びをした。

 

 




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