地雷系彼女(マイ・フェア・レディ)   作:あなたへのレクイエムです

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20.カラレルモノ x ト x カルモノ

 視界が、毒蛇の描く極彩色の陽炎で埋め尽くされる。

 

 一匹一匹がバーボンのオーラによって強化され、意思を持った矢のように俺の急所を狙ってくる。

 (ネン)があれば、最低でも(テン)の防御で小規模な毒牙なら弾けたかもしれない。だが、今の俺にそれは無い。

 一噛みでもされればそこから毒が回り、文字通り「詰み」だ。

 やっぱりジョースターさん流の解毒術が欲しい。

 

 

「若造、お前の動きは人間としては上等だが、私の蛇は(ネン)の法の内にある……!」

 

 

 巨木の陰で蛇を使役するバーボン。俺は低く沈み込み、ジグザグに地を駆ける。

 だが、俺が踏み込むより先に、足元の枯れ葉が爆ぜた。

 下から這い出した三匹の毒蛇が、俺の死角を突いて跳ね上がる。

 

 

「……チィッ!」

 

 

 バックステップで回避。

 だが、そこは既に次の蛇が待ち伏せている場所だった。

 

 

「……なん、のッ!」

 

 

 俺は巨木の幹を掴むと下半を持ち上げウォールフリップ。射線を切る。

 直後、さっきまで俺の喉笛があった場所を三匹の蛇が同時に通り抜けた。

 やはり速い。生物の反射神経を遥かに凌駕している。蛇は存外に素早い事を加味しても。

 俺は幹を蹴って蛇群を飛び越えて着地するが、蛇は即座に反応して襲いかかってくる。

 

 

(──まるで詰将棋だ)

 

 

 俺がどう動くか、バーボンは経験とオーラから伝わる蛇の感覚で先読みしている。

 念能力者としての格が違う。原作で事故死したはずの男の、これが本来の実力なのか。

 だが、その制御には明確な法則がある──バーボンの指先の微細な動きと、低く響く音だ。

 

 

「シィィイィイイイイイイ……ッ」

 

 

 バーボンの口から漏れる、蛇の鳴き声にも似た鋭い音。

 蛇に耳や鼓膜が無いというのは有名だが、別に聴覚が無いわけではない。

 微細な空気の振動、オーラによる指示。

 それを身体全体で感じ取り、蛇はバーボンの意のままに動く。

 生き物としての意思と、操作系能力者の冷徹な殺意が同居した、自動追尾の弾丸だ。

 

 

「ッ……!」

 

 

 俺は咄嗟に背後の樹木を蹴って前に飛び、蛇の牙をやり過ごす。

 一匹一匹が強化され、統制された動きを見せる蛇の群れ。

 前後左右、上と下。完全に近い包囲網は、俺が立ち止まることを許さない。

 つまりどれだけ回避し続けても、いずれは俺の体力の限界が来る。

 

 

(……けど、隙が無いわけじゃあない!)

 

 

 ギドのコマがそうであったように、あるいはシャッチモーノさんの風船黒子がそうであるように。

 数が多いということは、一匹あたりの複雑な命令は不可能だということだ。

 突進、旋回、噛みつき。パターンを見極めれば、道は開ける。

 俺は正面から飛びかかってきた蛇を手刀で叩き落とし、前へ飛び出す。

 狙うはただ一点、十メートル先で余裕の笑みを浮かべるバーボンの本体。

 

 

「ほう……(ゼツ)に近い状態でこれほど動けるか!」

 

「別に舐めちゃいないんだけど、そういう縛りでね……!」

 

「難儀な事だ!」

 

 首筋を狙った一匹を掌打で叩き落とす。

 直後、左手首に走る鋭い痛み。鱗が掠めただけで熱い。牙は届いていないので問題なし。

 バーボンの蛇、その一匹一匹の動きには淀みがない。

 まるで、この空間そのものが一つの巨大な意志を持って俺を咀嚼しようとしているかのようだ。

 なら、俺が目指すのは喉の奥だ。

 

 

「はッ……!」

 

 

 俺は低姿勢のまま、一気にバーボンとの距離を詰める。

 足元に這い寄る二匹の蛇を、跳躍ではなく、あえて疾駆の勢いを利用した踵落としで踏みつけて、前へ。前へ。

 空中制動できない以上、下手に跳躍すれば良い的だ。そして(ネン)も使えない。相手の蛇は強化されている。

 だがつまり、それは、蛇を()()()()()にできるという事でもある。

 避け続けるのは無理。掴むと噛まれる。けど発想としては無限四刀流敗れたりと同じこと。

 俺は次々と飛びかかってくる蛇を踏みつけて、空を駆けた(スカイウォーク)

 

 

「やりおる……! では、これはどうだ!」

 

 

 視界の端で、バーボンの指が複雑な動きで閃いた。

 

 

「『サマエルの踊り(レッドスネーク・カモン)』!」

 

 

 バーボンの叫びと共に、それまで個別に動いていた蛇たちが一斉に鎌首をもたげ、互いの身を捩じらせながら()()()()を開始した。

 一匹一匹が縄をなすように絡み合い、そして一匹が次の一匹の尾を噛み、数珠繋ぎとなって俺の周囲を高速で旋回し始める。

 真紅の死が、凄まじい風切り音を立てて渦を巻いた。

 たまらず俺も着地し、思わず声を上げる。

 

 

「な、なんだあっ!?」

 

 

 結構ノンキするどころかわりとマジだった俺もこれにはちょっとビビった。

 俺を包囲していた蛇たちが、()()()()()()()へと姿を変えたのだ。

 

 

「確かに群れを一匹一匹精密操作するのは困難だ。

 であれば大群を以って個となせば良いだけの事……!」

 

「勉強になる……!」

 

 

 俺は地面を転がり、紙一重で振り下ろされたその真紅の鞭をかわす。

 通り抜けた後の地面は、蛇群の自重とオーラの強化によって、重機で抉られたかのように粉砕されていた。

 

 避ければ次。止まれば死。たとえ(ネン)があったとしても巨大質量を防げる気はしない。

 俺のスーツは既に泥と蛇の鱗で汚れ、腕や足には回避しきれなかった微細な裂傷が幾つも刻まれている。

 

 

「どうした、若造! 避けるだけではいずれ毒牙が届くぞ!」

 

「毒牙って代物じゃないだろ、コレは……ッ!」

 

「比喩に決まっていようが!」

 

 

 俺は、泥を噛みながら地を這った。

 真紅の鞭──『サマエルの踊り(レッドスネーク・カモン)』が空気を切り裂くたび、鼓膜が悲鳴を上げる。

 

 

(クソッ ウボォーギンのパンチほどじゃあないにせよ……!)

 

 

 だが蛇の群れが一本の鞭になったことで、バーボンの全神経はその一点に集中している。

 数多の蛇を操るため個別に分散放出していたオーラの操作が、巨大な一つの群れを操る(シュウ)の操作へと切り替わったのだ。

 ならば。

 

 

「止まったな、若造ッ!」

 

 

 バーボンの咆哮。真上から振り下ろされる真紅の断頭台。

 俺はあえて、その衝撃の中心へと飛び込んだ。

 激突の瞬間、地面に転がっていた太い枝を蹴り上げて、鞭の()()に叩き込む。

 

 

「なんとっ!?」

 

 

 かつて偽幻影旅団のリーダーと戦った時にもやった、相手の速度と質量を乗せたカウンターだ。

 たしか熟練のマタギはヒグマが直立した瞬間に懐に飛び込んで槍を立て、四足に戻る際の勢いで心臓をブチ抜くらしい。それの蛇版。

 繋ぎ目に楔を打ち込まれた数匹の蛇が、オーラが千切れ飛んで鞭から弾ける。

 いくら一つに編み上げたとはいえ、群体を制御している事自体には変わりない。

 となれば、どうしたって個々の(ネン)の制御は甘くなる。

 たとえオーラによる強化がなくとも強烈な一撃なら通用するのは、それこそ銃弾が証明してくれている。

 とはいえ、隙が作れるのは僅か一瞬。ほんの僅かに軌道が逸れるだけ。

 だがその一瞬の隙間──荒れ狂う蛇の真っ只中を、俺は駆け抜けた。

 

 

「イィヤアアァッ!!」

 

 

 最短距離。俺は一気に踏み込み、その懐、老いた胸板へと掌打を突き出す。

 だがバーボンもまた、ただの蛇使いではなかった。

 恐らくオーラを切り捨てたその手が、懐から黄金に輝く蛇を模した短刀を掴み取り抜き放つ。

 

 

「だが──獲ったぞ、『ナーガの滅び(イエロースネーク・カモン)』ッ!」

 

 

 距離を取れば蛇の群れが、接近すれば蛇の鞭が、白兵戦では己が。

 三段構えの毒牙こそが蛇使いバーボンの必勝戦術。

 俺の掌底がその心臓を捉えるのが先か、バーボンの毒刃が俺の心臓を貫くのが先か。

 時間は引き延ばされ、心音だけが世界を支配する。

 

 

 ──その刹那だった。

 

 

「……ッ、が、あ……ッ!?」

 

 

 バーボンの体が、不自然に硬直した。俺の拳が届くよりも早く。

 振り下ろされようとした刃が、俺のスーツの襟を切り裂いたところで止まる。

 

 

 ──ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン。

 

 

 森の静寂を、バーボンの蛇の音を、そして俺の鼓動さえも塗りつぶす、不快な羽音が響き渡った。

 

 

「な……ッ!?」

 

「が、は……な、なん、だとぉっ!?」

 

 

 思わず動きを止めた俺の目の前で、バーボンの身体が激しくのけぞった。

 彼の無防備な首筋に、そして恐らくオーラの薄い背中に、無数の()が突き刺さっている。

 

 

「……は、()……!? なぜ、こんな場所に……!?」

 

 

 自身の首を掻きむしったバーボンが、その場に膝を突く。

 途端に陽炎の如きオーラの奔流が霧散し、巨大な蛇の鞭が主人の意識の混濁と共にバラバラと解けて、ただの這い回る爬虫類へと戻っていく。

 もはやその時には、痺れ薬を打たれたようにバーボンは白目を剥いて崩折れていた。口からはぶくぶくと泡を吹き、痙攣さえ起こしている。

 

 完全に死に体。

 

 俺は荒い息を吐きながら、彼が倒れた向こう側の影を見つめた。何が起こったのか、あえて言うまでも無いだろう。

 

 

「……ポンズ」

 

「……言ったでしょ。自力で……やる、って」

 

 

 そこには黄色の帽子を深く被り直し、指先を震わせながらこちらを見る、一人の少女が立っていた。

 

 ポンズの足元には、数匹の蜂が力尽きたように落ちている。

 バーボンの蛇による索敵を潜り抜けるため、彼女は極限まで気配を殺し、蜂たちにも最小限の指示だけで追跡を続けたに違いない。

 そしてやつが俺に意識を向けて、ほかを認識する余裕が無い、ギリギリの瞬間――刺した。

 

 ポンズは念能力者という存在を知らない。

 

 原作でヒソカが天空闘技場でゴンとキルアに見せたような、あの異様な圧……正体もわからぬそれに、直接ではなくとも晒されていたのだ。どれほどの消耗だったか。

 力尽きた蜂達の姿は、それが生命をすり減らすほどだった事を物語っている。

 原作では野営中にガスを散布して不意打ちしたから、バーボンのオーラには直面しなかったのだろうか。

 あるいは死者の(ネン)に晒されたからこそ、あそこでポンズは諦めてしまったのか。

 

 いずれにせよ俺の目の前にいるポンズは、自分の地力を磨くためにこの方法を選択した。

 汗を滴らせ、顔からは血の気が失せ、膝は震え、今にも崩れ落ちそうな中……それでも彼女は立っていた。

 

 俺は、息を吐いた。

 

 

「助かった、とは言わないよ。……ポンズのターゲットなんだろ?」

 

「……ええ。私の、獲物よ」

 

 

 ポンズはふらつきながらもバーボンへ歩み寄り、その懐から103番のプレートを、自分の手で引き抜いた。

 俺は、その様子を黙って見守る。

 これで6点。合格が実質的に確定した瞬間だった。あとはナンバープレートを守り抜くだけ。

 しかし彼女はポケットから注射薬──エピペンを取り出し、バーボンの太ももへと注入した。

 アナフィラキシーショックへの応急処置。バーボンの呼吸が、穏やかになる。

 

 俺は思わず、先程自分が投げかけられた疑問を、そのまま口から出していた。

 

 

「……いいのか? 生かしておいたら、取り返されるかもしれないぞ」

 

「いいの。……そんなので合格しても、きっと寝覚めが悪いから」

 

 

 ポンズはそう言って、無理やり笑ってみせた。

 俺はさっき、スパーの同じ質問に答えた時、こんな表情ができただろうか。

 できていたとしても……ポンズのそれの方がきっと、ずっと尊いもののように思えた。

 

 ポンズはプレートをぎゅっと握りしめた。

 同盟を解消し、孤独を選んだ少女が、自力で掴み取った勝利。

 

 彼女は俺に背を向けると、硬い声で告げる。

 

 

「……残り、四日かな。……じゃあね、アンドーくん」

 

「ああ。……ゼビル島を出る時に、またな」

 

「……うん」

 

 

 ポンズはそう言って、夜の森の奥へと消えていく。

 

 遠ざかっていくポンズの背中を見送りながら、俺は膝に手をつき、肺に溜まった熱い空気を吐き出した。

 静まり返った森。俺の荒い呼吸とバーボンの規則正しい寝息、破壊された周囲の惨状だけが、先程までの死闘が幻ではなかったことを告げている。

 

 今夜の戦いもまた、ギリギリだった。

 

 あのままポンズの介入がなければ、俺はどうなっていただろう。

 良くて相討ち──……いや。

 バーボンの懐に解毒剤があるなら、相討ちでも俺の勝ちだったろうか。

 だがあの攻撃が致死性のものだったら? あるいは他の恐るべき毒だったら?

 操作系の念能力者だ。俺の体の支配権を奪い取る(ハツ)だった可能性もある。

 わからない。

 

 

(……わからない中で生きてるんだよな。本当なら、みんな)

 

 

 本来の原作であればバーボンは洞窟で命を落とし、ポンズはその罠に嵌まって脱落する運命だった。

 だが、今ここで起きた事実はどうだ。

 バーボンは生き、ポンズは自らの力で彼を制し、合格への切符をその手に握りしめた。

 彼女は自分の足で立ち、自分の蜂で、念能力者という理不尽な壁を打ち破ってみせたのだ。

 すべてを限界ギリギリまで振り絞った……その結果生まれた魂の火花、オーラが蜂に宿り、文字通りバーボンを貫いた。

 

 

(……これで、変わるのか?)

 

 

 彼女がこのまま合格し、ハンターライセンスを手にしたら。

 レオリオやクラピカと激突する運命を回避し、自力で島を脱出できたなら。

 彼女の未来にあるはずの()は、霧のように消えてなくなるのだろうか。

 

 俺はこの後、ひそかにでも手を貸すべきなんだろうか。

 それとも、こうして彼女の矜持を尊重し、別々の道を行くのが正解だったのか。

 今、彼女を助けて四次試験を確実に突破させることは簡単だ。

 俺達は既に6点を確保している。

 一緒に安全を確保し、ハンゾーと合流すれば、それで良い。

 けど、それはポンズの選択を踏み躙る事じゃないだろうか。

 

 もし彼女が、この後でゴンやクラピカ、レオリオといった面々と激突し、プレートを奪われて脱落したとしても。

 それは彼女が選び、戦い、勝ち取ろうとした結果だ。

 俺にそれを「可哀想だから」という理由で書き換える権利なんてあるわけもない。

 

 けど──じゃあキメラアントとの戦いはどうなんだ?

 そこで彼女が死ぬのも同じように傍観すべきなのか?

 

 ()()()=()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 答えは出ない。出せるわけもない。

 

 ネオンを助けたいから、助ける。ポンズが一人で頑張ろうとしてるから、見守る。

 スパーの命を取らなかった。なんとなくだ。

 バーボンは死んでも構わないと思っていた。助けたのはポンズだ。

 判断基準はなんだ?

 特に無い。ネオンにいつ見られても良いように、格好つけていたいだけ。

 

 どうすれば良いかではない。どう在りたいか。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 そして恐らくは、それで良いはず。

 

 

「……がんばれよ、ポンズ」

 

 

 独り言のように呟き、俺は意識を失ったバーボンの、枯れ木のように軽い体を担いだ。

 原作のように蛇たちが自動で襲いかかってくるかと思ったが、そんな気配はない。

 

 

(まあ、死んでなきゃ暴走もしないんだろうな……)

 

 

 きっと原作では(ネン)による防御を命じた状態で死んだ結果、その執念で(ハツ)が暴走したのだろう。

 そもそもがウボォーギンですらガスに耐えきれず体が動かなくなるのだ。催眠ガスによる不意打ちに抵抗できる念能力者などいない。

 そして眠らされてしまえば、(ネン)に覚醒していないポンズの蜂でも、防ぐことはできない。

 

 今回はそうではなかった。

 バーボンは俺と戦っている時、必死に(ネン)を込めたポンズの毒針で倒れ、治療された。

 違いは、恐らくそれだけ。

 

 

(何もかも紙一重だな……)

 

 

 俺は自嘲気味に笑いながら、バーボンを背負って海岸を目指した。

 今の戦闘はなかなかに派手だった。他の受験生に狙われる可能性もあるし、放置するのも……()()()()()()()()()

 

 スタート地点の浜辺なら、眠っている間に他の奴らに襲われる事もないだろう。

 スパーもいるだろうしな。あの直後に顔を合わせるのはちょっと気まずいけど。

 流石に船の接岸地点なら、ナンバープレートという発信機がなくても回収してもらえるはずだ。

 

 ……ああいや、受験生一人一人に監視がいるんだっけ?

 まあ、何にせよバーボンがあと数日あそこで安静にしているなら……だが。

 

 

「そこまでは責任は持てないからな。無理して倒れても知らないぞ、爺さん」

 

 

 背負ったバーボンへ返事も期待せずに声をかけ、足を進める。

 森のざわめきが、心なしか穏やかになった気がした。

 木々の狭間を抜ける夜風が、俺の火照った肌を冷やしていく。

 

 不意に、雲間に隠れていた月が顔を出し、鋭い光を地上へと投げかけた。

 左眼がその月光を反射して、七色に煌めく。

 けれど、俺はその輝きに気づかない。

 俺の輝きに目を留めるのは、いつだって他の誰か、ネオン=ノストラードだけだったから。

 無性に、ネオンの声が聞きたいなと。そんな事ばかり考えていた。

 

 だから、そう、俺は気づかない。

 

 数十メートル先、鬱蒼と茂る茂みの影。

 物音一つ立てず、ただじっとこちらを凝視している()()()()()()があることに。




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