「心臓を捧げよ!」
教官の声が響きと同時に、居並ぶ訓練兵219名が、声と動きを揃えて敬礼をとる。
そして、訓練兵の前には、10名の訓練兵が横一列となっている。
「本日をもって、訓練兵を卒業する諸君らには、三つの選択肢がある!」
教官が、駐屯兵団、調査兵団、憲兵団の説明をする姿を、カイは見つめていた。
調査兵団に入団し、『地獄』になる世界の中で自分がどのように生きるか、何故この世界に生まれたのか、それを探る。
今までの展開を見てみれば、今後も原作通りの流れになることは予想できる。だが、未来エレンと始祖ユミルの存在が、常に脳裏を過る。
カイは『呪術師』である。そして同時に、エルディア人から生まれた『エルディア人』でもある。呪力や術式という『異常』を、『道』を通じて二人が感知している可能性は否定できない。
感知していないなら良い。だが、感知しているという仮定に立てば、今後の戦闘で何か仕掛けてくるかもしれない。
今まで、二人から接触してくることは無かった。原作から離れた行動をすれば接触してくるのか、別の理由があって接触してこないのか、何も分からない。
備えあれば憂いなし。トロスト区では、巨人との戦闘を心掛け、経験を積む。それは立体機動だけでなく、呪術も同じであり、両方とも力を付けなければ、何処かでガタが来る。カイは、そういう予感がしていた。
「無論、憲兵団を希望できるのは、先ほど発表した成績上位10名だけだ!」
カイは思考を止め、最前列に立つ10人を見る。
原作と同じ10人だ。順位も、メンバーも、原作と同じ。
(危ねぇ……11位だから、下手すれば成績上位10名のメンバーが原作と変わってたかも。どこで点を取ったんだ?)
チラッとキースを見る。キースは、顔だけは前を向いている。だが、その『視線』はカイに向けられていた。何となくキースから注目されていることは、カイも感じ取っていた。
キースが頻繁に見ている関係上、訓練をサボりまくって点を下げることは出来ない。そんなことをすれば余計に目立つ。
普通の訓練兵は、教官に見られていたら真面目になるモノだから。だからといって、結果を上げすぎるのもダメ。点が高くなり、展開が変わる恐れがある。微妙なラインを見極めながら、呪術や立体機動の練度を上げ、今後の方策を練る。
正体を隠しながら集団に紛れ、計画を練って目的を達成しようとしている『戦士』たちの気持ちが、カイには少なからず分かるような気がしていた。
カイは、ふっと息を吐き、卒業式後の宴会場へと足を運ぶ。
訓練兵としての3年間が終わった。次はトロスト区の攻防戦。
カイは、この宴会だけでも心を休める機会としたかった。
「まさか、カイが11位なんて……」
「教官の判断だ。こればっかりは、どうしようもないだろ」
カイは、10位に入ったクリスタと二人で話していた。
……厳密には、カイの肩を強く握りしめ、ギリギリと歯を鳴らしながら凶悪な表情でカイを睨みつける奴も入れての三人だ。
「『わ・た・し・の』クリスタに勝てるわけがねぇだろ、あ゛あ゛ん゛!?」
「ちょっとユミル!」
訓練兵として生活する以上、ペアや班のメンバーは教官から決められて、そのメンバーで行動することが多々ある。
行軍訓練や立体機動訓練、装備点検などで、以前クリスタとカイは同じ班に組み込まれた。
カイはライナー程ではないものの、大男である。
そして、その行動方針の関係上──初日で会話したエレンやマルコ、ミーナやコニーらを除き──他の訓練兵とは、あまり交友しようとしなかったため、『とっつきにくさ』を感じる者が多かった。
そんな『とっつきにくい』大男とクリスタが同じ班となったことを知って、ユミルが警戒心を抱くのは当然のことだった。
カイとクリスタが行動を共にしているところにユミルが乱入し、クリスタをカイから引き離そうとする彼女をクリスタが注意する、という一連の流れは即座に形成された。
勿論、ユミルやクリスタを遠ざけようと、意図的に問題を起こして二人から嫌われるなんて行動を取るのは、バカでしかない。
なるべく距離を取るため、スーッとフェードアウトするように二人から離れようとするカイだが、そんな行動を見ていたユミルは逆に安心してしまい、カイに絡むようになってしまった。当然、クリスタはユミルと共に付いてきて、カイと関わりを持つようになった。
「はいはい分かった。勝てない勝てない」
「クリスタをバカにしてんのか、あ゛あ゛ん゛!」
「どう答えたら良いんだよ……」
(ユミルが面倒過ぎる……)
クリスタは将来の女王であり、ユミルも巨人化能力を持つ存在。ぞんざいに扱うことは不可能である。
カイは内心、「原作知識を持つのも考え物だな」と悩んでいた。
「勝てるわけない!」
トーマスの大きな声が響く。そこまでの声を出すつもりは無かったのか、辺りが静まり、自分たちへ訓練兵たちの視線が向けられていることに気付き、少し気まずそうな顔をした彼は、しかしエレンへと問いかける。
「お前だって知ってるよな?今まで何万人、食われたか……」
トーマスは、ただ事実を教えたいわけではない。
3年間同じ釜の飯を食い、死者が出るほどの訓練を共に生き抜いた仲間が、死地へと自ら向かうことを止めるため、その現実を突きつける。
「人口の2割以上を失って、答えは出たんだ。人類は……巨人に勝てない」
トーマスが突きつけた現実は、エレンだけでなく、その場に居合わせる訓練兵の背中に重く伸し掛かる。
自分たちは訓練で生き残っただけ。壁外で戦闘を重ねる調査兵や、街の構造を詳細に把握する駐屯兵ですら、5年前の侵攻を阻止できず、人類はウォールマリアを喪失することになった。
今の自分達に、一体何ができるというのか。
そんな理屈は、エレンも『理解して』いる。だが、『納得して』いない。
「それで……勝てないと思うから諦めるのか?」
トーマスの理屈に従うなら、エレンの『問い』は人類の『答えそのもの』である。
「確かに、ここまで人類は敗北してきた。それは、巨人に対して無知だったからだ」
クリスタやユミルと共にエレンの演説を聞いているカイは、視線で周囲の訓練兵を見る。
『戦士』であるアニやライナーは勿論のこと、ジャンやアルミン、ミカサにも注目する。
(『勝てないと思う、しかし諦めない』。それは、『天と地の戦い』に参加した皆に言えること)
エレンの演説をBGMに、カイは右手に持つコップをユラユラと揺らして、その動きを見ていた。
翌日、カイはエレンたちと同じ、壁上砲台の整備班に配属された。
「はぁ!?調査兵団にするって?コニー、お前あんだけ『憲兵団が良い』って……」
エレンの演説に感化されたコニーが、調査兵団志望へと変えたことに驚くエレンの声が壁上に響く。
エレンの行動が、周囲を動かした確かな証左だ。
コニーだけでなく、トーマスも照れながら調査兵団志望であることを暗に示す。
そこに、問題児がやって来た。
「あの……皆さん。上官の食糧庫から、お肉取ってきました……」
服の中に隠していた肉を皆に見えるように取り出したサシャ。
エレンやトーマス、ミーナなどは、信じられないという表情でサシャを見た。単なる『窃盗』ではなく、『軍の物資』を『窃盗』した訳で、当然罰則は重い。
(何で、取ってくるんだ……)
カイは天を仰ぎ、己の顔に手を置く。
『馬鹿』という言葉以外に、カイの頭には思い浮かばない。
「サシャ、お前独房にブチ込まれたいのか?」
「サシャ、戻してこいって」
エレンに続いて、思わずカイもサシャに言葉を掛けた。
原作知識で知っていたとはいえ、カイは3年間の訓練で軍人としての規律を叩き込まれている。それ故、どうしても言葉が出てしまった。
「今まで一杯肉を食べてきたカイは、分かりますよね!」
キラキラとした目でカイを見つめるサシャは、つい先ほどの『戻せ』というカイの言葉は聞こえていなかったようだ。
「……『肉が美味い』というのは、『そう』だ。『食べたい』というのも分かる」
「ですよね!」
「だが戻してこい」
「カイも『食べたい』って言ってますよ!」
(聞けよ。……狩人の勘なのか、頻繁に肉を食べてきたことがアッサリとバレてから、何故かサシャが付いてくるようになったんだよな)
肉を食べる場面を想像したのか、サシャは涎を垂らしながら「うへうへ」言っている。
「土地が減ってから、肉なんてすっごく貴重になったんだから……」
「大丈夫ですよ」
ミーナの言葉を否定するようにサシャが答えると、近くにある箱の中へと肉を入れる。
「土地を奪還すればまた、牛も羊も増えますから」
サシャが肉を入れた箱を見つめたカイは、口を開いた。
「……サシャ、その肉取っとけよ。俺も食うからな」
「俺もその肉食う!」
「俺も食うんだから、取っとけよ!」
「当然、私もだからね!」
カイに続くように、サムエルとコニーもミーナも『食べる宣言』をした。
やはり、肉の魅力には誰も勝てないのだ。
カイは砲台へと向き直ると、グッと背伸びをする。
「サッサと終わらせて昼飯だ」
「お前ら……」
「何突っ立ってんだ、エレン。作業に戻らねえとバレちまうぞ」
「お昼は、まだ先だよ」
皆が整備作業に戻り、肉のある食事を頭のなかで想像する。
そんな中、カイは少し腰を落とし、重心を下へと移動させた。
雷が落ちると共に、皮膚が殆ど無い巨人が突如として現れた。
超大型巨人である。
(来たな)
超大型巨人はエレンたちを見下ろしている。
エレン、コニー、トーマスやサシャたちは、予想もしていない『超大型の出現』という事態に遭遇し、超大型を見ながら呆けている。
超大型の最も近くにいるエレンは、己の後ろに現れた超大型を見て、驚きの声を上げる。
「なっ!?」
その瞬間、超大型から大量の蒸気が噴出し、壁上にいた訓練兵はカイを除いて吹っ飛ばされる。
(……お、上手いこと出来てるな)
カイは、立体機動装置のアンカーを足元に差すと共に、呪力を蒸気に向かって放出。己を囲むように呪力の膜を展開することで、蒸気を防いでいた。
呪力の光がカイを中心に周囲へ現れ、蒸気と衝突している。
石流龍の術式は、『呪力の放出』である。しかし、『呪力の放出』事態は、ある程度の呪力量や並の呪力操作が出来れば、誰でも可能なものである。
だが、『呪力の放出』が描かれる多くの場面は、呪力を溜めて光線のように放っていた。
そこに目を付けた彼は、一つのアイデアを思い付いた。カイの呪力総量は、乙骨や宿儺を遥かに超える。故に、呪力量に物を言わせ、大飯食らいな『呪力展開』を編み出したわけだ。
(呪力がアホほど消費されるな。効率が悪すぎる。けど、これなら術式を使わずとも超大型に接近できる。『使う機会』があるか分からんが、『使えるかどうか』を知っておくだけでも違うだろ)
超大型の蒸気を問題なく防ぐことが出来ると知ったカイは、アンカーを外し、『呪力展開』で身を守りながら壁の内側へと身を躍らせる。
壁上で立ったままでは、不自然に思われるためだ。
「サムエル!」
超大型の先制攻撃に対処できず、サムエルが地面へと落ちていくのが見えた。
落ちていくサムエルに向かってサシャが壁面を走り、アンカーをサムエルの左脚に突き刺した場面を見届けると、カイは拳に力を入れた。
さて、第10話となりました。
良いのかな、『呪力展開』とか訳わかんない技作り出して。原作設定的にできるのかな。
モデルは、五条悟の無下限バリアです。馬鹿みたいに効率悪いし、防御力は殆どありません。あくまで、『蒸気』という『面』の攻撃を『相殺する』くらいの威力しかありません
アンケート第2回です。見た感じ、半分程度の方が、「私に委任する」という立場のようで……。この様子だと、3回目は不必要ぽいかな?取り敢えず、また好きな所に投票してください。後、恋愛要素って要ります?「作者に展開は委任する」立場の方は、①と②に投票してください。原作の展開的に、ヒロインはユミルやクリスタになるかも。
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